大判例

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東京地方裁判所 昭和42年(行ク)50号 決定

申請人 岡部義一 外三名

被申請人 建設大臣

訴訟代理人 鰍沢健三 外五名

主文

本件申請を却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

第一、本件申請の趣旨及び理由は別紙一乃至四のとおりである。

第二、被申請人の意見は別紙五乃至七のとおりである。

第三、当裁判所の判断は、次のとおりである。

一、本件疎明資料によれば、

(一)  被申請人は、昭和四二年度の交通安全施設等整備事業の一環として、神奈川県小田原市南町四丁目一番一号(申請人岡部義一方医院所在地)前歩道から、国道一号線を横断して同町一丁目九番三四号、及び三五号(申請人柴田秀之助、同牧岡キミ、同鍋島浅次郎各店舗所在地)歩道橋に達する歩道橋を設置することに決定し、現在架設工事中であること、申請人らは、被申請人を相手として右歩道橋の架設処分の取消しを求めて当裁判所に訴えを提起していること、右歩道橋の設置計画は、申請人らの地元の連合自治会の建設省横浜工事事務所に対する要望にこたえて樹てられたものであること。(但し右要望は昭和四二年六月付をもつて撤回されている。)

(二)  右歩道橋架設工事の進捗状況は次のとおりであること、即ち、

(1)  昭和四二年九月二六日、二七日の両日にわたり、申請人岡部義一の経営する医院の前面歩道の東寄りの部分巾約五メートルの範囲に基礎工事を完了し、

(2)  同年一〇月二四日、二五日の両日にわたり同医院の正面の歩道の部分に一二メートルの杭五本の打ち込みを完了し、

(3)  同月二六日、申請人鍋島浅次郎方店舗前面歩道の東寄り部分に六メートルの杭三本及び申請人牧岡キミ方店舗正面歩道の部分に六メートルの杭二本の打込みを完了したこと、

(三)  右歩道橋架設工事の施行によつて申請人らが蒙る不利益乃至損害は次のとおりであること、即ち

(1)  申請人岡部義一の経営する医院の前庭は、駐車場となつており、従来は、前面の歩道の一部が右駐車場へ通ずる自動車の通路となつていたが、歩道橋が設置されるとその部分が歩道橋の橋脚となるため、既設の車の乗入施設は塞がれ、その部分を使用することが不可能となるが、被申請人側においては、申請人の右駐車場の使用に支障のないようにするため、既設の車の乗入施設と同等の代替施設を設置する計画をたてて、一部その工事を実施していること、もつとも代替施設が出来ても、歩道橋の階段により見透しが妨げられたり、駐車場前面に橋脚が設置されるため、駐車場への自動車の出入が従前に比して不便なものとなること。

(2)  申請人岡部義一は現に経営中の医院を病院形態のものにするため三階建め鉄筋建築をする計画をもつているが、歩道橋が架設されると、次の(3) にあるような不利益をうけること。

(3)  申請人らの各建物には、歩道橋より砂塵が舞い込む可能性があり、また歩道橋を渡る歩行者から各建物の内部を覗き見られるおそれのあること。尤もこの点については、被申請人側は歩道橋に目隠し及び裾隠し、(高さ一、八五メートル)を設置して、砂塵の舞い込みや、覗き方を防止する計画をもつていること。

(4)  申請人柴田秀之助、同牧岡キミは店舗を他に賃貸する意図を有していたところ、本件歩道橋設置のため賃料並に権利金の評価が半減するに至つたこと。

(5)  申請人鍋島浅次郎、同牧岡キミの各店舗は、本件歩道橋の設置により南側からの太陽の照射をさえぎられまた申請人鍋島浅次郎の店舗は、看板を通行人の目から遮断されるに至ること。

(6)  さらに、本件工事の施行自体によつて、申請人牧岡キミの店舗の土台に狂いが生じ、ガラス戸の開閉が不能になつたほか、ガラス戸が一枚割れたこと、申請人鍋島浅次郎方の冷蔵庫の内部壁にはひび割れを生じ、同人方屋上に設置してある太陽温水器が破損したほか、建物の土台にも狂いが生じ、戸の開閉に支障を来していること、

をいずれも認めることができるが、以上の事実のほかに申請人らが申請の理由として主張する事実は、これを認めるに足りる疎明がない。

二、次に本件申請の適否について検討する。

本件横断歩道橋設置の決定及び工事の施行が抗告訴訟の対象たる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為であるかどうかは、問題の存するところであるが、その点はしばらくおき、前記(三)の(1) ないし(5) に認められるような申請人らの蒙る損害は、公益上の心要に基づき行なわれる本件歩道橋架設工事によつて生ずる不利益であつて、本案判決の確定を待たずにその工事を停止するのでなければ回復が困難とされる損害と解することはできない。また前記(三)の(6) に認められる各損害は、いずれも既に発生した損害であつてそれ自体もはや執行停止によつて回避しえないものであるが、さらに同種の損害を招来する可能性があるとしても、本件歩道橋の架設工事によつて生ずる回復の困難な損害ということはできない。その他、本件歩道橋の架設によつて生ずる回復困難な損害を避けるため緊急の心要があることについては、申請人らの主張及び疎明がない。

以上のとおりであるから、申請人らの本件申請は、結局、理由がないのでこれを却下することとし、申請費用の負担について民訴法八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 緒方節郎 小木曾競 佐藤繁)

別紙〈省略〉

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