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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)1315号 判決

原告 杉本孝男

〈ほか二名〉

右原告三名訴訟代理人弁護士 庵治川良雄

被告 日本瓦斯株式会社

右代表者代表取締役 本山修策

右訴訟代理人弁護士 菅野谷純正

同 小池金市

右訴訟復代理人弁護士 林哲郎

被告補助参加人 株式会社金門製作所

右代表者代表取締役 小野田忠

右訴訟代理人弁護士 宮下秀利

同 生天目厳夫

主文

1、被告は、

原告杉本孝男に対して金二、二六六、七三五円

同杉本久子に対して金七五〇、〇〇〇円

同肌勢常子に対して金一、四三六、三四五円

および右各金員に対する昭和四一年二月二五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2、原告杉本孝男、同杉本久子のその余の請求を棄却する。

3、原告肌勢常子と被告との間に生じた訴訟費用、同原告と補助参加人との間に参加によって生じた費用は、それぞれ全部被告および補助参加人の負担とし、原告杉本孝男、同杉本久子と被告との間に生じた訴訟費用、同原告両名と補助参加人との間に参加によって生じた費用は、それぞれこれを四分して、各その三を被告および補助参加人の負担とし、その余は各自の負担とする。

4、この判決は、各原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の申立

一、原告

1、被告は、原告杉本孝男に対して金三、〇五二、二七五円、同杉本久子に対して金一、五〇〇、〇〇〇円、同肌勢常子に対して金一、四三六、三四五円およびこれらの各金員に対する昭和四一年二月二五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

との判決および仮執行の宣言を求める。

二、被告

1、原告らの請求を棄却する。

2、訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決を求める。

第二、原告らの請求の原因

一、原告肌勢常子は、昭和三九年二月頃東京都世田谷区松原町一丁目三七番一三号の木造二階建家屋において、その子の肌勢善治とともに菓子の小売業を営み、原告杉本孝男及びその妻である原告杉本久子はその建物の二階を借りて居住し、原告久子は原告肌勢の営業を手伝っていた。一方、被告はプロパンガス等の販売を業とする会社である。

二、原告肌勢は、まんじゅうをむすため、昭和三八年一一月二八日頃より被告からプロパンガスを買い受けて店内に設置して使用しており、プロパンガス容器は被告の所有であり、原告肌勢はその中のガスを買い受け、ガスを全部使用し尽すと別のガスの入った容器と取り替えてもらうことにして、反覆使用していたものである。

三、原告肌勢は、昭和三九年二月一日午前九時三〇分頃、被告からその所有の二〇キログラムプロパン容器WTI四九、八六二号に充填したプロパンガスを買いうけた。

四、同日午後九時三〇分頃、原告久子がこのプロパンガスの使用を終って元栓のハンドルを閉めようとしてハンドルをまわしたところ、閉まらず、グランドナット部分が離脱してふっとび、突然ガスが噴出し、近くにあった石油ストーブの火が引火して燃えあがり、そのため、前記家屋は焼け、二階に寝ていた原告杉本孝男、同久子の長男吉磯(昭和三七年九月一日生)は、焼死した。

五、この事故は、被告の次のような過失に基くものである。

プロパンガス容器のグランドナットはボンベの上部に接着された容器バルブ内に強く接着し、開閉ハンドルの開閉によってはずれるようなことがあってはならないところ、本件容器についてはグランドナットの接着状況が異状にゆるい状態にあり、開閉ハンドルの開閉操作によってグランドナットがボンベから容易に脱落し得る状況にあった。そのために、ハンドルを回したときにグランドナットがはずれたものである。

被告は、プロパンガスの販売業者として、容器は完全なものを使用し、販売にあたっては十分な注意を払って試験をし、安全を確かめてから販売しなければならないのにかかわらず、このような不良な容器を原告肌勢方に設置した過失がある。

