大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)4708号 判決

原告 大兼鋼機株式会社

被告 利谷金属株式会社

主文

被告は原告に対し原告が別紙目録記載の不動産(不動産の表示は省略)につき、東京法務局北出張所昭和三九年八月六日受付第二四六五五号をもってなした所有権移転請求権仮登記に基き、昭和四〇年二月一六日売買を原因とする所有権移転登記手続をすることを承諾せよ

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求めその請求の原因として一、原告は訴外石川公八と、昭和三九年八月五日債権額金八九〇万円につき、次の条件で準消費貸借契約をなした。

1  弁済期は同年一〇月末日とし、持参払のこと

2  利息は日歩四銭とし、毎月末持参払のこと

3  訴外人石川は右債務の担保として、原告に対し、前記不動産につき、売買予約の仮登記手続をなすこと

4  訴外人が右債務を履行しないときは、原告に対し同不動産に対し、前記仮登記に基き本登記手続をなすこと

そして昭和三九年八月六日請求の趣旨記載の仮登記がなされた。

二、ついで被告は昭和四〇年二月二日東京地方裁判所の仮差押決定により、前記建物につき、東京法務局北出張所昭和四〇年二月二日受付第二八二三号の仮差押登記をなした。

三、ところが訴外人は弁済期に債務の履行をしないので、原告は訴外人に対し昭和四〇年二月一六日到達の書面をもって、前記建物の所有権取得の意思表示をなし、前記仮登記の本登記手続を求めた。

四、よって前記仮登記におくれる仮差押登記を有する報告に対し右本登記手続をなすことの承諾を求める。

〈省略〉被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として被告が原告主張の如き仮差押登記をなしたことは認めるがその余の事実は不知と答え、抗弁として(一) 原告は訴外人石川に対し金八九〇万円の債権を有するというが、原告会社は昭和三九年五月一九日資本金三〇〇万円で設立せられ創業早々で資金面に余力がないというのに借金過剰で苦しんでいた訴外人に対しかかる大金を貸付けたということ、しかも弁済期を約二ケ月とし、前記建物に売買予約の仮登記をしているが当初から訴外人においてそのような短期間に右債務の履行ができないことは当事者は勿論、客観的にみても不可能のことであることからして前記原告の準消費貸借に基く債権は原告と訴外人及び訴外埼玉製鋼株式会社の三者が相通じてなした虚偽の意思表示と断ぜざるを得ない。然らばこれを前提とする売買予約及びその仮登記は何れも無効である。(二)かりにそうでないとしても、原告が売買完結の意思表示をしたのは昭和四〇年二月一六日というのであるから、その時から売買の効力を生じ所有権が移転することは民法第五五六条の規定に徴し明らかである。従ってこれより以前の同年二月二日なされた被告の仮差押登記に対抗することはできないと主張した。〈以下省略〉。

理由

成立に争ない甲第一号証の七によれば、前記不動産につき原告主張の如き所有権移転請求権仮登記及び仮差押登記がなされていることが明かであり、又証人石川公八及び原告代表者本人の各尋問の結果並びにこれらによりその成立を認めうる甲第一号証の一第二号証の一によれば、右仮登記の原因とされた原告主張の如き準消費貸借契約の履行を担保するため前記仮登記がなされたその主張の如く予約完結の意思表示がなされたことが認定できる。

被告は右準消費貸借及び仮登記は通謀虚偽表示によるものであるから無効である旨抗弁するが、これを認めるに足る証拠はない。尤も前記石川証人は、原告に対する金員は期限にかかわらず返済すればよく、前記建物を原告に譲渡してしまったとは考えていない旨供述しているが、同供述にもある如くこれは同人の一方的な主観的要望ともいうべきものにすぎないから、これをもって前記抗弁認定の資料に供することはできない。

次に被告は、被告の仮差押登記に遅れて、原告の売買予約完結の意思表示がなされたから被告に対抗できない旨主張するが、原告の仮登記が、被告の仮差押登記より先立ってなされている以上そのような事由をもって、原告が本登記をなすにつき承諾を拒む理由となしえないのみならず仮登記本来の目的である所謂順位保存の効力(不動産登記法第七条第二項)を有するから被告の右主張は独自の見解にすぎず到底採用できない。

〈以下省略〉。

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