大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京地方裁判所 平成8年(ワ)5877号 判決

原告

X株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

丸山和也

鮎京眞知子

井垣弘

被告

株式会社東京三菱銀行

右代表者代表取締役

若井恒雄

右訴訟代理人弁護士

羽田野宣彦

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告に対し、金三〇六六万二一一〇円及び内金二七六五万円については平成五年四月二一日から、内金二六〇万三八〇〇円については平成六年五月一二日から、内金四〇万八三一〇円については平成五年六月二日から、いずれも支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  事案の要旨

原告は、韓国の会社であるAとの間で、高速簡易型製造装置等(以下「本件機械」という。)の売買契約を締結し(原告は売主。以下「本件売買契約」という。)、その代金決済を韓国の銀行の発行する荷為替信用状(商業信用状と同義。L/Cと略称されているので、以下「L/C」という。)付きの外国向荷為替手形を用いて行うことを約した。Aは、同じく韓国の会社であるBにL/Cの開設を依頼(L/C代行の依頼)し、Bの依頼により、韓国国民銀行がL/Cを発行した(以下「本件L/C」という。)。

原告は、本件機械を韓国に向けて船積し、その引渡請求権を表示した船荷証券(B/Lと略称されているので、以下「B/L」といい、原告が被告に交付したB/Lを「本件B/L」という。)等の船積書類を添付した外国向荷為替手形を振り出し、原告の取引銀行である被告に、このL/C付外国向荷為替手形(以下「本件手形」という。)の買い取りを求めた。

被告は、これを買い取り、韓国国民銀行に原告から受領した船積書類と本件手形を送付してその手形金の支払(L/Cの決済)を求めたが、韓国国民銀行は、信用状発行依頼人が指図した船積日と実際の船積日(B/Lに記載されている日付)が異なっていることを理由に支払を拒絶した(以下「本件支払拒絶」という。)。

そこで、被告は原告に対して本件手形の買戻しを求め、原告はこれを買い戻した。

原告は、①本件支払拒絶の原因は、被告が韓国国民銀行に送付した船積書類の中に、B作成の船積指示書(以下「本件船積指示書」という。)が含まれており、その指示書に記載された船積日とB/Lに記載された実際の船積日が異なっていたためである、②原告は、本件船積指示書を参考として被告に交付したものであり、本件L/CでもL/C決済のための必要書類として要求されているものではないから、被告としては、本件船積指示書を韓国国民銀行に送付すべきではなかった、少なくとも送付する前に原告に相談すべきであった、③本件L/Cには、船積日について、船積期限の記載がありながら、船積は申請人の指図に従う必要があるという記載もあり、意味が曖昧なので、被告は、この点を明確にするために韓国国民銀行に問い合わせるべきであった、④被告は、原告との外国為替取引契約上の義務又は外国為替取引の専門家としての注意義務として以上のような義務を有していたのに、これを怠り、本件船積指示書を韓国国民銀行に送付したため、本件支払拒絶を招いたのであるから、本件支払拒絶により生じた原告の損害について、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償義務がある、⑤原告は、本件支払拒絶により、ア転売不能の本件機械の代金相当額二七六五万円、イいったん韓国の釜山港に到着した本件機械の日本への回漕代金二六〇万三八〇〇円、ウ被告から本件手形を買い戻すときに支払った利息金四〇万八三一〇円、合計三〇六六万二一一〇円の損害を被った、と主張して、被告に対し、右各損害金及びそれぞれに対する弁済期経過後である第一記載の各日付以降支払済みまで、商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

被告は、右原告の主張をすべて争うとともに、被告は、原告との間の外国為替取引契約上も、外国為替取引の専門家としての注意義務としても、原告から交付されたL/C決済のための必要書類を吟味して、韓国国民銀行から支払拒絶されないように注意すべき義務は有しないと主張する。

二  争いのない事実等(証拠を掲げない事実は争いがない。)

1  原告は、計測機器及び電気機器の販売、各種事務用機器の販売等を業務とする株式会社であり、被告は、銀行業務を行う株式会社である。原告と被告とは、原・被告間の継続的な外国為替取引を目的として、昭和六三年一一月三〇日、外国為替取引契約を締結した(乙三。以下「本件外国為替取引契約」という。)。

