大判例

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東京地方裁判所 昭和33年(特わ)181号 判決

被告人 株式会社細山太七商店

代表者代表取締役 細山武夫 外一名

主文

1、被告会社株式会社細山太七商店を判示第一の事実につき罰金二百五十万円、同第二の事実につき罰金百五十万円に、

被告人細山武夫を判示第一の事実につき罰金十五万円、同第二の事実につき罰金十万円に

それぞれ処する。

2、被告人細山武夫が右各罰金を完納することができないときは、それぞれ金千円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は東京都中央区新川二丁目六番地の一に本店を設け、石油類の販売等を営業目的とする資本金百九十万円の株式会社であり被告人は昭和三十四年一月十三日まで右会社の常務取締役として前社長細山太七を補佐してその業務全般を掌理していたものであるが、被告人は、取引先である日商産業株式会社等に対する合計約三千万円に達する売掛金の焦付債権が発生し、仕入先であるシエル石油株式会社より石油類を買い付けるにつき資金ぐりが著しく困難になつたので、窮した揚句、前社長細山太七の指示に基き、法人税を逋脱しようと企て、被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、売上脱漏等の方法により

第一、昭和二十九年四月一日より昭和三十年三月三十一日までの事業年度において、被告会社の実際の所得金額が五千二百十九万一千二百十三円であつたのに拘わらず、同年五月三十一日所轄京橋税務署長に対し、所得金額が六百六十九万五千百三十七円である旨虚偽の確定申告書を提出し、以つて同会社の右事業年度の正規の法人税額二千三百七十九万三千五百円と右申告税額三百十六万四千八百十円との差額二千六十二万八千六百九十円を逋脱し

第二、昭和三十年四月一日より昭和三十一年三月三十一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二千六百二十一万六千四百七十八円であつたのに拘わらず、同年五月三十一日所轄京橋税務署長に対し、所得金額が百五十六万二百六十七円である旨虚偽の確定申告書を提出し、以つて同会社の右事業年度の正規の法人税額千九十三万一千三百二十円を右申告税額六十七万八百十円との差額一千二十六万五百十円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(法令の適用)

被告会社の判示行為はいずれも昭和三十二年法律第二十八号附則第十六項、同法律により改正される以前の法人税法第五十一条第一項第四十八条第一項第二十一条第一項に該当するので、それぞれその所定の罰金額の範囲内において処断し、被告人の判示行為は各旧法人税法第四十八条第一項第二十一条第一項に該当するので、いずれも所定刑中罰金刑を選択し、その所定の罰金額の範囲内において処断すべきところ被告会社並びに被告人の情状につき考察するに、

(一)  両者にとり不利な点

(イ)  本件脱税は売上額の脱漏、期末在庫品の脱落、担保物件を棚上げしたままでの貸倒損金の計上、雑収入の被告会社帳簿への不記載とこれが私的な流用、無記名銀行定期預金等の方法により、計画的になされたものであること

(ロ)  脱税額は判示第一の事実につき金二千余万円、第二の事実につき金一千余万円の多額に及び、国民の最大義務の一つである納税義務に違背し、国家の課税権を侵害すること甚しいもので、その責任軽からざるものがあること、

(二)  両者にとり有利な点

(イ)  被告会社は明治三十八年五月石油類の販売店として細山太七の個人経営により発足し、昭和二十五年十二月株式会社に組織を変更して今日に至つたものであるが、業界の老舗としてその中枢的地位を確保し、多くの有名会社、官庁、学校等を得意先に擁し、業績見るべきものがあると共に、戦前戦中戦後を通じ、国家公共のために貢献すること少なからざるものがあつたこと

(ロ)  本件犯行の動機は判示の如く、取引先に対する莫大な焦付債権が発生し、仕入先より商品を買い付けるにつき資金ぐりが著しく悪化したこと等に基因するのであるが、これは戦後自由競争時代に突入し、手形取引がにわかに増加したのに拘わらず被告会社においてこれに対する適切な対策を欠き悪徳業者の跳梁に乗ぜられたこと、一方シエル石油株式会社の異常に厳しい取引条件のため資金の融通性を欠くと共に同会社外人幹部社員に対する機密費の必要に迫られたこと等によるもので、その動機につき掬むべきものがあること

(ハ)  被告会社は株式会社に改組後も個人商店時代と同様前社長細山太七の極端な独裁下にあり、被告人は名は常務取締役といつても、実質は単なる従業員にすぎず前社長に対する発言権が極めて少なかつたもので、本件も前社長の指示があつたので、これを拒み得ずして、やむなく敢行するに至つたこと

(三)  本件犯行が発覚するや、被告人及び被告会社の首脳部はいたく前非を悔い、捜査の当初より当公判廷に至るまで犯行を率直に認め、速かに修正申告をして昭和三十三年十二月二十五日までに脱税額を含む未納税額を完納し、改悛の情顕著なものがあること、

以上被告会社並びに被告人に有利、不利な情状を勘案し、被告会社に対しては判示第一の罪につき罰金二百五十万円、同第二の罪につき罰金百五十万円、被告人に対しては判示第一の罪につき罰金十五万円、同第二の罪につき罰金十万円にそれぞれ処することとし、被告人が右各罰金を完納することができないときは、刑法第十八条により、金千円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。

そこで主文のように判決した次第である。

(裁判官 東徹)

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