大判例

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東京地方裁判所 昭和32年(ワ)711号 判決

恵比寿商工信用組合

事実

原告明治興業株式会社は請求の原因として、被告恵比寿商工信用組合は、昭和三十一年九月二十七日、金額百万円の持参人払式先日附小切手四通を振り出して訴外明治工業株式会社に交付したが、同訴外会社は同年九月二十五日原告にこれを裏書譲渡したので、原告は同年九月二十八日右小切手を呈示したところ、支払人はその支払を拒絶し、即日小切手面に呈示の日附を表示して支払拒絶の宣言を附した。よつて被告は、原告に対し右小切手金合計四百万円及びこれに対する支払済に至るまでの利息を支払うべき義務がある。

仮りに、本件小切手が被告信用組合浅草支店の職員北島晴明により事実上振り出され、かつ、右北島に支店長に代り本件小切手を振り出す権限がなかつたとしても、同支店長今田平五郎は、原告に宛て、昭和三十一年十月八日、金額百万円の約束手形四通を振り出して(右約束手形は、何れも預金不足によりその支払を拒絶された。)、北島晴明の無権代理行為を追認したから、被告は原告に対し、右約束手形金合計四百万円及びこれらの手形金に対する支払済までの遅延損害金を支払う義務がある。

よつて原告は、右何れかの原因に基いて、被告に対し、前記各金員の支払を求めると主張した。

被告恵比寿商工信用組合は抗弁として、本件小切手は、北島晴明及び小川肇が偽造したものであつて、小川肇は訴外明治工業株式会社の代表者村山寛治と懇意な間柄にあるから、原告は本件小切手が偽造であることを知り、又は知り得べきものであつた。また、仮りに、被告信用組合浅草支店長今田平五郎が、原告主張の各約束手形を振り出したとしても、同人は、そのような追認をなす権限を有しないから、右約束手形の振出行為は無効であると主張した。

理由

証拠によれば、本件小切手は、被告恵比寿商工信用組合浅草支店職員北島晴明と、日亜交易株式会社の代表取締役小川肇とが共謀の上、昭和三十一年九月二十五日頃被告信用組合浅草支店において偽造したこと、同支店長今田平五郎は同年同月二十八日、原告が、支払人株式会社三菱銀行雷門支店に本件小切手の支払呈示をしたことを聞き、始めてそれが偽造されたことを知つたが、偽造を理由として支払を拒絶すると、被告信用組合の対外的信用に影響を及ぼすことが大きいので、それを避けるため、本件約束手形四通を振り出し、右三菱銀行雷門支店から本件小切手四通の返還を受け(支払拒絶の理由は資金不足ということにして)、不渡処分を免れたこと、しかし右約束手形につき原告から満期に支払場所において支払呈示を受けたが、預金不足を理由としてその支払を拒絶したことが認められる。しかして、証拠によれば、被告信用組合は、浅草支店のみならず、各支店に約束手形振出の権限を与えていなかつたことが認められるけれども、右約束手形四通は、被告信用組合浅草支店長今田平五郎がその支店長の資格において振り出したものであることがその手形の記載からも明白であるから、原告において、今田平五郎が被告信用組合を代表して本件約束手形を振り出したものと信じたのは当然であり、かつ、そう信ずることは正当の理由であるといわなければならない。従つて、今田平五郎が本件約束手形四通を振り出したことは北島晴明が権限なくして本件小切手を発行した行為を追認した効果を生じたものということができる。

してみると、原告が被告に対し、右約束手形金四百万円及びこれに対する支払済に至るまでの遅延損害金を求める本訴請求は正当である、としてこれを認容した。

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