2  原告は、平成四年に、Aから、代金二七六五万円で本件機械の発注を受け、本件売買契約を締結した(甲三の三、甲五、証人上坂)。

右売買代金につき、原告とAとはL/Cにより決済することとした。そして、AはBにL/Cの開設を依頼(L/C代行の依頼)し、Bが韓国国民銀行にL/Cの発行を依頼し、韓国国民銀行は額面二七六五万円の本件L/Cを発行した。

本件L/Cは、取消不能信用状であり、左記の記載がある(甲三の一から三まで)。

差出人 韓国国民銀行本店(ソウル)

通知銀行 被告

発行銀行 韓国国民銀行本店(ソウル)

申請人 B

発行年月日 93/01/30

満期の場所と日付 93/03/20 買取銀行にて

受益者 原告

船積起点 日本の港

搬送先 釜山港

船積の期限日 93/03/10

付加条件 書類は信用状条項に従って買取られる。

船積は、申請人の指図に従う必要がある。すべての商品と書類に原産地表示がなされる必要がある。

支払/引受/買取の銀行に対する指示

すべての書類は、韓国国民銀行外国為替課宛送付されたい。

貴行からの書類の送達を受け次第、当方は貴行の指示に沿った送金手続を行う。

必要書類 韓国国民銀行(ソウル、大韓民国)の指示通りに作成された、商品又は包装の欠陥表示のない海上船荷証券一式。運賃着払であると明記されていて、到着案内通知のあること。

署名したインボイス3部

パッキングリスト3部

3  原告は本件機械の製作をCに発注して完成品の引渡しを受けた(証人上山)後、平成五年二月二四日、本件機械を船積し、船会社の発行した本件B/L(本件B/Lには、船積日は、平成五年二月二四日と記載されている。)の引渡しを受けた(甲四)。

そして、原告は、翌二五日、本件B/Lほか、本件L/Cで必要書類として要求されている書類をすべて添付して、被告に本件手形を交付し、本件外国為替取引契約に基づいてその買取りを申請した(甲一、二)。右買取申請には被告の用意した買取申請書(甲一、二)が用いられた(証人上坂)。被告は原告の右買取申請に応じてこれを買い取り、代金を支払った。

4  原告が被告に交付した書類の中には、本件L/Cで必要書類とされていたもののほかに本件船積指示書(甲五)が含まれていた。

本件船積指示書は、本件L/Cの発行日の四日後である平成五年二月三日に、BからCに送付されてきたもので、原告の木下宛となっている。そして、本件L/Cの件という見出しのもと、金額、内容(本件機械の特定)、船積日が記載され、「上記の注文条件について受け取ります。」と記載されている。そして、金額や内容については、本件L/Cの記載と同一の記載になっているが、船積日については、本件L/Cは、前記のとおり、船積の期限日を平成五年三月一〇日とし、「船積は、申請人の指図に従う必要がある。」としていたのに対して、本件船積指示書は、平成五年二月二〇日と特定している。(甲三の一から三まで、甲五)

本件船積指示書は、直ちにCから原告に送付されたが、原告としては、本件売買契約では、平成五年二月の末ころ、遅くとも平成五年三月一〇日までに船積するという約束であり、買主が船積日を指示できるという約束もなかったので、韓国にある原告の代理店を経由して、Aと連絡をとり、「船を探したけれども二月二〇日の船はないから、二月二四日の船でどうですか」と打診し、Aから二月二四日でも問題ないとの連絡をもらった(甲五、証人上坂)。

したがって、原告の理解では、本件船積指示書は、本来、本件L/Cには関係のない書類であるが、本件L/Cには、前記のとおり、「船積は、申請人の指図に従う必要がある。」という、船積指示書にまつわるような記載があるので、被告が本件L/Cを吟味するにあたって、この文言は何をいっているのかと考える可能性が高く、その場合は、本件船積指示書を指していると理解してもらおうと考えて本件船積指示書も被告に交付した(証人上坂)。

5  被告は、本件手形を買い取った後、本件L/Cの決済を受けるため、本件船積指示書も含めて、原告から交付を受けた本件L/Cの必要書類を添付して、本件手形を韓国国民銀行に送付した。

