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東京地方裁判所 昭和31年(ワ)9520号 判決

判  決

東京都千代田区有楽町一丁目二番地

日比谷ビル内

破産者田中熱機株式会社破産管財人

原告

奥野彦六

右訴訟代理人弁護士

萩原由太郎

中島清

同都千代田区丸の内二丁目六番地

被告

明和産業株式会社

右代表者代表取締役

谷村順蔵

右訴訟代理人弁護士

栄木忠常

小屋敏一

畑野有伴

同都品川区北品川三丁目三二二番地

(登記簿上の住所、同都杉並区阿佐ケ谷六丁目一六八番地)

被告

稲見光

同都港区芝公園一号地一番

被告

小名木茂

同都千代田区丸の内二丁目二番地一

被告

富国産業株式会社

右代表者代表取締役

守山三折

同都江東区深川東陽町一丁目一三番地

被告

林商事株式会社

右代表者代表取締役

林栄作

最後の住所、同都中央区日本橋堀留町一丁目三番地

(登記簿上の住所、同都同区銀座東五丁目四番地)

口頭弁論終結当時所在不明

被告

同和興業株式会社

右代表者清算人

沖本正実

同都中央区八丁堀四丁目一番地

被告

木本鋼材株式会社

右代表者代表取締役

木本平八

右訴訟代理人弁護士

水上喜景

同都北区岸町二丁目二番地

(登記簿上の住所、同都江東区深川東陽町一丁目一三番地)

被告

林栄作

同都千代田区霞ケ関一丁目一番地

被告

右代表者法務大臣

植木庚子郎

右指定代理人法務省訟務局検事

横山茂晴

法務事務官

望月伝次郎

東京国税局徴収部特別整理課

大蔵事務官

恩蔵章

田中昭司

松田正典

右当事者間の昭和三一年(ワ)第九五二〇号否認権行使等請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

一、被告小名木茂は原告に対し、別紙目録中(五)の建物につき昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四五号で同被告のためにした「昭和二七年四月二〇日消費貸借による、債権額は金一、六二五、〇〇〇円、弁済期は同年六月二一日、特約として、期限後の損害金は金一〇〇円につき一日二〇銭を支払うこと、」という抵当権設定登記の登記原因につき否認の登記手続をすべし。

二、被告稲見光は原告に対し、別紙目録中(五)の建物につき昭和三一年八月一一日東京法務局大森出張所受付第二三一四四号で同被告のためにした、同年七月二〇日の譲渡契約による右第一項の抵当権移転登記の登記原因につき否認の登記手続をすべし。

三、被告林栄作は原告に対し、別紙目録中(四)の土地につき同被告のためにした、昭和二七年七月二八日東京法務局大森出張所受付第九四〇一号による「昭和二七年七月二五日の消費貸借契約による、債権額は金一五万円、弁済期は同年八月二五日、利息は一カ月一分、毎月末日支払い、特約として、利息を期日に支払わないときは期限の利益を失い、期限後の損害金は金一〇〇円につき一日一〇銭を支払うこと、」という抵当権設定登記および同日同出張所受付第九四〇二号による「昭和二七年七月二五日の契約による右債務による右債務を期限に弁済しないときは代物弁済として所有権を取得することができる、」という所有権移転請求権保全の仮登記の登記原因につきそれぞれ否認の登記手続をすべし。

四、被告国は原告に対し、金九、九八六、八五六円およびこれに対する昭和三二年二月一四日から右支払いずみまで年五分の割合による金員を支払うべし。

五、被告明和産業株式会社、被告稲見光、被告小名木茂、被告富国産業株式会社、被告林商事株式会社、被告同和興業株式会社被告木本鋼材株式会社は、東京国税局長篠川正次が昭和三一年八月一〇東京法務局昭和三一年(金)第一六五八九号で供託した供託金五〇〇万円の残金一、〇四九、一三四円につき、いずれも還付請求権をもつていないことを確認する。

六、被告明和産業株式会社、被告稲見光、被告小名木茂、被告富国産業株式会社、被告林商事株式会社、被告同和興業株式会社、被告木本鋼材株式会社、被告林栄作、被告国との間に、否認の宣言を求める各訴ならびに被告国に対し、金一一、〇三五、九九〇円およびこれに対する昭和三一年一二月二七日から右支払いずみまで年五分の割合による金員の支払いを求める各訴は、いずれも却下する。

七、訴訟費用はこれを三分し、その二を被告国の負担とし、その一をその余の被告らの各負担とする。

事実

第一、原告の主張

一、請求の趣旨

(一)  被告明和産業株式会社(以下被告明和産業という)および被告国との間において、破産者田中熱機株式会社(以下破産会社という)が別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四三号で被告明和産業のためにした「昭和二七年四月一五日の根抵当権設定契約による、債権極度額は金五〇〇万円、契約期限は昭和三〇年四月一四日、特約として不履行のときは期限の利益を失い、期限後の損害金は一〇〇円につき一日(以下日歩という)一〇銭を支払うこと」、という共同根抵当権設定登記行為を否認する。

(二)  被告稲見光(以下被告稲見という)および被告国との間において、破産会社と被告稲見とが昭和二七年六月一七日別紙目録中(一)(二)(三)の各建物についてした、「昭和二七年四月一日の消費貸借契約による、債権額は金七〇〇万円、弁済期は同年六月一六日、利息は日歩一〇銭を毎月末日に支払うこと、特約として、利息を期日に支払わないときは期限の利益を失い、期限後の損害金は日歩二〇銭を支払うこと、」という債権担保のための共同抵当権設定契約を否認する。

(三)  被告小名木茂(以下被告小名木という)および被告稲見との間において、破産会社と被告小名木とが昭和二七年六月一七日別紙目録中(一)(二)(三)(五)の各建物についてした、「昭和二七年四月二〇日の消費貸借契約による、債権額は金一、六二五、〇〇〇円、弁済期日は同年六月二一日、特約として、期限後の損害金は日歩二〇銭を支払うこと、」という債権担保のための共同抵当権設定契約を否認する。

(四)  被告小名木は原告に対し、別紙目録中(五)の建物につき、昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四五号で同被告のためにした右第三項の抵当権設定登記の登記原因につき否認の登記手続をすべし。

(五)  被告稲見は原告に対し、別紙目録中(五)の建物につき昭和三一年八月一一日東京法務局大森出張所受付第二三一四四号で同被告のためにした、同年七月二〇日の右第三項の抵当権の譲渡契約による抵当権移転登記の登記原因につき否認の登記手続をすべし。

(六)  被告富国産業株式会社(以下被告富国産業という)との間において、破産会社と被告富国産業とが昭和二七年七月一〇日別紙目録中(一)(二)(三)の各建物についてした、「昭和二七年七月五日の消費貸借契約による、債権額は金六、六三七、八九〇円、弁済方法は内金二〇〇万円を同年七月三一日、残金を同年一二月二五日支払う、利息は年一割を毎月末日に支払う、特約として、割賦金の支払いを一回でも怠つたとき、または利息を期日に支払わなかつたときは期限の利益を失い、期限後の損害金は日歩一〇銭を支払うこと、」という債権担保のための共同抵当権設定契約を否認する。

(七)  被告林商事株式会社(以下被告林商事という)との間において、破産会社と被告林商事とが昭和二七年七月二五日別紙目録中(一)(二)(三)の各建物についてした、「昭和二七年四月二〇日の消費貸借契約による、債権額は金三一五万円、弁済期日は同年七月二七日、利息は一カ月一分を毎月末日に支払う、期限後の損害金は日歩一〇銭を支払うこと、」という債権担保のための共同抵当権設定契約を否認する。

(八)  被告同和興業株式会社(以下被告同和興業という)および被告木本鋼材株式会社(以下被告木本鋼材という)との間において、破産会社と被告同和興業とが昭和二七年七月二九日別紙目録中(一)(二)(三)の各建物についてした、「昭和二七年五月一三日の消費貸借契約による、債権額は金二四〇万円、弁済期日は同年七月二八日、利息は一カ月一分を毎月末日に支払う、特約として、利息を期日に支払わないときは期限の利益を失い、期限後の損害金は日歩四銭を支払うこと、」という債権担保のための共同抵当権設定契約を否認する。

(九)  被告林栄作(以下被告林という)との間において、破産会社と被告林とが昭和二七年七月二五日別紙目録中(四)の土地についてした、「昭和二七年七月二五日の消費貸借契約による、債権額は金一五万円、弁済期日は同年八月二五日、利息は一カ月一分を毎月末日に支払う、特約として、利息を期日に支払わないときは期限の利益を失い、期限後の損害金は日歩一〇銭を支払うこと、」という債権担保のための抵当権設定契約および右債務を期限に弁済しないとき、被告林が弁済に代えて右土地の所有権を取得することができる旨の代物弁済の予約をいずれも否認する。

(一〇)  被告林は原告に対し、別紙目録中(四)の土地につき同被告のためにした、昭和二七年七月二八日東京法務局大森出張所受付第九四〇一号による右第九項の抵当権の設定登記および同日同出張所受付第九四〇二号による右第九項の所有権移転請求保権保全の仮登記の登記原因につきそれぞれ否認の登記手続をすべし。

(一一)  (被告国に対する第一次の請求)

被告国は原告に対し、金一一、〇三五、九九〇円およびこれに対する昭和三一年一二月二七日から右支払いずみまで年五分の割合による金員を支払うべし。

(一二)  〔右第一一項の第一次の請求のうち、金九、九八六、八五六円(還付ずみの金員)の部分が認容されない場合の第二次の予備的請求〕

被告国は原告に対し、金九、九八六、八五六円およびこれに対する昭和三二年二月一四日から右支払いずみまで年五分の割合による金員を支払うべし。

(一三)  (右第一二項の請求が認容されない場合の予備的請求)

(1) 被告明和産業は原告に対し、金三、九五〇、八六六円およびこれに対する昭和三二年二月一四日から右支払いずみまで年五分の割合による金員を支払うべし。

(2) 被告稲見は原告に対し、金六、〇三五、九九〇円およびこれに対する昭和三二年二月一四日から右支払いずみまで年五分の割合による金員を支払うべし。

(一四)  被告明和産業、被告稲見、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業、被告木本鋼材は、東京国税局長篠川正次が昭和三一年八月一〇日東京法務局昭和三一年(金)第一六五八九号で供託した供託金五〇〇万円の残金一、〇四九、一三四円につき、いずれも還付請求権をもつていないことを確認する。

(一五)  訴訟費用は被告らの負担とする。

二、請求の原因

(破産会社が破産宣告を受けるに至るまでの経過)

(一) 破産会社は営業不振のために昭和二七年六月五日、仮りにそうでないとしても同年六月一二日支払いを停止し、同年一一月二四日午後四時更生手続開始の決定を受けた。しかし、更生計画案が提出されなかつたために、破産会社は昭和三一年二月一三日更生手続廃止の決定を受けた。これに対して利害関係人が抗告をしたが、同年七月九日抗告が棄却され、右更生手続廃止の決定は同年七月一二日確定した。

その後東洋通産株式会社ほか六名が昭和三一年七月一六日東京地方裁判所に破産会社に対する破産の申立てをした結果、破産会社は同年八月七日午前一〇時同裁判所で破産宣告を受け、同時に原告はその破産管財人に選任された。

(被告明和産業のための根抵当権設定登記行為)

(二) これに先立ち、破産会社は昭和二七年四月一五日被告明和産業との間に、破産会社の所有する別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、被担保債権極度額が金五〇〇万円、契約期限が昭和三〇年四月一四日、特約として、不履行のときは期限の利益を失い、期限後の損害金が日歩一〇銭という根抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第三番、(二)の建物につき第九番、(三)の建物につき第一三番の各順位)をし、昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四三号で右根抵当権設定登記行為を了した。

(右根抵当権設定登記行為の否認)

(三) しかし、右登記行為は破産会社の支払停止後の行為であり、根抵当権設定契約の日から一五日以上を経過し、かつ、被告明和産業が破産会社の支払停止の事実を知つてした行為である。

支払停止ののち更生手続を経て破産宣告があつた場合には、破産法第八四条にいう「破産宣告の日より一年前」は更生手続の期間を除いて計算すべきである。

本件については、昭和二七年一一月二四日から昭和三一年七月一二日までの更生手続の期間が除かれるから、前記登記行為は破産宣告の日である昭和三一年八月七日午前一〇時から一年未満前の行為にあたるのである。

したがつて、右登記行為は否認の要件を備えており、破産法第七四条第一項により、被告明和産業との間において、否認されるべきである。

(被告稲見らとの間の各抵当権設定契約等)

(四) (1) 破産会社は昭和二七年六月一七日被告稲見との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、同年四月一日の消費貸借契約による「債権額は金七〇〇万円、弁済期日は同年六月一六日、利息は日歩一〇銭を毎月末日に支払う、特約として、利息を期日に支払わないときは期限の利益を失い、期限後の損害金は日歩二〇銭を支払う、」という債権担保のための共同抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第四番、(二)の建物につき第一〇番、(三)の建物につき第一四番の各順位)をし、被告稲見は昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四四号で右の抵当権設定登記を了した。

(2) 破産会社は昭和二七年六月一七日被告小名木との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)(五)の各建物につき、同年四月二〇日の消費貸借契約による「債権額は金一、六二五、〇〇〇円、弁済期日は同年六月二一日、特約として、期限後の損害金は日歩二〇銭を支払う、」という債権担保のための共同抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第五番、(二)の建物につき第一一番、(三)の建物につき第一五番、(五)の建物につき第一番の各順位)をし、被告小名木は昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四五号で右の抵当権設定登記を了した。

