大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)2558号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人山中貞二の弁護人中川種治郎の上告趣意について。

論旨はいずれも刑訴四〇五条に定める上告理由に当らないし、なお同四一一条を適用すべき場合とも認められない。

被告人浜崎正之の弁護人中村幸逸の上告趣意第一点について。

論旨は原審の判断を経ない事項について非難を加えるものであるから適法の上告理由となりえない。(なお第一審第一回公判調書によれば被告人及び弁護人は所論のごとき検察官の証拠調の請求には意見なく、且つ証拠とすることに同意すると述べ、なお証拠調終了後も何等異議を述べていないのであるから、論旨主張のごとき違法は存しない。)

同第二点について。

しかし原審が証拠として採用せる、被告人浜崎正之の検事事務取扱副検事に対する第一回供述調書(二一二丁裏以下)及び昭和二五年八月八日附和歌山税関支署由良監視長大蔵事務官弘田穣の告発書(五三丁裏以下)によれば、第三朝日丸の船長たる被告人浜崎は昭和二五年七月初旬福岡県若松市内の海図販売所において所論の海図五枚(証四号)を購入の上、原判示日時これを按じつつ北部南西諸島奄美大島深浦より和歌山県海草郡加太友ケ島附近まで航行して原判示の貨物の密輸入を図ったことが認められる。即ちこれらの海図は本件犯罪行為の用に供した物であって、被告人浜崎以外の者の所有に属さないことは原判文上、明かというべく、また原審がこれを没収の対象としたことは正当である。

もっとも原審が海図五枚を没収するにあたり刑法一九条を適用せずに他の輸入貨物の没収と同じく関税法八三条一項を適用したのは法令違反の譏を免れないが、これらの海図が没収の対象となりうることについては前記のごとく否定できないのであるから、右の違法は未だ刑訴四一一条に該当する場合とは認められない。

論旨は原判決の判例違反を主張するが、その摘示する大審院判決はいずれも原判決のごとく没収の適条について誤をおかした案件には適切でないし、また原判決が憲法三一条に違反するとの主張についても、前敍のごとく原判決には法令違反があるにすぎないのであって憲法違反は存しないのであるから、論旨はこの点においても採用できない。

よって刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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