大判例

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東京地方裁判所 平成8年(ワ)18612号 判決

原告

高橋千秋

高橋静江

原告

テクダイヤ株式会社

右代表者代表取締役

小山悦雄

原告

アイテック株式会社

右代表者代表取締役

石原孝友

右四名訴訟代理人弁護士

高山征治郎

亀井美智子

中島章智

枝野幸男

高島秀行

森雅子

畑中鐵丸

被告

株式会社東京財資ゴルフ倶楽部

右代表者代表取締役

松野公一

右訴訟代理人弁護士

多比羅誠

森宗一

清水祐介

主文

一  被告が千葉県山武郡芝山町において建設中のゴルフ場開業の日から三年間を経過した日又は平成一五年六月二四日のいずれか早い日が到来したときは、被告は、原告らそれぞれに対し、各六四六万八〇〇〇円及びこれに対する右同日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その一を被告の負担とし、その余は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告高橋千秋に対し、二八〇〇万円及びこれに対する平成八年一〇月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は、原告高橋静江に対し、二八〇〇万円及びこれに対する平成八年一〇月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告は、原告テクダイヤ株式会社に対し、二八〇〇万円及びこれに対する平成八年一〇月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告は、原告アイテック株式会社に対し、二八〇〇万円及びこれに対する平成八年一〇月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5  訴訟費用は被告の負担とする。

6  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

被告は、ゴルフ場の企画、開発、造成、経営等を目的とする株式会社であり、「東京財資ゴルフ倶楽部」の名称で会員制ゴルフ事業(以下「本件ゴルフクラブ」という。)を営もうとしていた。

2  会員契約の締結

原告らはそれぞれ、被告との間で、本件ゴルフクラブについて左記のとおり会員契約(以下「本件各会員契約」という。)を締結し、被告に対し、右契約締結の日までに、右契約に基づき、入会金及び預託金の合計二八〇〇万円を支払った。

(一) 契約者 高橋千秋

契約日 平成三年一二月一一日

種類 個人正会員

入会金 二八〇万円

預託金 二五二〇万円

権利内容 優先的施設利用権及び預託金返還請求権

特約 預託金は会員の申出により即時に返還する

(二) 契約者 高橋静江

契約日 平成四年三月二七日

種類 個人正会員

入会金、預託金、権利内容及び特約(一)と同じ

(三) 契約者 テクダイヤ株式会社

契約日 平成四年四月二四日

種類 法人正会員

入会金、預託金、権利内容及び特約(一)と同じ

(四) 契約者 アイテック株式会社

契約日 平成四年二月三日

種類 法人正会員

入会金、預託金、権利内容及び特約(一)と同じ

3  ゴルフ場の完成遅延

被告は、平成三年八月ころから、同五年四月完成予定で、「東京財資ゴルフ倶楽部」という名称のゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)施設の建設工事に着工したが、完成予定時期である平成五年四月を三年以上経過した平成八年九月二五日(本件訴え提起の日)時点で、本件ゴルフ場施設は完成していない。

4  本件ゴルフ場の完成不能

のみならず、被告は、本件ゴルフ場施設を完成することができない状態にある。

5  会員契約の解除

原告らは、それぞれ、本件訴状をもって本件各会員契約を解除する旨の意思表示をし、右訴状は平成八年一〇月二一日被告に到達した。

6  よって、原告らは、それぞれ、被告に対し、本件各会員契約の解除に基づく原状回復請求として二八〇〇万円及びこれに対する契約解除の日の翌日である平成八年一〇月二二日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の一部である年五分の割合による金員の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし3の各事実は認める。

2  同4は争う。なお、被告は、原告らが被告の履行遅滞(ないしは債務不履行)を理由に本件各会員契約を解除して原状回復請求する限りでは、請求原因について特に争わない。

三  抗弁―和議認可決定

1  被告は、平成八年七月一八日、東京地方裁判所に和議開始の申立てを行い、同裁判所は、平成九年五月一六日、右申立てに基づき、別紙のとおりの和議条件(以下「本件和議条件」という。)で、和議を認可する旨の決定をした。

2  右決定は平成九年六月九日の官報により公告され、即時抗告申立て期間である同月二三日までに即時抗告の申立てがなかったことにより確定した。

3  したがって、被告は、本件和議条件の限度でのみ支払の義務を負うに過ぎない。

四  抗弁に対する認否

被告が平成八年七月一八日に東京地方裁判所に和議開始の申立てを行ったことは認める。

第三  証拠

本件訴訟記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

一  本件各会員契約の解除について

1  解除原因と解除の意思表示

請求原因1ないし3の各事実は当事者間に争いがなく、同5の事実は当裁判所に顕著である。

2  解除の効力

本件各会員契約は、会員による本件ゴルフ場の優先的施設利用権をその内容とするから、本件ゴルフ場施設が完成予定時期を大幅に経過しても完成していないことは、本件各会員契約上の被告の債務の履行遅滞にあたることは疑いがない。しかも、被告は「原告らが被告の履行遅滞(ないしは債務不履行)を理由に本件各会員契約を解除して原状回復請求する限りでは、請求原因について特に争わない。」旨を述べている。

そうすると、訴状による本件請求を催告とみて、それから相当期間が経過したとき、遅くとも本件口頭弁論終結時である平成九年七月二三日までには、本件各会員契約の解除の効力が発生していると考えることができる。

二  和議認可決定について

1  抗弁1及び2の各事実のうち、被告が平成八年七月一八日に東京地方裁判所に和議開始の申立てを行ったことは当事者間に争いがなく、その余の事実は、原本の存在及び成立に争いのない丙第一及び第二号証により、これを認めることができる。

