大判例

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札幌高等裁判所 昭和28年(ラ)1号 決定

抗告人 福島藤太郎

訴訟代理人 宮岸友吉

相手方 沢田信太郎

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨は、原決定を取消しさらに相当の裁判を求めるというにあり、その理由の要旨は別紙記載のとおりである。

よつて判断するに、相手方が相手方を申請人とし、上田久平、橋清一を被申請人とする札幌地方裁判所小樽支部昭和二十七年(ヨ)第九三号仮処分決定に基き昭和二十七年十二月六日その執行をなしたので、抗告人は相手方を被告として同裁判所に対し民事訴訟法第五百四十九条による第三者異議の訴を提起し且つ同法第五百四十七条により右仮処分執行の取消決定を申請したところ、原裁判所は右申請の内容について実質的に審理をなした上右申請を理由なしとして却下したので、抗告人はこれに対し即時抗告をなしたものである。

おもうに民事訴訟法第五百四十七条の裁判は異議の訴の裁判をして異議者保護の実績をあげしめる目的を有する仮りの裁判であつて、異議の訴の裁判において取消、変更もしくは認可されるものであるから、これに対し独立してその当否を争わせることは単にその必要がないばかりでなく、かえつてその弊害として異議の訴の裁判がその目的を失うにいたる危険すら存するのである。したがつて民事訴訟法第五百四十七条の裁判に対しては同法第五百五十八条の即時抗告を許さないものと解すべきである。而してかく解する以上、いやしくも申請の内容について実質的に審理判断されたものであれば、強制執行を停止すべきことを命ずる裁判、強制執行を続行すべきことを命ずる裁判、またはすでになした執行処分を取消すべきことを命ずる裁判のみならず、申請を理由なしとして却下した裁判に対してもまた即時抗告を許さないものといわなければならない。

そうとすれば、本件抗告は不適法であるからこれを却下し、民事訴訟法第四百十四条、第三百八十三条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 浅野英明 裁判官 臼居直道 裁判官 福原義晴)

抗告の理由

一、原審では抗告人の本件取消決定申請却下の理由として、本件土地上の家屋が焼失したことのみにより賃貸借は消滅したものと即断することは許されないし、被申請人即ち相手方が本件土地の賃借人なるやの疑いもあると判示される。然し抗告人(申請人)提出の疏第一七、一八、二一号証によれば本件土地の賃借人も焼失建物の所有者も二つながら申請外の沢田市郎(相手方の長男)であることが明かにされて居り、相手方本人審訊によつてこれを否定すべき資料は何も出ていないのである。従つて本件建物焼失後の土地賃借権が仮令相当期間継続するものとするもその賃借権者は明らかに相手方ではない。

然るに原審は無権利者たる相手方に飽まで本件仮処分執行の継続を許容せられるものであつて、それは前記事実誤認に基ずく不当のものである。

二、又抗告人は昭和二十七年拾弐月弐拾四日内容証明郵便で真正の建物所有者、土地賃借人であつた前記沢田市郎に対し、土地賃貸借契約の内容による契約解除の通告を発し、それは同人に対し同年十二月二十五日到達している為め同人も既に本件土地賃借人の地位を失つているものであつて、それは当審に於て疏明し得るところである。

三、以上の次第であるから速かに抗告人の本件取消決定申請を許容せられたい。

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