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東京地方裁判所 昭和42年(ワ)11064号 判決

原告 加藤憲三

右訴訟代理人弁護士 大原信一

同 小田切登

被告 八代弘一

〈ほか一名〉

主文

被告らは原告に対し、各自金百四十六万円及び内金百三十万円に対しては昭和四十一年八月二十日から、内金八万円に対しては昭和四十二年二月一日から、内金八万円に対しては昭和四十七年一月十八日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを十五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

この判決は原告勝訴の部分に限り、各被告につき各金四十万円の担保を供したときは、当該被告に対して仮に執行することができる。

事実

第一当事者双方の申立

一、原告訴訟代理人は「被告らは原告に対し、各自金百五十六万円及びこれに対する昭和四十一年八月二十日から右支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求めた。

二、被告らはいずれも請求棄却の判決を求めた。

第二当事者双方の主張

一、原告の請求原因

1  訴外第一起業株式会社(旧商号株式会社日本住宅協会を昭和四十二年六月三十日に改めたものである。以下日本住宅という。)は不動産業、観光施設の経営及び土産物販売等を目的とする会社であるところ、原告は日本住宅との間において昭和四十一年四月六日に同社所有物件と称する別紙物件目録記載の土地(以下本件土地という。)について次の内容の売買契約を締結した。

(一) 売主日本住宅、買主原告

(二) 代金 二百十万円

(三) 支払方法

(1) 契約金として内金三十五万円を同年四月九日限り

(2) 内金百十五万円を同年五月二十日限り

(3) 残金六十万円は銀行ローンを受け次第(但、右ローンは三十六回払のものとする。)

支払う。

(四) 買主に対する本件土地所有権移転登記手続は右(2)の百十五万円の支払と同時にこれをなす。

(五) 右登記手続の日において、買主は売主に対して、水道施設負担金三万六千円、登記費用一万三千円を支払う。

2  原告は日本住宅に対して、右約定にしたがい昭和四十一年四月九日までに契約金三十五万円を支払った(このうち五万円は、浦和市大字太田窪字諏訪入千九十八の土地売買につき、原告が昭和四十一年二月八日交付した手付金五万円を該売買を合意解除のうえ、右契約金に充当した)が、日本住宅の専務取締役被告八代は原告に対し、前項(三)(2)の支払期日前に、原告が同期日に支払うべき代金内金を、一時、日本住宅に融通して欲しい、日本住宅においては、融資を受けた金額に五万円を加算した額を右期日に間違いなく売買代金のうちに充当の取扱をなす旨懇請し、原告はこれを容れて、同年四月十五日九十五万円を埼玉銀行新宿支店日本住宅協会八代弘一名義の普通預金口座に振込み、もって日本住宅に右金員を交付した。

3  仮に被告八代において前項の融通を受けるについて、日本住宅を代表する権限がなかったとしても、同被告は日本住宅の専務取締役であり、本件売買契約締結当初から本件売買に関する担当者であったから、原告は同被告において日本住宅のため、本件売買代金の一時の融通をうける権限を有するものと正当に信じて、右融通をなしたのである。

したがって、日本住宅は、原告と被告八代間における前項の融通に関する約定について、その当事者としての責に任ずべきものである。

4  ところで日本住宅は本件売買契約締結当時、本件土地はその所有地であるかの如く称していたけれども、真実は訴外松栄商事株式会社(以下松栄商事という。)の所有であったから、日本住宅の代表取締役である被告水島及び専務取締役であって、また本件売買担当者である被告八代は、右契約締結後速やかに日本住宅をして、本件売買の売主たる義務を履行できるように本件土地所有権の確保を図るべき任務を負い、これを遂行する義務があるところ、いずれも悪意または重大な過失により右義務に違反して、全くこれを放擲し、右所有権確保の措置をなんら講じなかったために、松栄商事は昭和四十一年八月十一日訴外大塚盛男に対して本件土地を売却し、同月十九日その旨の所有権移転登記を経由したから、日本住宅は本件土地の所有権を取得することは不能となった。

