大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

札幌地方裁判所 平成8年(わ)225号 判決

裁判所書記官

藤原克彦

(被告人)

法人の名称 株式会社角野鉄工所

本店所在地

北海道苫小牧市字勇払一五七番地一〇

代表者の氏名

角野弘

代表者の住居

同市三光町二丁目二五番一二号 スプリングハイム新生台八〇二号

氏名 角野弘

年齢

昭和八年一〇月二九日生

本籍

同市新中野町二丁目一〇番

住居

同市三光町二丁目二五番一二号 スプリングハイム新生台八〇二号

職業

会社役員

主文

被告人株式会社角野鉄工所を罰金一四〇〇万円に、被告人角野弘を懲役一年に処する。

被告人角野弘に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人株式会社角野鉄工所は(以下「被告人会社」という)は、北海道苫小牧市字勇払一五七番地一〇に本店を置き、機会装置・タンク類・配管の設計・製作・据付け等を目的とする資本金三五〇〇万円の株式会社であり、被告人角野弘(以下「被告人角野」という)は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人角野は、被告人会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上げの一部を除外し、賃金給料・外注加工費を水増し計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が七四三五万八八三七円あったにもかかわらず、同年五月二八日、同市旭町三丁目四番一七号苫小牧税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六七七万四一二二円でこれに対する法人税額が一七二万〇五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第三一号の1)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二六九四万八〇〇〇円と右申告税額との差額二五二二万七五〇〇円を免れ、

第二  同年四月一日から平成五年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が六八〇一万四二五九円あったにもかかわらず、同年五月二八日、前記苫小牧税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一五一四万九五〇五円でこれに対する法人税額が四八八万七六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二四七一万一九〇〇円と右申告税額との差額一九八二万四三〇〇円を免れ、

第三  同年四月一日から平成六年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が三五一二万一九二九円あったにもかかわらず、同年五月三〇日、前記苫小牧税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一五九六万二七六九円でこれに対する法人税額が五一一万六七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一二三〇万一三〇〇円と右申告税額との差額七一八万四六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

注 各証拠に付した番号は、証拠等関係カード(検察官請求分)における請求番号である。

判示事実全部について

一  被告人角野の当公判廷における供述

一  被告人角野の検察官に対する供述調書(乙10)及び大蔵事務官に対する各質問てん末書(乙2ないし7、9)

一  村田国夫(甲22)及び大場靜(甲24)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の「売上調査書」(甲2)、「給料賃金調査書」(甲3)、「外注加工費調査書」(甲4)、「交際費調査書」(甲5)、「期首仕掛品棚卸高調査書」(甲6)、「期末仕掛品棚卸高調査書」(甲7)、「福利厚生費調査書」(甲9)、「旅費交通費調査書」(甲10)、「交際費調査書」(甲11)、「租税公課調査書」(甲12)、「支払手数料調査書」(甲13)、「受取利息調査書」(甲14)、「雑収入調査書」(甲15)、「損金の額に算入した道民税利子割調査書」(甲18)、「交際費損金不算入額調査書」(甲19)及び「未払事業税調査書」(甲20)と題する各書面

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲25)

一  検察事務官作成の電話通信書(乙12)

一  札幌法務局苫小牧支局登記官認証の商業登記簿謄本(乙11)

判示第一、第三の事実について

一  被告人角野の大蔵事務官に対する質問てん末書(乙8)

判示第一の事実について

一  門脇幸一の検察官に対する供述調書(甲21)

一  大蔵事務官作成の「退職金調査書」と題する書面(甲8)

一  押収してある確定申告書一綴(平成八年押第三一号の1)(甲26)

判示第二、第三の事実について

一  大蔵事務官作成の「支払利息調査書」(甲16)及び「雑損失調査書」(甲17)と題する各書面

判示第二の事実について

一  後藤勝定の検察官に対する供述調書(甲23)

一  押収してある確定申告書一綴(同押号の2)(甲27)

判示第三の事実について

一  押収してある確定申告書一綴(同押号の3)(甲28)

(法令の適用)

被告人両名の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項(被告人会社については、更に同法一六四条一項)に該当するところ、被告人角野について各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法(平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法をいう。以下同じ)四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で罰金一四〇〇万円に、被告人角野については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一年にそれぞれ処し、被告人角野に対し情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人会社の代表取締役である被告人角野が、被告人会社の法人税を不正に免れようと企て、売上除外、外注費の水増し等の方法により、連続する三事業年度において、被告人会社の法人税合計五二二三万六四〇〇円を免れたという事案である。

ほ脱額は右のとおり多額であり、ほ脱率も通算で約八二パーセントと高率であること、犯行の態様は、売上除外、売上期ずらし、水増し計上、賞与の過大計上等多岐にわたっているが、それらの偽装をするため、簿外預金を利用したり、水増し計上においては、取引先に働きかけて水増し請求させ、一旦全額支払いをした上で、後日架空名義の領収書と引換えに水増し分を返還してもらったり、売上期ずらしにおいては、請求書、領収書を改竄するなどその手口は計画的かつ巧妙であること、犯行の動機は、利益を被告人角野の手元に温存し、会社の経営の安定化を図るためや、昭和六〇年の被告人会社の和議の際失った被告人角野個人の財産を取り戻すためなどというのであるが、これは結局のところ、被告人角野及び被告人会社の不正な利益追求のためというほかはなく、脱税による蓄財を自宅マンションやゴルフ会員権の購入資金に流用していたことも含め、酌量の余地はないことなどからすれば、被告人らの刑事責任は重い。

しかし他方、本件発覚後、被告人会社においては各事業年度について修正申告をなし、重加算税、延滞税は未納であるものの本税は納付していること、被告人角野は当初から本件犯行を素直に認め反省の情が顕著であること、被告人角野には前科がないことなど、被告人らにとって有利な事情も存する。

よって、以上の事情を総合的に考慮し、それぞれ主文掲記の刑を科した上、被告人角野についてはその刑の執行を猶予するのを相当として、主文のとおり判決する。

(検察官 佐藤美由紀)

(弁護人 小門立(被告人両名))

(求刑 被告人会社につき罰金一六〇〇万円、被告人角野につき懲役一年)

(裁判長裁判官 矢村宏 裁判官 手塚稔 裁判官 坂田威一郎)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com