大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)10211号 判決

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  原告

被告は原告に対し別紙第一物件目録記載の土地を、その上にある別紙第二物件目録記載の建物を収去して明渡せ。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決および仮執行の宣言。

二  被告

主文と同旨の判決。

第二  当事者の主張

一  原告の請求原因

(一)  原告は昭和二二年一一月一日被告に対し別紙第一物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を左の約定により賃貸した。

1 目的 普通建物所有

2 賃料 一か月につき金七五三円。

3 期間 昭和四二年一一月一日まで。

(二)  被告は、本件土地の上に別紙第二物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を所有して、本件土地を占有している。

(三)  本件賃貸借は期間満了により終了したので、原告は被告に対し、本件建物を収去して本件土地を明渡すことを求める。

二  請求原因に対する被告の認否

請求原因(一)、(二)の事実は認めるが、同(三)は争う。

三  被告の抗弁

(一)  被告は昭和三〇年八月、既存の平家建建物を取毀し、借地権の残存期間をこえて存続すべき本件建物を新築したので、本件借地権は右取毀しの時から二〇年間存続することとなつた。

(二)  仮に前項の主張が認められないとしても、被告は本件賃貸借の満了後従前どおり本件建物を所有して本件土地の使用を継続しているので、本件賃貸借は更新され、更に二〇年間存続することとなつた。

四  抗弁に対する原告の認否

(一)  抗弁(一)の事実は否認する。既存建物はその全部が取毀されたわけではなく、本件建物は既存建物を利用した単なる増築の結果にすぎない。

(二)  抗弁(二)のうち使用継続の事実は認めるが、その余は争う。

五  原告の再抗弁

(一)  抗弁(一)に対する仮定再抗弁

仮に抗弁(一)の事実が認められるとしても、原告が右新築に対し遅滞なく異議を述べなかつたのは次の理由によるものであつて、このような場合には借地法第七条の法定更新は認められるべきではない。すなわち、被告は本件賃貸借契約書第一条の五「賃貸人の書面による承諾あるにあらざれば賃借物の原状を変更せざること」の約定にもかかわらず、右新築につき原告に対し何らの通知もせず、しかも右新築工事はきわめて短期間に行われたので取毀しに気づく余裕がなかつた。また、被告は右工事を従前の建物の増築工事として建築確認を得ており、爾後に本件建物を外観しても、旧建物が取毀されたものとは到底認め難いところから、原告はこれを単なる増築にすぎないと過失なく信じていたのである。

(二)  抗弁(二)に対する再抗弁

1 原告は被告に対し本件賃貸借の期間満了の直前である昭和四二年一〇月三一日被告到達の内容証明郵便をもつて更新拒絶の意思表示および本件土地明渡の請求をし、更に期間満了後の同年一一月中東京簡易裁判所に土地明渡の調停の申立をした。

2 原告は本件土地を否む東京都千代田区神田神保町二丁目一一番地宅地五七二・四六平方メートルの所有者であり、本件土地を除く土地部分に映画館を建築し経営している者であるが、昭和四二年一〇月一二日東京都知事より興業場営業許可を受けるに際し、緊急に履行すべき許可条件として興行場衛生措置基準等に関する都条例第三条に基き換気および便所各設備の改善を同年末日までにするよう義務づけられた。その結果原告は右義務を履行するため毎時二一、一五〇立方メートルの能力を有する換気設備を設置し、便器四個を新設しなければならないのであるが、右各設備を新設する余裕は映画館の内外に全くなく、被告より本件土地の返還をうけるほか方法がない状態である。しかるに被告が本件土地の明渡をしないため原告は東京都に対し事情を説明して猶予を受け続けてきたが、昭和四四年五月九日東京都神田保健所長から文書による注意をうけ、その後も再三厳重な警告をうけるにいたつた。そして原告が早急に右許可条件を履行しなければ許可を取消されるおそれがあつたので、やむなく原告は昭和四五年六月四日東京都に対し、被告が本件土地を明渡し許可条件を履行できるにいたるまで休業する旨届出た次第である。右のとおり原告は映画館経営のため本件土地を自己のために使用する必要があるので、被告に対し本件賃貸借の更新を拒絶するについて正当の事由を有する。

六  再抗弁に対する被告の認否

(一)  再抗弁(一)の事実は否認する。原告は本件建物が昭和三〇年八月に新築されたことを知つており、昭和三二年四月本件建物の保存登記をするに際してこれに承諾を与えている。

(二)  同(二)1の事実は認める。

同(二)2の事実のうち原告主張の設備を映画館内外に設置する余裕がないとの点は否認する。その余は不知。被告は本件建物に自動断裁機一台、自動折機一台をおいて家族五人で製本業を営んでおり、得意先を近所に持つている関係上、本件土地から移転することは死活問題である。

第三  証拠(省略)

別紙

第一物件目録

東京都千代田区神田神保町二丁目一一番二

一 宅地 五七二・四六平方メートルのうち四八・〇七平方メートル(添付図面イ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次結んだ直線によつて囲まれた部分)

第二物件目録

東京都千代田区神田神保町二丁目一一番地

家屋番号 同町一一番六

一 木造亜鉛メツキ鋼板葺二階建居宅一棟

一階 三六・三六平方メートル

二階 二九・五八平方メートル

別紙

〈省略〉

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