大判例

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札幌高等裁判所 昭和24年(新を)350号 判決

控訴人 被告人 蔡平黙

弁護人 堀井久雄

検察官 伊東勝関与

主文

原判決中被告人蔡平黙に関する部分を破棄する。

被告人を懲役五月及び罰金三万円に処する。

被告人において右罰金を完納することができない場合は金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。但し此の裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用中原審において証人鈴木敏夫に支給した分は被告人及び原審相被告人斎藤正、同金京の連帯負担とし当審における国選弁護人小林盛次に支給した分は被告人の負担とする。

理由

弁護人掘井久雄の控訴趣意は別紙記載のとおりである。

原判決が情状により昭和二十四年法律第四十三号酒税法等の一部を改正する法律附則第二十一項により同法による改正前の酒税法第六十条第二項に従い懲役及び罰金を併科したこと並びに刑法第六十三条第六十八条第三、四号により従犯減軽をなしたことは所論のとおりである。しかしながら右刑の併科と減軽(尤も罰金について減軽することができないことは後記説示のとおりである)との間に何等矛盾はないのみならず本件記録を精査するも原判決の量刑が不当であるという理由を発見することができないから論旨は理由がない。

職権を以て按ずるに前示酒税法第六十六条によると同法第六十条第一項の罪を犯した者に懲役刑を科する場合は刑法第六十三条の適用のあることは明白であるが懲役及び罰金を併科する場合、両者につき、なお刑法第六十三条の適用があるかどうかは解釈上疑問の存するところであるが、この場合も前示酒税法の精神及び同法第六十六条の文言から考えて見て懲役刑についてのみ適用があり罰金刑についてその適用がないものと解するを相当とする。従つて原判決が罰金刑についても刑法第六十三条第六十八条第四号を適用し従犯減軽をなしたのは法令の適用を誤つたものでその誤は判決に影響を及ぼすこと明白であるからこの点において原判決は破棄を免れない。

よつて刑事訴訟法第三百九十七條により原判決を破棄し同法第四百條但書に則り更に判決する。

原判決の認定した事集に法律を適用すると被告人の原判示所為は、昭和二十四年四月三十日法律第四十三号酒税法等の一部を改正する法律附則第二十一項により同法による改正前の酒税法第六十條第十四條刑法第六十二條第一項に該当するところ情状により右酒税法第六十一條第二項により懲役及罰金を併科し、刑法第六十三條第六十八條第三号に則り、懲役刑につき従犯減軽をなした刑期及所定罰金額(罰金等臨時措置法第二條第一項をも適用)の範囲内において被告人を懲役五月及び罰金三万円に処し、右罰金を完納することができないときは刑法第十八條に従い金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し情状により同法第二十五條に則りこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し訴訟費用中原審において証人鈴木敏夫に支給した分は刑事訴訟法第百八十一條第一項第百八十二條に従い被告人及び原審相被告人斎藤正同金京の連帯負担とし当審における国選弁護人小林盛次に支給した分は同法第百八十一條第一項に則り被告人の負担とすることゝし主文のとおり判決する。

(裁判長判事 黒田俊一 判事 猪股薫 判事 鈴木進)

弁護人掘井久雄控訴趣意

原判決は刑事訴訟法第三百八十一條に該当するものと思料せらる。

即ち原判決はその理由前段に於て「控訴申立人は韓国人中村某が政府の免許を受けず昭和二十四年一月二十日頃から二月四日頃まで被告人の肩書居宅地下室で米麹及水を原料として焼酎二斗を製造するに当り何れもその情を知り乍ら云々――被告蔡平黙は作業の手伝をなし云々――犯行を助けてこれを幇助したものである。」となし、理由後段に於ては「従犯の減軽をなす――と言い乍ら酒造僅か二斗のものに対し、懲役刑と罰金刑とを併科したのはその理由後段に言う「何れも情状によつて酒税法第六十條第二項を適用して懲役と罰金とを併科するので云々――とはその理由に於て彼此矛盾するものと思考せられ、正に量刑は不当であると申すに充分な理由ありと思う。

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