大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)668号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差戻す。

理由

上告代理人外池簾治の上告理由第四点について。

原判決は、投票用紙に候補者を表示記載するには文字をもつてすべきものであるとの前提の下に本件投票中「記号略」「記号略」と記載された二個の投票は「中」という字の上にかぶさる山形の折線は文字でないから、全体として文字による表示と認められず、無効と解すべきであるとしたのであるが「〇」「△」「□」等文字以外の通常、物の形状をあらわす記号として用いられるものを投票用紙に記載して、候補者を表示しても必ずしもその投票を無効と解すべきでないことは既に当裁判所の判例とするところである。(昭和二九年一二月二三日言渡同二八年(オ)第一一〇五号事件第一小法廷判決)今本件についてみるに、上告人中川文次郎の通称化した屋号を「山中屋」といい、選挙長に対してもこの通称の届出がなされていることは原判決の認定するところであり、「記号略」なる記号が通常「ヤマ」と呼ばれることは周知のことであつて、前記二個の投票は、選挙人が、これによつて、上告人中川文次郎を表示しようとしたものであることは容易に看取できるのであるから、右二票をもつて、単に「記号略」が文字でないという理由で、これを無効とした原判決の当を得ないことは、前掲当裁判所の判例の趣旨に徴して明瞭である。従つて論旨は理由あり、原判決はこの点において破棄を免れないものである。

よつて其余の論旨に対する判断を省略し、民訴四〇七条を適用し、全裁判官一致の意見をもつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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