大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)6号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人石井直作、中村作次郎の上告理由第三について。

原判決は、上告人と被上告人との間に、上告人を受任者とする原判示のごとき委任契約の成立したことを認定し、すすんで、上告人は右委任の趣旨にもとずいて、日立精機及び加藤製作所から合計一三、二二三個の軸受を買受けながら(この買上金額合計二八四、八〇一円五五銭)昭和二三年六月一四日被上告人に内四、五四六個を引渡したのみで、残八、六七七個の引渡を為さず、かつ、右委任の趣旨に反して日立航空機及び日立製作所からは合計六、三六五個の軸受の買上を実施しなかつた(この買上ぐべき金額は合計一五三、四五〇円六〇銭である)という事実を確定した上、さらに、上告人が日立精機及び加藤製作所から買上を実施した軸受の内、前記引渡未了のもの八、六七七個についてはすでに上告人の手許に存せず被上告人に対しこれを引渡すことが不可能であり、また、上告人が日立航空機及び日立製作所から買上ぐべき前記軸受合計六、三六五個については少くとも昭和二三年春頃までは買上を実施し得たにかかわらずこれを怠つたためすでに散逸して終い買上不能に帰したことがみとめられるとし、「さすれば、上告人は前記委任契約にもとずく債務の履行を怠つたものというべきであるから、被上告人に対しこれによつて生じた損害を賠償すべき義務あること勿論である」と判示している。

しかしながら、原判決は本件委任契約において上告人がいつまでに、本件軸受の買上を実施し、これを被上告人に引渡すべきか委任事務処理の履行期を確定していない。従つて如上原判示の事実関係によつてはいかなる時期において上告人が右契約上の債務不履行に陥つたかをあきらかにすることはできない。しかも原判決は損害賠償の数額の算定については甲第一三号証を資料として昭和二七年二月当時における本件軸受の価格を算出し、この価格を基準として、上告人が「軸受の買上を実施しながらこれを被上告人に引渡さないことによつて生じた履行に代る損害」を金一、七五五、五一八円一〇銭と算定し「軸受の買上を実施せずその債務不履行によつて生じた損害」を金一、二〇八、五六八円九〇銭と算定している。

しかしながら、原判決が本件損害算定の基準とした昭和二七年二月とはいかなる時期であるか、何が故に被上告人は本件上告人の不履行によつて昭和二七年二月当時の価格に相当する損害を蒙つたとすることができるかについては原判決は何ら説示するところはないのであつて、原判決はこの点について、理由不備の違法ありとせざるを得ないのである。

よつて論旨理由あり、その余の論旨について説示するまでもなく原判決を破棄すべきものとし、民訴法四〇七条を適用して主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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