大判例

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札幌高等裁判所 昭和54年(け)2号 決定

主文

本件異議申立を棄却する。

理由

一  本件異議申立の理由は、弁護人山形道文作成名義の異議申立書、補充異議申立書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

二  そこで審案するに、当裁判所も、頭書の控訴棄却決定(以下、原決定という。)の理由欄の説示と同一の理由により、弁護人山形道文名義でなされた本件控訴申立は、被告人のために控訴申立をする権限を有しない者によつてなされた申立であつて、法令上の方式に違反した不適当なものであるから、本件控訴は、棄却すべきものであると判断するものであるが、本件異議申立の理由に対する当裁判所の判断は、次のとおりである。

1  本件異議理由の所論第一点は、本件は、被告人が原審判決宣告後、弁護人山形道文に控訴審における弁護を依頼し、同弁護人において被告人を代理して被告人のために本件控訴申立をなしたものであり、右事実は、一件書類によつて認定し得るから、本件控訴申立は適法であるというべきところ、原決定が刑事訴訟法三八五条一項を適用してこれを棄却したのは、同条の解釈適用を誤つた違法がある、というにある。しかしながら、前叙のとおり原審判決宣告日の翌日である昭和五四年四月一九日被告人の妻中山サチ子の選任に係る弁護人山形道文作成名義の本件控訴申立書が、同月二〇日原審裁判所に提出されているのみであつて、本件記録を精査しても、所論の事実は認められない。従つて、本件控訴申立は、無権限者による控訴申立であり、同条所定の法令上の方式に違反したことが明らかな場合に該当するものというべきである。よつて、論旨は採用しない。

2  同所論第二点は、原決定は、同法三五五条の解釈適用を誤つた違法がある、というにある。しかしながら、原審判決宣告後に選任された弁護人は、同条の文言及び立法趣旨に照らし、同条所定の「原審における弁護人」に該当しないものと解すべきことは前叙のとおりであるから、論旨は採用しない。

3  同所論第三点は、本件控訴申立は、本件控訴期間経過後の同年五月一八日当裁判所に被告人と弁護人の連署に係る弁護人選任届が提出されたことにより、補正的に追完され、適法となるに至つたものと解すべきである、というにある。しかしながら、上訴の申立権者、申立期間、上訴提起の方式等上訴申立に関する法条は、その重大な法的効果に鑑み、厳格に解釈適用されるべきものであり、かかる訴訟行為につき、所論のようないわゆる遡及的追完を認めることは到底許されない。よつて、論旨は採用しない。

4  同所論第四点は、原決定は、憲法三二条、三七条三項、刑事訴訟法一条の解釈適用を誤つた違法がある、というにあるが、原決定の理由が正当であることは前叙のとおりであり、何ら右法条に違反するところはないから、論旨は採用しない。

三  以上説示のとおり本件控訴を不適法として棄却した原決定は相当であり、本件異議申立は理由がないから、刑事訴訟法三八五条二項、四二八条三項、四二六条一項によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

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