六、原告らの損害

1、火災による財産上の損害

(一) 原告杉本孝男 金一、五五二、二七五円

原告杉本孝男は、本件火災により家財道具等をすべて焼失させ、また焼跡の整理、吉磯の葬儀等のため次のとおり財産上の損害を蒙った。

(1) 焼失家財道具     一、三五三、四五〇円

(2) 焼跡整理費用等       三二、〇〇〇円

(3) 吉磯の葬儀費用、忌明費用 一三一、二八五円

(4) 吉磯の一周忌費用      三五、五四〇円

(二) 原告肌勢常子 金一、四三六、三四五円

原告肌勢常子は、本件建物を賃借して菓子販売業を営んでいたところ、本件火災により右建物、店舗を焼失し、次のとおり財産上の損害を蒙った。

(1) 焼却什器商品類   七〇六、〇四五円

(2) 焼却現金       一四、〇〇〇円

(3) 焼却赤電話損害賠償金 一六、三〇〇円

(4) 建物賃借権利金   七〇〇、〇〇〇円

2、吉磯の死亡による慰藉料

原告杉本孝男、同久子は、火災により長男の吉磯を死亡させ、その精神上の苦痛は甚大であり、これを金銭に評価すれば、右両原告について各金一、五〇〇、〇〇〇円が相当である。

七、よって、原告らは、被告に対して、不法行為による損害賠償として、前項記載の金員およびこれに対する不法行為後の昭和四一年二月二五日より支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三、被告の答弁

一、請求原因第一項から第三項までの事実は認める。

二、同第四項のうち、火災の発生および吉磯の死亡は認めるがその余の事実は知らない。

三、同第五項の事実は否認する。

被告は以下に述べる通り、高圧ガスの販売業者として、高圧ガス取締法の精神に従って、高圧ガスによる災害を防止し、公共の安全を確保すべく日夜努力しているのであって、ガス器具の購入、その管理、設置すべてにわたって万全を期しており、本件プロパンガスの販売についても何ら過失はなかった。

1、本件プロパンガス容器は、訴外中国工業株式会社が補助参加人から昭和三七年一〇月一日購入した容器用バルブを、自社作製の容器に取りつけて、昭和三七年一〇月二五日製造したものであって、被告はこれを中国工業から買い入れた。そして、この容器は被告会社玉川販売所に配置され、田無工場においてガスが充填されて昭和三七年一二月二九日から需要家宅を回転し、五回の得意先を経て原告肌勢方に設置されたものである。

2、被告は、容器の買入については、信頼できるメーカーである補助参加人から容器バルブを、中国工業から容器ボンベを買い入れた。その買入れにあたっては、メーカーから材料、安全弁の構造及び性能、耐圧性能等について、幾度か説明を聞き、メーカーの厳重な検査を経た合格品を買入れたものである。特に、容器バルブについては、そのグランドナットの締めつけを一、〇〇〇―一、二〇〇kg/cmトルクとしており、種々の試験により、プロパンガス容器の運搬時の振動、熱等のためにグランドナットの部分にゆるみを生ずることはあり得ず、三年間は十分に保証できるということであった。

3、ガス充填に際しては、ガス充填所においてガスもれについて臭い、石鹸水による探知検査をするほか、容器バルブのグランドナット部のゆるみについては特に念入りな注意を払い、常にグランドナット部とバルブ本体がきっちりとしまった状態にあるかどうか(これは容器に赤い表示線で表示されている。)を確認している。

4、昭和三九年二月一日の本件容器交換に際しては、被告会社玉川販売所の従業員石川攻および波田恒昭が容器交換を行ったのであるが、その際波田は交換に先き立ち、充填されたボンベ容器のグランドナットとバルブ本体の締付状況を確認したし、石川は交換後調整器その他のガス洩れ等の異常がないことを確認して作業を完了した。