そこで、原告は日本住宅(もと本訴において共同被告であった)に対して昭和四十五年三月十日到達の準備書面をもって本件売買を解除する旨の意思表示をなしたから、本件売買はこれにより解除されたものである。

5  したがって、原告は、被告らの悪意もしくは重大な過失による右任務懈怠により本件土地の所有権を取得することができなくなり、前記のとおり既に日本住宅に対して支払った契約金三十五万円及び代金内金九十五万円合計金百三十万円相当の損害を被ったものというべきであるから、被告らは原告に対し各自右損害の賠償をなすべき義務がある(商法第二百六十六条の三参照)。

6  しかるに、被告らは原告に対して任意に右賠償に応じないため、原告は本訴訟代理人弁護士大原信一に対し、昭和四十二年二月一日本訴訟の提起を委任し、同人に対して着手金十三万円を右委任の日に、謝金十三万円を本判決言渡の日に各支払うことを約したが、右支払債務もまた被告らの任務懈怠によって被った損害というべきである。

7  よって原告は被告らに対し、各自第5項の金百三十万円及び前項の金二十六万円合計金百五十六万円並びにこれに対する本件売買が履行不能となった日の翌日である昭和四十一年八月二十日から右支払済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴請求に及ぶ。

第二請求原因に対する被告らの答弁

一  被告八代の答弁

1  請求の原因1の事実中、訴外株式会社日本住宅協会(以下日本住宅という。)と原告との間において、原告主張の日に、主張の土地について主張の内容の売買契約が締結されたことは認めるが、その余の事実は不知。

2  同2の事実中、原告が日本住宅に対して契約金三十五万円を支払ったこと、原告が主張の預金口座に九十五万円を振込んだことは認めるが、右振込の日は昭和四十一年五月三十日頃である。その余の事実は否認する。

被告人八代は日本住宅と関係なく、個人として原告から百万円を借受ける話合に基づいて、右振込送金を受けたものである。したがって、同被告は原告の要求により、右貸金の担保として右送金を受ける前に、額面百万円、支払期日昭和四十一年七月十五日、支払場所東京厚生信用組合新宿支店振出日同年五月二十六日(手形番号AB〇〇一二五四)の約束手形一通を差入れており、また、同被告は右送金を受ける前の昭和四十一年五月二日頃には既に日本住宅を退職しているし、なお、原告は右振込の際、利息として五万円を天引しているものである。

3  同3の事実中、被告八代が日本住宅の専務取締役であったこと、前記九十五万円が日本住宅に対して融通されたものであることは否認する。

4  同4の事実中、本件土地が本件売買契約締結当時訴外松栄商事株式会社の所有であったことは不知、被告八代が日本住宅の専務取締役であったことは否認する。

5  同5の事実中、原告が日本住宅に対して契約金三十五万円を支払ったことは認めるが、その余の事実は否認する。

6  同6の事実は否認する。

二  被告水島の答弁

1  請求の原因1の事実中、訴外第一起業株式会社(旧商号訴外株式会社日本住宅協会。以下日本住宅という。)と原告との間において、原告主張の日に、主張の土地(以下本件土地という。)について主張の内容の売買契約が締結されたことは認める。右売買は本件土地の地元の業者から、日本住宅が委託されて締結したものである。

2  同2の事実中、日本住宅が原告から金員の融通を受けたことは否認する。

3  同3の事実中、日本住宅が原告主張の責任を負うべきことは否認する。

4  同4の事実中、本件土地が本件売買契約締結当時、日本住宅の所有でなかったことは認めるが、被告水島において任務懈怠があったことは否認する。本件売買は前記のとおり、日本住宅が他の業者から委託されて締結したものであり、本件土地の所有権を移転するについてはなんら支障はなかった。むしろ、内金百十五万円の支払期日に原告から日本住宅の社員佐村に対し、代金の貸付が未だ受けられないから右支払を延期してもらいたいと申し向けてきたものであり、日本住宅としては、残金の支払がなされなければ、本件売買を解約することもやむをえない旨原告に通知してある。

