大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(手ワ)681号 判決

原告 河地寅吉

被告 恒松虎之助

被告 木内福蔵

主文

1  被告恒松虎之助は原告に対し金三一三、〇〇〇円および内金一〇五、〇〇〇円に対する昭和三七年一〇月二七日から、内金二〇八、〇〇〇円に対する昭和三七年一〇月三〇日から完済まで年六分の割合による金員の支払をせよ。

2  原告の被告木内福蔵に対する請求を棄却する。

3  訴訟費用中、原告と被告恒松虎之助との間に生じた分は同被告の負担とし、原告と被告木内福蔵との間に生じた分は原告の負担とする。

4  この判決は第一項に限りかりに執行することができる。

事実

第一、当事者双方の求める裁判

一、原告(請求の趣旨)

1  主文第一項と同旨

2  被告木内福蔵は原告に対し、金六一三、〇〇〇円および内金三〇〇、〇〇〇円に対する昭和三七年一〇月一八日から、内金一〇五、〇〇〇円に対する昭和三七年一〇月二七日から、内金二〇八、〇〇〇円に対する昭和三七年一〇月三〇日から完済まで年六分の割合による金員の支払をせよ。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決ならびに仮執行宣言。

二、被告両名

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

第二、当事者双方の主張

一、原告

(請求原因)

(一) 左記約束手形三通の所持人であった原告は、これらの手形を訴外東京信用金庫に裏書し、同金庫はその取立を訴外株式会社住友銀行に委任し、同銀行はそのうち(1)の手形の取立を更に訴外株式会社横浜銀行に委任し、同銀行において右(1)の手形を、住友銀行において右(2)、(3)の手形をそれぞれの満期に支払場所において呈示したがいずれも支払を得られなかったので原告はこれらの手形の返還を受けて再びその所持人となった

手形の表示

(1)金額 三〇万円

満期 昭和三七年一〇月一八日

支払地 神奈川県逗子市

支払場所 横須賀三浦信用金庫逗子支店

振出地 神奈川県三浦郡葉山町

振出日 昭和三七年八月一九日

振出人 株式会社三葉商会

受取人兼第一裏書人 福山印刷株式会社

右被裏書人 白地

第二裏書人 大明印刷株式会社木内章介

右被裏書人 白地

(2)金額 一〇五、〇〇〇円

満期 昭和三七年一〇月二六日

支払地 東京都千代田区

支払場所 株式会社大和銀行東京支店

振出地 東京都目黒区

振出日 昭和三七年七月二六日

振出人 恒松虎之助

受取人兼第一裏書人 株式会社東洋創芸

右被裏書人兼第二裏書人 大明印刷株式会社

右被裏書人 河地寅吉

(3)金額 二〇八、〇〇〇円

満期 昭和三七年一〇月二九日

振出日 昭和三七年七月二九日

その他の記載事項(2)の手形と同じ

(二) 被告恒松虎之助は右(2)、(3)の手形を振り出し、被告木内章介こと木内福蔵は右(1)の手形に「大明印刷株式会社木内章介」と、(2)、(3)の各手形に「大明印刷株式会社専務取締役木内章介」といずれも拒絶証書作成義務免除のうえ裏書した。

(三) ところで大明印刷株式会社なる会社は存在しないから手形法八条の類推により被告木内福蔵が裏書人としての責任を負担すべきである。

(四) よって原告は被告恒松虎之助に対し、前記(2)、(3)の各手形につき、被告木内福蔵に対し、前記(1)ないし(3)の各手形につきそれぞれ各手形金およびこれに対する各満期の翌日から支払済まで手形法所定の年六分の利息の支払を求める。

(再抗弁)

被告木内は昭和三八年七月一八日、昭和三九年七月下旬および同年八月二二日の三度に亘りそれぞれ本件手形金債務を承認したからその都度消滅時効は中断された。

二、被告恒松虎之助の答弁

原告主張の請求原因事実中、被告恒松虎之助が原告主張の(2)、(3)の手形を振り出した事実を否認する、その余の事実は不知。

三、被告木内福蔵

(答弁と抗弁)(一)原告主張の請求原因事実は全部認める。

(二) 被告木内に対する原告の本件各約束手形金債権は(1)の手形については昭和三八年一〇月一八日、(2)の手形については昭和三八年一〇月二六日、(3)の手形については昭和三八年一〇月二九日の各経過と共にいずれも消滅時効が完成して消滅した。

(原告主張の再抗弁事実の認否)

被告が原告主張の各日時に本件各手形債務を承認したことを否認する。

第三、証拠〈全部省略〉

理由

一、被告恒松虎之助に対する請求について

一 〈省略〉訴外恒松昇はかねて子の被告恒松虎之助より、その実印を託され、同被告に代ってその名義で手形を振り出す権限を包括的に与えられていたところ、昭和三七年七月二六日ごろ訴外森川寿から手形を貸して貰いたい旨懇請されたので、本件(2)および(3)の約束手形(甲第一、二号証の各一)を作成して、同人に交付したことが認められ、証人恒松昇の証言中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

右事実によれば被告恒松虎之助は右各手形の振出人としての責任を免れないものというべきである。

次に原告本人尋問の結果ならびに原告提出にかかる甲第一、二号証の各一、二(甲第一号証の一のうち、原告作成名義部分については原告本人尋問の結果により、金融機関の交換印ならびに甲第一、二号証の各二についてはその方式および趣旨によりいずれも真正に成立したことを認める)によれば原告主張の請求原因第一項の事実を全て認めることができる。

してみれば、被告恒松虎之助は原告に対し、本件(2)および(3)の各手形金およびこれに対する各満期から完済まで年六分の割合による利息の支払義務あるものといわなければならず、その範囲内である原告の本訴請求は理由があるから認容すべきである。

二、被告木内福蔵に対する請求について

(一)  原告主張の請求原因事実はすべて当事者間に争いがない。

(二)  すすんで被告主張の時効の抗弁について判断する。

約束手形所持人の裏書人に対する請求権は、拒絶証書作成義務免除ある場合満期の日より一年を以て時効にかかること手形法七七条、七〇条の定めるところであり、手形法八条の類推により無権代表者として裏書人と同一の債務を負担すべき者に対する請求権の時効期間も同様に解するのが相当であるところ、原告主張の本件(1)の約束手形の満期は昭和三七年一〇月一八日、(2)の約束手形の満期は同月二六日、(3)の約束手形の満期は同月二九日であるから、特別の事由のない限り、原告の被告木内に対する請求権は(1)の手形については昭和三八年一〇月一八日、(2)の手形については同月二六日、(3)の手形については同月二九日の経過とともに時効により消滅したものといわなければならない。

(三) ところで、原告は、被告木内は昭和三八年七月一八日、昭和三九年七月下旬、および同年八月二二日の三度に亘り、本件手形債務を承認したから、その都度消滅時効は中断された旨主張し、証人中野恵司の証言および原告本人尋問の結果中には右主張に副う供述がみられるけれども、右各供述はこれに反する証人吉村一男の証言および被告木内本人尋問の結果に照してたやすく採用できず、本件口頭弁論に顕われたその他の証拠を綜合しても原告主張の前記事実を認めるに足りないから、原告の時効中断の主張は採用できない。

(四) してみれば、原告の被告木内に対する本件各手形金の請求は失当として棄却を免れない。

三、よって訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

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