(3) 破産会社は昭和二七年七月一〇日被告富国産業との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、同年七月五日の消費貸借契約による「債権額は金六、六三七、八九〇円、弁済方法は内金二〇〇万円を同年七月三一日、残金を同年一二月二五日に支払う、利息は年一割を毎月末日に支払う、特約として、割賦金の支払いを一回でも怠つたとき、または利息を期日に支払わないときは期限の利益を失い、期限後の損害金は日歩一〇銭を支払う、」という債権担保のための共同抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第六番、(二)の建物につき第一二番、(三)の建物につき第一六番の各順位)をし、被告富国産業は昭和二七年七月一〇日東京法務局大森出張所受付第八六六二号で右の抵当権設定登記を了した。

(4) 破産会社は昭和二七年七月二五日被告林商事との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、同年四月二〇日の消費貸借契約による「債権額は金三一五万円、弁済期日は同年七月二七日、利息は一カ月一分を毎月末日に支払う、期限後の損害金は日歩一〇銭を支払う、」という債権担保のための共同抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第七番、(二)の建物につき第一三番、(三)の建物につき第一七番の各順位)をし、被告林商事は昭和二七年七月二五日東京法務局大森出張所受付第九三四二号で右の抵当権設定登記を了した。

(5) 破産会社は昭和二七年七月二九日被告同和興業との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、同年五月一三日の消費貸借契約による「債権額は金二四〇万円、弁済期日は同年七月二八日、利息は一カ月一分を毎月末日に支払う、特約として、利息を期日に支払わないときは期限の利益を失い、期限後の損害金は日歩四銭を支払う、」という債権担保のための共同抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第八番、(二)の建物につき第一四番、(三)の建物につき第一八番の各順位)をし、被告同和興業は昭和二七年七月二九日東京法務局大森出張所受付第九四八一号で右の各抵当権設定登記を了した。

(6) 破産会社は昭和二七年七月二五日被告林との間に、破産会社所有の別紙目録中四の土地につき、同日の消費貸借契約による「債権額は金一五万円、弁済期日は同年八月二五日、利息は一カ月一分を毎月末日に支払う、特約として利息を期日に支払わないときは期限の利益を失い、期限後の損害金は日歩一〇銭を支払う」、という債権担保のための抵当権設定契約(第一順位)および右債務を期日に弁済しないときは、被告林が弁済に代えて右土地の所有権を取得することができるという代物弁済の予約をし、被告林は昭和二七年七月二八日東京法務局大森出張所受付第九四〇一号で右の抵当権設定登記を、同日同出張所受付第九四〇二号で右の代物弁済の予約による所有権移転請求権保全の仮登記をそれぞれ了した。

(右の各契約の否認の原因)

(五) (1) 右四の(1)ないし(6)の各契約のうち、(2)、(3)、(4)、(6)の各抵当権設定契約および(6)の代物弁済の予約は、いずれも破産会社が支払停止ののちにした担保の供与および債務の消滅に関する行為であり、破産会社がその義務のないのにした行為である。

したがつて、破産法第七二条第四号によつて、契約の相手方である各被告との間において、右の各契約は否認されるべきである。

(2) 前記(四)の(1)、(5)の各抵当権設定契約、ならびに、仮りに右(五)の(1)の主張が認められないとしても、前記(四)の、(2)、(3)、(4)、(6)の各抵当権設定契約および(6)の代物弁済の予約は、いずれも破産会社が支払停止ののちにした担保の供与および債務の消滅に関する行為であり、契約の相手方である被告らが支払停止の事実を知りながらしたのである。

破産法第八四条の「破産宣告の日より一年前」と更生手続の期間との関係は前記(三)のとおりであり、本件については昭和二七年一一月二四日から昭和三一年七月一二日までの更生手続の期間が除かれる結果、右の各契約は、破産宣告の日である昭和三一年八月七日から一年未満前の行為にあたるのである。

したがつて、破産法第七二条第二号によつて、右の各契約は、契約の相手方である各被告との間において、否認されるべきである。

(3) 仮りに、右の主張が認められないとしても、右の各抵当権設定契約および代物弁済の予約は、いずれも当時すでに支払停止をし近く破産すべき事情にあつた破産会社が、他の破産債権者を害する目的でした行為である。

したがつて、破産法第七二条第一号によつて、右の各契約は、契約の相手方である各被告との間において、否認されるべきである。

(転得者である被告木本、被告稲見との間における否認)

(六) (1) 被告木本鋼材は、昭和二九年四月三〇日、被告同和興業から、前記(四)の(5)の抵当権を、被担保債権とともに右(五)の(1)ないし(3)の否認の原因があることを知りながら譲り受けて転得した。

したがつて、破産法第八三条第一項第一号によつて、前記(四)の(5)の抵当権設定契約は、被告木本鋼材との間において、否認されるべきである。

(2) 被告稲見は、昭和三一年七月二〇日、被告小名木から、前記(四)の(2)の抵当権を、被担保債権とともに、右(五)の(1)ないし(3)の否認の原因があるのを知りながら譲り受けて転得し、別紙目録中(五)の建物につき昭和三一年八月一一日東京法務局大森出張所受付第二三一四四号で右の抵当権移転登記を了した。

したがつて、破産法第八三条第一項第一号によつて、前記(四)の(2)の抵当権設定契約は、被告稲見との間において、否認されるべきである。

(被告国に対する公売残代金の返還請求権)

(七) (1) 別紙目録中(一)の建物は昭和二七年六月二三日、同(二)の建物は同年八月一日、同(三)の建物は昭和三一年五月八日いずれも破産会社に対する国税滞納処分のため国税徴収法にもとづき東京国税局長篠川正次によつて差し押えられ、公売処分に付された。その結果、右東京国税局長の売却決定があり、右(一)(二)の各建物の所有権は昭和三一年七月二日洗足電気工業株式会社に移転し、同月九日その所有権移転登記を完了し、右(三)の建物の所有権は同年六月二日中央土地株式会社に移転し、同年八月三一日その所有権移転登記を完了した。

(2) 東京国税局長篠川正次は、右の公売処分によつて得た売却代金から公売費用、滞納国税を差し引き、昭和三一年八月七日午前一〇時の破産宣告当時、残代金一一、〇三五、九九〇円を保管していた。右金員は破産財団に帰属し、破産管財人である原告が専属的にその管理処分権をもつている。

(3) (イ) 被告明和産業、被告稲見らの担保権付債権については、別除権承認の手続(破産法第一九七条第一三号、第一九八条第二項、第一九九条)がとられていないのであるから、被告国は右金員を被告明和産業らに支払うべきでなく、原告に支払うべきである。

(ロ) 仮りに、右(イ)の主張が認められなくとも、前記(二)の根抵当権設定登記行為、前記(四)の(1)の抵当権設定契約は、前記(三)、(五)の否認の要件を備えているから、被告国との間でも否認されるべきである。さらに、右の各行為のほか前記(四)の(2)ないし(5)の各抵当権設定契約は、前記(三)、(五)のとおり各被告との間で否認されるべきである。否認の結果、被告明和産業の根抵当権(前記(二))は原告に対し遡及的に対抗力を失い、被告稲見らの抵当権(前記(四)の(2)ないし(5)、(六)の(1)、(2))は遡及的に消滅したから、被告国は右金員を被告明和産業、被告稲見らに支払うべきでなく、原告に支払うべきである。

(ハ) したがつて、被告国は原告に対し、国税徴収法第二八条第一項にもとづき、公売残代金一一、〇三五、九九〇円を支払う義務がある。

(八) 東京国税局長篠川正次は、国税徴収法第三〇条に則り、公売残代金一一、〇三五、九九〇円について、これを交付すべき権利者を確知することができないという理由によつて、昭和三一年八月一日東京法務局昭和三一年(金)第一六五八九号で金五〇〇万円同局昭和三一年(金)第一六五九〇号で金六、〇三五、九九〇円を各供託した。

しかし、右の各供託は、右(七)の(3)(イ)、(ロ)の各理由によつて無効であり、被告国は原告に対し、右公売残代金の支払義務を免れるものでない。

(供託金の還付請求権)

(九) 仮りに、右の各供託が有効であり、これによつて被告国が原告に対する公売残代金一一、〇三五、九九〇円の支払義務を免れるとすれば、前記(七)の(1)ないし(3)の理由により、被告国は原告に対し、右各供託金合計金一一、〇三五、九九〇円を還付する義務がある。

(一〇) 東京法務局は、昭和三一年一一月二一日被告明和産業に対し昭和三一年(金)第一六五八九号の供託金五〇〇万円のうち金三、九五〇、八六六円を還付し同日被告稲見に対し昭和三一年(金)第一六五九〇号の供託金六、〇三五、九九〇円を還付した。

しかし、右の各還付は前記(七)の(3)(イ)、(ロ)の各理由によつて無効であり、被告国は原告に対し、右供託金の還付義務を免れるものでない。

(国家賠償法にもとづく損害賠償請求権)

(一一) 仮りに、右の各供託金の還付が有効であり、原告の、供託金還付請求権にもとづく金一一、〇三五、九九〇円の支払請求が認容されないとすれば、原告は、予備的に、次のとおり主張する。

(1) 前記(九)のとおり、原告は前記供託金合計金一一、〇三五、九九〇円について還付請求権を有していたのであつた。

しかるに、東京国税局長篠川正次は、東京国税徴収部長鶴殿元一、同局特別整理第一課長榎本良助、同局特別徴収係長雨宮剣周、同局係員恩蔵章、同中村邦春(以下国税局公務員らという)の各職分に応じた協力のもとに、前記(八)のとおり、公売残代金一一、〇三五、九九〇円を交付すべき権利者を確知することができないという理由で右金員を供託したのに、昭和三一年一一月二一日被告明和産業および被告稲見に対しそれぞれ確知書(供託金還付請求権者であることを証明する書面)を交付し、その結果東京法務局が昭和三一年一一月二一日前記(一〇)のとおり右供託金のうち被告明和産業に対し金三、九五〇、八六六円を、被告稲見に対し金六、〇三五、九九〇円をそれぞれ還付し、このため原告の前記供託金還付請求権を失わせた。

(2) 右確知書の交付は、以下に述べるとおり、国税局公務員らおよび東京国税局長の故意または過失による違法な行為である。

国税局公務員らおよび右東京国税局長は、被告稲見の更生担保権が昭和二七年一〇月一八日田中善助に譲渡されたため、昭和二八年二月一八日の更生手続における債権調査期日に更生管財人山中徳助から右債権全額について異議が述べられたことや、被告明和産業らが被告稲見に対し請求異議訴訟(東京地方裁判所昭和三一年(ワ)第一〇〇三号)を提起し、被告稲見が被告明和産業に対し抵当債権不存在確認訴訟(東京地方裁判所昭和三一年(ワ)第六〇六〇号)を提起し紛争中であつたことを了知していた。

さらに、原告は破産管財人に就任した直後、国税局公務員らに対し供託金を原告に還付すべきことを申し入れ、その後昭和三一年一一月一八日発同日着の内容証明郵便で前記東京国税局長に対して、被告明和産業、被告稲見は債権の存否につき訴訟中であること、また破産債権者集会は昭和三一年一一月一七日被告明和産業らのための抵当権設定行為について否認権を行使する旨の議案を可決し、これにそつて原告は否認権を行使する意思であることを表明したうえ、右訴訟および否認の訴の各結果が判明し供託金の還付請求権者が確定するまで、確知書を交付しないよう警告した。

しかるに、前記東京国税局長および国税局公務員らは、右被告らの訴訟の結果如何では右被告らに供託金の還付請求権がないことになることや、原告の否認権行使の結果少くなくとも原告は右供託金還付請求権を有するに至ること、そして被告明和産業、被告稲見に対し確知書を交付し、右被告らが供託金の還付を受ければ、原告の右供託金還付請求権を侵害することになることを知りながら、仮りに、そうでないとしても過失によつてそのことを見おとして、前記東京国税局長が前記のとおり被告明和産業および被告稲見に対しそれぞれ確知書を交付したのであるから、右確知書の交付は右局長および国税局公務員らの故意または過失による違法な行為である。

(3) ところで、右確知書の交付は、前記東京国税局長および国税局公務員らがそれぞれ職務を行うにつきした違法行為である。その交付の結果前記のとおり昭和三一年一一月二一日被告明和産業は金三、九五〇、八六六円、被告稲見は金六、〇三五、九九〇円の各供託金の還付を受け、そのために原告は右供託金の還付を受けることができなくなり、右合計金九、九八六、八五六円の損害を蒙つたのである。

したがつて、被告国は原告に対し、国家賠償法にもとづき右金九、九八六、八五六円の損害を賠償する義務がある。

(不当利得金の返還請求権)

(一二) 仮りに、右損害賠償請求が認容されないとすれば、原告は予備的に、被告明和産業および被告稲見に対し、次のとおり請求する。

(1) 公売残代金一一、〇三五、九九〇円が供託され、昭和三一年一一月二一日被告明和産業が金三、九五〇、八六六円、被告稲見が金六、〇三五、九九〇円の各還付を受けたことは、前記(八)、(一〇)のとおりである。

(2) しかし、被告明和産業のための根抵当権設定登記行為(前記(二))、被告稲見のための抵当権設定契約(前記(四)の(1))が否認されたことは、前記(三)、(五)のとおりである。

したがつて、被告明和産業の根抵当権は原告に対し遡及的に対抗力を失い、被告稲見の抵当権は遡及的に消滅し、右被告両名が国税徴収法第二八条第二項により公売残代金、または供託金を受け取る権原は遡及的に消滅した。

結局、被告明和産業および被告稲見は、いずれも法律上の理由がなく、前記のとおり供託金の還付を受け、これによつて被告明和産業は、金三、九五〇、八六六円、被告稲見は金六、〇三五、九九〇円の各利益を得、そのため原告は右の還付を受けることができなくなつて合計金九、九八六、八五六円の損害を蒙つたのである。

(3) 被告明和産業は原告に対し右金三、九五〇、八六六円、被告見稲は原告に対し右金六、〇三五、九九〇円をそれぞれ返還する義務がある。

(供託残金一、〇四九、一三四円について還付請求権の不存在)