ところが、韓国国民銀行は、被告に対し、平成五年三月八日付けの電信で、本件L/Cに基づく支払を拒絶する旨通知してきた(本件支払拒絶。乙四)。その電信には、「支払拒絶通知」との表題が付され、左記のような記載がある(乙四)。

不一致 船荷証券記載の船積日が依頼人の船積指図と不一致

そして、韓国国民銀行は、さらに、被告に対し、平成五年四月二七日付けの書面で、「当行は下記理由により、貴行に対し標記書類を返還いたします。船荷証券記載の船積日が依頼人の船積指図と不一致。」と通知し、本件手形ほか被告が韓国国民銀行に送付した書類を返還してきた(甲六)。

同年五月一〇日ころ、韓国の代理店を通して買主であるAと交渉していた原告から、被告に対し、「韓国の代理店から船積書類を信用状発行銀行へ送付してほしいとの連絡があったので、至急船積書類を送付してほしい」との依頼があったので、被告は、韓国国民銀行に船積書類の再送付について連絡したが、韓国国民銀行からは何も回答がなく、結局船積書類の再送付はできなかった(乙五)。

6  そこで、被告は、原告に対し、本件外国為替取引契約に基づく、本件手形の買戻しを求め、平成五年六月二日、原告は、利息を付して本件手形を買い戻した。

被告は、原告の意向を受けて、本件L/Cの決済について、再度韓国国民銀行に連絡することとし、同月八日付けで、左記のような質問を記載した電信を韓国国民銀行に送信した(甲八)。

1.本件で問題としているL/Cは、申請人の船積指示書を必要書類として要求していない。従って、貴行がB/L上の船積日指示書上のそれとの違いを「不一致」と主張し得るかどうかは疑わしい。

2.貴行の顧客(B)が、彼らの意思で「不一致」として拒絶しているのか。

3.当行は、申請人の合意に基づき、当該文書を返却する旨説明して、電信によるメッセージを送付したが、今日まで貴行より回答を得ていない。

上記について明確な回答を求む。速やかな回答を待っている。

しかし、韓国国民銀行からの回答はなかった。

三  争点(被告の本件外国為替取引契約又は外国為替取引の専門家としての地位に基づく義務違反)

1  原告の主張

(一) 本件支払拒絶は、実際の船積日が本件船積指示書の指示日と異なることを唯一の理由としており、被告が本件船積指示書を韓国国民銀行に送付しなければ、本件手形は支払を受けられたものである。

(二) 被告は、本件外国為替取引契約に基づき、次のような注意義務を負っていた。

また、被告は、外国為替取引の専門家としての知識経験を有しているから、専門家としても次のような注意義務があった。

(1) 原告の被告に対する本件手形の買取申請において、原告は、本件船積指示書は必要書類とされていないため、これを正式に添付することはせず、参考までにという意味で、付票を付けて手渡した。また、必要書類である本件B/Lに記載された船積日(平成五年二月二四日)が本件船積指示書の指示日(平成五年二月二〇日)と異なっていた。よって被告としては、本件船積指示書のように支払拒絶をひき起こしかねない書面は添付しないように注意すべきであった。

(2) 本件船積指示書は、本件L/Cの必要書類に含まれていないのであるから、韓国国民銀行に本件L/Cの決済に必要な書類を送付するにあたっては、本件船積指示書をどう扱うかについて原告に相談すべきであった。

(3) 本件L/Cには、一方で船積期限が平成五年三月一〇日までと記載され、他方で船積は申請人の指図に従うべきと記載されていたのであるから、被告はL/Cの文言上瞹昧である右点を明確にすべく、発行銀行に必要な問い合わせをなすべきであった。

(三) 被告は右(二)のいずれの注意義務も怠り、原告の被告に対する買取申請書に、原告に無断で、本件船積指示書の欄を追加し、原告が本件船積指示書を正式に添付して買取申請したかの如き内容に作り変えた上、本件船積指示書を本件手形や必要書類とともに、韓国国民銀行に送付した。

