大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京地方裁判所 昭和33年(ソ)103号 決定

抗告人 北島和子

右法定代理人親権者 北島セツ

右代理人弁護士 森川金寿

同 曽我部東子

相手方 鈴木作次郎

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告理由は別紙のとおりである。よつて按ずるに原判決正本が昭和三十三年三月六日原審被告北島かねの訴訟代理人堀内左馬太に送達されたことは本件記録添付の京橋郵便局集配員長崎辰造作成の郵便送達報告書により認め得べく、北島かねが同月十二日死亡したことも受継申立書中の戸籍謄本によつて認められる。

このような場合に若し訴訟代理人の代理権が原審だけの代理であれば、原判決正本の送達によつて訴訟代理権は消滅するから、その後の本人の死亡により訴訟手続は中断するけれども、若し控訴上告の特別授権がなされているならば、原判決正本の送達があつても訴訟代理権は消滅しないからその後に本人が死亡しても訴訟手続は中断しない。

ところで北島かねが原裁判所に提出した訴訟委任状には、右委任の範囲として「反訴、控訴、上告又はその取下及び訴の取下」を包含するものとしてその旨不動文字をもつて表示されている。

抗告人は右不動文字は意味なき例文に過ぎず、そうでないとしてもこれを抹消するのを怠つたのであつて、北島かねはかかる特別授権をしていなかつたと主張するけれどもこれを認めるに足る証拠はない。のみならず北島かねが堀内左馬太を本件訴訟事件について同人の代理人に選任し、前記のような権限を授与する旨の記載ある訴訟委任状が原裁判所に提出され、右委任状が本件記録に添付されている以上、北島かねは少くとも原裁判所に対しその旨の表示をしたものというべく、訴訟委任は訴訟行為であるから、仮に北島かねにおいて特別授権の意思を有していなかつたとしても、その表示がある以上これがため右表示に基く法律効果の発生は妨げられないものというべきである。(東京控訴昭和八年六月十三日決定、大審院昭和八年七月二十七日民一部決定民集十二巻二十号二〇五八頁参照)

そうするといずれにしても堀内左馬太は前記委任状記載のとおり特別授権を受けていたと認めるのほかはないから、前述の理由により訴訟代理人に原判決正本が送達された後ちに委任者である北島かねが死亡しても訴訟手続は中断することはない。

しかるに、抗告人は北島かねの相続人として原判決正本送達後かねの死亡により訴訟手続が中断したことを理由に、同年八月二十八日に本件受継申立をしたのであるから、右申立は失当であつて、これを却下した原決定は相当である。本件抗告は理由がない。

よつて民事訴訟法第四百十四条、第三百八十四条、第八十九条により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 千種達夫 裁判官 松本武 斉藤昭)

〈以下省略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

本サイトは報道(不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること)を事業としており,掲載された全ての情報は報道等に活用することを目的としています。

©daihanrei.com