大判例

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東京地方裁判所 昭和49年(借チ)1044号 決定

申立人

栗木百百枝

相手方

覺藏寺

右代表者

岩渕豊永

右代理人

松久健一

主文

申立人が相手方に対し本裁判確定の日から三月以内に一五六万円を支払うことを条件として、次のとおり定める。

1  申立人が別紙目録(二)記載の建物の一部を移築し、その余を取り毀して同目録(三)記載の建物を建築することを許可する。

2  申立人と相手方との間の別紙目録(一)記載の土地に対する賃貸借契約の賃料を本裁判確定の月の翌月分から一カ月3.3平方メートル当り一五〇円に改定する。

理由

(申立の要旨)

一  申立人は、昭和三三年五月三日相手方から別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という。)を契約期間昭和五三年五月二日までの約束で賃借し、同地上に同目録(二)記載の建物(以下本件建物という。)を所有している。

二  申立人は、本件建物の一部を現存位置から移築し、残部を取り毀して、跡地に別紙目録(三)記載の建物を建築することを計画しているが、相手方の承諾を得ることができない。よつて、右改築について相手方の承諾にかわる許可の裁判を求める。

(当裁判所の判断)

一本件資料によれば、本件申立は適法と認められ、また本件改築は土地の通常の利用上相当と認められるから、本件申立は認容すべきである。

二鑑定委員会は、本件改築により建物の耐用年数が長期化し、そのため相手方において借地期間の延長を余儀なくされること、申立人に改築による快適性、収益性の増加がみこまれること等を理由として申立人に財産上の給付をさせることを相当とし、その額は、本件賃貸借契約の借地期間の延長を前提として借地権価格の六パーセントに当る一八二万一一四五円が相当である旨の意見書を提出した。

当裁判所も当事者間の利益の衡平を図るため申立人に財産上の給付を命ずるのが相当と考える。

しかして右鑑定委員会の意見は、借地期間が延長されることを当然の前提として財産上の給付額を更新料(借地期間延長承諾料)を基準として算出しているのであるが、増改築許可の裁判において、当然に期間延長をなすべきかは問題であり、むしろ原則としては否定するのが相当と考えられ、かつ本件においては申立人の財産上の給付額に関する意見等をも考慮し、附随処分として契約期間の延長はしないこととする。したがつて、右鑑定委員会の意見における財産上の給付額の算定方法は採用しない。

当裁判所は、従前から増改築許可の裁判における財産上の給付額を全面改築の場合には更地価格の三パーセント、一部増改築の場合にはその程度に応じてこれから減額するとの一応の基準に基づいて算出しているが、本件において特に右基準と異なつた取扱いをなすべき事情も存しないからこれに従うものとし、全面改築の場合に準じて、鑑定委員会の意見による本件土地の更地価格五二一五万一九二〇円の三パーセントに当る一五六万円(一万円未満切捨)をもつて本件財産上の給付額とする。

また賃料については、鑑定委員会の意見に従い、本裁判確定の月の翌月分から一カ月3.3平方メートル当り一五〇円に改める。

三よつて、申立人が相手方に対し本裁判確定の日から三月以内に一五六万円を支払うことを条件として、申立人が本件建物の一部を移築し、その余を取り毀して別紙目録(三)記載の建物を建築することを許可し、かつ本件賃貸借の賃料を本裁判確定の月の翌月分から一カ月3.3平方メートル当り一五〇円に改定することとする。

よつて、主文のとおり決定する。

(前島勝三)

〈別紙目録(一)(二)(三)省略〉

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