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東京地方裁判所 昭和36年(行)70号 判決

原告 竹田仲

被告 文京区長・国・内閣総理大臣

訴訟代理人 横山茂晴 外三名

主文

1、本件申立のうち、原告と被告文京区長との間において同被告が昭和三六年七月二一日原告の住民登録届を却下した処分の無効確認を求める部分についてはその請求を棄却し、その余の部分については訴えを却下する。

2、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(当事者双方の申立て)

第一、請求の趣旨

一、原告と被告文京区長との間において、原告の住民登録届に対し同被告が昭和三六年七月二一日なした却下処分の無効であるこを確認する。

二、原告と被告国および同内閣総理大臣との間において、

(一) 警視庁四谷警察署長が昭和一三年一月九日原告に対してなした違警罪即決例に基づく拘留一〇日の処分の無効であること、

(二) 昭和一三年ころ警視庁衛生部区務課係員と東京府歯科医師会東京市本郷区支部会長越川直が共謀し、診療所取締規則ならびに歯科診療所取締規則の違反者として原告から歯科医帥の資格をはく奪しようとした事実の存在すること、

(三) 最高裁判所が同裁判所昭和二六年(あ)第三、二一九号事件につき昭和二八年五月一二日原告に対して言い渡した上告棄却の判決の無効であること、

(四) 社団法人東京都文京区歯科医師会々長福田秀一が昭和二三年四月ころ原告を同歯科医師会から除名した処分の無効であること、

(五) 原告が第二次大戦中に東京都本郷区駒込動坂町二三一番地内藤良平方の住所から内閣総理大臣東条英機に対し質問状を提出したこと、

を確認する。

三、原告が被告らに対し、右第一、二項記載の処分ないし行為によつて受けた損害の賠償請求権を有することを確認する。

四、訴訟費用は被告らの負担とする。

第二、被告らの申立て

一、本案前の申立て

1、本件訴えをいずれも却下する。

2、訴訟費用は原告の負担とする。

三、本案の申立て

1、原告の請求をいずれも棄却する。

2、訴訟費用は原告の負担とする。

(当事者双方の主張)

第一、請求の原因

一、請求の趣旨第一項について

原告は、昭和三六年七月一日付書留郵便で被告文京区長に対し原告の住所を同区駒込動坂町二三一番地(昭和四〇年四月一日からは同区千駄木四丁目八番六号と住居の表示が変更された。以下同じ。)内藤良平方とする住民登録届をしたところ、同被告は同月二一日原告が同所に居住している事実がないものとして右住民登録届を返戻してこれを却下した。

しかしながら、原告は従前から東京都台東区上野桜木町一八番地竹田志ん方に居住していて、前記届出住所では現実に起居したり、歯科診療所を開設したことはないけれども、昭和一一年一二月二八日寄留法(大正三年三月三一日法律第二七号)及び寄留手続令(大正三年一〇月二八日勅令第二二六号)に基づき右届出住所(当時東京市本郷区駒込動坂町二三一番地内藤頼松方)に転寄留して以来同所を住所としているものであり、現在も同所を医療法に基づく往診歯科医師の診療所として東京都知事に届け出て、往診の根拠地として使用しているのであり、また被告文京区長自身も原告が同所に住所を有することを認めて昭和三五年四月二八日国民健康保険料金六〇〇円を領収しているのである。かように、原告が右届出住所地に住所を有することは明らかであるから、原告の右住民登録届を却下した被告文京区長の処分は無効である。

二、請求の趣旨第二項(一)について

昭和一三年一月九日、警視庁四谷警察署保安主任は原告に対し清水建設株式会社副社長清水一雄及びその女婿である株式会社栄進社代表取締役清水毅ほか三一名を撮影した写真原板の提出を求め、原告がこれを拒絶したところ、同警察署長は違警罪即決例に基づき原告に対し拘留一〇日の処分をした。

しかしながら、右拘留処分は、原告の家族に通知されず、また原告の正式裁判請求の申立てを握りつぶし、原告からの不服申立ての方途をまつたくとざしてなされたものであるから無効である。

三、請求の趣旨第二項(二)について

昭和一三年ころ、歯科医師の開業については歯科医師法により歯科診療所開設届と歯科医師会に対する会員届とが必要とされていたが、当時原告は東京府歯科医師会東京市本郷区支部の幹事をしていて歯科医師を開業していなかつたから歯科診療所開設届は必要でなかつたにもかかわらず、警視庁衛生部医務課係員と右本郷区支部会長越川直は共謀のうえ、原告が無届で歯科診療所を開設している旨虚偽の事実をねつ造し、もつて診療所取締規則および歯科診療所取締規則(昭和八年一〇月四日内務省令第三一号)の違反者として原告から本郷区における歯科医師の資格をはく奪しようとした。よつて、右事実の存在することの確認を求める。