5  同5の事実中、被告水島において、任務懈怠があったこと、その主張の九十五万円について日本住宅が支払を受けたのと同様に解されるべきこと、被告水島に主張の賠償義務があることは否認する。

6  同6の事実は否認する。

第三立証≪省略≫

理由

原告が訴外株式会社日本住宅協会(以下日本住宅という。)との間において、昭和四十一年四月六日別紙物件目録記載の土地(以下本件土地という。)について、売主を日本住宅、買主を原告とし、代金二百十万円、その支払方法は契約金として内金三十五万円を同年四月九日限り、内金百十五万円を同年五月二十日限り、残金六十万円は銀行ローンを受け次第(但、右ローンは三十六回払のものとする。)夫々支払う、買主に対する本件土地所有権移転登記手続は右百十五万円の支払と同時にこれをなす等の約にて売買契約を締結したことは、原告と被告ら間において争がなく、原告が日本住宅に対して右契約金三十五万円を支払ったことは原告と被告八代間においては争がなく、原告と被告水島間においては、≪証拠省略≫によってこれを(但、右三十五万円のうち五万円は、原告が浦和市大字太田窪字諏訪入千九十七の内十一号地の土地売買につき昭和四十一年二月八日交付した手付金五万円が、右売買を合意解除のうえ、右契約金に充当されたものであることを)認めることができる。

ところで≪証拠省略≫によれば、右三十五万円の支払ないし充当の日は右約定の昭和四十一年四月九日であること、また本件土地の引渡も右約定の同年五月二十日において且つ百七十五万円(但、内金六十万円は銀行ローンによる)の支払と引換えになされる定めであったこと、また日本住宅は不動産業、観光施設の経営及び土産物販売その他これに附帯する一切の業務を目的として昭和四十一年四月一日設立された株式会社であるところ、右設立前は被告水島が個人で「日本住宅協会」の名称を使用して不動産業を営んでいたこと、ところで日本住宅は昭和四十二年六月三十日に第一起業株式会社と商号を変更(変更の登記は同年七月五日)したこと(右変更の点は、原告と被告水島間においては争がない。)、被告水島は右商号変更の日まで日本住宅の代表取締役(右変更の日以降は代表権のない取締役)であり、被告八代は右設立の当初から昭和四十一年六月一日解任(同日解任の登記)されるまで日本住宅の取締役であったが、対外的には代表権はなかったにも拘らず、被告水島の指示に基づき専務取締役を称していたこと、ところで被告八代は本件売買に関する日本住宅の担当者として、契約締結、代金受領等の権限を有していたものであって、本件売買の契約書は昭和四十一年四月六日同被告が原告の勤務先に出向いて、その場で作成し、前記契約金の内金三十万円(契約金三十五万円のうち、その余の五万円は、前記のとおり、別個の売買の手付金から振替えられた。)は同月九日に同被告が右同様原告の勤務先に赴いてこれを受領したものであったこと、しかるところ、同被告は、原告が前記約定の同年五月二十日の代金支払期日に支払うべく金員を用意してあることを知って、原告に対して執拗にその融通方を懇請し、遂に原告との間において、原告は九十五万円を右代金支払期日まで、日本住宅に対して融通する、但、日本住宅は右期日において利息分五万円を付加して百万円として本件売買代金に充当の取扱いをなす旨の約定をなし、この約定のもとに、原告をして同年四月十六日埼玉銀行新宿支店日本住宅八代弘一名義の普通預金口座に振込送金をなさしめたこと(右預金口座に対する振込送金の事実は、原告と被告八代間においては争がない。)、原告は、被告八代が日本住宅の専務取締役であり、且つ本件売買の担当者であるところから、日本住宅のため、右約定締結の権限があるものと信じ、右振込送金にあたっても、その送金の目的は、日本住宅宛土地代金の送金である旨を取扱銀行である埼玉銀行与野支店に対し明示していたことを認めることができ(る。)≪証拠判断省略≫

