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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)7690号 判決

原告

柴美千江

柴ツ子ヨ

右両名訴訟代理人

阪岡誠

<他二名>

被告

国際観光バス株式会社

右訴訟代理人

井上忠巳

松本乃武雄

被告

富国運輸株式会社

<他一名>

右両名訴訟代理人

風間武雄

主文

一、被告らは自原告柴美千江に対し、金三、〇九九、三一〇円、原告柴ツ子ヨに対し、金五〇〇、〇〇〇円および右各金員に対する昭和三八年一〇月六日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は全部被告らの連帯負担とする。

三、この判決は、仮りに執行することができる。

事実

一  当事者の求める裁判

原告ら――主文第一、二項同旨の判決および仮執行の宣言

被告ら――「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決

第二 請求原因

一、(事故の発生)

(一)  第一事故

訴外柴竜児(以下竜児という。)は、昭和三七年一月七日午後二時四〇分頃、東京都豊島区堀之内町三〇番地先路上を池袋ロータリー方面から王子方面に向かい自転車(以下被害自転車という。)を運転して車道式側歩道寄りを進行していたところ、その数米前方の車道上の歩道寄りに停車した訴外磯勲(以下磯という。)が運転して同方向に進行していた営業用普通乗用自動車(五あ七七六一号、以下甲車という。)を見て甲車の右側方に進路をとり、これを抜こうとした際、突然甲車の後部右側扉が開いて被害自転車の左ハンドル付近に接触したため竜児は被害自転車もろとも路上に転倒させられ、ひいて後記第二事故の発生を見るに至つた。

(二)  第二事故

被告前田正美(以下被告前田という。)は、右日時に同場所を甲車および被害自転車と同方向に向け事業用大型特殊自動車(八あ〇八四六号、以下乙車という。)を運転進行していたが、前述のように竜児が路上に転倒した直後、その場を通過して乙車の後車輪付近をもつて竜児の大腿部あたりを轢過し、また胸部頭部等を強打し、因つて同人を胸腔内損傷兼右大腿骨折のため死亡させた。

二、(被告国際観光バス株式会社(以下被告国際観光という。)の地位)

被告国際観光は当時甲車を自己のために運行の用に供するものであつた。

三、(被告前田の過失)

自動車運転者たるものは、前方を良く注視し、特に左側は足踏自転車等横転し易い車両が通行するのであるから自動車左側に注意し、自転車等が進行しているのを認めた場合には、ハンドルを切り直すとか、停車ないし徐行するとかしてこれと十分の間隔を保ち、接触等による事故の発生を防止するよう万全の注意を払つて運転すべき義務があるにもかかわらずこれを怠り、竜児が被害自転車を運転して進行しているのを認めていながらこれと十分な間隔をとることなく漠然その右側近くを運転進行した過失により前掲第二事故を発生させるに至つたのである。

四、(被告富国運輸株式会社(以下被告富国運輸という。)の地位)

被告富国運輸は当時乙車を自己のために運行の用に供するものであつた。

五、(損害)

(一)  竜児の失つた得べかりし利益

竜児は健康な男子で事故当時は一五才八カ月であつたが、昭和三七年四月一日訴外石川島播磨重工株式会社(以下訴外会社という。)に入社し石川島工業高等学校に入学できる予定であつた。その場合には同人が二一才となる昭和四二年度の訴外会社からの収入予想額は月金二五、一二〇円であり、厚生省発表の第一〇回修正生命表によれば、一五才の男子の平均余命は五三年余であるので同人も同程度生存しえて少くとも五六才に達する頃までは稼働しえ右と同程度の収入を挙げることができたと考えられる。他方、総理府統計局編纂の昭和三三年度勤労世帯平均一カ月間の収支表によれば、東京都における世帯員四・四四人の食費、住居費、光熱費等の生活費は金三三、五四九円であるのでこれを基礎として、一人当りの生活費を計算すると平均金七、五五六円に相当し、右生活費と前記収入額の一五パーセントに相当する公課とを前記収入から控除すると同人の一か月間の純収益は金一三、七九六円(一か年金一六五、五五二円)となる。よつて竜児は本件事故に遭つて死亡したことにより右の純利益の三四か年分に相当する金額と同程度を失つたと考うべく、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を年毎に控除して、その竜児の死亡時における現価を求めると金二、三〇〇、〇〇〇円余となる。

