大判例

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東京地方裁判所 昭和31年(ワ)4540号 判決

原告 佐藤善三郎

被告 小夜こと 前田さよ

右代理人弁護士 大久保

主文

被告は原告に対し、六万八百円を支払うべし。

原告そのよの請求を棄却する。

訴訟費用は、被告の負担とする。

この判決は、第一項にかぎり、仮に執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

昭和三十年十一月十九日か二十日頃被告が宅地建物売買仲介業者である原告に対し、百坪ないし二百坪程度の宅地買入れにつき、そのあつせんをたのんだ事実、同日原告が、原告の営業所附近にある売地二ヶ所及び同月下旬頃本件土地に被告を案内した事実、また被告が本件土地を昭和三十年十二月三日所有者木下義郎から代金百七十二万円で買い同日所有権取得の登記を経由した事実は当事者間に争いがない。原告本人の供述によれば右売買が成立する前に原告が被告の内縁の夫吉川を東京法務局渋谷出張所に案内し、被告の夫が本件土地の登記簿を閲覧したこと、並びにその頃原告が被告とその夫を、本件土地所有者木下義郎の玄関先まで案内したこと、被告が原告に対し、昭和三十年十一月二十日すぎ土地購入につき原告のあつせんをことわつた事実等が認められる。すなわち本件委任契約は、昭和三十一年十一月二十日頃解除されたものである。

原告は、たとえ被告と木下との間に成立した売買は、被告が原告に対して土地買入れの委任を解除した後に成立したものであつても被告は原告に対し、昭和二十八年十月一日東京都告示第九九八号宅地建物取引業者の受ける報酬額につき定められた、本件売買代金百七十二万円の一割に相当する十七万二千円を報酬として支払うべきだと主張するから、この点について判断するに、土地建物を買いたい者が、それらの仲介を業としている者に対し、そのあつせんを依頼したときは、特に反証のないかぎり相当の報酬を支払う意思であつたとみるべきである。而してその報酬額について合意があれば別だが、ないときは裁判所が諸般の事情をしんしやくして決定すべきであろう。原告は前記告示に定められた標準によつて十七万二千円を請求することができるというが、凡そ右告示は、専ら不当の金額を請求することのないように、取締ることを目的としてその最高限度額を示したに過ぎず、当然委任者がその最高限度額を支払うべきことを定めたものではないと解するのである。

そこで裁判所は前記争いのない事実と弁論の全趣旨から判断して、その額は売買代金の百分の四に相当する六万八千八百円を支払う義務があるが、被告は既に原告に対し八千円を支払つている(この事実は原告の争わないところである。)から、右金額を控除した六万八百円を支払うべきである。

原告の本訴請求は右六万八百円の限度においては理由があるが、そのよの請求は理由がないものとして棄却することにし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第九十二条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 石橋三二)

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