大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)2185号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鍛冶利一の上告趣意第一点について。

しかし、第一審第二回公判における証人秋山恒二、同石黒峯明の各供述及び臨検捜索差押許可状(証一号)によれば、日本専売公社職員専売監視秋山恒二の請求によって東京簡易裁判所の簡易裁判所判事向井周吉が右許可状を発したものであることが窺える。従って論旨は憲法違反の前提を欠き採用できない。

同第二点について。

記録に徴するに、本件の臨検捜索差押許可状は日本専売公社職員専売監視秋山恒二の請求によって正当な理由に基いて発せられたことが認められるのであり、これを否定するに足る証拠を何等発見しえない。論旨は憲法違反の前提を欠き採用できない。

同第三点について。

しかし本件の臨検捜索差押許可状の下段の「臨検すべき場所捜索すべき身体又は物件」の欄には「横浜市鶴見区末吉町五六八の被疑者方」と記載されているが、これは原判決も説示するごとく「場所の表示として正確を欠く嫌いはあっても、被疑者金且権に対する令状たることは右記載自体に徴して明かであるから、これにより横浜市鶴見区末吉町六四九番地の被告人方において臨検捜索差押をなすも毫末も差支なきものと謂わざるを得ない。」というべきであり、右は要するに場所の表示の誤記とも言えないのである。論旨は独自の見解であって採用しえない。

同第四点について。

しかし本件許可状における「差押えるべき物件」の標示が所論の如く不明確であると仮定しても、それは差押の許可に関するものであるから、そのために臨検捜索の許可状の効力に何等の影響を及ぼすべきものではない。本件において第一審判決の確定したところによると、被告人は日本専売公社職員三名が本件令状にもとずいて被告人方を捜査中同人等が右職員であって裁判官の令状によって捜索しつつある旨の言葉にも耳をかさず本件令状をひったくって破棄し、また同人等に暴行を加えて公務の執行を妨害したというのであって臨検捜索許可状の有効なる本件においては差押許可状の無効は少しも右公文書毀棄罪及び公務執行妨害罪の成否に影響するところはないのである。従って論旨は判決に影響を及ぼさない主張であるから結局理由がない。

同第五点について。

しかし憲法三五条二項の趣旨は臨検、捜索、押収について各個の許可がなされた旨記載されていれば、これを一通の令状に記載することを妨げないのであるから(昭和二五年(れ)八四一号、同二七年三月一九日大法廷判決。判例集六巻三号五〇二頁以下参照)、論旨主張のごとき憲法違反の問題は生じない。

同第六点、第七点について。

論旨はいずれも刑訴四〇五条の適法の上告理由に当らないし、なお同四一一条を適用する場合とも考えられない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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