(四) 損害

本件機械は一旦船積され韓国釜山港に到着したが、本件L/Cの決済ができなかったため、原告は本件機械を再び日本に引き揚げることを余儀なくされた。右引き揚げに対し、原告はD回漕店に船賃等として平成六年五月一二日に二六〇万三八〇〇円を支払った。また、原告は、被告に対し、平成五年六月二日に、本件手形の買取代金の利息として四〇万八三一〇円を支払った。これらの金銭は、本件手形が支払拒絶にならなければ支出する必要のなかったものである。

また、本件機械は特別受注生産したものであり、他に転売することは不可能であるし、実際にも転売ができず、鉄くず同然となってしまった。よって転売不能により本件機械代金に相当する二七六五万円の損害を負った。

2  被告の主張

(一) 本件L/Cには、付加条件として、「船積は、申請人の指図に従う必要がある。」と記載されており、韓国国民銀行は、信用状発行依頼人の船積指図と本件B/Lに記載された実際の船積日が一致しないことをもって本件支払拒絶の理由としているのであって、本件船積指示書に記載された船積日と実際の船積日が一致しないことをもって本件支払拒絶の理由としているのではない。本件船積指示書が添付されていなかったとしても、信用状発行依頼人の指定する船積日と実際の船積日が一致していなければ、韓国国民銀行が信用状発行依頼人の意向を受けるなどしてその不一致を容認しない限り、同じ結果になったものと考えられる。したがって、本件支払拒絶の原因は、被告が本件船積指示書を送付したことにあるのではなく、原告が、AあるいはBの船積指図にしたがった船積をしなかったことにある。

(二) 本件船積指示書は、本件手形の付属書類の中に包含されており、「参考までに」というような付票は付いていなかった。原告から提出されたインボイス(商業送り状)には、平成五年二月二四日ころに船積された旨の表示はあるが、船積が、「船積は、申請人の指図に従う必要がある。」という本件L/Cの条件との関係でどのようになされたか明示されていないので、被告は、付属書類の中に包含されていた信用状発行依頼人であるB作成名義の本件船積指示書をインボイスを補完するものとして取り扱い、信用状発行銀行である韓国国民銀行に送付したものである。

本件外国為替取引契約の「Ⅱ外国向為替手形取引約定」の二一条には、「この約定に定めのない事項については、国際商業会議所制定の「荷為替信用状に関する統一規則及び慣例」及び「取立統一規則」の定めに従って取り扱われることに同意します。」と定められているが、荷為替信用状に関する統一規則二条には、信用状発行銀行は、信用状発行依頼人の依頼と指図により行動すると規定されている。信用状発行依頼人名義の本件船積指示書を、信用状発行依頼人の依頼と指図により行動する信用状発行銀行に対して秘密にしておく理由は何ら存しない。

(三) 被告には、原告のために書類を点検する義務はない。本件外国為替取引契約の「Ⅱ外国向為替手形取引約定」の五条では、原告は、被告に対し、「私が貴行に提出する外国向為替手形および付属書類は、正確、真正かつ有効であり、信用状つき取引の場合は信用状条件と一致していることを保障します。これを前提として取り扱ったことにより、万一損害が生じた場合には、私が負担します。」と約束しており、逆に、原告が、被告に対して支払拒絶されることのないような手形及び付属書類を提出すべき義務を有している。

(四) 荷為替信用状に関する統一規則八条には、「信用状は、他行(通知銀行)を通じて、その銀行の側ではなんの約束もなしに、受益者に通知することができるが、当該銀行は、自行の通知する信用状が外観上正規に発行されたとみられるかどうかについて相応の注意を払う。」と定められており、被告は、本件L/Cが、韓国国民銀行により正規に発行されたものであり、偽造されたものではないことを、外観上確認しており、信用状の通知銀行としてそれ以上の義務を負うものではなく、原告主張のような韓国国民銀行に対する問い合わせ義務はない。