(一三) 前記(三)、(五)のとおり被告明和産業のための根抵当権設定登記行為、被告稲見、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業のための各抵当権設定契約は、右被告らとの間において、さらに前記(六)の(1)、(2)のとおり、右被告小名木のための抵当権設定契約は転得者である被告稲見との間、右被告同和興業のための抵当権設定契約は転得者である被告木本鋼材との間においてそれぞれ否認され、その結果被告明和産業の抵当権は原告に対し遡及的に対抗力を失い、その余の右被告らの各抵当権はいずれも遡及的に消滅した。

したがつて、右被告らは東京国税局長篠川正次が昭和三一年八月一〇日東京法務局昭和三一年(金)第一六五八九号でした金五〇〇万円の供託金の残金一、〇四九、一三四円につき各還付請求権をもたないのである。

(結論)

(一四) よつて、原告は次の(1)ないし(10)のとおり請求する。

(1) 被告明和産業および被告国との間において、請求の趣旨(一)のとおり、根抵当権設定登記行為の否認

(2) 被告稲見、被告国、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業、被告木本鋼材との間において、請求の趣旨(二)、(三)、(六)ないし(八)のとおり各抵当権設定契約の否認

(3) 被告林との間において、請求の趣旨(九)のとおり抵当権設定契約および代物弁済の予約の否認

(4) 被告小名木に対し、請求の趣旨(四)のとおり抵当権設定登記の登記原因につき否認の登記手続

(5) 被告稲見に対し、請求の趣旨(五)のとおり抵当権移転登記の登記原因につき否認の登記手続

(6) 被告林に対し、請求の趣旨(一〇)のとおり抵当権設定登記および所有権移転請求権保全の仮登記の各登記原因につき否認の登記手続

(7) 被告国に対し、第一次的に、国税徴収法第二八条第一項にもとづき、予備的に供託金の還付請求権にもとづき、金一一、〇三五、九九〇円と、これに対する訴状送達の日の翌日である昭和三一年一二月二七日から右支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金との支払い

(8) 右(7)の請求が認容されない場合につき、予備的に、被告国に対し、国家賠償法による損害賠償請求権にもとづき、金九、九八六、八五六円と、これに対する第一準備書面(昭和三二年二月一一日付)の送達の日の翌日である昭和三二年二月一四日から右支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金との支払い

(9) 右(8)の請求が認容されない場合につき、予備的に、不当利得金返還請求権にもとづき、(イ)被告明和産業に対し、金三、九五〇、八六六円と、これに対する前記第一準備書面の送達の日の翌日である昭和三二年二月一四日から右支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金との支払い、(ロ)被告稲見に対し、金六、〇三五、九九〇円と、これに対する同じく右昭和三二年二月一四日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金との支払い

(10) 被告明和産業、被告稲見、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業、被告木本鋼材が、請求の趣旨(一四)のとおり供託残金一、〇四九、一三四円につき各還付請求権をもたないことの確認

以上のとおり請求する。

三、被告らの主張に対する答弁

(一)  被告明和産業の(一)の主張に対する答弁

自白の徹回には異議がある。

(二)  被告明和産業の主張(三)、被告小名木の主張(一)に対する答弁

(破産法第八四条の一年の期間)

破産手続に先立ち更生手続が行われた場合更生手続の期間は、破産法第八四条にいう「破産宣告の日より一年前」の期間に、次の(1)(2)の理由で、算入すべきでないと解する。

(1) 会社更生法によると、更生の見込みのある会社については破産原因があるときでも、一応更生手続によらせる建前であり、更生手続が開始されると、破産の申立はすることができず、すでに開始された破産手続は中止される(会社更生法第六七条第一項)。破産法第八四条は否認権の短期消滅時効(仮りに、そうでないとしても、除斥期間)を定めたのであるから、破産法上の否認権を行使することのできない右更生手続の期間は、破産法第八四条の期間から除外して算定すべきである。

(2) 更生手続と破産手続とは、前者が企業の維持、後者が企業の解体を目的とし、別個の手続であり、会社更生法上の否認権と破産法上の否認権とは異質的なものである。破産管財人は、破産手続中、否認の原因があると認めた場合、その職務上否認権を行使しなければならない義務があるが、更生管財人は、更生手続において原因があると認めた場合でも、会社の維持、更生を図るために否認権の行使が不適当であると認めるにおいては、否認権を行使すべきではない。かように、更生手続では否認権を行使する余地は少ないのであるから、破産手続に先立つて更生手続が行われたとき、破産宣告の日から更生手続の期間も算入して文字どおり一年前にした行為は否認することができないと解しなければならないとすると、破産法上の否認権は殆んど有名無実なものとなる。このような解釈は不当というべきである。

(三)  被告明和産業の主張(四)、被告稲見の主張(三)、被告小名木の主張(二)に対する答弁

(否認権の消滅)

破産法第八五条(否認権の消滅時効)に対応するものとして会社更生法第九二条(否認権の除斥期間)の規定があるが、右(一)のとおり、破産法上の否認権と会社更生法上の否認権とは異質のものである。したがつて、破産手続に先立ち更生手続が行われた場合、会社更生法上の否認権が同法第九二条の期間の徒過によつて消滅しても、破産法上の否認権までこれによつて消滅するものでない。このような場合でも、破産法上の否認権は、破産法第八五条によつて、破産宣告の日から二年間行使しないとき、はじめて時効により消滅する、と解すべきである。

(四)  被告明和産業の主張(五)に対する答弁

(本件否認権の行使は権利の濫用でない)

(1) 更生手続が廃止された場合、更生担保権者表の記載については会社更生法第一四五条の適用はなく、同法第二八三条が適用され、その記載は更生会社に対してのみ確定判決と同一の効力をもち、その他の者には右の効力は及ばないのである。

(2) 仮りに、右の効力が破産管財人に対しても及ぶとしても、更生手続廃止の決定が確定し、破産宣告があつた後にはじめて原告は否認権を取得したのであるから、右のことは、この、後に生じた否認権を行使することの妨げとなるものではない。

(3) 執行力を有する債務名義のある行為に対しても否認権を行使することができるのであるから(破産法第七五条)、更生担保権者表の記載が原告に対し確定判決と同一の効力を有するとしても、それは否認権を行使することの妨げとはならないし、その場合の否認権の行使が権利の濫用となるものでもないことは当然である。

(五)  被告小名木の主張(三)に対する答弁

被告小名木の主張事実は否認する。

(六)  被告稲見の主張(四)に対する答弁

(被告稲見の更生担保権は確定判決と同一の効力がない)

(1) 被告稲見の更生担保権が債権調査期日に更生管財人山中徳助から異議を述べられ、更生担保権者表に債権額が「零」と記載されたこと、右更生管財人が異議の訴を提起しなかつたことは認めるが、その余は否認する。

(2) 被告稲見は更生手続上、執行力を有する債務名義のある更生担保権者ではない。右の更生担保権者として扱われるためには、執行力を有する債務名義のある更生担保権者である旨を明示し、その証拠書類を添付して届出ることが必要であるが(会社更生法第一二六条)、被告稲見の届出には、このような債務名義の明示がなく証拠書類の添付もなかつた。これに先立ち、被告稲見は昭和二七年一一月一八日すでに田中善助に対し右債権を譲渡し、昭和三〇年二月一六日田中善助から右債権を再び譲り受けた。この債権が更生担保権者表に記載されるためには、届出の追完をし、特別の債権調査期日を開くことが必要であるのに(会社更生法第一三八条第二項、第一二七条、第一四〇条)、被告稲見はこの手続をふまなかつた。したがつて、仮りに、更生担保権者表に被告稲見の金六、一九六、五〇〇円の更生担保権が確定した旨訂正して記載されたとしても、この訂正記載は右の手続をふまないもので無効である。しかも、被告稲見の抵当権付債権は、更生手続開始後に右のとおり再譲渡によつて取得したのであるから、民事訴訟法の準用によつて更正決定をし更生担保権として扱う余地がないが、仮りにそうでないとしても、右訂正記載はその手続を経ずになされたもので無効である。

(3) 本件否認権の行使が有効であり、権利の濫用でないことは右(四)のとおりである。

(七)  被告国の本案前の主張および本案の主張(三)の(2)に対する答弁

(本訴による供託金還付請求は適法である)

東京国税局長の滞納処分は公売代金のうちから滞納税金に充当したときに終了し、前記各供託に関する法律関係は私法上の権利関係である。仮りに、公法上の権利関係であるとしても、供託金の還付請求は少くとも行政処分ではない。したがつて、供託所に対し供託金の還付請求権をもつ者が、直接に民事訴訟法で還付請求をするのは適法である。このことは、供託物取扱規則第五条第三号が「供託物の還付請求をするには、供託書に代えて『執行力ある裁判の正本』を供託所に提出すべき」趣旨を規定し、供託物の還付を求めるにつき民事訴訟による請求を予定していることからも明白である。

したがつて、被告国は原告に対し前記各供託金一一、〇三五、九九〇円を還付する義務がある。

(八)  被告国の本案の主張(三)の(3)に対する答弁

(被告稲見の更生担保権者表の記載は無効である)

被告国の本案の主張(三)の(3)のうち、被告稲見が更生手続において更生担保権者として金六、一九六、五〇〇円の債権の届出をしその債権調査期日に更生会社は異議を述べず、更生管財人は全額について異議を述べたが、異議の訴を提起しなかつたことは認めるが、右記載が有効であることは争う。

前記(六)の(2)に述べたとおり、被告稲見の更生担保権に関する右更生担保権者表の記載は無効であり、被告稲見の抵当権付債権が田中善助に譲渡され、被告稲見が更生担保権者でなくなつたことは、前記請求の原因(二)の(2)のとおり、前記東京国税局長に通知ずみであるから、右東京国税局長も右更生担保権者表の記載が無効であることは充分に知つているはずであり、したがつて、右更生担保権者表にもとづいた確知書の交付は違法である。

仮りに、右更生担保権者表の記載が有効であるとしても、本件のように更生手続が廃止された場合においては、右表の記載については会社更生法第一四五条の適用がなく、右表の記載は同法第二八三条にもとづき更生会社に対してのみ確定判決と同一の効力を有するにすぎないことは、右両規定の置かれた位置とその立法趣旨とに徴し明らかである。したがつて、右確定判決と同一の効力は更生担保権者相互間、または更生担保権者と破産管財人との間には及ばないものというべく、右関係者間に争いがあるにかかわらず、被告国が右更生担保権者にもとづいてした確知書の交付は違法である。

第二、被告明和産業の答弁

一、請求の趣旨に対する答弁

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の原因に対する答弁

(一)  のうち、支払停止の日は知らないが、その余は認める。

(二)は認める。

(三)は否認する。

(七)の(1)は認める。

(八)のうち、供託が原告主張のとおり行われたことは認めるが、供託が無効であることは争う。

(一〇)のうち、原告主張のとおり供託金の還付があつたことは認めるが、右還付が無効であることは争う。

(一二)の(1)は認める。同(2)、(3)は争う。

(一三)のうち、被告明和産業に関する部分は争う。

三、被告明和産業の主張

(自白の取消)

(一) 被告明和産業は、はじめ、「請求の原因(二)の根抵当権設定登記行為をしたのが昭和二七年六月一七日であることは認める。」と答弁をしたが、これは真実に反し錯誤にもとづくから取消す。

破産会社および被告明和産業が登記申請手続をしたのは、昭和二七年六月一〇であるが、登記の順位につき被告稲見との間に紛争がおきたため、登記の受付日付が同年六月一七日となつたのである。

(被告明和産業が善意であつたこと)

(二) 被告明和産業は、根抵当権設定登記手続の当時、破産会社の支払停止の事実を知らなかつた。

右登記に必要な書類は昭和二七年六月九日より相当前に破産会社から被告明和産業に交付されていたのであるが、被告明和産業は人員整理、配置転換等社内の業務が混乱していたため登記申請手続に手間取り、同年六月一〇日に至つて登記申請をした。このような事情であつたから、被告明和産業は、根抵当権設定登記行為当時、右支払停止の事実を知らなかつたのである。

したがつて、右根抵当権設定登記行為についての原告の否認は理由がない。

(右登記行為から破産宣告の日まで一年以上を経過している)

(三) 破産手続に先立つて更生手続が行われた場合でも、更生手続の期間は、破産法第八四条の「破産宣告の日より一年前」の期間に算入すべきである。更生手続でも否認権を行使することはできるのであるから、破産法第八四条を右のように解しても、否認の目的は達せられるのであり、他方右一年の期間は法律行為の効力を永い間不安定にすることを避けるために設けられたもので絶対的なものであるから、問題の行為と破産宣告の日との間に更生手続がはいることによつて取扱いを浮動的にすることは許されないのである。

本件において、右登記行為は昭和二七年六月一〇日であり、破産宣告の日である昭和三一年八月七日から一年以上前の行為であるから、破産法第八四条によりこれを否認することはできないのである。

(本件否認権の消滅)

(四) 更生手続に先立ち破産手続が行われた場合、破産手続中で否認権を行使することができた限り、破産宣告の日から二年間を経過したときは、否認権は時効によつて消滅し(破産法第八五条)、その後の更生手続では同一の行為につき否認権を行使することはできないと解する。したがつて、破産手続に先立つて更生手続が行われた逆の場合においても、更生手続中で否認権を行使することができた限り、更生手続開始の日から二年間を経過したときは、否認権は消滅し(会社更生法第九二条の除斥期間)、その後の破産手続では同一行為につき否認権を行使することはできない、と解すべきである。

本件において、更生管財人は更生手続で前記登記行為を否認することができたのに、否認権を行使しなかつたのであるから、更生手続開始の日である昭和二七年一一月二四日から二年間を経過した昭和二九年一一月二四日をもつて否認権は消滅し、原告は否認権を行使することはできないのである。

