大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)1590号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人池田久の上告趣意第一点について

原判決の摘示する事実とその挙示する証拠とを彼此対照して検討するに、被告人は婦女を誘惑して郊外に連れ出し、午後一〇時過頃、人家も稀れなお寺の境内に連れ込み、同所で同女を強姦しようと企て、突然同女の首を締めて境内の方へ押すようにしながら「大きな声をするな殺して逃げてしまえばそれまでだ」と申し向けて脅迫したというのであるから、たとい被告人に所論の如くいまだ猥褻行為に出でんとした直接の姿態がなかったとしても、これを以て強姦の実行に着手したものというに妨げない。原判決が被告人の右の如き所為に対し強姦未遂罪を以って問擬したのは正当である。所論引用の各判決は、本件に適切な判例ではない。論旨は理由がない。

同第二点について

検察庁法二七条三項には「検察事務官は、上官の命を受けて検察庁の事務を掌り、又検察官を補佐し、又はその指揮を受けて捜査を行う」とあり、刑訴応急措置法一九条には「検察事務官は、捜査及び令状の執行については、司法警察官に準ずるものとする」と規定されているから、地方検察庁の検察事務官は、検察官の指揮下において捜査する限り、たとい補助者ではあっても、地方裁判所の合議事件につき、被疑者その他の者を取調べ、その聴取書を作成する権限を有するものと解するを相当とする。所論引用の大阪高等裁判所の判決は、検察事務官の右の如き捜査に関する一般権限についてのものでなく、地方検察庁の検察事務官には、新刑事訴訟法の適用のある事案につき、告訴を受理する権限がないことを刑訴二四一条を根拠として判示したものであって、本件に適切な判例ではない。従って原判決には所論の如き判例違反のかどはない。論旨は理由がない。

同第三点について

旧法事件の上告理由の制限に関する刑訴施行法三条の二、旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則等が所論の如く憲法の規定に違反しないことは当裁判所屡次の大法廷判決等に徴し明白である(昭和二二年(れ)第五六号同二三年二月六日大法廷判決、昭和二二年(れ)第四三号同二三年三月一〇日同、昭和二三年(れ)第一二二一号同二四年三月二三日同、昭和二六年(れ)第七〇七号同二六年一一月一六日第二小法廷判決参照)。従ってこの点に関する論旨(一)は理由がない。また論旨(二)(三)において主張する点は、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

弁護人は論旨(四)において、本件については適法な告訴がないと主張するのであるが、所論検察事務官の聴取書の記載によれば、被害者は同事務官に対し、明かに被告人の本件所為につき厳重処罰を求める意思を表示しているのであるから、これにより同事務官に対し口頭の告訴があったものと認めることができる。しかも本件は、刑訴応急措置法の適用のある事案であるが、同法一九条には、「検察事務官は、捜査及び令状の執行については、司法警察官に準ずるものとする」と規定されて居り、司法警察官が告訴受理の権限あることは、旧刑訴二七二条乃至二七四条の明定するところであり、告訴が広く捜査に含まれることは勿論であるから、尠くとも刑訴応急措置法適用当時においては、地方検察庁の検察事務官も司法警察官と同様告訴を受理する権限があったものと解するを相当とする。してみれば前記検察事務官に対してなした本件被害者の告訴は有効と認むべきであるから、原判決には所論の如き違法はなく、論旨は採用するを得ない。なお論旨(五)の点につき記録を検討するに、所論第三回公判調書中「二月一日」とあるのは、「一月三〇日」の誤記であること、判決言渡期日の公判調書、原判決の原本領収の記載等に徴し明白であるから、本論旨もとるを得ない。

同第四点について

裁判が迅速を欠き憲法三七条一項に違反したとしても、それは判決に影響を及ぼさないこと明らかであるから、上告理由とすることのできないことは、所論の如く当裁判所の判例とするところであり、今これを変更する必要を認めないから論旨は採用できない。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用して原判決を破棄するに足る事由を発見するを得ない。

よって刑訴施行法二条旧刑訴四四六条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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