大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)440号 判決

原告 丁聖祚

被告 中高下幸直

主文

当庁昭和四〇年(手ワ)第三八一三号約束手形金請求手形訴訟の判決を認可する。

異議申立後の訴訟費用は被告の負担とする。

事実

当事者双方の申立および主張は主文記載の手形訴訟の判決事実摘示と同一(但し、「本件手形と書替えた手形は昭和四〇年一〇月二七日付、被告振出の金額各三〇万円、満期同年一二月二五日および同年同月二七日、その他の要件は本件手形と同じもの各一通である」と附加する。)であるからここに引用する。

被告訴訟代理人は立証として原告本人尋問の結果を援用した。

理由

請求の原因事実は当事者間に争いがない。

そこで被告の抗弁について判断するのに、原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨とによると次の事実が認められる。

即ち、本件手形は、原告が先に被告の依頼によって割引いた六〇万円の約束手形(尤もこの割引金は被告の依頼により紹介者の野村某に手交されたが被告の手許に渡ることなく、訴外野村某の手許に止まつているもののようである。)の書替手形として被告が原告に振出したものであるが、満期にこれが不渡となった。そこで被告から原告に対し手形金を早急に支払うから依頼返却の手続をしてほしいと依頼があったので、原告からその手続がとられたがその後間もなく本件手形の書替えのため被告主張のとおり三〇万円の二通の約束手形が原告に交付された。

以上のとおりの事実が認められ、この認定に反する証拠はない。

被告は本件手形が右認定の三〇万円の手形二通によって書替えられたことを根拠として本件手形が無効に帰したものであると主張しているのであるが、既存の手形を回収しないで手形の書替えをした場合は特段の事情がない限り延期のための手形書替であって、既存の手形債権はこれによっては消滅しないものと考えられるところ本件においては反対に解すべき特段の事情が見当らないばかりか却って、原告本人尋問の結果によると本件手形により書替えられる前の前記割引きにかかる原始手形も原告の手許に保留されていることが認められるのであって、このように二度も手形の書替えが行われながら、いずれも書替え前の手形が原告の手許に保留されているところからみると、これらの手形の書替えが延期のためになされたものであるごく明瞭なことといわなくてはならない。

また、被告は本件手形について依頼返却の手続がとられた事実をもとにして、原告が本件手形債権を放棄したものであると主張しているのであるが、手形が不渡になった場合に依頼返却の手続がとられたからといって、手形債権の取立を一時留保したものと解するのは格別として、手形債権を放棄したものと解することは到底できない。

そして、本件手形は前記のとおり、三〇万円の二通の約束手形によって延期のため書替えられたのであるけれども、この書替後の手形の満期もすでに到来していることは被告の主張自体によって明らかであるから、被告はもはや本件手形金の支払を免れないものというべきであり、被告の抗弁はいずれも理由がなく採用できない。〈以下省略〉。

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