したがつて、右登記行為についての原告の否認は理由がない。

(本件否認権の行使は権利の濫用である)

(五) 仮りに、原告が否認権を有したとしても、次のとおり本件否認権の行使は権利の濫用で許されない。

被告明和産業は昭和二八年一月三一日前記更生手続において更生担保権の届出をしたところ、同年二月一八日の債権調査期日に何人からも異議がなく、同被告が債権額金三、九五〇、八六六円につき別紙目録中(一)(二)(三)の各建物に根抵当権をもつていることが確定した。それは更生担保権者表に記載されて、更生債権者、更生担保権者、株主全員、更生管財人に対し確定判決と同一の効力を生じた(会社更生法第一四五条)。そして、この効力は更生手続が廃止された後も存続し、廃止後は更生会社に対しても生ずるに至つた(同法第二八三条)。このように破産債権者、別除権者、破産会社も右根抵当債権を争うことができない状態にあるのに、破産管財人である原告がこの状態を無視し、登記行為から四年も経過してから突如として本件否認権を行使するのは、徒らに混乱を招くものであり、権利の濫用で許されない。

(供託金の還付は不当利得でない)

(六) 前記の理由で、被告明和産業のための根抵当権設定登記行為を否認することはできない。被告明和産業についての更生担保権者表の記載は、右(五)のとおり更生債権者に対し確定判決と同一の効力を生ずるのであるから、更生債権者である被告国も右更生担保権者表の記載に拘束される。

かように、被告明和産業は抵当権者として国税徴収法第二八条第二項により前記供託金の還付を受けたのであるから、何ら不当利得をしていない。

第三、被告稲見の答弁

一、請求の趣旨に対する答弁

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の原因に対する答弁

(一)のうち、支払停止の日は知らないが、その余は認める。

(四)の(1)、(2)は認める。

(五)の(2)、(3)のうち、被告稲見、被告小名木に関する部分は否認する。

(六)の(2)のうち、被告稲見が原告主張のとおり被告小名木から抵当権を被担保債権とともに譲り受け、その移転登記を了したことは認めるが、その余は否認する。

(七)の(1)は認める。

(八)のうち、供託が原告主張のとおり行われたことは認めるが、供託が無効であることは争う。

(一〇)のうち、原告主張のとおり供託金の還付があつたことは認めるが、右還付が無効であることは争う。

(一二)の(1)は認める。同(2)、(3)は争う。

(一三)のうち、被告稲見に関する部分は争う。

三、被告稲見の主張

(被告稲見が善意であつたこと)

(一) 被告稲見は抵当権の設定を受けた当時、破産会社の支払停止の事実を知らなかつた。

すなわち、被告稲見は昭和二七年三月頃破産会社に金七〇〇万円を貸与し、破産会社から約束手形八通を受け取つたが、同年六月一〇日頃破産会社から、同年六月一六日を満期日とする手形について満期日に支払うことができないから融資をして助けてもらいたい、これまでの貸金に抵当権を設定してもよいからという懇請を受けたので、同年六月一六日金一〇〇万円を手形の支払場所である第一銀行渋谷支店に払い込み、第二回目の手形の満期にも電話送金をし、他方同年六月一七日原告主張のとおり抵当権の設定を受け、その登記をした。その後の同年六月二一日になつて、被告稲見は、破産会社が手形の不渡りを出し事業閉錯をしたらしいと聞き、はじめて破産会社の支払停止の事実を知つたのである。

(二) 被告稲見は被告小名木から抵当権を譲り受けた当時、被告小名木に請求の原因(五)の(1)ないし(3)の否認の原因があることは知らなかつたのである。すなわち、被告稲見は被告小名木から「自分は破産会社所有の別紙目録中の建物に対して第一順位の抵当権をもつているのだが、どうか譲り受けてもらいたい。」と頼まれ、これに応じ譲り受けただけであつて、右否認の原因があることは知らなかつたのである。

したがつて、被告稲見に対する原告の各本件否認権の行使はいずれも理由がない。

(本件否認権の消滅)

(三) 会社更生法の否認権と破産法の否認権とは、その本質において全く同一である。したがつて、破産手続に先立ち会社更生手続が開始された場合に、更生手続開始決定の日から二年を経過したときは、否認権は消滅し(会社更生法第九二条)、その後の破産手続で破産管財人は同一の行為を否認することはできない、と解すべきである。

本件において、破産会社の被告稲見に対する前記抵当権設定行為についての否認権は、更生手続開始決定の日である昭和二七年一一月二四日から二年を経過したことによつて消滅し、その後の本件破産手続で原告は右抵当権設定行為を否認することはできない。

したがつて原告の本件否認権の行使は理由がない。

(本件否認権の行使は、確定判決と同一の効力に衝突、仮定的に権利の濫用)

(四) 被告稲見は公証人長谷川常太郎が作成した昭和二七年第一四一五八八号の債務弁済契約公正認書に執行文の付与を受けた執行力ある債務名義を有する債権者であつた。更生手続において更生担保権者表の議決権の額のらんには被告稲見の債権額が当初「零」と記載されたが、これは更生裁判所の重大な過失によるものであつたので、のちに同裁判所は職権で更正決定をし、更生担保権者表に債権額金六、一九六、五〇〇円につき別紙目録中(一)(二)(三)の各建物に抵当権を有する旨記載した。これは確定した。仮りに、更生管財人が債権調査期日に異議を述べたとしても、更生管財人は会社更生法所定の訴を提起しなかつたから、執行力ある債務名義を有する被告稲見の更生担保権の確定はこれによつて妨げられるものでない(同法第一五二条)。そして更生会社も右調査期日に異議を述べなかつたのであるから、右更生担保権者表の記載は、更生担保権者ら、更生会社に対し、確定判決と同一の効力を生じた(同法第一四五条、第二八三条)。

したがつて、原告が本件否認権を行使し、被告稲見の前記抵当権の効力を争うことは、右の確定判決と同一の効力に衝突するもので、許されない。

仮りに、そうでないとしても、原告の本件否認権の行使は権利の濫用で許されない。

(時機に後れた主張の却下申立)

(四) 前記第一の三、(六)(被告稲見の主張に対する答弁)のうち(2)の原告の主張は、すでに準備手続を経、長い間の審理もすみ、終結する段階に至つて突然に提出されたもので、時機に後れた主張であるから、却下されるべきである。

仮りに、右却下申立が理由ないとしても、被告稲見は原告の右主張に対し次のとおり答弁する。

原告主張のとおり、被告稲見が昭和二七年一一月一八日抵当権つき債権を田中善助に譲渡する旨の契約を締結したことは認めるが、その余は否認する。

右田中が約定の昭和二七年一一月二一日に譲渡の対価を支払わなかつたので、被告稲見はその頃右田中に対し右契約を解除する旨の意思表示をした。また、被告稲見は更生裁判所から送達を受けた更生担保権届出用紙の所定欄に必要事項を記載し、前記公正証書の謄本を添付して届出たのであるから、右届出にはなんら瑕疵がない。

第四、被告小名木の答弁

一、請求の趣旨に対する答弁

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の原因に対する答弁

(一)のうち、破産会社が更生手続を経て破産宣告を受け、原告が破産管財人に選任されたことは認めるが、その余の詳細は知らない。

(四)の(2)のうち、破産会社と被告小名木との間の抵当権設定契約ができた日の点は否認するが、その余は認める。右抵当権設定契約は昭和二七年四月二〇日消費貸借契約と同時にできたのである。

(五)の(1)ないし(3)のうち、被告小名木に関する部分は否認する。被告小名木が破産会社の支払停止の事実を知つたのは昭和二七年六月二一日である。

(三)のうち、被告小名木に関する部分は争う。

三、被告小名木の主張

(右抵当権設定行為は破産宣告の日まで一年以上を経過している)

(一) 破産会社と被告小名木との間の前記抵当権設定契約は、破産宣告の日である昭和三一年八月七日から満四年以上も前の行為であるから、破産法第八四条によつて否認することはできない。

(否認権の消滅)

(二) 破産会社は、更生手続を経て破産宣告を受けた。この場合、前記抵当権設定契約に対する否認権は、更生手続開始始の日である昭和二七年一一月二四日から二年を経過することによつて消滅し(会社更生法第九二条)、その後の本件破産手続で原告は右契約を否認することはできない。

(本件否認権の行使は権利の濫用)

(三) 原告は全く法律的知識のない破産債権者をそそのかして無理矢理に否認権行使の議決を得て、本訴を提起したものであるから、本件否認権の行使は権利の濫用である。

したがつて、右契約についての原告の否認は理由がない。

第五、被告富国産業の答弁

一、請求の趣旨に対する答弁

原告の請求をいずれも棄却する。

二、請求の原因に対する答弁

(一)は認める。

(四)の(3)は認める。

(五)の(1)(2)(3)のうち、被告富国産業に関する部分は否認する。

(三)のうち、被告富国産業に関する部分は争う。

第六、被告林商事および被告林の答弁

被告林商事および被告林は、本件準備手続期日(第二、三、第五回)および口頭弁論期日(第一、二、第五回)に出頭したが、原告の主張に対し何らの答弁をせず、答弁書その他の準備書面をも提出しない。

第七、被告同和興業の答弁

被告同和興業は公示送達による呼出しを受けたが、本件各準備手続期日および口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面をも提出しない。

第八、被告木本鋼材の答弁

一、請求の趣旨に対する答弁

原告の請求をいずれも棄却する。

二、請求の原因に対する答弁

(一)は認める。

(四)の(5)は認める。

(五)の(2)(3)のうち、被告同和興業に関する部分は否認する。

(六)の(1)のうち、被告木本鋼材が原告主張のとおり被告同和興業から抵当権を被担保債権とともに譲り受けたことは認めるが、その余は否認する。

(一三)のうち、被告木本鋼材に関する部分は争う。

第九、被告国の答弁

一、本案前の主張

(一)  申立の趣旨

原告の被告国に対する供託金還付請求権にもとづく請求の趣旨(二)の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

(二)  申立の理由

原告は本訴(民事訴訟)によつて被告に対し、供託金一一、〇三五、九九〇円の還付を求めるが、供託物の還付請求は、供託法第八条、供託物取扱規則第五条に定められた手続によつて、はじめてできる。供託官吏はこの手続による還付請求に対し理由の有無を審査して認可または却下の処分をする。これらの処分に対する不服申立の方法は、同法第一条の三以下に定められている。この手続によらずに、直接に民事訴訟によつて、供託金の還付を求める原告の右訴は、不適法であつて却下を免れない。

二、本案についての答弁

(一)  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

(二)  請求の原因に対する答弁

(一)のうち、破産会社が営業不振のため、原告主張の日に支払停止をしたことは知らないが、その余は認める。

(二)は認める。

(三)は知らない。

(四)の(1)は認める。

(五)の(2)(3)のうち、被告稲見に関する部分は知らない。

(七)の(1)は認める。同(2)のうち、東京国税局長が原告主張のとおり公売残代金一一、〇三五、九九〇円を保管していたことは認めるが、その余は争う。同(3)(イ)(ロ)はいずれも否認する。

(八)のうち、供託が原告主張のとおり行われたことは認めるが、供託が無効であることは争う。

(一〇)のうち、原告主張のとおり供託金の還付があつたことは認めるが、右還付が無効であることは争う。

(一一)の(1)のうち、東京国税局長篠川正次が本件公売残代金を原告主張のとおり供託したが、昭和三一年一一月二一日原告主張のとおり被告明和産業および被告稲見に対し確知書を交付し、右被告両名が供託金の還付を受けたことは認めるが、その余は争う。同(2)のうち、被告稲見の更生担保権につき、原告主張のとおり債権調査期日に更生管財人山中徳助から異議を述べられたこと、被告明和産業と被告稲見との間に原告主張のとおりの訴訟事件二件が紛争中であつて、これを右東京国税局長が知つていたことは認めるが、その余は否認する。同(3)のうち、確知書の交付が右局長の職務行為に属すること、この確知書の交付の結果供託金が原告主張のとおり還付されたことは認めるが、その余は否認する。

(三) 被告国の主張

(公売残代金交付請求に対して)

(1) 東京国税局長篠川正次は本件公売代金から滞納処分費、滞納税金へ充当し、第一順位の抵当権者中小企業金融公庫、第二順位の抵当権者株式会社第一銀行へ配当したが、第三順位の抵当権者被告明和産業と第四順位の抵当権者被告稲見との間に紛争があり、配当すべき権利者が不明であつたので、国税徴収法第三〇条によつて滞納処分の一環として本件公売残代金を供託したのであるから、右供託は有効であり、これによつて、被告国は本件公売残代金を交付する義務を免れた。

原告は、被告明和産業のたの根抵当権設定登記行為、被告稲見のための抵当権設定行為を被告国との間で否認する旨主張するが、右各行為の否認の効果は、被告明和産業、被告稲見との間においてのみ生ずるものであり、被告国との間において生ずるものではない。しかも否認の効果は判決の確定によつて生ずるものである。したがつて、本件供託は有効である。

(供託金還付請求に対して)

(2) 仮りに、前記本案前の申立が認容されないとしても、被告国が供託金還付の義務を負うのは、供託法第八条、供託物取扱規則第五条に定められた書類が供託所に提出され、これが認可されたときである。しかし、原告は右手続をとつていないのであるから、被告国は原告に対し供託金還付の義務を負わない。

仮りに、右主張が認められないとしても、供託金の大部分は、原告主張のとおり、すでに被告明和産業らに還付されており、原告の否認権の行使によつても、右各還付は各(1)と同じ理由で無効とはならないから、被告国は重ねて原告に対し還付義務を負うことはない。

(損害賠償の請求に対して)