5、以上のように本件容器バルブについては購入時から取付の時点まで何度も点検検査され何ら異常は発見されなかったものであり、被告には過失はない。

四、同第六項の事実は争う。

第四、証拠関係 ≪省略≫

理由

一、当事者間に争いのない事実

1、昭和三九年二月当時、原告肌勢常子は、東京都世田谷区松原町一丁目三七番一三号の木造二階建家屋(以下、本件建物という。)において、訴外肌勢善治とともに菓子の小売業を営み、原告杉本孝男、同杉本久子はその長男吉磯(一年五月)とともに本件建物の二階に居住していた。原告肌勢は、ふかしまんじゅう販売のため、昭和三八年一一月二八日頃より、プロパンガス等の販売を業とする被告会社からプロパンガスを買いうけていた。

2、被告会社は、同所有のプロパンガス容器にプロパンガスを充填し、容器ごと原告肌勢方、本件建物店内に設置してプロパンガスを供給し、原告肌勢が容器内のガスを使用し尽すと、別のプロパンガスを充填した容器を持参して取り替えて反覆供給していたものである。

3、原告肌勢は、昭和三九年二月一日、被告会社から二〇キログラムプロパンガス容器WTI四九、八六二号(以下、本件ガス容器という。)に充填されたプロパンガスを買いうけた。

4、同日午後九時三〇分頃、本件建物が火災により焼失し、そのため二階に寝ていて杉本吉磯が焼死した。

以上の各事実については当事者間に争いがない。

二、本件事故の発生原因について判断する。

1、≪証拠省略≫を総合すると、次の事実が認められる。

本件ガス容器は、被告会社田無工場においてプロパンガスを充填され、同玉川販売所に配置されて後、昭和三九年二月一日午前九時三〇分頃原告肌勢方本件建物店内に配達、設置された。肌勢善治は、同日午前一〇時頃、右ガスを使用してまんじゅうふかし器を加熱し、午後九時三〇分頃までガスの使用を継続した。同時刻頃、原告杉本久子は、肌勢善治に依頼されて、ガスの元栓を閉めて火を消すため、本件ガス容器頭部のハンドルを右に廻したが、いくら廻しても閉まらないため更にハンドルを廻しつづけていたところ、ハンドルを支えているグランドナットがとつぜんバルブ本体よりはずれてプロパンガスが噴出し、本件ガス容器から約〇・七五メートル離れて置かれていた石油ストーブの火がガスに引火し、火は燃えひろがって更にガスが爆発し、前示火災を生ぜしめた。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

2、≪証拠省略≫によれば次の事実が認められる。

本件ガス容器にとりつけられていたバルブのグランドナットのねじは左ねじであったが、同スピンドルのねじは右ねじであったので、グランドナットの締めつけが緩んでグランドナットとバルブ本体との固着力がスピンドルとグランドナットとの固着力より小さくなった場合には、ガスを止めるためにハンドルを右に廻しスピンドルを閉めるとき、グランドナットがスピンドルに付着してともに右に廻転し、グランドナットがバルブ本体より離脱する危険性があった。

バルブ本体とグランドナットとの固着力は、グランドナットのねじを強く締めつけて下端にあるグランドナット・パッキングを圧縮したとき、その間に生じるまさつ力およびパッキングの弾性による上向きの反力によって生じるねじのまさつ力の和であるから、グランドナットパッキングの材質、特性によって大きく左右される。ところで、本件バルブのグランドナット・パッキングはナイロン製であったが、ナイロン製パッキングは金属製パッキングと異り、弾性が少いところに加えて、温度膨脹系数は遙に大きいため、気温が低下すると厚さが減り、まさつ力も激減するものであって、本件事故当時は、冬期で年間の気温が最も低くなる季節であるうえに夜間であったため、気温も低くナイロン製パッキングは収縮していたものと推認される。したがって、グランドナットのねじが適正位置よりも約一ミリメートル程度ゆるんでいた場合、グランドナットが上方に移動するのは〇・〇二五ミリメートル程度にすぎないけれども、ナイロンパッキングを用いていると、この程度のゆるみでも、右のような条件の下ではグランドナットとバルブ本体との固着力は著しく減少する状態にあった。

しかも本件のようなバルブは、ガスの出を良くしようとしてハンドルを廻してスピンドルをリフトいっぱいに開けた場合には、スピンドルのバックシート・パッキングがグランドナットに突当る状態となり、そこにまさつ力が生じ、グランドナットとスピンドルとの間の固着力は増大することになる。

