大判例

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札幌地方裁判所 昭和49年(む)725号 決定

被疑者 栗原登一

主文

本件申立を棄却する。

理由

本件準抗告申立の趣旨および理由は弁護人提出の準抗告申立書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

よつて判断するに、刑事訴訟法三九条一項に定める弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下、弁護人等という。)の接見交通の権利はいわゆる弁護人等の固有権であると解されているところ、本件で問題となつている書籍の差入は、右条項において書類若しくは物の授受の権利として、立会人なくして接見する権利(これが弁護人等以外の者が代ることのできない一身専属的な権利であることは明らかである。)とならんで規定されており、その規定の文理上も両者を別異に解する根拠は何もないこと、右書類等の授受に関しては、同法四〇条、同規則三一条のような明文の規定が置かれていないこと、その他同法八〇条、八一条の規定の趣旨等を考慮すれば、被疑者の防禦権および弁護権を斟酌しても、同法三九条一項が、単なる意思表示の伝達機関にすぎない使者・使用人であつてこれらの者が弁護人等に代つて右書類等の授受をする権利を有することまで容認しているものと解することはできない。

右によれば、申立人である弁護人がその事務所に勤務する亀井秀樹を使者として申立の趣旨記載の書籍の差入を求めたところこれを拒否されとして当該司法警察員の右拒否処分が違法であるとする本件準抗告の申立は理由がないので、同法四三二条、四二六条一項により棄却することとして、主文のとおり決定する。

申立の趣旨

札幌東警察署平岡刑事が昭和四九年一〇月二九日午後二時四〇分ごろ、申立人の栗原登一に対するアイヌ民族誌一冊差入を拒否した処分を取消す。

との裁判を求める。

申立の理由

申立人は札幌東警察署に勾留されている被疑者栗原登一の弁護人である。

同被疑者は昭和四九年一〇月二八日夕弁護人に接見を求めアイヌ民族誌一冊の差入を希望したので弁護人は本日午前中使いのものを派遣してこれを入手(A四版八〇〇頁定価八〇〇〇円のもので入手は困難である)した。

申立人は日中は各種事件でほとんど裁判所に行ききりで差入のために東署に赴く時間はない。

別件野上ふさ子につき、昭和四九年一〇月二三日夜弁護人は同被疑者に接見をするため検察官に時間の指定を求めたところ時間外であるという理由で拒否された。

ちなみに弁護人の本日、明日の日程は別添日誌のとおりである。そこで申立人事務所に勤務する亀井秀樹を使者として申立の趣旨記載の時刻に差入に赴かせたところ平岡刑事は使者とか代理人であればだめであるという理由で差入を拒否した。刑訴規則三一条には弁護人は裁判長の許可を受けて自己の使用人等に書類等のえつらん謄写をさせることができるとされているが現実には一〇〇%明示の許可なしに使用人が右行為を行つている。これは弁護人が適切有効に弁護人活動をするために必要であるからである。

本件の差入については、謄写、えつらんよりもより簡易な事実行為であつて、弁護人の使用人が使者として行動したという一事で差入を許否することは弁護権を不当に制限する結果となり明らかに不当な処分であるから刑訴四三〇条二項、三九条各号によりこの申立をする。

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