(3) 前記更生手続で、被告明和産業は、第三順位の更生担保権者として金五〇〇万円の債権の届出をし、そのうち金三、九五〇、八六六円につき債権調査期日に何人からも異議を述べられず、その旨更生担保権者表に記載された。被告稲見は第四順位の更生担保権者として金六、一九六、五〇〇円の債権の届出をし、債権調査期日に更生会社は異議を述べなかつたが、更生管財人が全額について異議を述べた。しかし、右債権は執行力ある債務名義のある債権であるのに、更生管財人が異議の訴を提起しなかつたので、前記異議は被告稲見の更生担保権の確定を妨げることなく(会社更生法第一五二条)、その旨更生担保権者表に記載された。その後更生手続廃止決定が確定し、右各更生担保権者表の記載はいずれも更生担保権者、更生会社(破産会社)に対し確定判決と同一の効力を有するに至つた(会社更生法第一四五条、第二八三条)。

東京国税局長は供託後に調査した結果、右の事実を知つたので、被告明和産業および被告稲見に供託金を還付するため、原告主張のとおり確知書を交付したのである。これは少しも違法でない。

第一〇 証拠関係《省略》

理由

第一、被告小名木に対する否認の登記手続の請求について

(破産会社が破産の宣告を受けるまでの経過)

一、破産会社が更生手続を経て破産の宣告を受け、原告が破産管財人に選任されたことは、原告と被告小名木との間で争いがない。(証拠)を合わせ考えると、次のとおり認められる。

破産会社は、昭和二七年五月頃すでに経営不振に陥つており、同年六月二、三日頃から約束手形や小切手の不渡りを出しはじめ、他から資金の融通を受け、どうにか右手形等を買い戻すことができたが、同年六月一二日ついに銀行から取引停止を受け、支払いの停止を表示するに至つた。そこで、破産会社は東京地方裁判所に更生手続の開始を申し立てて、昭和二七年一一月二四日午後四時更生手続開始の決定を受けたが、所定の期間に更生計画案の提出がなかつたため、昭和三一年二月一三日更生手続廃止の決定を受けた。これに対して利害関係人が抗告したが、同年七月九日抗告が棄却され、同年七月一二日右更生手続廃止の決定は確定した。その後、東洋通産株式会社ほか六名は破産会社に対する破産の申立てをし、破産会社は、昭和三一年八月七日午前一〇時東京地方裁判所で破産の宣告を受け、原告はその破産管財人に選任された。

以上のとおり認められる。

右認定に反する証拠はない。

(右認の対象となる抵当権設定行為)

二、破産会社が被告小名木との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)、(二)、(三)、(五)の各建物につき、昭和二七年四月二〇日の消費貸借契約による「債権額は金一、六二五、〇〇〇円、弁済期は同年六月二一日、特約として、期限後の損害金は日歩二〇銭を支払う、」という債権担保のための共同抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第五番、(二)の建物につき第一一番、(三)の建物につき第一五番、(五)の建物につき第一番の各順位)をし、被告小名木が昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四五号で右共同抵当権設定登記を了したことは、原告と被告小名木との間に争いがない。

右抵当権設定契約をした日について争いがあるので、この点を判断する。

証人(省略)の証言によると、破産会社は昭和二七年四月二〇日被告小名木から右金員を借用した際、いずれ破産会社の寮を担保に供する旨約していたが、まだ本件共同抵当権設定契約を締結するまでには至らず、本件共同抵当権設定登記をするに至つた昭和二七年六月一七日頃、本件共同抵当権設定契約を締結したことが認められる。

甲第二六号証の二、三(登記の委任状)の作成日付は、昭和二七年六月一〇日であるから、これによると、このときすでに右抵当権の設定ができていたようにも見えるが、証人(省略)の証言によると、破産会社が右委任状の交付など抵当権設定登記に必要な手続をとりはじめたのは、昭和二七年六月一二日の支払停止の日以後のことであることが認められるから、右甲号証は前記認定を妨げるものではない。

他に前記認定をくつがえすに足りる証拠はない。

(否認の理由)

三、(1)、前記各認定事実で明らかなとおり、破産会社が右共同抵当権を設定したのは、支払停止をした後のことであるが、破産会社と被告小名木との間の担保を供与しようという約束にもとづくものであるから、破産会社の義務に属する行為である。

そこで、右抵当権の設定を受けた当時、被告小名木が前記支払停止の事実を知つていたかどうかを検討しなければならない。

(証拠)によると、破産会社は支払停止後の昭和二七年六月一七日被告明和産業のため根抵当権設定登記を、被告稲見のため抵当権設定およびその登記を了したことが認められるが、前記認定の事実から明らかなとおり、破産会社が被告小名木のため前記抵当権を設定したのはこれと同じ頃(被告小名木のため抵当権設定登記をしたのは同じ日)になるのである。

証人(省略)の各証言を合わせ考えると、破産会社は昭和二七年五月頃すでに営業不振に陥り経営が全く行き詰つてしまつたが、同月下旬頃社長田中善助、専務取締役島田真一はこの事情をかくそうとせず一部債権者のところへ右事情を説明に行つたこと、また同年六月二、三日頃から破産会社が手形の不渡りを出し同年六月一二日支払停止をするに至つた前後、各債権者は不安を感じ破産会社に押しかけたが、その際破産会社は被告明和産業、被告稲見その他の債権者らに対し支払停止の事情を説明し、支払停止を債権者らにかくす態度をとらなかつたことが認められる。

以上の諸事情を合わせ考えると、被告小名木は、破産会社から右共同抵当権の設定を受けた当時、破産会社の支払停止の事実を知つていたと認めることができる。

右認定を妨げるに足りる証拠はない。

(2) 破産法第八四条によると、破産宣告の日から一年前にした行為は支払停止の事実を知つていたことを理由として否認することはできないのである。

この点について、原告は、更生手続が破産手続に先行した場合には、破産法第八四条にいう「一年」の期間は更生手続の期間を除外して算定すべきであると主張し、被告小名木は、右の場合更生手続の期間も算入すべきである、と主張する。

よつて、この点について考えてみる。

第一に、破産法第八四条の趣旨は、支払停止をしても、破産宣告を受けずに二年以上も無事に経過したときは、支払停止の危機は解消している場合が多く、支払停止と破産宣告との間の因果関係も薄くなつているのが普通であるから、破産宣告の日から一年も前の行為は支払停止の事実を知つていたことを理由として否認させるべきでないとするにある。しかし、支払停止後、更生手続が開始され、その更生手続が更生計画案の提出または可決の見込みなく廃止となつた場合(会社更生法第二七三条)には、支払停止の危機は解消せずに続いている、といえる。しかも、支払停止は支払不能と推定され、支払不能は破産原因となるのであるが、破産原因がある場合でも、更生手続期間中は、破産の申立をすることができないのである(会社更生法第六七条第一項)。したがつて、右立法趣旨から考え、更生手続が破産手続に先行する場合においては、破産法第八四条の「一年」の期間は更生手続の期間を除外して算定するのが自然である。

第二に、破産宣告ののち更生手続が開始された場合には、破産手続は中止される(会社更生法第六七条第一項)。この場合、更生手続の期間は破産法第八四条の「一年」の期間と何も関係がない。破産原因があるのに、更生手続が開始されたため、破産宣告の申立をすることができず、更生手続が廃止された(会社更生法第二七三条)のちに破産宣告が行われた場合も、右の場合と同じ結果になるように扱うのが適当である。後者の場合を前者の場合と区別する実質的な理由はなく、たまたま更生手続が先行しただけで否認権の有無につきちがつた結論が出るように扱うのは、両者の権衡が失することになるからである。したがつて、後者の場合破産法第八四条の「一年」の期間を算定するには、更生手続の期間を除外すべきである。

以上の見解が正しいとすると、本件の更生手続の期間(昭和二七年一一月二四日から昭和三一年七月一二日まで)が除かれる結果、前記二の抵当権設定行為は、破産宣告の日(昭和三一年八月七日午前一〇時)から一年未満前の行為ということになる。

したがつて、破産法第七二条第二号によつて原告は本件否認権を取得したのである。

(3)  被告小名木は、「更生手続が破産手続に先行する場合、更生手続開始決定の日から二年間否認権を行使することなく経過したときは、否認権は消滅し、同一行為を破産手続で否認することはできない。」と主張する。

会社更生法上の否認権と破産法上の否認権とは、否認権の法律的性質および効果においては同一である。しかし、会社更生法は企業の維持、更生を目的とし、破産法は企業の解体を目的とし、それぞれの目的は全く異なるから、否認権の行使について両者の間に取扱いのちがいが出てくるのは当然のことである。すなわち、更生手続においては、更生管財人は、否認の原因がある場合でも、否認権を徹底的に行使すべきでなく、更生計画案を迅速に作成すべき要請などを考えて妥当な裁量で行使すべきであるが、破産手続においては、破産管財人は、否認の原因があると認める限り、原則として否認権を行使すべき義務を負うのである。

このように、破産法上の否認権の行使は会社更生法上の否認権の行使とは異なり徹底的であるから、破産手続が更生手続に先行する場合、否認権を行使することなく破産宣告の日から二年間を経過したときは、破産手続で否認権を行使することができた限り否認権は時効によつて消滅し(破産法第八五条)、その後の更生手続で同一行為を否認することはできなくなる。と解すべきである。

しかし、更生手続が破産手続に先行した場合は、右と事情を異にする。前記のとおり、会社更生法上の否認権は、破産法上の否認権と異なり、法の目的から、その行使がはるかに制約されているから、更生手続上の否認権が除斥期間の経過によつて消滅しても(会社更生法第九二条)、これによつて破産法上の否認権は影響を受けず、その後の破産手続でも、破産宣告の日から二年を経過しない限り(破産法第八五条)、同一行為を否認することができるものと解するのが相当である。

被告小名木の右の主張は採用することができない。

(4) 被告小名木は、「本件否認権の行使は原告が法律知識のない破産債権者をそそのかし無理矢理に否認権行使の議決を得て、本訴を提起したもので、権利の濫用である」。と主張する。

しかし、右の事実を証明するに足りる証拠はないから、被告小名木の右主張は採用することができない。

(5) 以上(1)ないし(4)のとおりであるから、原告の被告小名木に対する本件否認権の行使は正当である。

(否認の登記)

四、「否認の登記は、予告登記の一態様にすぎないから、判決にもとづかずに、破産管財人が自ら申請することができる。否認の登記を求める訴は抹消登記を求める訴と解すべきである。」という大審院の判決(昭和八年四月一五日言渡、判例集一二巻七号六三七頁)がある。

しかし、否認の登記が右のような予告登記であるとすると、不動産登記法第一四五条のような予告登記抹消の規定があるはずであるのに、このような規定はない。否認の登記の抹消は右の規定により裁判所の嘱託によらせようというのであれば、否認の登記の申請だけを不動産登記法の予告登記の規定と異なる取扱いにする根拠に乏しい。また、否認の登記の抹消を破産管財人に申請させることも必ずしも期待することができない。

破産法第一二三条第一項は、否認の登記をするのは「否認せられたとき」と規定し、否認権が判決で肯認されたことを前提にしている。

否認権は破産手続内における権利で、破産手続の終了によつて消滅する関係にある。否認の登記は右の関係を反映させながら、抹消登記と同一の目的を達しようとする破産法上の特別の登記である。すなわち、破産の取消、廃止、終結等の場合には、回復登記をするまでもなく、裁判所が嘱託して否認の登記の失効を公示するのである。

以上の点から、否認の登記は、予告登記ではなく、否認権の行使によつて登記の原因たる行為または登記が否認されたときに行う登記であり、現実にその登記をするには否認の登記を命ずる判決の確定によつて破産管財人がその申請をすべきであると解するのが相当である。

してみると、被告小名木は原告に対し、別紙目録中(五)の建物につき昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四五号で同被告のためにした前記二の共同抵当権設定登記(順位一番)の登記原因について否認の登記手続をする義務がある。

第二、被告稲見に対する否認の登記手続の請求について

(破産会社が破産宜告を受けるまでの経過)

一、(証拠)を合わせ考えると、破産会社は昭和二七年五月頃すでに経営不振に陥り、同年六月二、三日頃から約束手形、小切手の不渡りを出しはじめ、他から資金の融通を受け、どうにか右手形等を買戻してきたが、同年六月一二日ついに銀行から取引停止を受け、支払いの停止を表示するに至つたことが認められる。

右認定に反する証拠はない。

次の事実は原告と被告稲見との間に争いがない。

破産会社は昭和二七年八月一日東京地方裁判所に更生手続開始を申し立て、同年一一月二四日更生手続開始の決定を受けた。しかし、更生計画案が提出されなかつたため、破産会社は昭和三一年二月一四日更生手続廃止の決定を受けた。これに対して利害関係人が抗告をしたが、同年七月九日抗告が棄却され、右更生手続廃止決定は同年七月一二日確定した。その後東洋通産株式会社ほか六名が昭和三一年七月一六日東京地方裁判所に破産会社に対する破産の申立てをした結果、破産会社は昭和三一年八月七日午前一〇時同裁判所で破産の宜告を受け、同時に原告はその破産管財人に選任された。

以上は争いない事実である。

(否認の対象となる抵当権設定契約と抵当権の譲渡)

二、次の事実は、原告と被告稲見との間に争いがない。

破産会社は昭和二七年六月一七日被告小名木との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)(五)の各建物につき、同年四月二〇日の消費貸借契約による「債権額が金一、六二五、〇〇〇円、弁済期が同年六月二一日、特約として、期限後の損害金が日歩二〇銭」という債権担保のための共同抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第五番、(二)の建物につき第一一番、(三)の建物につき第一五番、(五)の建物につき第一番の各順位)をし、被告小名木は昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四五号で右の各抵当権設定登記を了した。

被告稲見は昭和三一年七月二〇日被告小名木から、右共同抵当権を被担保債権とともに譲り受けて転得し、別紙目録中(五)の建物につき、昭和三一年八月一一日東京法務局大森出張所受付第二三一四四号で右の抵当権移転登記を了した。