以上の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

3、右の1、2の各認定事実を総合すれば、本件バルブは、そのグランドナットのねじと、スピンドルのねじとが逆ねじの関係に立つように設計されているのであるから、ハンドルしたがってスピンドルを閉めるための右回転の操作は、グランドナットとバルブ本体との間の固着力がスピンドルとグランドナットとの間の固着力よりも小さい状態の下では、グランドナットをスピンドルと同方向に回転させることになり、その回転数がグランドナットのねじ山の数を越えたとき、これをバルブから離脱させる危険を常に伴うものであるところ、本件グランドナットの締めつけに緩みがあり、そのため、すでに気温低下によって弾性、まさつ力が減少していたナイロン製のグランドナットパッキングをもってしては復元、補填できないほどにバルブ本体とグランドナットとの間の固着力が著るしく減少していたことと、事故当日の朝、ハンドルが全開してスピンドルとグランドナットとの固着力はむしろ増大していたこととが重なり合い、そのために、原告杉本久子がハンドルを右に廻して閉めたときに、グランドナットがスピンドルとともに右に廻転をはじめ、グランドナットのねじがさらに緩み、ついにバルブ本体から離脱し、本件火災を惹起したものと認めることができる。右認定を覆すに足る証拠はない。

三、被告の責任

プロパンガスのような危険物を販売する者は、ガスの引火、爆発を未然に防止すべき義務あることは明らかである。ことに、ガス容器にプロパンガスなど常温常圧で気化噴出して引火、爆発する危険のある高圧液化ガスを充填し、これを一般家庭に設置してガスを供給販売する者は、かかるガスの取扱いに不慣れな一般人が通常の用法に従い使用するかぎり、なんら危険のないような安全なガス容器にガスを充填して供給すべき注意義務がある。そのために、ガスの充填、運搬、設置に際しては、ガス容器の細部にわたるまで、構造上の瑕疵の有無について点検すべきはもちろん、グランドナットの締めつけの状態についてはとくに細心の注意を払い、いやしくもハンドルの開閉にともなってグランドナットが抜けおちるようなことがないように、ことにガス容器のバルブのグランドナットパッキングが金属製でなく、ナイロン製である場合には、わずかなグランドナットの締めつけの緩みもグランドナットの離脱を惹起するおそれが大きいものであるから、この点の検査には万全を期し、危険の防止に努めなければならない。

しかるに、前記二、1の認定事実によれば、本件ガス容器が原告肌勢の本件建物(店舗)内に設置されてから事故発生までは、わずかに一二時間を経たのみであって、肌勢善治、原告杉本久子らは、当日朝搬入されたガス容器のハンドルを初めて開いてガスに点火しただけで、その夜閉店の時まで本件ガス容器の操作、使用において格別異常な外力が加えられたとは認められないのであるから、本件ガス容器は、同店に設置される以前にすでに、通常の用法に従ったハンドルの開閉すなわちスピンドルの廻転によってもグランドナットが容易に離脱するようなねじの緩みが生じていたものと推認される。そして、≪証拠省略≫を総合すると、被告会社田無工場においては、五、六人の作業員が四台の充填器具で一日に八〇〇本近くのガス容器に液化ガスを充填していたが、容器のガス洩れの検査等も右ガスの充填に要する一〇キロボンベ一本当り約一分という短時間内に併行してなされているのであり、しかも作業員は他方では過充填にならないよう注意することも強く指導されていたことが認められるから、そのうえに本件ガス容器のグランドナットの緩みの有無を慎重に検査し発見するには時間的にも十分とは言えない。そればかりでなく、≪証拠省略≫を総合すると、被告の検査は容器にあらかじめ引かれてある赤エナメル線のずれの有無を肉眼で見て、グランドナットの緩みの有無を知る目視検査に頼っていたが、その赤線は、巾約三ミリにも達しており、この方法によって肉眼で、短時間に、他の作業と併行しながら片手間にわずか一ミリ前後のグランドナットの緩みを発見することはとうてい確実を期し難いものであり、原告肌勢の店舗内に本件ガス容器を設置した被告会社従業員もガス洩れ、調整器の状態などについては一応の点検をしたけれども本件グランドナットの緩みの有無について、とくにしさいには点検せず、これを発見するに至らなかったものと認められる。≪証拠省略≫には、原告肌勢方に本件ガス容器を設置する際、右のような赤線のずれの有無を眼で確認したとの供述があるけれども、その点検が一ミリのずれをも発見できるように十分入念になされたとは信じられない。かえって、≪証拠省略≫によれば、右のような目視検査では、赤線のずれが五ミリほどになっているものは、容易に発見できたけれども、僅なずれは、発見が容易でないことが認定できる。他に以上の各認定を動かすだけの証拠はない。