被告八代は右九十五万円は日本住宅と関係なく同被告個人として借受けたのであり、右借受けの担保として額面百万円支払期日昭和四十一年七月十五日支払場所東京厚生信用組合新宿支店提出日同年五月二十六日の約束手形一通を差入れた旨を主張するけれども、≪証拠省略≫によれば、右手形差入(但、実際は額面が五十万円の手形二枚であった)が最初のものではなく、右送金の前日において額面百万円支払期日昭和四十一年五月二十五日振出人日本住宅協会八代弘一の約束手形一通を原告に差入れてあり、同被告主張の右差入の手形はその書替の手形のことをいうものと推測されるところ、≪証拠省略≫によれば、同被告主張の右手形の支払場所は、日本住宅の正規の口座を設けてある取引銀行であることを認めることができ、また≪証拠省略≫によれば、原告が右送金の前日に被告八代から右額面百万円の手形を受領したというのも、単に、代金先払いの証ともなればという気持で、同被告から差出されるまま、とくに検討することもなくこれを受領し、更にこれが不渡になりそうになって、同被告の懇請によりその書替を認めたに過ぎないことを認めることができるところであるから、被告八代の右手形差入の事実をもって、前記日本住宅を借主名義人として貸借がなされたとの認定を覆えすに足りないし、他には前記認定を覆えすに足りる証拠はない。

ところで、被告らはいずれも右貸借に関しては、日本住宅に責任がある旨を否定するから判断するに、≪証拠省略≫によれば、被告八代は原告から振込送金のあった九十五万円を日本住宅には引渡さず、日本住宅も亦、被告八代がなした前記約定に基づく代金内金への充当の取扱をしなかったことを認めることができるけれども、被告八代において、仮に前記約定締結の権限がなかったとしても、前記認定の事実関係のもとにおいては、少なくとも日本住宅は原告に対し表見代表取締役たる被告八代の前記借受に関する約定については商法第二百六十二条にしたがって、当事者としての責任を免れることができず、本件売買契約上、百万円の代金をその支払期日に受けたのと同一の権利義務の関係にたつべきものと解すべきである。

そこで進んで被告らの原告に対する責任につき検討するに、≪証拠省略≫によれば原告は前記百十五万円の支払期日である昭和四十一年五月二十日において残金十五万円の支払と引換えに本件土地の引渡及びその所有権移転の登記手続が受けられ、また銀行ローンの手続をなすものと信じ、右残金及び、印鑑証明書、住民票等を用意して原告の勤務先に来ることとなっていた被告八代の来訪を待っていたところ、右期日を過ぎても被告八代は見えず、また日本住宅からは、なんの沙汰もなかったため、同月二十二、三日頃日本住宅に連絡したところ、担当者の被告八代は一週間前に日本住宅をやめた旨を告げられて全く困惑し、その後は同被告の所在とその責任の追及に躍起となっていたこと、しかし、他方、日本住宅は、右五月二十日の期日後も本件売買の手続を進捗せしめず、全く放置して原告に対してなんの督促もしないのみでなく、抑も本件土地は、本件売買成立の際には、日本住宅所有の分譲地というふれこみにも拘らず、実は、訴外松栄商事株式会社(以下松栄商事という。)の所有であり、整地をなす必要もあり(整地は日本住宅においてこれをなす約定であった。)、また、はやくから現地実測図面の交付を原告から求められていたのであるから、日本住宅としては、本件売買成立後速かに松栄商事から本件土地の所有権取得の途を確保して、売主としての義務履行に備えるべき義務があることは明らかであるのに、日本住宅の代表取締役たる被告水島は本件売買をその成立の当初から熟知しながらも、被告八代共々松栄商事に対して、なんら右土地所有権確保の措置を講じなかったために、松栄商事は、全く、原告及び日本住宅間の本件売買については関知せざるまま、昭和四十一年八月十八日訴外大塚盛男に対して本件土地を売却し、同月十九日その旨の所有権移転登記を経由してしまい、そのため、日本住宅が本件土地所有権を取得して、原告にこれを移転する義務は履行不能になったこと、を認めることができ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