以上は争いない事実である。

(否認の理由)

三、(1)、破産会社の被告小名木のためにする右二の共同抵当権設定行為が、破産法第七二条第二号の否認の原因をそなえていることは、前記第一の三、(1)のとおりである。

右抵当権の転得当時、被告稲見が右否認の原因があることを知つていたかどうかについて判断する。

証人(省略)の各証言を合わせる考えると、前記第一の三、(1)の認定のとおり、破産会社が支払停止をした昭和二七年六月一二日頃、多くの債権者は破産会社に押しかけたが、その際破産会社は、被告稲見その他の債権者に支払停止に至つた事情を説明したことが認められる。

被告小名木が昭和二七年六月一七日破産会社から前記共同抵当権の設定を受けたことは、前記のとおり、被告稲見の認めるところである。

これらの事情を合わせ考えると、被告稲見は昭和三一年七月二〇日の転得当時、被告小名木に否認の原因(右抵当権設定当時、破産会社の支払停止の事実を知つていたこと)があることを知つていたものと認められる。

右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

(2) 、前記第一の三、(2)で説明したとおり、更生手続が破産手続に先行する場合には、更生手続の期間を除外して破産法第八四条の「一年」の期間を算定すべきであり、これを本件に適用すると、破産会社の被告小名木に対する共同抵当権の設定は破産宜告の日から一年未満前の行為ということになる。

したがつて、原告は被告稲見との間において、破産法第八三条第一項第一号により、破産会社の被告小名木のためにする右共同抵当権設定行為につき否認権を行使することができるのである。

(3) 被告稲見は、「更生手続が破産手続に先行する場合に、否認権が会社更生法第九二条によつて消滅したときは、その後の破産手続で同一行為を否認することはできない。」と主張する。

更生手続上の否認権が会社更生法第九二条によつて消滅しても、これによつて破産法上の否認権は影響を受けず、その後の破産手続で同一行為を否認することができると解すべきことは、前記第一の三、(3)で説明したとおりである。

したがつて、被告稲見の右の主張は理由がない。

以上のとおりであるから、原告の被告稲見に対する本件否認権の行使は正当である。

(否認の登記)

四、否認の登記の性質および否認の登記を求める訴が適法であることは、前記第一の四で説明したとおりである。

したがつて、被告稲見は原告に対し、別紙目録中(五)の建物につき昭和三一年八月一一日東京法務局大森出張所受付第二三一四四号で同被告のためにした、同年七月二〇日の前記二の抵当権譲渡契約による抵当権移転登記原因について否認の登記手続をする義務がある。

第三、被告林に対する否認の登記手続の請求について

(擬制自白)

一、被告林は本件準備手続期日(第二、三、第五回)および口頭弁論期日(第一、二、第五回)に出頭したが、原告の主張に対し何らの答弁書その他の準備書面をも提出せず、明らかに争わないから、原告主張の事実(請求の原因(一)、(四)の(6)、(五)の(1)ないし(3)、)を自白したものとみなす。

(否認の理由)

二、自白したものとみなされた事実によると、破産会社の被告林のための抵当権設定行為および代物弁済の予約行為は、破産会社が支払停止ののちにした担保の供与および債務の消滅に関する行為であることが明らかである。破産会社と被告林との間に、あらかじめ担保の供与および弁済以外に債務を消滅させる行為についての特約ができたことを認めるに足りる証拠はないから、破産会社の右抵当権設定行為および代物弁済の予約行為は、法律上の義務がなくしてなした担保の供与および債務の消滅に関する行為であるといわなければならない。

被告林は、右抵当権の設定を受け、かつ代物弁済の予約をした当時、破産会社の支払停止の事実を知らなかつたことについて、主張も立証もしない。

したがつて、原告の被告林に対する本件否認権の行使は、破産法第七二条第四号の要件をそなえているから、正当である。

(否認の登記)

三、否認の登記の性質および否認の登記を求める訴が適法であることは、前記第一の四で説明したとおりである。

したがつて、被告林は原告に対し、別紙目録中(四)の土地につき同被告のためにした昭和二七年七月二八日東京法務局大森出張所受付第九四四〇一号による抵当権設定登記および同日同出張所受付第九四〇二号による所有権移転請求権保全の仮登記(いずれも請求の原因(四)の(6))の各登記原因について否認の登記手続をする義務がある。

第四、被告国に対する公売残代金(一一、〇三五、九九〇円)交付請求および予備的としての供託金(一一、〇三五、九九〇円)還付請求について

(公売残金交付請求の適否)

一、原告は、被告国に対し、国税徴収法第二八条第一項にもとづき、別紙目録中(一)(二)(三)の各建物の公売残代金一一、〇三五、九九〇円の支払いを請求している。

右請求が適法であるかどうかについて考える。

国税徴収法第二八条によつて、公売代金を滞納処分費および滞納税金に充当すると、納税義務は消滅するのであるが、滞納処分はまだ結了しない。滞納税金に充当した後の残金を債権者または滞納者に交付する行為(同法第二八条第一、二項)は、滞納処分のうち換価金の配当手続の一環をなす行為であり、なお一の行政処分である。右交付の完了によつて、滞納処分も結了すると解すべきである(同法施行規則第三〇条、同法施行細則第一九条参照)。

ところで、右交付受領権利者の保護は、次の方法で行われる。すなわち、(1)所轄官庁は、配当金の計算を終つたときは、滞納者または債権者に受領方の通知をする。公売残代金から債権者または抵当権者に交付すること(国税徴収法第二八条第二項)に異議ある者は、この旨を申し出る。所轄官庁はその事由を質権者または抵当権者に通知する。そして、異議ある者と右質権者または抵当権者との間で、和解または裁判により権利関係が確定されたのちに前記交付が行われる(同旨、明治三〇年七月大蔵省訓令第四〇号国税徴収事務取扱方第九条参照)。(2)、違法な交付処分または交付申請に対する拒否処分に対しては、再調査の請求、審査の請求、さらにこれらを経たうえでの行政訴訟の提起が認められている(国税徴収法第三一条の二、三、四)。

以上のとおり、公売残代金の交付行為は行政処分であるから、原告が被告国に対し、右公売残代金の交付を請求する訴は、行政処分を求める訴であり不適法で許されない。

(供託金還付請求の適否)

二、原告は、予備的に、「右公売残代金一一、〇三五、九九〇円の供託が有効であるならば、右供託金の還付を請求する。」と主張する。これに対して、被告国は、「民事訴訟によつて、供託金の還付請求をするのは不適法であるから、右訴は却下さるべきである。」と主張する。

供託法第八条、供託規則第二二条、第二四条(改正前は供託物取扱規則第五条)によると、被供託者が供託金の還付請求をするには供託物払渡請求書に所定の書類を添付しこれを供託所に提出しなければならない。

供託金の受領権利者に争いがあり、権者利が不明であるため供託が行われたときは、被供託者は、権利を争う者を相手方とする訴訟によつて被供託者であることを確定する勝訴の確定判決を得たうえ、はじめて還付請求をすることができる。供託物取扱規則第五条第三号に「裁判」(改正後の供託規則第二四条第二号では「還付を受ける権利を有することを証する書面」」というのは、右の意味であり、国を相手取つて直接に還付請求の訴訟を起すことができるという趣旨は含まれていない。

以上の手続をふんで行われた還付請求について、供託官吏は、理由があると認めるときは請求を認可のうえ払渡しをし(供託規則第二八条)、理由がないと認めるときは請求を却下する(右規則第三八条)。これらの処分は行政処分であつて、これらの処分に対する救済を求めようとする者は、供託法第一条の三ないし六に定める異議申立の手続を経て行政訴訟を提起することができるのである。

以上で明らかなとおり、供託金の還付は、所定の要件を満した還付請求に対する認可処分(行政処分)にもとづいて行われる。

したがつて、原告の本件供託金還付請求の訴は、右の手続を無視した不適法な訴であつて、許されない。

第五、被告国に対する損害賠償請求について

(破産会社が破産宜告を受けるまでの経過)

一、(証拠)を合わせ考えると、前記第二の一のとおりの経過を経て、破産会社は昭和二七年六月一二日ついに支払いの停止を表示するに至つたことが認められる。

右認定に反する証拠はない。

請求の原因(一)のとおり、破産会社は右支払停止ののち、更生手続を経て、昭和三一年八月七日午前一〇時破産の宜告を受け同時に原告がその破産管財人に選任されたことは、原告と被告国との間に争いがない。

(公売残代金が供託され、還付されるまでの経過)

二、次の事実は、原告と被告国との間に争いがない。

破産会社の所有する別紙目録中(一)の建物は昭和二七年六月二三日、同(二)の建物は同年八月一日、同(三)の建物は昭和三一年五月八日いずれも破産会社に対する国税滞納処分のため、国税徴収法にもとづき東京国税局長篠川正次によつて差し押えられ、公売処分に付された。その結果、右東京国税局長の売却決定があり、右(一)(二)の各建物の所有権は昭和三一年七月二日洗足電気工業株式会社に移転し、同月九日その所有権移転登記を完了し、右(三)の建物の所有権は同年六月二日中央土地株式会社に移転し、同年八月三一日その所有権移転登記を完了した。

東京国税局長篠川正次は、右の公売処分によつて得た売却代金から公売費用、滞納国税を差し引き、昭和三一年八月七日午前一〇時の破産宜告の当時、残金一一、〇三五、九九〇円を保管していた。

そして右局長は、公売残代金一一、〇三五、九九〇円について、交付すべき権利者を確知することができないという理由で昭和三一年八月一〇日東京法務局昭和三一年(金)第一六五八九号で金五〇〇万円、同局昭和三一年金()一六五九〇号で金六、〇三五、九九〇円を供託したが、昭和三一年一一月二一日被告明和産業および被告稲見に対し、それぞれ確知書(供託金還付請求権者であることを証明する書面)を交付した。

その結果、被告明和産業は昭和三一年一一月二一日、東京法務局から昭和三一年(金)第一六五八九号の供託金五〇〇万円のうち金三、九五〇、八六六円の、被告稲見は同日東京法務局から昭和三一年(金)第一六五九〇号の供託金六、〇三五、九九〇円の各還付を受けた。

以上は争いない事実である。

(右確知書の交付によつて原告が権利侵害を受けたかどうか)

三、まず、原告は、「被告明和産業、被告稲見らの担保権付債権については、別除権承認の手続(破産法第一九七条第一三号、第一九八条第二項、第一九九条)がとられていないから、供託金の還付請求権は右被告両名にはなく、原告にあるのであり、したがつて右確知書の交付にもとづく供託金の還付によつて原告は供託金の還付請求権を侵害された。」と主張する。

国税徴収法第二八条第二項によると、公売された目的物について抵当権(または質権)を有する者がいるときは、公売残代金をその抵当権者(または質権者)に交付し、なお残余があるときは、これを滞納者に交付すべきものである。したがつて、供託金の還付を請求することができる者はまず第一に抵当権者(または質権者)であり、滞納者は残余があるときに限り供託金の還付を請求することができるのである。

ところで、原告主張の別除権承認の手続は破産管財人の行為に対する制限を規定したものにすぎず、破産管財人が別除権を承認したかどうか、したがつて右承認の手続がとられたかどうかということは、低当権者が滞納者に優先して供託金の還付を請求することができることとは全く関係がない。

それゆえ、原告の右主張は理由がない。

次に、原告は、「破産会社が被告明和産業のためにした根抵当権設定登記行為、被告稲見、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業のための各抵当権設定契約は原告と右被告らとの間で(被告小名木のための右契約については被告稲見との間、被告同和興業のための右契約については被告木本鋼材との間でも、被告明和産業および被告稲見のための右登記行為および契約については、さらに原告と被告国との間でも、)それぞれ否認されるべきである。否認の結果、被告明和産業の根抵当権は原告に対し遡及的に対抗力を失い、被告稲見らその他の被告の各抵当権は遡及的に消滅した。したがつて、本件供託金の還付請求権は右被告らにはなく、原告にあるのであるから、右確知書の交付にもとづく供託金の還付によつて原告は供託金の還付請求権を侵害された」。と主張する。

被告国は破産会社の右各行為の相手方でなく、破産会社によつて設定された右各抵当権の転得者でもないことは原告の主張自体から明らかであるから、被告国は本件否認権行使の被告たる資格はなく、したがつて否認の効果も被告国との間に生じることはないのである。

しかし、原告のその他の被告らの間での本件否認権の行使は正当であり、その結果被告明和産業の根抵当権は原告に対し遡及的に対抗力を失い、被告稲見その他の被告らの各抵当権は遡及的に消滅したことは、後記第六に判示するとおりである。

そうであるとすると、被告明和産業、被告稲見らは本件公売残代金の交付を受ける権利、したがつてまた本件供託金の還付を受ける権利をもたなかつたことになり、右権利は本件破産財団に帰属していたことになるから、右確知書の交付にもとづく被告明和産業、被告稲見に対する供託金の還付によつて、本件破産財団は供託金の還付請求権を侵害されたものといわなければならない。

(右確知書の交付は東京国税局長らの故意または過失による違法な行為であるかどうか)

四、東京国税局長が確知書を交付したいきさつについては、(証拠)を合わせ考えると、次のとおり認められる。

被告明和産業と被告稲見との間で、別紙目録中(一)ないし(三)の建物に対する抵当権付債権の存否に関し原告主張のとおり訴訟で、紛争中であつたので、東京国税局長篠川正次は、国税徴収法第二八条第二項により公売代金を交付すべき権利者が不明であるとして、前記のとおりこれを供託したのであつた。

その後、被告明和産業、被告稲見から供託金を還付するようそれぞれ上申書が提出されたので、右東京国税局長は、下僚の鵜殿元一、雨宮剣周、恩蔵章、近藤栄一らに命じて調査をさせたところ、次の事実が判明した。

