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東京地方裁判所 平成4年(ワ)13478号 判決

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

理由

一  請求原因1及び2の事実は当事者間に争いがない。

二1  同3の(一)の事実は当事者間に争いがない。

2  同3の(二)の事実は原告と被告銀行及び被告保証協会間では争いがなく、被告廣山は明らかに争わないから自白したものとみなす。

三1  同4の事実は、原告と被告保証協会間では争いがなく、被告廣山は明らかに争わないから自白したものとみなす。

2  同4の事実について原告と被告銀行間について判断する。

(一)  同4のうち、「右裁判所は、本件土地全てに本件建物のための法定地上権が成立することを明示したうえで、またそれを前提に不動産評価を行つた」か否かについて検討する。

成立に争いのない<証拠略>によれば、本件建物競売において本件土地については、本件土地の全部について法定地上権が成立するとして法定地上権相当額を評価し、物件明細書にも本件土地につき法定地上権成立と記載して競売に付していることが認められる。

したがつて、右事実が認められる。

(二)  その余の事実は当事者間に争いがない。

四1  同5の事実は、原告と被告保証協会間では争いがなく、被告廣山は明らかに争わないから自白したものとみなす。

2  同5の事実について原告と被告銀行間について判断する。

(一)  同5のうち、「右裁判所は、本件土地全てに本件建物のための法定地上権が成立していることを明示したうえで、またそれを前提に不動産評価を行つた」か否かについて検討する。

成立に争いのない<証拠略>によれば、本件土地競売において本件土地を評価するに際し、本件土地の全部について法定地上権が成立していることを前提にして本件土地の価格を評価し、物件明細書にも本件土地につき本件建物のために法定地上権が成立する旨記載して競売に付していることが認められる。

したがつて、右事実が認められる。

(二)  その余の事実は当事者間に争いがない。

五  同6の事実について

1  成立に争いのない<証拠略>によれば、請求原因6の(一)のうち訴外会社は、平成二年東京地方裁判所に対し、原告を被告として本件土地の地代を定める裁判を提起したこと及び同(二)ないし(四)の事実が認められ、その余の事実を認める証拠はない。

2  本件土地について本件建物のための成立する法定地上権の範囲について検討する。

(一)  成立に争いのない<証拠略>によれば次の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(1) 本件建物競売にかかる物件明細書及び不動産評価書において、本件土地にはその全部につき法定地上権が成立するものとして競売物件の表示及び評価が行われた。<省略>

(2) 被告廣山は、昭和五一年一二月七日本件土地を購入した。本件土地は、ほぼ二等辺三角形をなしているが、被告廣山は本件建物を新築後の昭和五三年、別紙図面の点イ、オを直結した線上にブロックを三段積み、その上にフェンスを設置した。

被告廣山は、昭和五四年二月ころ、別紙図面斜線部分の地ならしをして車が一台入れるような駐車場にし、自己の車の駐車場として利用していたが、昭和五七年ころから妻と別居し、本件建物は一時空き家となつた。被告廣山が妻と離婚した昭和五八年から、別れた妻と息子は、本件建物に住み、別れた妻は、別紙図面斜線部分を他人に駐車場として貸していた。

(二)  右(一)で認定した事実によれば、本件建物競売においては本件土地全体に法定地上権が成立するとして競売が行われているが、被告廣山は、昭和五三年、本件土地の別紙図面イ、オを直結した線上にブロックを三段積み、その上にフェンスを設置し、別紙図面斜線部分の土地を本件土地の他の部分と区画して使用し、かつ、別れた妻と息子が本件建物に住むようになつてから、別れた妻は、別紙図面斜線部分を他人に駐車場として貸していたのであるから、別紙図面斜線部分は本件建物の利用のために必要な部分とは認められず、別紙図面斜線部分には本件建物のために法定地上権は成立していない。

