大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(オ)612号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由第一ないし第三点について。

論旨は、本件売買の目的たる豚肉は、被上告組合連合会の傘下農業協同組合の組合員の生産にかかるものであり、その代金は、実質的経済的に観て、民法一七三条一号にいわゆる生産者が売却した産物の代価と解すべきものと主張する。

しかし、原審は、本件豚肉が被上告組合連合会の傘下農業協同組合の組合員の生産にかかることおよび本件契約の実質上経済上の権利義務者が右の者であることは、これを認めるべき証拠がないと判示しているのであり、また所論の如く特段の事情なき限り、これを推定しなければならないものではないから、この点の論旨は、原審の認定にそわない事実を前提とするものであつて、採るをえない。のみならず、仮りに所論の如く本件豚肉が組合員の生産に係るものであるとしても、本件販売契約の当事者たる売主は、被上告組合連合会であつて、その生産者ではない。従つて被上告組合連合会の有する本件販売代金債権は民法一七三条一号の生産者の売却した産物の代価に当らないと解した原審の判断は相当である。論旨は、ひつきよう原審の事実認定を非難し、または、原審の認定にそわない事実を前提とする主張であつて採用することはできない。

同第四ないし第六点について。

論旨は、組合の事業活動は、すべてその組合員自体の営利を目的とする生産ないし消費等の経済活動の代行的性格を帯びるから、組合の事業活動もまた営利活動であり、少くとも組合の外部的活動に関しては、商法及び商法施行法中商人に関する規定を準用し、民法一七三条の解釈にあたつては、被上告組合連合会はこれを卸売商人に準ずるものとして取り扱うべきであると主張する。

しかし、農業協同組合法によれば農業協同組合は、その行なう事業によつて組合員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行なつてはならないのであつて(同組合法八条)、それゆえにまた、同法には、旧産業組合法五条のごとき規定は設けられていないのである。したがつて、組合の事業は、商法上の営業ではなく、組合の行為が商人の営業のためにする行為として商行為となるものではないといわなければならない。されば、農業協同組合につき、商法および商法施行法中商人に関する規定を準用することはできないのであつて、被上告組合連合会を民法一七三条一号にいわゆる卸売商人に準ずるものとすることもできないといわなければならない。論旨は、原審の認定にそわない事実を前提とし、ないし独自の見解をもつて原判決を非難するものに帰し、採用することはできない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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