すなわち、更生手続において被告明和産業は、更生担保権者(別紙目録中(一)ないし(三)の各建物についての根抵当権者)として金三、九五〇、八六六円の債権の届出をしたところ、債権調査期日に異議がなかつたので、右更生担保権は確定した旨更生担保権者表に記載された。同じく更生手続において被告稲見は、更生担保権者(右各建物についての抵当権者)として金六、一九六、五〇〇円の債権の届出をしたところ、債権調査期日に更生会社は異議を述べなかつたが、更生管財人は全額について異議を述べた。しかし、更生裁判所によつて「右債権は執行力を有する債務名義のある債権であるから、更生管財人が所定の期間内に被告稲見に対し異議の訴を提起しなかつたことにより、右更生担保権は確定した。」旨更生担保権者表に記載された。という事実が判明した。

原告は昭和三一年八月七日破産管財人に就任した直後、東京国税局長に対し公売残代金の交付を要求したが、さらにその後同年一一月一八日着の内容証明郵便で、右局長に対し、「現に抵当権者間で債権の存否につき係争中である。なお、昭和三一年一一月一七日の債権者集会で被告明和産業、被告稲見その他主抵当権者に対し否認権を行使する議案が可決され、近く否認の訴を提起する予定である。少くとも否認の結果、原告が供託金を受領すべきことになるのであるから、供託金を処分すべきではない。」と申し入れた。

しかし、右東京国税局長は、前記下僚の意見を参考にし更生担保権者表に被告明和産業、被告稲見の前記各更生担保権が確定した旨記載されており、これらの記載は確定判決と同一の効力をもつものであると考え、右記載にしたがい先順位である右被告両名に確定額の範囲内で公売残代金を交付すべきであり、原告の右申入れは容れることができないと判断して、前記のとおり確知書を被告両名に交付したのであつた。

以上のとおり認められる。

右認定に反する証拠はない。

右の認定事実によると、右確知書の交付が右局長の故意または過失による違法行為であるかどうかの点は、次のとおり解するのが相当である。

東京国税局長は、各更生担保権者表の記載が確定判決と同一の効力をもつことを理由に右記載にしたがつて確知書を交付した。

しかし、執行力を有する債務名義のある行為についても否認権を行使することができることは、破産法第七五条の明記するところである。被告国は、右の各更生担保権者表の記載は有効である、と主張し、原告は被告稲見に関する更生担保権者表の記載は無効である、と争つているが、仮りに、被告国主張のとおり右の各更生担保権者表の記載が有効であり確定判決と全く同一の効力があるとしても、このことは右表に記載された各抵当権の設定契約(または設定登記行為)について否認権を行使することの妨げになるものではない。右東京国税局長は、原告からの本件否認権の行使について予告を受けていたのであるから、本件否認権行使の結果に被告明和産業、被告稲見らの抵当権が原告に対し遡及的に対抗することができなくなり、また遡及的に消滅し、本件供託金は原告に還付すべきものとなるおそれがあること、したがつて、被告明和産業、被告稲見に確知書を交付すれば、これにもとづき供託金が右被告両名に還付され、その結果、原告が本件供託金の還付請求権を侵害されることになるであろうことを充分に予知することができたはずである。しかも、前記第四の一に判示したとおり、公売残代金を抵当権者に交付することに異議のあるときは、異議者と抵当権者との間で、和解または裁判により権利関係が確定されたのちに公売残代金を交付すべきであり、このことは公売残代金が供託され、その供託金につき確知書を交付するについてもいえるのである。それゆえ、前記東京国税局長は、本件否認権訴訟の結果が判明するまで確知書を交付すべきでなかつたのであり、これに反する前記確知書の交付は違法である。右東京国税局長が原告の右権利を侵害することになる点を認識しながら、あえて右被告両名に確知書を交付したものとは認められないが、右の点を認識しなかつたことは右局長の過失といわなければならず、右確知書の交付は右局長の過失にもとずく違法な行為というべきである。

以上のとおり解するのが相当である。

(被告国の損害賠償義務について)

五、右確知書の交付は前記東京国税局長の職務行為によつて行われたのであり、その結果前記のとおり昭和三一年一一月二一日被告明和産業は金三、九五〇、八六六円、被告稲見は金六、〇三五、九九〇円の各供託金の還付を受けたことは、原告と被告国との間に争いがない。

したがつて、原告は右局長の過失による違法な職務行為によつて右供託金の還付請求権を侵害され、金九、九八六、八五六円の損害を蒙つたわけである。

以上の次第であるから、国家賠償法第一条第一項にもとづき、被告国は原告に対し、金九、九八六、八五六円の損害金とこれに対する昭和三二年二月一一日付第一準備書面(右の請求を記載してある)の送達の日の翌日である昭和三二年二月一四日から右支払ずみまで民法所定の五分の割合による遅延損害金とを支払う義務がある。

第六、被告明和産業、被告稲見、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業、被告木本鋼材との間の供託金還付請求権不存在確認の各請求について。

一、被告明和産業、被告稲見との間の各請求について。

(破産会社が破産宜告を受けるまでの経過)

(1) 破産会社が昭和二六年六月一二日支払いを停止した事情は前記第二の一のとおりである。(中略)

請求の原因(一)のとおり、破産会社が右支払停止ののち更生手続を経て昭和三一年八月七日午前一〇時破産の宜告を受け、同時に原告がその破産管財人に選任されたことは、原告と被告明和産業、被告稲見との間に争いがない。

(被告明和産業のための根抵当権の設定と登記)

(2) 被告明和産業は、はじめ原告主張の次の事実を認めて自白した。

破産会社は昭和二七年四月一五日被告明和産業との間に、破産会社の所有する別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき。被担保債権極度額は金五〇〇万円、契約期限は昭和三〇年四月一四日、特約として、不履行のときは期限の利益を失い期限後の損害金は日歩一〇銭を支払う、という根抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第三番、同(二)の建物につき第九番、同(三)の建物につき第一三番の各順位)をし、昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四三号で右根抵当権設定登記行為を了した。

以上の事実を被告明和産業は自白した。

その後、被告明和産業は、右登記行為の日について、「被告会社および被告明和産業が右登記申請をしたのは、昭和二七年六月一〇日であるから、右自白は真実に反し錯誤にもとづくから取消す。」と主張する。

(証拠)によると、右登記申請は昭和二七年六月一七日であることが認められる。

右登記申請の申請書(甲第二四号証の一)が昭和二七年六月一〇日付で作成されていることは、右認定をくつがえすに足りないし、右認定に反する証人(省略)の証言は信用することができない。

かように、右自白は、真実に反するものであるということができないから、取消すことはできない。

(被告稲見のための抵当権の設定と登記)

(3) 次の事実は原告と被告稲見との間に争いがない。

破産会社は昭和二七年六月一七日被告稲見との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、同年四月一日の消費貸借契約による「債権額は金七〇〇万円、弁済期日は同年六月一六日、利息は日歩一〇銭を毎月末日に支払う、特約としては、利息を期日に支払わないとき、期限の利益を失い、期限後の損害金が日歩二〇銭を支払う、」という債権担保のための共同抵当権設定契約(別紙目録中(一)の建物につき第四番、同(二)の建物につき第一〇番、同(三)の建物につき第一四番の各順位)をし、被告稲見は昭和二七年六月一七日東京法務局大森出張所受付第七四四四号で右の抵当権設定登記を了した。

以上は争いない事実である。

(別紙目録中(一)(二)(三)の各建物の公売処分、公売残金の供託、還付)

(4) 別紙目録中(一)(二)(三)の各建物が破産会社の税金滞納のため公売処分に付され、公売代金のうち滞納税金等に充当されて残つた金一一、〇三五、九九〇円が供託され、被告明和産業が金三、九五〇、八六六円、被告稲見が金六、〇三五、九九〇円の各供託金の還付を受けた事情は、請求の原因(七)の(1)、(2)、(八)、(一〇)のとおりであり、このことは原告と被告明和産業、被告稲見との間で争いがない。

(被告明和産業のための根抵当権設定登記行為の否認)

(5) (イ)、右(2)の事実から明らかなとおり、破産会社が被告明和産業のためにした根抵当権設定登記行為は、破産会社の支払いの停止後で、しかも根抵当権設定の日から一五日を経過した後の行為である。

証人(省略)の各証言を合わせ考えると、前記第一の三、(1)の認定のとおり、破産会社が支払停止をした昭和二七年六月一二日頃、多くの債権者が不安を感じて破産会社に押しかけ、破産会社が被告明和産業ら債権者に支払停止に至つた事情を説明したことがあつて、被告明和産業は、昭和二七年六月一七日の根抵当権設定登記行為当時、破産会社の支払停止の事実を知つていたことが認められる。(証拠)を合わせ考えると、被告明和産業は昭和二七年二月末頃会社内の人員整理のことなどに追われて混乱していたために根抵当権設定登記申請に手間取り、昭和二七年六月九日に至つてはじめて司法書士に右登記申請の委任をしたことは認められるが、このことによつて、昭和二七年六月一七日の登記申請当時、被告明和産業が破産会社の支払停止の事実を知つていたという前記認定を妨げることはできない。

(ロ)、更生手続が破産手続に先行した場合に、破産法第八四条にいう「一年」の期間は更生手続の期間を除外して算定すべきであると解すべきことは、前記第一の三、(2)で説明したとおりである。

これを本件に適用すると、更生手続の期間(昭和二七年一一月二四日から昭和三一年七月一二日まで)が除かれる結果、右根抵当権設定登記行為は破産宜告の日(昭和三一年八月七日午前一〇時)から一年未満前の行為ということになる。

以上に述べたところで明らかなとおり、破産法第七四条第一項にもとづき、原告は被告明和産業との間で、右根抵当権設定登記行為を否認することができるのである。

(ハ)、被告明和産業は、「更生手続が破産手続に先行する場合、更生手続開始決定の日から二年間否認権を行使することなく経過したときは、否認権は消滅し、同一行為を破産手続で否認することはできない。」と主張する。

しかし、右の主張が理由ないことは、前記第一の三、(3)で説明したとおりである。

(ニ) さらに、被告明和産業は、「被告明和産業の根抵当権は更生担保権者表に記載されて確定しているのに、この状態を無視し、登記行為の日から四年間も経つて突如として本件否認権を行使するのは、権利の濫用である。」と主張する。

しかし、否認の原因のある行為は、それから生ずる請求権につき破産者に対する債務名義が作られている場合でも、否認することができることは、破産法第七五条から明らかである。

したがつて、右更生担保権者表が原告に対し確定判決と同一の効力を有するにしても、原告が右根抵当権設定登記行為を否認することは、なんら差しつかえないし、登記行為の日から本件否認権の行使まで四年間も経過しているのは、更生手続が破産手続に先行したためであること、弁論の全趣旨により明らかであるから、本件否認権の行使をもつて権利の濫用とすることはできない。

(ホ)、以上(イ)ないし(ニ)のとおりであるから、原告の被告明和産業に対する本件否認権の行使は正当である。

(被告稲見のための抵当権設定行為の否認)

(6) (イ)前記(1)、(3)の事実によると、破産会社の被告稲見のための抵当権設定行為は、破産会社が支払停止ののちにした担保の供与であることは明らかである。破産会社と被告稲見との間に、あらかじめ担保供与の特約ができていたことを認めるに足りる証拠はないから、破産会社の右抵当権設定行為は法律上の義務なくしていた担保の供与であるといわなければならない。

被告稲見は、「被告稲見は抵当権の設定を受けた当時、破産会社の支払停止の事実を知らなかつた。」と主張する。

しかし、証人(省略)の各証言を合わせ考えると、前記第一の三、(1)の認定のとおり、破産会社が支払停止をした昭和二七年六月一二日頃、多くの債権者が不安を感じて破産会社に押しかけ、破産会社が被告稲見ら債権者に支払停止に至つた事情を説明したことがあつて、被告稲見は、昭和二七年六月一七日の抵当権設定当時、破産会社の支払停止の事実を知つていたものと認められる。

(中略)他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

(ロ)、更生手続が破産手続に先行した場合、破産法第八四条にいう「一年」の期間は更生手続の期間を除外して算定すべきであると解すべきことは、前記第一の三、(2)で説明したとおりである。

これを本件に適用すると、更生手続の期間(昭和二七年一一月二四日から昭和三一年七月一二日まで)が除かれる結果、右抵当権設定行為は、破産宜告の日(昭和三一年八月七日午前一〇時)から一年未満前の行為ということになる。

以上に述べたところで明らかなとおり、原告は、被告稲見との間で、破産法第七二条第二号にもとづき、右抵当権設定行為を否認することができるのである。

(ハ)、被告稲見は、「更生手続が破産手続に先行する場合、更生手続開始決定の日から二年間否認権を行使することなく経過したときは、否認権は消滅し、同一行為を破産手続で否認することはできない。」と主張する。

しかし、右主張の理由のないことは、前記第一の三、(3)で説明したとおりである。

(ニ) さらに、被告稲見は、「被告稲見の抵当権付債権は更生担保権者表に記載されて確定し、この記載は破産会社に対し確定判決と同一の効力を有している。したがつて本件否認権の行使は右の効力に衝突して許されないし、仮りに、そうでないとしても、権利の濫用で許されない。」と主張する。

しかし、右更生担保権者表の記載が破産会社に対し確定判決と同一の効力を有することは、原告が右抵当権設定行為を否認することの妨げにならぬことは、前記(5)の(ニ)で説明したとおりである。また本件否認権の行使が権利の濫用であることを認めるに足りる証拠もない。

(ホ)、以上(イ)ないし(ニ)のとおりであるから、原告の被告稲見に対する本件否認権の行使は正当である。

(否認の結果)

(7) 以上のとおり、原告の被告明和産業および被告稲見に対する本件否認権の行使は、いずれも正当であるから、否認の結果、被告明和産業の根抵当権は原告に対し遡及的に対抗力を失い、被告稲見の抵当権は遡及的に消滅した。