六  同7の事実について

1  前記三及び四の認定事実によれば、請求原因7の第一段の事実が推認できる。

2  成立に争いのない<証拠略>によれば、同第二、第三段の事実が認められ、右事実に基づき地上権代金相当額を計算すると第二段の計算のとおりになる。

3  前記2の事実により、面積割合によつて面積不足分の価格を原告の考え方により求めると、同第四段のとおりになる。

七1  同8の第一段の事実は当裁判所に顕著である。

2  同第二段の事実について検討する。

(一)  原告と被告廣山間に争いがない。

(二)  成立に争いのない<証拠略>を総合すれば、本件土地の競売による配当(配当表作成時平成二年四月一一日)後の被告廣山の債務は約金八〇〇〇万円以上残つていることが認められ、右債務が支払われたことを認める証拠はない。

<証拠略>によれば、被告廣山は株式会社広山工務店の代表取締役であり、同会社は一年間の役員報酬として金五四〇万円計上しているが、同会社の役員は四人いる。

右事実によれば、被告廣山が役員報酬を得ているからといつて、被告廣山に前記債務を支払う資力があるとはいえず、被告廣山は無資力であると認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

八  原告は、本件建物の競売が民法五六八条二項、五六五条の数量指示売買である旨主張するので検討する。

1  本件建物競売における競売物件は、本件建物であり、本件建物のために本件土地に設定される法定地上権は競売物件ではない。しかし、本件建物競売においては、法定地上権は本件建物の競落代金が支払われたときに成立するが、法定地上権の成立は法律によつて法定されているから、法定地上権の成立要件を具備する場合には確実に建物に法定地上権が成立するから、建物の評価においては実質上法定地上権付建物として評価されている。したがつて、競売物件は建物であつても、法定地上権も競売物件と同様に取り扱うのが相当であるから、法定地上権についても民法五六八条二項、五六五条の数量指示売買の規定が類推適用されるものと解する。

2  ところで、法定地上権の成立の有無は、法定地上権成立要件の有無によつて決せられるが、その範囲は建物として利用するに必要な限度において認められるから、具体的事情に基づき判断されることになる。競売における裁判所の法定地上権の成立範囲についての表示は、執行裁判所の一つの見解にすぎず、具体的範囲は競売後の土地所有者と建物所有者との間で決せられることになる。したがつて、競売物件を購入しようとする買い受け人は執行裁判所の見解を一つの参考資料として当該競売事件の現況調査報告書、鑑定評価書、物件明細書等を検討し、自己の責任と判断において競売によつて設定される法定地上権の範囲を予測して入札に応ずるか否かを決することになり、競落後法定地上権の成立範囲が自己の予測と異なつていてもそれは自己の責任として処理されるべきものである。

3  しかし、右は競売において競売物件が数量指示売買と評価される状況で競売された場合に数量指示売買として扱うことまで否定するものでないことは、民法五六八条一項において同法五六五条が適用されることを明らかにしている事から明らかである。

4  そこで、本件建物競売が民法五六五条の数量指示売買であるか否かについて検討する。

(一)  民法五六五条の「数量ヲ指示シテ売買」とは、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が認められた売買を指称するものである。

法定地上権は、法定地上権が成立する土地の価値の一定割合として評価されるから、土地が競売物件の場合と同様に考えられる。一般に土地の売買において目的物を特定表示するのに、登記簿に記載してある字地番地目及び坪数をもつてすることが通例であるが、特段の事情がないかぎり、登記簿記載の坪数は必ずしも実測の坪数と一致するものではないから、売買契約において目的たる土地を登記簿記載の坪数をもつて表示したとしても、これでもつて直ちに売主がその坪数のあることを表示し、実際の土地の面積を確保するためのものではないと解するのが相当である(最高裁昭和四三年八月二〇日第三小法廷判決・民集二二・八・一六九二、同昭和六二年一一月一二日第一小法廷判決・金融法務事情No.一一九四--二八参照)。

(二)  前記認定事実に、<証拠略>によれば、本件建物競売においては本件土地面積を登記簿記載の平方メートル数をもつて表示し、本件土地の一平方メートル当たりの単価を求めたうえで右平方メートル数を乗じているのであり、登記簿記載の平方メートル数は本件土地を特定し、本件土地の価格を算定する手段にすぎず、数量を指示して売買したものとは認められず、右判断を覆す特段の事情は認められない。

九  以上の事実によれば、原告の請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 天野登喜治)

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