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東京地方裁判所 昭和33年(行)71号 判決

原告 山田鉱一

被告 東京国税局長

主文

原告の第一次の被告が昭和三十三年六月二日別紙物件目録記載の不動産につきなした公売処分の取消を求める訴を却下する。

原告の予備的の前記処分の無効確認の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、双方の求める裁判

一、原告

(第一次)

(一) 被告が原告に対する滞納処分として昭和三十三年六月二日別紙物件目録記載の不動産につきなした公売処分はこれを取消す。

(二) 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決。

(予備的)

右訴が不適法であるとすれば、

(一) 前記処分が無効であることを確認する。

(二) 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決。

二、被告

(本案前)

主文第一、第三項同旨の判決

(本案につき)(第一次請求及び予備的請求に対して)

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二、双方の主張

一、請求の原因

(第一次)

(一) 被告は原告に対する滞納処分として昭和三十三年六月二日原告所有の別紙物件目録記載の不動産(以下本件不動産という)を公売した。

(二) しかしながら右公売は次の点において違法である。

(1)右公売は原告に国税の滞納がないにもかかわらずなされたこと。

(2)公売は公告の初日より十日の期間を過ぎたる後これを執行すべきものであるが(国税徴収法施行規則第二十二条)、右公売は公告が行われた昭和三十三年五月二十七日から十日以内になされていること。

(三) よつて公売の取消を求めるために本訴に及んだ。

(予備的)

(一) 被告は前記のように公売処分をした。

(二) 右公売処分には前記のような瑕疵があり、右瑕疵は重大且つ明白であるから、右処分は無効である。

(三) よつて右公売処分の無効確認を求める。

二、被告の答弁及び主張

原告の本訴請求中、本件公売処分の取消を求める訴は法定の訴願を経ていない不適法な訴であるから却下さるべきである。

(請求の原因に対する答弁)(第一次請求及び予備的請求を通じて)

各請求の原因第一項の事実は認め、第二項は否認する。

(被告の主張)

(一) 原告には本件不動産の公売日現在四十五万三千六百七十八円の滞納国税があつたので本件不動産を公売に付したものであるから本件公売は違法でない。

(二) 本件公売公告は昭和三十三年五月二十一日に行われており右公告の初日から十日間を経た後である六月二日に公売がなされたのであるから本件公売は違法でない。

(三) よつて原告の各請求は理由がない。

三、被告の本案前の主張に対する原告の主張

(一)  原告は本件公売の事実を昭和三十三年八月十九日係官の知らせで知つたので、同年九月五日被告に対し審査の請求をした。

(二)  原告は昭和三十三年五月三十一日当裁判所に本件公売処分の執行停止を申請したが(昭和三十三年(行モ)第一一号)、公売期日が六月二日であつたためその実効をおさめえなかつたのである。右申請当時本件不動産の落札者が、同地上にある建物の所有者である原告に対し建物収去土地明渡請求訴訟その他の裁判手続を提起してくることが明らかな状況にあつたので、訴願手続を経ていたのでは著しい損害を蒙るおそれがあり、そこで訴願を経ずに本件訴訟を提起したもので、訴願を経なかつたことにつき正当な理由がある。

第三、証拠〈省略〉

理由

一、本件処分の取消を求める訴についての判断

昭和三十三年六月二日本件公売処分がなされたことは当事者間に争がない。

右処分に対し原告が被告に同年九月五日審査の請求をしたことは弁論の全趣旨からこれを認めることができる。しかしながら滞納処分に対する審査の請求は原則として処分の通知を受けた日または処分の通知のないときはこれを知つた日から一ケ月以内になすべきものであるが、公売処分については法律上処分のなされたことを滞納者に通知すべき規定はないから、公売処分に対する審査の請求は滞納者がこれを知つたときから一ケ月以内にこれをなすべきである。原告は本件公売処分を昭和三十三年八月十九日になつて始めて知つたと主張するけれども、原告は昭和三十三年五月二十七日付の公売通知書により六月二日に本件公売処分を行う旨の通知を受けたので五月三十一日本件訴を提起し、併せて右処分の執行停止を申請していることは記録上明らかであるから、原告としては右期日に公売が行われたかどうかについては深い関心を有していたものと解せられるし、右執行停止の申請に対する被告の意見書(同年六月七日受付)には六月二日すでに本件公売がなされたことが記載されており、また昭和三十三年七月十七日の本件口答弁論期日において原告訴訟代理人は本件処分のなされたことを前提とする主張をしていること右期日に原告本人も出頭していたことは記録上明らかであつて、原告としても、少くとも右期日頃までには本件公売処分の行われたことを知つていたと推認されるから、前記審査請求は期間経過後の不適法なものであるというべきであつて、右審査請求によつては訴願前置の要件を満すものとはいえないといわなければならない。

また原告主張のように本件不動産の競落人から建物収去土地明渡の訴訟を提起されることが明らかな事情にあるにしても、審査請求をしてから三ケ月を経ても決定のないときは審査決定を経ないで訴訟を提起できるのであるから、即時に明渡の執行を受けるわけではない本件においては右のような事情があつても審査の請求を経ることにより著しい損害を受けるとは認め難いし、また他に審査の請求を経ないことにつき正当な事由があると認めるに足る証拠はない。

してみると本件公売処分の取消を求める訴は本案につき判断するまでもなく、訴願前置の要件を欠く不適法な訴であるといわなければならない。

二、本件公売処分の無効確認を求める訴についての判断

(一)原告は本件公売処分は原告に滞納税金がないにもかかわらずなされた点で違法であると主張する。

証人中島康の証言及び右証言により真正に成立したと認める乙第二、三、第七号証によると、本件公売処分のなされた昭和三十三年六月二日当時、昭和二十三年度所得税はすでに完納されていたが、昭和三十一年一月二十七日確定した右所得税に対する利子税十六万九千六百二十円、同日確定した右所得税延滞加算税二万一千四百円、昭和二十五年五月十一日確定した右所得税延滞金一万一千八百十円、昭和二十四年八月三十一日を納期として更正処分により発生した昭和二十四年度財産税十一万六千八百三十八円、右財産税に対する加算税三万百九十円、右財産税追徴税七万八千三十円、昭和二十四年十二月十六日確定した右財産税延滞金一万九千六百九十円、同日確定した右財産税延滞加算税六千百円、計四十五万三千六百七十八円の国税の滞納のあつたこと、本件公売は右滞納税額徴収のためになされたものであることが認められ右認定を左右するに足る証拠はない。してみると本件公売は右原告主張の点においては違法でないといわなければならない。

(二)次に原告は本件公売処分は公告の初日から十日の期間を経過しないうちになされた点において違法であると主張する。

証人中島康の証言によると本件公売処分の公告は昭和三十三年五月二十一日に行われたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

そうすると本件公売は同年六月二日に行われたことは当事者間に争がないから右公売の公告の初日から十日間を経た後になされていることは明らかであり、右原告主張の点においては違法でないといわなければならない。

(三)そうすると本件公売処分は違法とはいえないから勿論無効であるとはいえない。

三、よつて原告の本訴請求中本件公売処分の取消を求める訴は不適法であるからこれを却下することとし、右処分の無効確認を求める訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石田哲一 地京武人 越山安久)

(別紙省略)

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