(被告稲見が被告小名木から転得した抵当権について)

(8) 破産会社が被告小名木のために共同抵当権を設定して登記を了し、被告稲見が被告から右共同抵当権の譲り受けたことは、前記第二の二のとおりである。

破産会社の右共同抵当権設定契約について、原告の被告稲見に対する否認権の行使は正当であり、否認の結果、被告稲見との間で被告小名木の右共同抵当権(請求の原因(四)の(2)のち別紙目録中(一)ないし(三)に対する抵当権)が遡及的に消滅し、したがつて被告稲見の右共同抵当権の譲受けが無効であることは、前記第二の三のとおりである。

(結論)

(9) してみると、被告明和産業は前記根抵当権をもつて原告に対抗することができず、被告稲見は前記共同抵当権を失つたのであるから、いずれも国税徴収法第二八条第二項によつて公売残代金の交付を受ける権利はなく、したがつて右供託金の残額金一、〇四九、一三四円の還付請求権が被告明和産業、被告稲見に属することはないものというべきである。

二、被告小名木との間の請求について。

原告の被告小名木に対する本件否認権の行使が正当であることは、前記第一の一ないし四に判示したとおりである。

してみると、被告小名木は前記共同抵当権を遡及して失つたのであるから、国税徴収法第二八条第二項によつて公売残代金の交付を受ける権利はなく、したがつて本件供託金の残額金一、〇四九、一三四円の還付請求権が被告小名木に属することはないものというべきである。

三、被告富国産業との間の請求について、

次の事実は原告と被告富国産業との間に争いがない。

破産会社は、請求の原因(一)のとおり、支払いを停止したのち更生手続を経て破産の宜告を受け、原告はその破産管財人に選任された。

破産会社は、請求の原因の(3)のとおり、昭和二七年七月一〇日被告富国産業との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)の各事物につき共同抵当権設定契約をし、被告富国産業は同日右抵当権設定登記を了した。

以上は争いない事実である。

その後別紙目録中(一)(二)(三)の各建物が破産会社の税金滞納のため公売処分に付され、公売代金のうちから滞納税金等に充当した公売残代金一一、〇三五、九九〇円が供託され、そのうち合計金九、九八六、八五六円が被告明和産業および被告稲見に還付され、供託金の残額が金一、〇四九、一三四円となつたことは、請求の原因(七)の(1)、(2)、(八)、(一〇)のとおりであり、このことは被告富国産業の明らかに争わないところであるから、被告富国産業は右の事実を自白したものとみなす。

そこで、右抵当権の設定行為に否認の原因があるかどうかについて考える。

右の各事実によると、破産会社の被告富国産業のための共同抵当権設定行為は、破産会社が支払停止ののちにした担保の供与であることは明らかである。破産会社と被告富国産業との間に、あらかじめ担保供与の特約ができていたことを認めると足りる証拠はないから、破産会社の右共同抵当権設定行為は法律上の義務なくしてした担保の供与であるといわなければならない。

破産富国産業は、右抵当権の設定を受けた当時、破産会社の支払停止の事実を知らなかつたことについて、主張も立証もしない。

したがつて、破産法第七二条第四号にもとづき、原告の被告富国産業に対する否認権の行使は正当である。

してみると、被告富国産業は右抵当権を失い、国税徴収法第二八条第二項によつて公売残代金の交付を受ける資格を失つたから右供託金の残額金一、〇四九、一三四円の還付請求権が被告富国産業に属することはないものというべきである。

四、被告林商事との間の請求について

被告林商事は、次の事実を明らかに争わないから自白したものとみなす。

破産会社は、請求の原因(一)のとおり、支払いを停止し、更生手続を経て破産の宜告を受け、原告はその破産管財人に選任された。

破産会社は昭和二七年七月二五日被告林商事との間に、破産会社所有の別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、請求の原因(四)の(4)のとおり、共同抵当権を設定し、被告林商事は同日右抵当権設定登記を了した。

そして、請求の原因(七)の(1)、(2)、(八)、(一〇)のとおり、別紙目録中(一)(二)(三)の各建物は破産会社の税金滞納のため公売処分に付され、公売代金のうちから滞納税金等に充当した公売残代金一一、〇三五、九九〇円は供託され、そのうち合計金九、九八六、八五六円は被告明和産業および被告稲見に還付され、供託金の残額は、一、〇四九、一三四円となつた。

以上は自白したものとみなされた事実ある。

そこで、抵当権の設定行為に否認の原因があるかどうかについて考える。

右の各事実によると、破産会社の被告林商事のための共同抵当権設定行為は、破産会社が支払停止ののちにした担保の供与であることは明らかである。破産会社と被告林商事との間に、あらかじめ担保供与の特約ができていたことを認めるに足りる証拠はないから、破産会社の右共同抵当権設定行為は法律上の義務なくしてした担保の供与であるといわなければならない。

被告林商事は、右抵当権の設定を受けた当時、破産会社の支払停止の事実を知らなかつたことについて、主張も立証もしない。

したがつて、原告の被告林商事に対する本件否認権の行使は、破産法第七二条第四号の要件をそなえているから、正当である。

してみると、被告林商事は右抵当権を失い、国税徴収法第二八条第二項によつて公売残代金の交付を受ける資格を失つたから、右供託金の残額金一、〇四九、一三四円の還付請求権は被告林商事には属しないものというべきである。

五、被告同和興業との間の請求について

(証拠)を合わせ考えると、前記第一の一のとおり、破産会社は支払いを停止し、更生手続を経て破産の宣告を受け、原告がその破産管財人に選任されたことが認められる。

(証拠)によると、破産会社は昭和二七年七月二九日被告同和興業のために、別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、請求の原因(四)の(5)のとおり共同抵当権を設定し、被告同和興業は同日右抵当権設定登記を了したことが認められる。

(証拠)によると、請求の原因(七)の(1)、(2)、(八)、(一〇)のとおり、別紙目録中(一)(二)(三)の各建物は破産会社の税金滞納のため公売処分に付され、公売代金のうちから滞納税金等に充当した公売残代金一一、〇三五、九九〇円は供託され、そのうち合計金九、九八六、八五六円は被告明和産業および被告稲見に還付され、供託金の残額は金一、〇四九、一三四円となつたことが認められる。

右の各認定に反する証拠はない。

そこで、右の抵当権設定行為が原告主張の破産法第七二条第二号の否認の原因をそなえているかどうかについて考える。

前記の事実によると、本件抵当権の設定は破産会社が支払いを停止したのち約一カ月半も経過した昭和二七年七月二九日にした行為である。

このことと、証人(省略)の各証言とを合わせ考えると、前記第一の(三)、(1)の認定のとおり、破産会社が支払停止をした昭和二七年六月一二日頃、多くの債権者は不安を感じて破産会社に押しかけたが、その際破産会社は、これら債権者に支払停止に至つた事情を説明し、これをかくす態度をとらなかつたので、被告同和興業は、昭和二七年七月二九日の右抵当権設定当時、破産会社の支払停止の事実を知つていたことが認められる。

右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

更生手続が破産手続に先行した場合、破産法第八四条にいう「一年」の期間は更生手続の期間を除外して算定すべきであることは、前記第一の三、(2)で説明したとおりである。

これを本件に適用すると、更生手続の期間(昭和二七年一一月二四日から昭和三一年七月一二日まで)が除かれる結果、右抵当権設定行為は、破産宣告の日(昭和三一年八月七日午前一〇時)から一年未満前の行為ということになる。

したがつて、原告の被告同和興業に対する本件否認権の行使は破産法第七二条第二号の要件をそなえているから、正当である。

してみると、被告同和興業は右抵当権を失い、国税徴収法第二八条第二項によつて公売残代金の交付を受ける資格を失つたから、右供託金の残額金一、〇四九、一三四円の還付請求権は被告同和興業に属しないものというべきである。

六、被告木本鋼材との間の請求について

次の事実は原告と被告木本鋼材との間に争いがない。

破産会社は、請求の原因(一)のとおり、支払いを停止し、更生手続を経て破産の宣告を受け、原告はその破産管財人に選任された。

破産会社は、請求原因(四)の(5)のとおり、昭和二七年七月二九日被告同和興業のため、別紙目録中(一)(二)(三)の各建物につき、原告主張のとおりの共同抵当権を設定し、被告同和興業は同日右抵当権設定登記を了した。

そして、被告木本鋼材は昭和二九年四月三〇日被告同和興業から右抵当権を被担保債権とともに譲り受けて転得した。

以上は当事者間に争いがない事実である。

請求の原因(七)の(1)、(2)、(八)、(一〇)のとおり、別紙目録中(一)(二)(三)の各建物は破産会社の税金滞納のため公売処分に付され、公売代金のうちから滞納税金等に充当した公売残代金一一、〇三五、九九〇円は供託され、そのうち合計金九、九八六、八五六円は被告明和産業および被告稲見に還付され、供託金の残額は金一、〇四九、一三四円となつたことは、被告木本鋼材の明らかに争わないところであるから、これを自白したものとみなす。

そこで、原告の被告木本鋼材に対する本件否認権の行使が理由があるかどうかについて判断する。

破産会社の被告同和興業に対する右共同抵当権設定行為が、破産法第八四条にいう破産宣告の日から一年前にした行為ではなく、かつ破産法第七二条第二号の否認の原因をそなえていることは、右五で述べたとおりである。

前記のとおり、破産会社が支払いを停止したのは昭和二七年六月一二日であり、被告同和興業が右抵当権の設定を受けたのは、右支払停止ののち約一カ月半も経過した昭和二七年七月二九日であることは、被告木本鋼材の認めるところである。この日時のへだたり、その他弁論の全趣旨に照らして、被告木本鋼材がなんらの反証も提出しない本件では、被告木本鋼材の右抵当権を転得した昭和二九年四月三〇日当時、被告同和興業に否認の原因(抵当権設定当時、被告同和興業が右支払停止の事実を知つていたこと)があるのを知つていたと推認することができる。

したがつて、破産法第八三条第一項第一号により、原告の被告木本鋼材に対する本件否認権の行使は正当である。

してみると、被告木本鋼材は右抵当権を失い、国税徴収法第二八条第二項によつて公売残代金の交付を受ける資格を失つたから右供託金の残額金一、〇四九、一三四円の還付請求権は被告木本鋼材には属しないものというべきである。

第七、被告明和産業、被告稲見、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業、被告木本鋼材、被告林、被告国との間における否認の宣言を求める各請求について

原告は、破産法上の否認権にもとづき、右被告らとの間において、請求の趣旨(一)、(二)、(三)、(六)、(七)、(八)、(九)のとおり根抵当権設定登記行為、代物弁済の予約行為をそれぞれ否認する、との判決を求めている。

このような形成の訴が許されるかどうかについて判断する。

(1)  否認権は訴または抗弁によつて訴訟上行使されなければならない(破産法第七六条)。否認権が抗弁として行使することができるという以上、その場合に、否認権行使の効果(形成力)は判決主文の判断事項ではなく、判決理由中で判断されるにとどまることになるから、否認の効果はすでに抗弁で否認の意思を表示することによつて発生していなければならないはずである。否認権が抗弁として行使された場合に、判決をまたず否認の効果が生ずるとすれば、それが訴によつて行使される場合にも同じ道理であり、請求を理由あらしめる攻撃方法として否認権が主張されることによつて直ちに否認の効果は発生するものと解すべきである。

(2)  否認権は、一般の法律行為の取消と違い、当該行為の当事者間では瑕疵なく成立した財産の取得について干渉を加え、その行為を無効にするのであるから、その行使は慎重に、その存否は明確にする必要がある。しかし、この要求を満たすには、必ずしも否認の形成判決によることを必要とせず、否認権を訴訟上攻撃防禦方法として主張することで足りるのである。

形成判決は、権利関係の変動を多数人間または一般第三者間で劃一的に確定させる必要から要求される。否認権の行使は、破産者のした財産上の行為を無効にする効果を有するが、これは破産財団に対する関係で相対的に生ずると過ぎないのであるから、これについてはとくに形成判決による確定は必要としない。

また、否認権の目的は不当に逸出した財産を取り戻し、破産財団を復元することにあるから、否認権の行使につき形成判決を求めることを必要とし、否認の効果の発生を右判決の確定にかからせることは、否認権の右の目的からいつて迂遠であり、不適当である。

(3)  以上の理由により、否認権の行使は、裁判上攻撃防禦方法として否認の意意を表示するをもつて足り、請求の趣旨としては、否認の結果生じる権利関係にもとづき給付または確認を求めるべきである、とするのが相当である。

したがつて、否認の宣言を求める訴は不適法であつて許されない。

第九、結論

以上の次第であるから、原告の各請求のうち、

(一)  被告小名木、被告稲見、被告林に対する否認登記手続の各請求は、前記第一ないし第三に判示のとおり、被告国に対する損害賠償請求は、前記第五に判示のとおり、被告明和産業、被告稲見、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業、被告木本鋼材との間の供託金還付請求権不存在確認の各請求は、前記第六に判示のとおり、いずれも正当であるから認容し、

(二)  被告明和産業、被告稲見、被告小名木、被告富国産業、被告林商事、被告同和興業、被告木本鋼材、被告林、被告国との間における否認の宣言を求める各訴は、前記第七に判示のとおり、被告国に対する公売残代金交付請求および供託金還付請求の各訴は、前記第四に判示のとおり、いずれも不適法であるから却下し、

(三)  予備的に求めている被告明和産業、被告稲見に対する不当利得金返還請求は、第一次の被告国に対する損害賠償請求を認容したから、判断しない。

よつて、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九三条、第九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第六部

裁判長裁判官 新 村 義 広

裁判官 猪瀬慎一郎

裁判官西沢潔は転任のため署名することができない。

裁判長裁判官、新 村 義 広

目録《省略》

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