四、請求の趣旨第二項(三)について

原告は、昭和二四、五年ころ、東京簡易裁判所に窃盗罪で起訴され、同裁判所において懲役一〇月、執行猶予三年の判決を受け、東京高等裁判所に控訴したがこれを棄却されたので、さらに最高裁判所に上告したところ(同裁判所昭和二六年(あ)第三、二一九号)、同裁判所も昭和二八年五月一二日上告棄却の判決をした。

しかしながら、原告は、右判決によつて認定された靴一足の窃取という犯罪事実を犯したことはないから、右判決は事実無根の犯罪事実を認定したものであつて無効である。

五、請求の趣旨第二項(四)について

社団法人東京都文京区歯科医師会々長福田秀一は、昭和二三年四月ころ、原告が同会に対する届出住所東京都文京区駒込動坂町二三一番地内藤良平方に居住していないという理由で、原告を同会から除名した。

しかしながら、原告は、第一項にも記載したとおり、昭和一一年一一月二八日から同所を住所としているのであるから、この事実を無視してなされた右除名処分は無効である。

六、請求の趣旨第二項(五)について

原告は、第二次大戦中に、当時の内閣総理大臣東条英機に対し飛行機の機材使用に関する質問状を原告の当時の住所東京都本郷区駒込動坂町二三一番地内藤良平方から提出した。よつて、右事実の確認を求める。

七、請求の趣旨第三項について

前六項に記載したような、(1)被告文京区長のなした住民登録届の違法な却下処分、(2)警視庁四谷警察署長の違法な拘留処分、(3)警視庁衛生部医務課係員と東京府歯科医師会東京市本郷区支部会長越川直とが共謀して原告の歯科医師としての資格をはく奪しようとした行為、(4)最高裁判所がなした原告の上告を棄却した判決、(5)社団法人東京都文京区歯科医師会々長福田秀一がなした除名処分および(6)原告の提出した質問状に対し、内閣総理大臣東条英機が納得のいく回答をしなかつたことにより、原告はその生存権を侵害され、精神的物質的に損害を受けた。よつて、原告は被告らに対し右損害の賠償を請求する権利を有するから、その確認を求める。

第二、被告文京区長の答弁

一、本案前の答弁

(一) 請求の趣旨第一項について

住民登録は、住民登録法施行時全国一斉に、それぞれの市区町村がその区域内に居住している住民に住民登録届を提出させ、かつ同時に職員が調査を行ない、事実上住所を有する者のみを住民として登録するという方法で行なわれた。そして、その後の住民登録の変動は、市区町村長の職権調査によるか、または世帯主からの届出によつてなされることになつている。そして、市区町村長の職権調査によるものには、毎年七月に定期的に行なわれるものと、時に応じて行なわれる職員の実態調査に基づくものとがある。また、届出によるものには、転人届、転居届、変更届および国外移住届の各形式があり、これ以外のものはない。

本件の場合、住民登録法施行時たる昭和二七年七月一日に、原告は被告文京区長に対し東京都文京区駒込動坂町二三一番地内藤良平方を住所として住民登録届を提出したが、同所に居住の事実がないとして右届出は棄却されたのであるから、それ以降において、原告が右住所において文京区の住民として登録されるには、被告文京区長の職権による調査により登録されるか、または従来住所のなかつた者があらたに住所を設定した場合として転入届をなし、それが受理されて登録される必要がある。

しかるに、原告が、昭和三六年七月一日付で被告文京区長に対して提出した住民登録届は、住民登録法施行時の一斉登録の際提出すべき住民登録届の形式によるものであつて、転入届の形式を具備しないものであるから、住民登録法上何らの意味もないものである。したがつて、被告文京区長が右住民登録届を受理しなかつたことは単なる事実行為であつて、行政行為ではないから、抗告訴訟の対象とはならない。

かりに、本件住民登録届が住民登録法上何らかの意味があるとしても、それはせいぜい被告文京区長が原告をして改めて住民登録法上の適式の届出をさせるきつかけとなるにすぎず、右届出に対しその登録、不登録の結果を原告に通知する義務を負うものではないから、たとえ右届書を原告に返戻したとしても、それは事実行為であつて、抗告訴訟の対象となる行政行為ではない。

