大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

最高裁判所第二小法廷 昭和32年(あ)1544号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人金井賢範の負担とする。

理由

被告人金井賢範の弁護人藤本博光の上告趣意は、法令違反及び量刑不当の主張を出でず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお、第一審判決の不定期刑を第二審判決で定期刑に変更する場合において、両者の刑の軽重は、右第一審判決の不定期刑の中間位を標準とし、これを定期刑の刑期と比較対照して、その長い方を重いとする、いわゆる中間位説に従って決すべきものであり、不定期刑の長期若しくは短期を標準として定むべきでないことは、当裁判所の判例とするところである。昭和二五年三月一五日大法廷判決、刑集四巻三号三三五頁及び同二九年一月二〇日大法廷判決、刑集八巻一号四一頁各参照。ところで、被告人金井賢範に対する本件第一審判決の不定期刑は、懲役五年以上八年以下であるから、その中間位は六年六月であり、原審判決の定期刑は懲役五年であるから、その両者の刑の軽重を比較すると、原審の刑は、第一審の刑より軽いのである。されば、原審が第一審の科刑を過重に失するものと認めて、第一審判決を破棄し、懲役五年の刑を言渡したのは、適法であるというべく、両者の科刑がその軽重を同じくするものであるとの所論は、採用することができない)。

被告人上岡忠昭の弁護人小城戸良三の上告趣意は、違憲をいうのであるが、仮に本件原審の裁判が、憲法第三七条第一項にいわゆる裁判の迅速を欠いたとしても、その故をもって原判決を破棄すべき理由とすることのできないことは、すでに当裁判所の判例とするところであって(昭和二三年一二月二二日大法廷判決、刑集二巻一四号一八五三頁、同二四年三月一二日第二小法廷判決、刑集三巻三号二九三頁各参照)、論旨は刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条、一八一条(被告人金井賢範につき)により主文のとおり判決する。

この判決は被告人金井賢範の弁護人藤本博光の上告趣意第一点に対し裁判官藤田八郎同奥野健一の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。

藤田裁判官、奥野裁判官の被告人金井賢範の弁護人藤本博光の上告趣意第一点に対する補足意見は次の通りである。

被告人金井賢範に対する原審判決の定期刑は懲役五年であり、同被告人に対する第一審判決の不定期刑は懲役五年以上八年以下であって、前者の場合は五年を超えて懲役に服することなきに対し、後者の場合は五年を超えて懲役に服する可能性があるから、前者の刑は後者の刑より軽いことは明白である。よって所論は理由ない。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com