してみると、被告会社は、右のとおりきわめて安易な作業方法によって本件ガス容器が瑕疵のない安全なものと軽信して原告肌勢にこれを供給したものであるが、これは、前示のとおり危険物の供給販売をするものに要求される高度の注意義務を著るしく怠ったものであり、その過失の程度は大きい。よって被告会社は、右過失に基く本件事故について損害賠償の責任を負わなければならない。

四、損害

1、火災による財産上の損害

(一)  前示のとおり本件火災により原告杉本孝男の長男吉磯が死亡したことには争いなく、また≪証拠省略≫によれば、原告杉本孝男は別表(一)のとおりその所有の家財道具をすべて焼失し、右の焼失当時における価額は総額一、三五三、四五〇円相当であったことが認められる。さらに、右≪証拠省略≫によれば、同原告は本件火災の焼跡の整理、近隣へのお詑び費用として合計三二、〇〇〇円支出し、長男吉磯の葬儀費用、忌明費用として合計一三一、二八五円の支出をなしたことが認められる。右各支出は、いずれも本件事故により生じた必要経費として、社会通念上被告に賠償させるべき相当な額というべきであるから、これを相当因果関係ある損害と認める。しかしながら、原告主張の一周忌費用は、本件事故と相当因果関係ある損害とは認められない。

(二)  ≪証拠省略≫によれば、原告肌勢常子は賃借中の本件建物を焼失し、別表(二)のとおり本件建物一階の店舗におかれていた同原告所有の什器、商品類合計七〇六、〇四五円相当および現金一四、〇〇〇円を焼失したことが認められる。さらに、右証拠ならびに弁論の全趣旨によれば、同原告は店頭に設置していた赤電話を焼失したために、日本電信電話公社に対し、その損害賠償金として一六、三〇〇円支払い、また、本件事故前と同様に菓子販売業を継続するために本件建物の所有者であった訴外竹内が再築した建物を賃借したが、前の賃貸借と同じく七〇〇、〇〇〇円の権利金の支払を余儀なくされたことが認められる。

右は、いずれも本件事故により生じた損害であるから、被告はその損害の賠償責任を負う。

2、慰藉料

≪証拠省略≫によれば、両名が、その長男である吉磯の死亡により多大の精神的苦痛を受けたことは容易に認められるところであり、これを慰藉する金額としては、本件の諸般の事情を考慮して、それぞれ七五〇、〇〇〇円が相当であると認める。

五、結論

以上のとおりであるから、被告は、原告杉本孝男に対し、財産上の損害合計一、五一六、七三五円、慰藉料七五〇、〇〇〇円、合計二、二六六、七三五円、同杉本久子に対して慰藉料七五〇、〇〇〇円、同肌勢常子に対し、財産上の損害合計一、四三六、三四五円および右各金員に対する損害発生後であることが明らかな昭和四一年二月二五日から各支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による各遅延損害金の支払をなすべき義務がある。

よって、原告らの被告に対する本訴請求は、右の限度において理由があると認めてこれを認容し、その余は棄却すべく、訴訟費用、参加により生じた費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条、九四条後段を、仮執行宣言について同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺忠之 裁判官 山本和敏 大内捷司)

〈以下省略〉

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