大判例

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東京地方裁判所 昭和31年(ワ)5600号 判決

原告 藤井貞夫

右代理人弁護士 丸山良策

被告 ロケツト編機株式会社

右代表者 佐藤正俊

被告 佐藤正俊

右両名代理人弁護士 坂本建之助

主文

被告らは各自原告に対し金五三四、〇〇〇円及びこれに対する昭和三一年七月二九日から完済に至るまで年六分の割合による金員の支払をせよ。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は原告において被告らに対し各自金五万円の担保を供するときは仮りに執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

一、被告会社が原告主張のような本件約束手形を振り出し、被告佐藤がこの手形保証をしたことは当事者間に争がない。そして成立に争のない甲一号証及び原告本人尋問の結果並びに原告が現に本件手形を所持している事実を総合すると、原告は本件手形を訴外株式会社大和銀行にいわゆる隠れた取立委任による裏書譲渡をなし、大和銀行は右手形を満期日に支払場所に呈示したがその支払を拒絶された(右呈示及び支払拒絶の点は当事者間に争がない。)ため、原告はその頃右の裏書を抹消しないで右銀行から本件手形の返還交付を受け、現に本件手形の所持人であることを認めることができ、右認定を左右するに足る証拠はない。しかして陰れた取立委任裏書によるその手形上の権利は裏書人から被裏書人に移転すると解されるが、しかし裏書人がその後被裏書人から当該手形の返還を受けた際は、その裏書が抹消されていなくても、裏書人は再び手形上の権利を取得するに至るものと解され、所持人がかかる実質的権利を有することを証明するときは、振出人は所持人に対し手形金の支払を拒絶することはできないものというべきである。そうすると本件においては原告は前記認定のように本件手形の返還を受け、その実質的権利を有しておるものであるから、被告会社は本件手形の振出人として、被告佐藤はその手形保証人として原告に対し合同して本件手形金を支払うべき義務があるものといわなければならぬ。

二、被告会社が原告主張のような本件小切手を原告に振り出し交付したこと、並びに被告佐藤が本件小切手裏面に記名捺印したことは当事者間に争がない。そして成立に争のない甲二ないし四号証及び原告本人尋問の結果を総合すると、被告会社は原告に株式会社富士銀行新橋支店を支払人とする小切手を、昭和三一年四月三〇日に金額二〇万円のもの一通、同年五月四日に金額三四、〇〇〇円のもの一通を各振り出し交付したところ、この小切手により原告は支払を受けることができなかつたため、原告は同年五月中旬頃被告会社の代表取締役である被告佐藤に強くその弁済方の請求をしたので被告会社は右二通の小切手金額を合せて金二三四、〇〇〇円とし、振出日を同月三〇日の先日付とした本件小切手を原告に交付したものであるが、原告としては従前の経過上本件小切手の支払方につき不安を感じ、その頃右小切手を持参して被告佐藤宅に赴き、被告会社の本件小切手債務につき、個人保証を求め、被告佐藤をして右小切手の裏面に記名捺印せしめたことが認められ、右認定に反する被告会社代表者兼被告佐藤本人尋問の結果は措信し難く他に右認定をゆるがすに足る証拠はない。そうすると被告佐藤はまさに被告会社の本件小切手の振出人としての債務につき民法上の保証を原告に対しなしたものといわなければならないものであり、しかして主たる債務が商行為によるものであれば、これに対し民法上の保証をなしても、保証人は主たる債務者と連帯してその弁済の責任を負うべきものであるから、従つて原告請求のその余の手形上の保証或は裏書の点及びこれを前提とする被告らの抗争については判断するまでもなく、被告会社は本件小切手の振出人として、被告佐藤はその保証人として原告に対し連帯して本件小切手金を支払うべき義務があるものといわなければならない。

三、ところで被告らは本件債務につき原告より不確定期限の弁済猶予を得ておると抗争するけれども、これに添う被告会社代表者兼被告佐藤本人尋問の結果は原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨に照して到底これを措信することはできなく、又証人坂部逸士の証言も右被告らの主張を認める証拠とするには足らず、その他これを肯認することのできる証拠はないから被告らの右主張は採用できない。

四、そうすると被告ら両名に対し各自右一、記載の約束手形金三〇万円及び右二、記載の小切手金二三四、〇〇〇円(合計金五三四、〇〇〇円)並びにこれに対する本件手形の満期後及び本件小切手の呈示後で訴状送達の翌日であることが記録上明らかである昭和三一年七月二九日から手形法、小切手法各所定の年六分の割合による利息の支払を求める原告の本訴請求は理由があるから、全部正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大沢博)

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