よつて、被告文京区長のなした却下処分の無効確認を求める訴えは不適法として却下されるべきである。

(二) 請求の趣旨第三項について

原告は、被告文京区長に対し国家賠償法に基づき損害賠償請求をしているけれども、同法第一条によれば、請求の相手方たる賠償責任者は地方公共団体であるから、被告文京区長は右請求については被告適格を有しない。

よつて、右請求は不適法であり、却下されるべきである。

二、本案の答弁

(一) 請求の趣旨第一項について

請求原因第一項記載の事実のうち、原告が、昭和三六年七月一日被告文京区長に対し原告主張のような住民登録届をしたが、同被告はこれを原告に返戻したこと、原告が従前から東京都台東区上野桜木町一八番地竹田志ん方に居住していて、同都文京区駒込動坂町二三一番地内藤良平方に起居したことがないことおよび原告が右内藤方を往診歯科医師の診療所として東京都知事に届け出ていることは認め、原告が同所を往診の根拠地として使用していることは不知、その余の事実は否認する。

原告は、東京都文京区駒込動坂町二三一番地内藤良平方に住所を有すると主張しているが、同区役所係員が当該住所を調査したところ、原告は同所に居住しておらず、内藤良平も原告居住の事実を否定している。かえつて、原告は遅くとも昭和二七年七月以降東京都台東区上野桜木町一八番地に妻子とともに住み、現在に至つていることは明らかである。

そうである以上、被告文京区長が原告を同区の住民として登録せず、本件住民登録届を原告に返戻したことは何ら違法でない。

(二) 請求の趣旨第三項について

原告は、昭和三六年七月二一日被告文京区長がなした住民登録届の却下処分によつて発生した損害の賠償を請求するというが、その発生したという損害の存在が明らかでない。また、かりに損害があつたとしても、右却下処分と損害の発生との間には相当因果関係がない。さらに、かりに因果関係があるとしても、被告文京区長には故意過失がない。

したがつて、右損害賠償請求は何ら理由のないものであり、棄却されるべきである。

第三、被告国および同内閣総理大臣の答弁

一、本案前の答弁

(一) 請求の趣旨第二項について

(1) 請求の趣旨第二項(一)の訴えは、違警罪即決例に基づく拘留処分の無効確認を求めるものであるが、かかる訴えは、民事訴訟法をもつて刑事処分の効力を争うものであつて許されない。

(2) 同項(二)の訴えは、過去の事実の確認を求めるものであるから不適法である。

(3) 同項(三)の訴えは、刑事判決の効力を民事訴訟によつて争うものであつて許されない。

(4) 同項(四)の訴えは、原告に対する歯科医師会除名処分の無効確認を求めるものであるが、かかる除名処分は被告国および同内閣総理大臣とは何の関係もないのであるから、その無効確認を右被告らに対して求める本件訴えは不適法である。

(5) 同項(五)の訴えは、その趣旨が不明であつて、不適法である。

(二) 請求の趣旨第三項について

(1) 被告内閣総理大臣は、損害賠償請求について被告適格を有しないから、同被告に対する損害賠償の請求は不適法である。

(2) また、原告は損害賠償請求権の存在確認を求めているが、その求める請求の内容を具体的に示していないから、かかる訴えは内容が不確定であつて不適法である。

二、本案の答弁

(一) 請求の趣旨第二項について

請求の原因第二項ないし第六項記載の事実はすべて知らない。

(二) 請求の趣旨第三項について

原告が損害賠償請求の根拠として、請求の原因第七項に掲げる事実のうち、(1)の被告文京区長の却下処分および(5)の社団法人東京都文京区歯科医師会々長福田秀一の除名処分はともに国の公務員の行為ではなく(2)の警視庁四谷警署長の拘留処分、(3)の警視庁衛生部医務課係員の行為および(6)の内閣総理大臣東条英機の行為はいずれも国家賠償法施行前のものであり、また(4)の最高裁判所の判決は適法であるばかりでなく、損害賠償請求権の消滅時効が完成している。

よつて、原告の請求はすべて理由がない。

(証拠省略)

理由

第一、請求の趣旨第一項の請求について

(本案前の判断)

原告が昭和三六年七月一日被告文京区長に対し原告の住所を同区駒込動坂町二三一番地内藤良平方として住民登録届をしたこと、しかし、同被告はこれを原告に返戻したことは当事者間に争いがない。

被告文京区長は、原告の右住民登録届は住民登録法施行時の一斉登録の際提出すべき住民登録届の形式によるものであつて転入届の形式を具備していないから、住民登録法上何らの意味がないか、かりに何らかの意味があるとしてもそれはせいぜい同被告が原告に改めて住民登録法上の適式の届出をさせるきつかけとなるにすぎず、したがつて、同被告が原告からの住民登録届を受理せずに原告に返戻したことはいずれにしても事実行為であつて、抗告訴訟の対象たる行政行為ではない旨主張する。

