大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)2311号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人前堀政幸の上告趣意第一点について。

およそ所持という行為乃至容態が一個あるか数個あるかを決定するのは、必ずしも人と物との間に存する実力支配関係にあるのではなく、その行為乃至容態が社会生活上有する個別性的意義にあり、殊に所持を犯罪として観察する場合においてはその刑罰法規、手続規定等の立法の目的に立脚してのみ正当に理解し得るのである(昭和二三年(れ)第九五六号、同二四年五月一八日大法廷判決参照)。この理を推せば、物の所持の継続中新たにその物の所持を禁止する刑罰法規が施行せられた場合においては、爾後法的評価を異にした別個独立の所持が成立するものと解するを相当とする。而してその施行後継続せられる所持に対しては法令上特にその適用を除外する明文の存しない限りその新法規が、適用せられるのは当然である(昭和二五年(れ)第一一一八号、同年一〇月二六日第一小法廷判決参照)。論旨は罰則施行前の所持と罰則施行後の所持とをもって継続する一個の所持であるとの見解に立ち、施行後の所持に対しても罰則の適用がないと主張するに帰し到底採用するを得ない。されば原審が麻薬取締法施行後の所持を対象とした本件において同法所持罪の罰則を適用したのは相当であって、これに対し判例違反を主張する論旨は理由なきものである。また従って本件の場合、届出義務違反の罪責を問い得るに止まり麻薬の所持そのものは依然適法であると前提して論旨に展開された違憲論もまたその前提を欠き採用するを得ないものである。

同第二点及び弁護人橘一三の上告趣意について。

論旨はいずれも量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

その他記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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