(二)  原告柴美千江(以下原告美千江という。)の相続

原告美千江は竜児の母であつて、竜児の死亡に基づきその得べかりし利益の喪失による金二、三〇〇、〇〇〇円の損害賠償請求権を相続により承継した。もつとも原告美千江は本件事故による損害に対し自賠責保険金相当額の金二〇〇、六九〇円を受領したので、右金員を同女の相続した損害賠償請求権の一部に充当する。その結果残額は金二、〇九九、三一〇円である。

(三)  原告美千江の慰藉料

竜児は原告美千江の一人息子であり、男親の手を借りずに同人を養育してきたが、学校の成績も極めて優秀であつて、その将来を期待していたところ、本件事故による竜児の突然の死亡により多大の精神的苦痛を受けた。これを慰藉する金額としては金一、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

(四)  原告柴ツ子ヨ(以下原告ツ子ヨという。)の慰藉料

原告ツ子ヨは、原告美千江の母であり、したがつて竜児の祖母であるが、竜児の出生の時から同人と寝食をともにし、かつ原告美千江を援助してその養育にあたつてきたものであり、本件事故によつて竜児を失い、多大の精神的苦痛を受けた。これを慰藉する金額としては金五〇〇、〇〇〇円が相当である。

六、(結論)

よつて被告ら各自に対し、原告美千江は前項(二)、(三)の合計金三、〇九九、三一〇円、原告ツ子ヨは(四)の金五〇〇、〇〇〇円および右各金員に対する本件訴状送達の翌日である昭和三八年一〇月六日から各完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三 請求原因に対する被告らの答弁

一、被告国際観光の答弁

(一)  請求原因第一項中甲車の右側扉が開かれて被害自転車の左ハンドル付近に接触して竜児を転倒させたとのことは否認、竜児の死亡原因は不知、その余は認める。

(二)  同第二項は認める。同第五項中原告美千江が保険金相当額の支払を受けたことは認めるが、その余は不知。

二、被告前田および同富国運輸の答弁

(一)  請求原因第一項中乙車と竜児とが接触したとのことは否認する。竜児の傷害の部位および死亡の原因は不知、その余は認める。

(二)  同第三項は否認する。仮りに乙車が竜児の死亡に原因を与えたと認められたとしても、被告前田はこれにつき過失がない。すなわち、被告前田は甲車の右側方約二米、被害自転車の右側方約一米以上の地点を安全を確認のうえ進行したところ、乙車の運転台のほぼ左側一寸前に、被害自転車からはねられたように飛び上がつて竜児の身体が乙車の方に倒れかかつてくるのを目撃し、瞬間的にハンドル右に切り避譲を措置をとるとともに急停車の措置をとつたのであつて、十分の注意を尽したものである。

(三)  同第四項は認める。同第五項中竜児が原告美千江の一人息子で当時一五才八か月であつたことおよび同原告が保険金相当額を受領したことは認める。その余は不知。

第四 被告らの抗弁

一、被告富国運輸の免責の抗弁

(一)  (運転者前田の無過失)被告前田は前記のとおり乙車の運行に関し注意を怠らなかつた。

(二)  (運行供用者の無過失)被告富国運輸は乙車の運行に関し注意を怠らなかつた。

(三)  (第三者たる甲車運転者磯および甲車の乗客の過失)本件第二事故は、竜児が被害自転車を運転して停車中のタクシー甲車をその右側方から追い越しかけたところ、突然開かれた甲車の後部右側扉が被害自転車の左ハンドル付近に接触して、竜児が右側に転倒したことによつて発生したのであつて、タクシー運転手としては乗客を下車させる場合には、右側の扉を乗客が不用意に開けないように十分意を払い、又乗客としては、もし右側から下車する場合には右側の交通の安全を確認したうえ、扉を開けるべき注意義務があるところ、いずれもこれを怠り、磯は乗客が右側扉を開けるのを放置し、又乗客も漫然と右側扉を開けたため右両名の過失の競合により本件第一事故が発生し、ひいて第二事故が惹起されたのである。