よつて考えるに、住民登録法上の届出の種類としては、あらたに市区町村の区域内に住所を定めた場合、すなわち、(イ)他の市区町村から当該市区町村に住所を移転した場合、(ロ)住民登録法の施行地域以外の地域から当該市区町村に住所を移転した場合および(ハ)従来住所のなかつた者があらたに当該市区町村に住所を定めた場合にする転入届(第二二条)、同一の市区町村の区域内で住所を変更した場合にする転居届(第二三条)、右の各場合を除くほか住民票に記載した事項に変更を生じた場合(ただし、戸籍に関する届書、申請書その他の書類の受理または職権による戸籍の記載に基づいて住民票の削除またはその記載の更正をすべき場合および行政区画、土地の名称または地番号に変更があつた場合を除く。)にする変更届(第二四条)および国外に移住する目的で住所を去る場合にする国外移住届(第二五条)の四つがあるだけで、それ以外にないことは右被告の主張するとおりである。しかしながら、右の各届出はいずれも書面はもちろん口頭によつてもすることができるのであり(同法施行令第九条)、また、書面で届出をする場合についても、その届書の記載事項が定められている(同法第二一条、第二二条ないし第二五条の各第二項)ほかは、住民登録法および同法施行令にも右届書の様式に関しては何ら法定されていない。もつとも、各市区町村においては右各届書の様式を定め不動文字で印刷した用紙を備え付けているのが通例であるが、前記のような住民登録法および同法施行令の規定の仕方から考えるならば、これは届出人が簡易に届出をすることができるようにその便宜をはかるとともに、あわせて市区町村が迅速かつ能率的に登録事務を処理することを目的として備え付けているにとどまるものと解するのが相当である。したがつて、右所定の用紙、様式によらない届出がなされた場合であつても、ただそれだけの理由でその届出を住民登録法上何らの意味をもたないものであると速断してしまうべきではなく、そのような場合にもその届書の記載内容に従つて住民登録法上のいかなる届出であるかを判断し、しかるべく処理すべきである。本件の場合、弁論の全趣旨によれば、原告は住民登録法施行時たる昭和二七年七月一日被告文京区長に対し東京都文京区駒込動坂町二三一番地内藤良平方を住所とする住民登録届を提出したが右住所に居住の事実がないとして右届出を棄却され、それ以来住民登録法上の登録住所を有していなかつたこと、そして原告はかかる状況のもとにおいて右地番を住所とする住民票の作成を求めて本件住民登録届を被告文京区長に提出したことが認められ、また、弁論の全趣旨によつて原本の存在および成立を認める甲第五号証の一によれば、右住民登録届には「住民登録届」という表題が付されていたこと、しかし、右届書には住民登録法上の届出一般の記載事項である届出人たる原告の氏名、届出年月日が記載され、原告の署名、押印がなされていた(同法第二一条参照)ほか、転入届の記載事項である同法第四条第一号ないし第八号に掲げる事項のうち第一号ないし第三号および第五号ないし第七号に掲げる事項が記載されていることが認められる。そうとすれば、本件住民登録届は、その「住民登録届」という表題にもかかわらず、住民登録法上の転入届の趣旨で提出されたものと解するのが相当である。もつとも、右届書は前記のように転入届の記載事項のうち同法第四条第四号に掲げる事項の記載を欠いているから、右記載の欠缺を理由として右転入届が却下されることのあることは別論である。(なお、右届書には同条第八号に掲げる事項も記載されていないが、原告は前記のように従前他の市区町村に住民登録法上の登録住所を有していなかつたのであるから、右事項の記載を要しない場合であることは、同号の文言上明らかである。)そして、成立に争いのない甲第三一号証によれば、被告文京区長も原告からの本件住民登録届を転入届として処理し、ただ原告がその届出住所に居住していないという理由で右届出の受理を拒否していることが認められるのである。したがつて、本件住民登録届は住民登録法上何らの意味を有しないか、またはせいぜい被告文京区長が原告に改めて住民登録法上適式の届出をさせるきつかけになるにすぎない旨の右被告の主張は採用できない。