2  そうすると、被告が抗弁において主張するとおりの和議認可決定が平成九年六月二三日の経過により確定し、その効力を生じたことにより、和議債権は実体法上本件和議条件に従ってその内容が変更されたことになる(和議法五七条、破産法三二六条一項)。

三  本件和議条件と本件各会員契約の解除について

1  原告らに適用されるべき和議債権の種別

(一)  本件和議条件は、被告に対して預託金返還請求権を有する債権者(以下「預託金債権者」という。)に対しては、将来の一定時期に退会申出があったときに預託金の二五パーセント及び入会金の六パーセントを支払う旨を定めている(和議条件第二項の1及び2)が、原告らのように会員契約の解除による原状回復請求として預託金及び入会金の返還を求めた場合の債権者(これも広義の「預託金債権者」ということができる。)の取扱いについては、特に明示的には触れていない。

(二)  しかし、本件和議条件が、右のような債権者に対しては、本件和議条件第二項の4に定められた通常の和議債権者として債権の六パーセントの支払しか行わないという趣旨であるとすると、同じように被告との間に会員契約を締結していながら、契約を解除した会員は退会申出をした会員に比べて極めて不利な取扱いを受けることになり、あまりに不合理である。

(三)  しかも、右の契約解除のような事態が極めて特殊の場合であることを考えると、本件和議条件は、原告らのように既に会員契約を解除した預託金債権者についても、和議条件第二項の1及び2に従って預託金相当額の二五パーセント及び入会金相当額の六パーセントの支払を受けられ、その余の元利金を免除する(本件和議条件第三項の1)と定めているものと解するのが相当である。

2  権利行使手続

(一)  既に会員契約を解除した預託金債権者が改めて退会申出を行うことは論理的にありえない。また、本件和議条件が預託金債権者について退会申出を要求しているのは、会員契約を解消して和議条件に従った金員の支払を受けるのか、それとも会員契約を維持するのかを預託金債権者(会員)に選択させ、その意思を尊重しようとする趣旨であると解せられるところ、既に会員契約を解除した預託金債権者については、その意思が明確に表明されているので、意思確認のための退会申出に準じた手続はもはや必要がない。

なお、既に会員契約を解除した預託金債権者の場合には、わざわざ被告から本件ゴルフ場開業の連絡通知がなされることは通常期待できないから、右債権者が適時に開業の事実を了知して本件和議条件所定の退会申出に準じた手続をとることは期待できないという面もあるといわなければならない。

(三) そこで、本件和議条件は、原告らのように既に会員契約を解除した債権者については、退会申出に準ずる何らの手続をとることなく、本件和議条件第二項の1に定める「本件弁済期日」において預託金相当額の二五パーセント及び入会金相当額の六パーセントの支払を受けられると定めているものと解するのが相当である。

四  結論

以上によれば、原告らの請求は、被告に対してそれぞれ六四六万八〇〇〇円及びこれに対する本件弁済期日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を適用し、仮執行宣言の申立てについては、相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官岡光民雄 裁判官庄司芳男 裁判官杉浦正典)

別紙和議条件

一 債務者(申立人)、株式会社東京財資ゴルフ倶楽部(本店・東京都千代田区麹町所在、旧商号・株式会社協和開発。以下「麹町財資」という。)、宮門城カントリー倶楽部株式会祉(以下「宮門城」という。)及び株式会社東京国際研修会館(以下「研修会館」という。)は、和議認可決定確定後、一年間以内に合併する。

二1 債務者は、預託金返還請求権を有する債権者(以下「預託金債権者」という。)に対し、千葉県山武郡芝山町において建設中のゴルフ場(仮称「東京財資ゴルフ倶楽部」という。)開業の日から三年間を経過した日、または、和議認可決定確定の日から六年間を経過した日のいずれか早く到来する日(以下「本件弁済期日」という。)以降、預託金債権者から退会申出のあった日より一か月以内に、預託金債権元本の二五パーセント及び入会金返還請求権等の預託金返還に関連する債権を有する場合にはその元本の六パーセントを支払う。

但し、預託金債権者は、本件弁済期日の一か月前から、退会を申し出ることができる。

2 預託金債権者が、ゴルフ場開業の日から二か月経過日までに退会の申出をした場合には、和議開始決定時に遡及して入会金返還請求権を有するものとする。

3 債務者は、和議債権元本の総額が金三〇〇万円以下の和議債権者(以下「特定債権者」という。)に対し、本件弁済期日限り、和議債権元本の二五パーセントを支払う。

4 債務者は、預託金債権者、特定債権者、千代田生命保険相互会社、株式会社京葉銀行、株式会社熊谷組、東京芝林株式会社、株式会社橘屋及び株式会社愛路圓を除く和議債権者に対し、本件弁済期日限り、和議債権元本の六パーセントを支払う。

5 債務者は、千代田生命保険相互会社、株式会社京葉銀行及び株式会社熊谷組に対し、和議債権元本の六パーセントを、二〇回に分割し、本件弁済期日の一年後から完済に至るまで、毎年同日限り、各和議債権元本の0.3パーセント宛を支払う。

三1 預託金債権者は、預託金債権元本の七五パーセント及び入会金返還請求権等の債権の元本の九四パーセント、並びに各利息損害金全額を、

2 特定債権者は、和議債権元本の七五パーセント及び利息損害金全額を、

3 預託金債権者、特定債権者、東京芝林株式会社、株式会社橘屋及び株式会社愛路圓を除く和議債権者は、和議債権元本の九四パーセント及び利息損害金全額を、

4 東京芝林株式会社、株式会社橘屋及び株式会社愛路圓は、和議債権全額を、和議認可決定確定日に免除する。

四 和議債権者は、本件弁済期日まで和議債権を他に譲渡することができない。

五 麹町財資、宮門城及び研修会館は、第二項の各支払につき、連帯保証する。

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