したがって、日本住宅における本件売買の担当者であった取締役たる被告八代及び対外的には日本住宅を代表し、対内的には業務全般の執行を担当すべき職務権限を有する代表取締役たる被告水島らはいずれも日本住宅に対して負う善良なる管理者の注意義務、またその忠実義務にしたがって、日本住宅をして本件売買に関して売主としての担保責任もしくは債務不履行責任等を負わしめざるよう本件売買成立後速かに本件土地所有権の確保を図るべき任務があることは明らかであるにも拘らず、全くその措信を講じなかったために日本住宅をして右両責任のいずれをも負わしめる事態とならしめたものであって、両被告とも悪意または重大なる過失によってその任務を怠ったものというのに妨げなく、右任務懈怠によって本件売買が履行不能となったことに因り、直接に原告が、被った損害については、商法第二百六十六条の三第一項に基づいて、日本住宅とは別個独立に(単にその責任を補充するにとどまらず)、連帯して賠償する義務があるものというべきである。

ところで、原告は日本住宅に対して昭和四十五年三月十日到達の準備書面をもって本件売買を日本住宅の責に帰すべき事由による履行不能を理由に解除する旨の意思表示をなしたことは本件記録上明らかであるから、これによって本件売買は解除されたものであるところ、原告は本訴において被告らに対し、前記契約金三十五万円及び代金内金九十五万円合計金百三十万円相当の金額を損害賠償として請求するところである。

しかしながら、右請求の趣意は債務不履行に基づく本件売買契約解除の結果日本住宅との間になされるべき原状回復と同一内容の履行を被告らの任務懈怠を原因に被告らに対して求めるものと解せられるところであるが、本来、原状回復というも、解除の結果、債務者が法律上の原因なくして利得することとなった反面、債権者の損失に帰することとなったところの給付の目的物の返還をなさしめるものであるから、かかる原状回復を図るべき損失も亦、商法第二百六十六条の三にいう損害のうちに含まれるものと解し、原状回復の事態を惹起せしめた取締役に対しその賠償をなさしめるべきものと解することは、第三者保護を目的とした同条の趣旨に合致するところであるというべきである。

次に原告は本訴を提起するについて負担した弁護士費用をも損害としてその賠償を請求するから判断するに、≪証拠省略≫によれば、被告らが原告に対して任意に右代金返還の請求に応じないため、原告は本訴訟代理人弁護士大原信一に対し、昭和四十二年二月一日本訴訟の提起を委任し、同人に対して着手金十三万円を右委任の日に、謝金十三万円を本判決言渡の日に夫々支払うことを約したことを認めることができるところ、前認定の事実によれば、被告らの本件代金賠償の義務は明らかにその重大なる任務懈怠に起因するものであって、本件応訴自体なんら首肯されるべき事情にないものということができるから、本件事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情をも併せ斟酌のうえ、原告が前記履行不能の結果被った損害のうち弁護士費用としては着手金及び謝金として各金八万円合計金十六万円の限度において、被告らの任務懈怠と相当因果関係の範囲内にあるものとしてこれを認むべきものである。

したがって原告の本訴請求は、被告らに対して各自日本住宅に支払済の額相当の金百三十万円及び弁護士費用金十六万円合計金百四十六万円並びに右百三十万円に対してはその支払をなしたものと認むべき日の後である昭和四十一年八月二十日から、右金十六万円のうち着手金の分八万円については昭和四十二年二月一日から、謝金の分八万円については本判決言渡の日である昭和四十七年一月十八日からいずれも各支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲において理由があるからこれを認容すべきであるが、その余は理由がないからこれを棄却すべきである。

よって訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十二条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木健嗣朗)

〈以下省略〉

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