そして、住民登録の制度は住民の居住関係を公証し、その日常生活の利便をはかるとともに、各種行政事務の適正で簡易な処理に資することを目的とするものであるから(同法第一条)、もし住民登録がされないと、住民は公法上および私法上の種々の法律上の地位に重大な意義を有する居住関係の公証を受けることができず、また住所の存在を前提要件とする各種の行政事務(たとえば、選挙人名簿の調整(公職選挙法第二〇条、第二六条)、学令簿の編製(学校教育法施行令第一条、第二条、同法施行規則第三〇条、第三一条)、予防接種台帳の作製、配給台帳の調製等)の適正で迅速な処理を享受することができないという不利益をこうむるのである。したがつて、住民登録をされることによつて受ける住民の右のような各種の利益は、いまだこれを権利ということはできないにしても、少なくとも法律上の保護に価する利益すなわち法律上の利益と認めるのが相当である。そうとすれば、本件のようにあらたに住民登録をされることを求めてなされた転入届の受理を拒否しこれを却下する処分は、住民に法律上の不利益を及ぼすことが明らかであるから、抗告訴訟の対象たる行政行為であるというべきである。よつて、原告が「住民登録届」と題する届書をもつてなした転入届を却下した被告文京区長の処分は抗告訴訟の対象たる行政行為であるというべく、右見解に反する同被告の前記本案前の主張は失当である。

(本案の判断)

そこで本案につき判断するに、原告が本件「住民登録届」と題する届書をもつて届け出た住所、すなわち、東京都文京区駒込動坂町二三一番地内藤良平方に起居していたことのないことは当事者間に争いがないところであるから、そうとすれば、原告は右地番に住所を有しないものというべく、したがつて、被告文京区長が右届出の受理を拒否し右届書を原告に返戻してなした却下処分は適法である。

もつとも、原告が右地番を医療法に基づく往診歯科医師の診療所として東京都知事に届け出ていることは当事者間に争いがないが、原告が同所に現実に歯科診療所を開設したことがないことは原告の自認するところであるのみならず、原告が実際に同所を往診の根拠地として使用している事実もこれを認めるに足りる証拠がないから、右のような届出がなされているからといつて住所の存在を肯定することはできない。原告はまた被告文京区長は原告が右地番に住所を有することを認めて昭和三五年四月二八日原告の国民健康保険料金六〇〇円を領収しているから、原告が同所に住所を有することは明らかである旨主張する。なるほど、成立に争いのない甲第五一号証によれば、原告は昭和三四年一二月二八日前記地番を住所として被告文京区長から国民健康保険被保険者証の交付を受けていることが認められ、また、成立に争いのない甲第五〇号証および第五二、五三号証によれば、昭和三五年一月三〇日および同年五月三一日の両度にわたり被告文京区長が原告の住所が前記地番にあるものと認めて原告から国民健康保険料を領収していることが認められる。しかしながら、前記認定のように原告は右地番に起居していたことがないのであるから、被告文京区長の右のような処置は原告の住所を誤認した結果によるものというべく、そして、同被告が原告の国民健康保険に関し右のような誤つた処置をしたからといつてそれによつて原告が住民登録法上の住所を取得するものではないから、結局原告の右主張も理由がない。

よつて、原告の請求の趣旨第一項の請求は失当として棄却を免れない。

第二、請求の趣旨第二項の請求について

(一)  請求の趣旨第二項(一)の請求は違警罪即決例に基づく拘留処分の、同項(三)の請求は最高裁判所の言い渡した刑事判決の各無効確認を求めるものであるが、右のような刑事処分および刑事判決は抗告訴訟の対象たる行政行為ではないし、また民事訴訟でその効力を争うことも許されないから、いずれも不適法として却下を免れない。

(二)  同項(二)および(五)の請求は、いずれも単なる過去の事実の確認を求めるにとどまり、現在の権利または法律関係の確認を求めるものではないから、不適法として却下を免れない。

(三)  同項(四)の請求は、社団法人東京都文京区歯科医師会々長福田秀一が原告を同歯科医師会から除名した処分の無効確認を求めるものであるが、被告国および同内閣総理大臣は右除名処分に何らの関係も有していないから、同被告らは被告適格を欠くものというべく、右請求も不適法である。

第三、請求の趣旨第三項の請求について

原告は、請求の趣旨第三項において損害賠償請求権の存在確認を求めているが、その損害賠償請求権の内容を一定の金額を表示して具体的に特定することをしていないから、請求の趣旨が不特定であり、その余の点について判断するまでもなく、不適法として却下するのほかはない。

第四、結論

よつて、本件申立てのうち、請求の趣旨第一項の請求は失当として棄却することとし、その余の部分については不適法として訴えを却下することとし、訴訟費用については民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 位野木益雄 高林克巳 石井健吾)

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