(四)  (機能、構造上の無欠陥)乙車には構造上の欠陥も機能の障害もなかつた。

二、被告国際観光の過失相殺の抗弁

自転車運転者は車道の最左端を走行すべきものであり、停車している自動車がある場合には一旦停車して自動車の発進を待つか、仮りに該自動車を右側から追い越そうとする場合には、これに先立ち後方からの交通の安全を確認すべきであつたにもかかわらず、竜児は右注意義務を怠り漫然と甲車を右側から相当の速度で追い越そうとしたため本件事故に遭つたものであつて、同人には過失がある。

第五 抗弁に対する原告らの認否

被告富国運輸の抗弁事実のうち、甲車の運転者である磯および乗客の過失に関する事実は認める。その余の抗弁事実はすべて否認する。

第六 証拠<略>

理由

一、(事故の発生)

昭和三七年一月七日午後二時四〇分頃、東京都豊島区堀之内町三〇番地先路上において池袋ロータリー方面から王子方面に向け進行してきた磯の運転する甲車が車道上の左側歩道寄りに停車したことおよびその直後甲車の数米後方で同じく車道左側歩道寄りを同方向に向かつて被害自転車を運転して進行してきた竜児が甲車を追い越そうとしてその右側方に進路をとつたことは当事者間に争いがない。そして<証拠略>によれば、甲車の後部座席の右端に乗車していた訴外渡辺複広の長女(小学六年生)が下車しようとして後部右側扉を開けたためその開かれた扉の端に折柄甲車の右側方を通過していた被害自転車の左側ハンドルが接触し、その衝撃によつて竜児が路上に転倒したことが認められる(第一事故)(被害自転車と甲車の後部右側扉が接触して竜児が転倒したことは原告らと被告前田、同富国運輸との間に争いがない。)<証拠判示略>。次にその頃被告前田の運転する乙車が同じく池袋ロータリー方面から王子方面に向かい同所を進行したことは当事者間に争いがなく、<証拠略>によれば、乙車は右認定の第一事故によつて路上に転倒した竜児に接触し後車輪付近でその胸部を強打し、更に大腿部あたりを轢過し、因つて胸腔内損傷等のため同日午後三時一五分頃同人を死亡させたことが認められる。(第二事故)(乙車が竜児と接触して同人を死亡させたことは原告らと被告国際観光との間で争いがなく、竜児が死亡したことは当事者間に争いがない。)

二、(被告国際観光の責任)

請求原因第二項の事実は当事者間に争いがない。そして前認定のとおり、第一事故は甲車と被害自転車との接触によるものであり、第一事故と第二事故による竜児の死亡との間には相当因果関係が認められるので、被告国際観光は甲車の運行によつて生じた竜児の死亡による後記損害の賠償責任を負わなければならない。

三、(被告前田の責任)

