大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

最高裁判所第二小法廷 昭和61年(あ)688号 決定

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中一八〇日を本刑に算入する。

理由

被告人本人の上告趣意一は、単なる法令違反の主張、同二は、事実誤認の主張、その余は、違憲をいうような点を含め、すべて実質は量刑不当の主張であり、弁護人世利新治の上告趣意は、憲法三一条違反をいう点を含め、実質は刑法二二五条の二にいう「近親其他被拐取者の安否を憂慮する者」の解釈適用に関する単なる法令違反の主張及び量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、所論にかんがみ、職権をもって判断するに、刑法二二五条の二にいう「近親其他被拐取者の安否を憂慮する者」には、単なる同情から被拐取者の安否を気づかうようにすぎないとみられる第三者は含まれないが、被拐取者の近親でなくとも、被拐取者の安否を親身になって憂慮するのが社会通念上当然とみられる特別な関係にある者はこれに含まれるものと解するのが相当である。本件のように、相互銀行の代表取締役社長が拐取された場合における同銀行幹部らは、被拐取者の安否を親身になって憂慮するのが社会通念上当然とみられる特別な関係にある者に当たるというべきであるから、本件銀行の幹部らが同条にいう「近親其他被拐取者の安否を憂慮する者」に当たるとした原判断の結論は正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 香川保一 裁判官 牧 圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島 昭 裁判官 林 藤之輔)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com