(五) 原告の損害の主張は争う。

第三  争点に対する判断

一  被告の義務について

本件外国為替取引契約に基づく被告の義務が、第二の三、2、(三)、(四)で被告が主張するとおりであることは、乙第一、三号証により明らかである。被告は、本件手形の買い取りによって、本件L/Cの支払がなされなかった場合の危険を負担することになる(本件外国為替取引契約によれば、その場合には原告が買戻し義務を負担することになるが、被告が右義務の履行を求めたときには、原告はその義務を履行するだけの資力を失っていることもありうる。)のであるから、被告が自らの危険を避けるために本件手形やその付属書類を吟味することは当然であるとしても、原告のためにこれらを吟味すべき義務を負うものではない。そして、本件手形の付属書類として本件船積指示書が提出されている以上、これを他の書類とともに韓国国民銀行に送付することも自然なことというべきである。また、被告が本件L/Cの内容について韓国国民銀行に問い合わせをすべきいわれもない(なお、本件L/Cの船積期限の指定と「船積は、申請人の指図に従う必要がある。」という付加条件は何ら矛盾するものとは考えられない。)。さらに、仮に原告の主張するように、被告が外国為替取引の専門家として原告に対して有する義務があるとしても、その義務は、本件外国為替取引契約に基づく義務と重なるか、より狭く弱いものと解されるので、その義務については、本件外国為替取引契約に基づく義務について述べたことがそのまま当てはまる。

このことは、仮に原告主張のように本件船積指示書に「参考まで」という付票が付されていたとしても、異なるところはない。原告は、被告に本件船積指示書を交付する前に本件船積指示書の内容について買主と交渉しており、買主から、本件船積指示書に記載された船積日ではなく、本件B/Lに記載された船積日で了解をとったというのであり、そして、本件L/Cには、「船積は、申請人の指図に従う必要がある。」という付加条件が記載されていることも十分承知していたというのであるから(証人上坂)、前記本件外国為替取引契約の「Ⅱ外国向為替手形取引約定」の五条の約束の上からも、改めて本件B/Lに記載された船積日を指図する船積指示書の送付を受け、これを被告に提出すべきであったというべきである(第二の二で認定したように、本件船積指示書が送付されてきてから、原告が実際に本件機械を船積するまでに約三週間の期間があった。)。

また、原告が、改めて船積指示書の送付を受けるまでもなく、本件船積指示書の船積日と本件B/Lの船積日の不一致は、既に買主と話がついているので、それを理由として本件L/Cの支払拒絶がされることはない(信用状発行依頼人から韓国国民銀行に事情が話してある)と考えていたとしたら、被告が本件船積指示書を韓国国民銀行に送付することは何ら問題がない。

いずれにせよ、原告は、本件船積指示書を被告に交付する以上、本件船積指示書についての買主との交渉経過を被告に伝えるべきであり、「参考まで」という付票を付けただけでは、本件外国為替取引契約に基づく原告の義務を果たしたことにはならない。仮に、原告が、本件船積指示書が韓国国民銀行に送付されたら韓国国民銀行は本件L/Cに基づく支払を拒絶するかもしれないと被告に説明したとしたら、被告は、本件手形の買い取り自体を拒否した可能性もあるのであり(被告が主張するように、信用状発行依頼人名義の本件船積指示書を、信用状発行依頼人の依頼と指図により行動する信用状発行銀行に対して秘密にしておかなければL/Cの決済がされないというのは、L/Cに基づく取引として、極めて不自然である。)、被告が原告を信用して、原告から交付を受けた書類は本件船積指示書も含めて問題がないものとして本件手形を買い取り、被告が主張するような趣旨で、本件船積指示書を韓国国民銀行に送付したことについて、原告から非難されるべきいわれはない。

なお、原告が主張するように、被告が原告に無断で、原告の提出した買取申請書に本件船積指示書の欄を追加した(甲一、二)としても、それは、被告が原告のために書類の体裁を整えたものと考えられ、本件船積指示書の送付が非難されるべきものではない以上、右行為も不当なものとはいえない。

二  以上のとおり、被告には、本件外国為替取引契約上も、また、外国為替取引の専門家としても、原告主張のような義務違反があるとは認められない(第二の二で認定した事実によれば、本件支払拒絶は、結局、原告と買主との間の意思が合致しなかったために起きたものであり、原告と買主との間の調整ができれば、本件支払拒絶の撤回もありえたものと認められる。)ので、債務不履行又は不法行為に基づく原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官福田剛久 裁判官小林元二 裁判官平野淳)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com