<証拠略>によれば、事故現場は、南西は池袋ロータリーに、北東は王子方面に通ずる歩車道の区別のある直線道路(通称明治通り又は環状五号線)であつて、同道路はコンクリートで舗装されており、その総幅員は二〇・七米で、車道幅員一四・五米、歩道幅員両側とも三・一米で、車道中央にはセンターラインの標示が施されてあること、磯は甲車を南西池袋ロータリー方面から北東王子方面に向けて運転進行してきて、事故現場において車道左側端歩道に寄せて停車したが、その際甲車の進行方向右側面は左側車道端から二・四米のところにあつたこと、被告前田は乙車(車幅二・四米の七屯車)を時速約三五粁の速度で南西から北東に向けセンターラインから二米ばかり内側を進行中、甲車から約四〇米手前の地点で停車中の同車を発見し、更に進行して甲車から一三米ばかり手前まできたところ、八・二米ばかり左斜め前方を車道左端を進行中の被害自転車を発見し、同自転車が甲車を追い越すために右へ寄つてくるのを見ながら右にハンドルを切つて乙車の右側面とセンターラインとの間隔を約五〇糎位(このとき甲車の右側面と乙車の間隔は約二米)にして甲車の追抜きにかかつた所、被害自転車も同時頃甲車の後部付近まで進行しており、甲車、被害自転車、乙車が並列したとき(このとき乙車の前部は被害自転車より少し前に出ていた、竜児が乙車の方に跳ね飛んでくるのを発見し、ハンドルを右に切つたがすでに間に合わず第二事故を惹起させたことが認められる。右認定を覆えすに足る証拠はない。

およそ停車中の自動車の運転者ないしは乗客が車内から車道側(進行方向向かつて右側)の扉を開くについてはあらかじめ周囲の交通状況を顧慮し、安全を確認してからこれをなすべきことはいうまでもないのであるが、このような十分な注意を払うことなく突然扉が開かれることは間間あることであり、しかもたまたまその付近を安全性の低い自転車が通過しているときは、その扉と自転車とが接触し自転車に乗つている者が路上に転倒するという事例は決してまれではないのであるから、道路左側に停車中の自動車の右側方を自転車が通過しようとしているときに、更にその自転車の右側方を通過してその前方に出ようとする自動車運転者は、右の危険を考慮してかかる事態が生じてもこれに対処しうるよう、自転車の動静に十分注意を払いながら、これとの間隔を十分保つか、又は右間隔を十分に保てない場合には直ちに停止しうるよう減速する等、事故の発生を防止すべき体勢をとりつつこれをすべきものである。しかるに被告前田は前認定の事実によれば、右の注意を怠りまだ右に寄りうる余地があるのに甲車との間に約二米の間隔しかとらないで、減速の措置をとることもなく漫然進行し、その結果竜児が路上に転倒したとき、これを避けることができなかつたのであつてその点に過失があるといわねばならない。従つて被告前田は竜児の死亡による後記損害を賠償する責に任じねばならない。

四、(被告富国運輸の責任)

同第四項の事実は当事者間に争いがないので、同被告主張の免責の抗弁が認められない限り、被告富国運輸は竜児の死亡による後記損害を賠償する責に任じねばならない。

五、(被告らの抗弁)

(一)  被告富国運輸の免責の抗弁

前示のとおり、被告前田には乙車の運行に関し注意を怠つたことが認められるので、被告富国運輸の免責の抗弁はその余の判断をまつまでもなく理由がない。

(二)  過失相殺

自転車運転者は、車道の左側端を走行すべきであるが、停車中の自動車によつて進路をふさがれこれをその右側方から追い越すような場合には、前示のとおり停車中の車の右側扉が開かれることは間間あることであるから、扉が開かれても接触しない程度の間隔をおくか、またその余裕のないときは同車の動静に注意して接触事故を起さぬように進行すべき注意義務があるにもかかわらず、竜児はその点に何ら意を払うことなく甲車の右側方をこれに接近して追越しを始めて本件事故に遭つたものであつて、同人にも過失があるといわなければならない。右同人の過失と磯および被告前田ら加害者側の過失とを対比すると双方の過失の度合は大体において一対九であると認めるのが相当である。

六、(損害)

