大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(あ)542号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人国正博の弁護人久末直二の上告趣意について。

所論第一は、単なる事実誤認の主張であり(所論の調書が任意性を欠くものとは認められない)、同第二は、原判決の認定しない事実を前提とする判例違反の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

職権をもって調査すると、原判決は、第一審判決判示第四の(二)の事実につき、その現金一万円の授受は、被告人国正博とともに坪江地区の選挙運動者に第一審判決判示の趣旨の金員を供与することを共謀した第一審共同被告人三上正一が、更に酒井元由と同旨の共謀を遂げ、その準備として同人に供与資金を手交したものであることが明らかであるから、右は供与の共謀者間における資金の授受たるにとどまり、供与罪はもとより交付罪にも当らず、従って事前運動罪にも該当しないのであって、第一審判決がこれに罰則を適用したのは、事実を誤認し、ひいては法令の適用を誤ったものであると論じながら、被告人国正には、他に有罪に問擬されるべき幾多の供与罪が存するから、右事実誤認、法令適用の誤は判決に影響を及ぼさないとして控訴を棄却した。しかし併合罪として起訴された数個の公訴事実の一部について無罪と認めるときは、判決主文において一部無罪の宣告をすべきものであるから、第一審判決判示第四の(二)の点について無罪と認めながら、これを有罪とした第一審判決の事実誤認、法令適用の誤が判決に影響を及ぼさないとして控訴を棄却した原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令違反があるけれども、原判決が無罪と認めた第一審判決判示第四の(二)の点は、第一審判決が判示第一、第四の(一)(二)、第五において認定した被告人の延三二名に対する三二回、合計四二万円の供与及び交付の違反行為中の、僅か一名に対する一回、一万円の交付行為に過ぎないから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。

被告人山田繁理の弁護人久末直二の上告趣意について。

所論第一及び第二の一は、単なる事実誤認の主張であり、同第二の二のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例は本件と事案を異にし適切でなく、その他の点は法令違反の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三九六条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

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