大判例

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札幌地方裁判所 昭和47年(む)46号 決定

被疑者 出口千春

決  定

(事件名、住居、職業、氏名略)

右の者に対する頭書被疑事件についての勾留請求につき、昭和四七年一月二二日札幌地方裁判所裁判官がなした右請求を認容する旨の裁判に対して、弁護人から適法な準抗告の申立がなされたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

原裁判を取り消す。

本件勾留請求を却下する。

理由

一、 (申立の趣旨及び理由)

本件準抗告申立の趣旨及び理由は、弁護人提出の準抗告申立書記載のとおりなので、ここにこれを引用する。

二、 (当裁判所の判断)

一、本件記録によれば被疑者が勾留状記載の罪を犯したと疑うに足る相当の理由がありかつ刑事訴訟法六〇条一項一号ないし三号に該当することと一応認められる。

二、検察官の提出にかかる被疑者に対する同被疑者が昭和四六年一〇月二一日札幌市内において行なわれた反戦青年委員会主催の一〇・二一全北海道総決起集会の集団示威運動に際し多数の学生と共に北海道大学正門附近において兇器を準備して集合しかつその制止に当つた警察官に暴行を加えてその公務の執行を妨害した被疑事件(以下一〇・二一事件という)の記録並びに本件記録によれば被疑者は一〇・二一事件について昭和四七年一月三日逮捕され同月五日に右事件につき勾留を請求されこれに基き勾留状が発布され、かつ同月一三日右の勾留期間は同月一九日迄延長されたこと、他方被疑者は本件被疑事実について、右勾留期間の満了に伴い右同日釈放されると同時に逮捕され、同月二二日検察官の勾留請求にもとづき同日勾留状が発布されて再度勾留されるに至つたこと、本件に関する逮捕状の請求は同月一三日になされたものであり当時被疑者は前記のとおり一〇・二一事件の被疑事実によつて逮捕、勾留中であつたにもかかわらず本件被疑事実に関する逮捕状請求書には刑事訴訟規則一四二条一項八号所定の「現に捜査中である他の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の発布があつたときは、その旨及びその犯罪事実」が記載されなかつたこと、以上の事実が認められる。加えて前記各記録によれば前記一〇・二一事件についての勾留中既に同月一一日には同被疑者が本件の被疑者でもあることが警察官検察官において判明していたこと、ならびにこれに関する捜査も現になされていたこともうかがわれるのであつて、これと前記一〇・二一事件に関する捜査の進展状況を総合して考えると検察官は右一〇・二一事件についての被疑者の勾留期間中に本件についても捜査を遂げることができたと認められる。それにも拘らず前記のように一〇・二一事件について被疑者を釈放すると同時に本件について被疑者を再度逮捕するに至つたものであつて、この事実と前記の逮捕手続の違法とを総合して考えると本件被疑者の逮捕及び勾留は違法であるといわざるをえない。よつて検察官の本件勾留請求を認容した本件勾留はその取消を免れない。

三、(結論)

よつて本件準抗告の申立は、理由があるので、刑事訴訟法四三二条、四二六条二項により原決定を取り消したうえ、主文のとおり決定する。

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