(一)  竜児の失つた得べかりし利益

<証拠略>によれば、竜児は昭和二一年五月七日生まれの男子であることが認められる(原告と被告前田、同富国運輸間には争いがない。)。<証拠略>によれば、竜児は、小学校以来一、二番を争う成績優秀な健康児であり、事故当時中学三年生で昭和三六年暮に訴外会社に入社のための願書を提出していたことが認められる。同人の学力をもつてすれば昭和三七年四月、中学校を卒業の上、同社に入社しえたであろう蓋然性は大きかつたということができよう。<証拠略>によれば、竜児が昭和三七年訴外会社に入社したと仮定した場合、同人が二一才となる昭和四二年度の訴外会社における収入予想額は月金二五、一二〇円であることが認められ、従つてもし本件事故に遭わなければ厚生省発表の第一〇回生命表による満一五才の男子の平均余命五三年余と同じ程度生存しえて、少なくとも五五才に達する頃までの三四年間は訴外会社において稼働し、月金二五、一二〇円を下らない収入を得たであろうことが推認される。ところで右収入を得るため必要な同人の生活費としては、原告らの自認する月額金七、五五六円を越えると認めるに足る証拠はないから、同額を同人の生活費として認めるべく、これを前記収入額から控除し、更に原告らの控除さるべきことか自認する収入額の一五パーセントに相当する公課を差引くと、竜児の一か月当りの純利益は金一三、七九六円となり、一か年間の純収益は金一六五、五五二円となる。したがつて竜児の失つた得べかりし利益の合計額は右の純利益の三四か年分の合計額に相当する金額と同程度と考うべきところ、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を年毎に控除して、竜児の死亡時における現価を求めると金二、八〇〇、〇〇〇円(金一〇、〇〇〇円未満切捨)となる。竜児は死亡によりこれを失つたものである。もつとも本件事故については前示のように被害者たる竜児にも過失があるけれども、これを斟酌してもなお被告らに対し賠償を請求しうる損害額は、原告ら主張の金二、三〇〇、〇〇〇円を下らない。

(二)  原告美千江の相続

前出の戸籍謄本によれば、竜児は美千江の子であること(この点は原告と被告前田、同富国運輸間には争いがない。)、および竜児には配偶者、子、父がいないことが認められる。従つて原告美千江は相続により前記金二、三〇〇、〇〇〇円の損害賠償請求権を承継取得したと認められる。

(三)  保険金の受領と充当

原告美千江は本件事故に基づく自動車損害賠償責任保険金相当額金二〇〇、六九〇円を受領し、これが前記損害金に充当さるべきことを自認するので、右金額を原告美千江の前記損害金に充当すると残額は金二、〇九九、三一〇円となる。

(四)  原告美千江の慰藉料

原告ツ子ヨ本人尋問の結果(第一回)によれば、原告美千江は男親の手を借りることなく竜児を養育し優秀な同人の成長を祈つていたが、本件事故によつて同人を奪われ甚大な精神的苦痛を蒙つたことが認められ、同女の蒙つた精神的苦痛を慰藉する金額としては前認定の竜児の過失を斟酌しても、なお金一、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

(五)  原告ツ子ヨの慰藉料

原告ツ子ヨ本人尋問の結果(第一回)によれば、原告ツ子ヨは竜児が出生以来引き続き生活をともにし、原告美千江が働きに出て留守勝ちであつた関係上、常に竜児の身の廻りの世話をし、原告美千江とともに竜児の成長を楽しみにしていたことが認められる。民法第七一一条の請求権者は本来これを制限的に解釈すべきが相当であると考えられるけれども、右認定のような関係にある原告ツ子ヨについては、竜児の死亡により母たる原告美千江に劣らない程度の深甚な精神的苦痛を蒙つたことが認められるのであるから、同条掲記の者に準じて慰藉料請求権を認めるのを相当とすべく、同女の蒙つた精神的苦痛を慰藉する金額としては竜児の過失を斟酌してもなお金五〇〇、〇〇〇円が相当である。

七、(結論)

以上により被告らに対する原告美千江の前項の金二、〇九九、三一〇円およびの(四)金一、〇〇〇、〇〇〇円合計金三、〇九九、三一〇円、原告ツ子ヨの前項(五)の金五〇〇、〇〇〇円ならびにこれらに対する本件訴状送達の翌日であること明らかな昭和三八年一〇月六日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める本訴請求はすべて理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を、各適用して、主文のとおり判決する。(吉田 進 薦田茂正 原田和徳)

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