大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京地方裁判所 昭和50年(モ)9770号 決定

申請人(債務者) 民放労連東京十二チャンネル労働組合

右代表者執行委員長 森広成

申請人(債務者) 民放労連 東京地区労働組合

右代表者執行委員長 森信義

申立人両名代理人弁護士 大森鋼三郎

〈ほか四七名〉

被申請人(債権者) 株式会社東京十二チャンネル

右代表者代表取締役 佐藤良邦

右訴訟代理人弁護士 高井伸夫

同 立花充康

主文

本件当事者間の、当庁昭和五〇年(ヨ)第二三三〇号仮処分決定に基づく執行は、当庁昭和五〇年(モ)第九七六九号仮処分異議申立事件の判決があるまで、これを停止する。

理由

一  本件当事者間の昭和五〇年(ヨ)第二三三〇号仮処分申請事件の仮処分決定(以下本件仮処分決定という)は別紙のとおりであり、本件仮処分決定は、仮処分債務者である申立人らに対し、一定の積極的な行為を為さない事を求めるいわゆる不作為を命ずる仮処分命令である。

二  ところで、仮処分命令に対し、異議申立がなされた場合において、右仮処分命令の執行停止の可否の問題については、仮処分制度の趣旨からも、一般的にいうならば、右命令の執行停止は否定的に解すべきであるが、ただ、当該仮処分命令が仮処分債権者にとって、その内容において権利保全の範囲に止まらず、その終局的満足を得せしめるものであり、もしくは、その執行により仮処分債務者に対し、回復することのできない損害を生ぜしめるおそれがある場合においては、例外的に民事訴訟法第五一二条の準用により、当該仮処分命令の執行停止を認めることができるものと解すべきである。

三  更に、不作為を命ずる仮処分命令の執行は、当該仮処分命令が仮処分債務者に告知されると同時に完全にその内容に即した効力を生じ、仮処分債務者が任意に右命令に従うかぎりにおいては、本案の訴訟でいう執行はありえないということができるが、右の不作為を命ずる仮処分のうち、仮処分債務者が右命令に違背した場合には、民事訴訟法第七三三条、第七三四条により右違反行為に対して強制執行をなす必要が生ずるというべきである。従って、不作為を命ずる仮処分命令の執行停止とは、右にいう執行力の停止の意味と解すべきものである。

四  そこで、疎明によると、本件の申立人らは、被申立人会社に対し、「臨時雇用者の社員化」と、申立人組合らの組合員の「夏季一時金」の要求をなし、その要求貫徹のため、争議行為として、被申立人会社のスタジオ内での座り込みがなされ、そのため、被申立人会社の放送業務の遂行が阻害され、特に、昭和五〇年七月一八日の「こんにちは奥さん二時です」の番組(生放送)制作が申立人組合らの座り込みによって妨害される危険があるとして、同日、妨害禁止の仮処分の申請がなされ、同日、当裁判所は直ちに審尋の手続を経ることなく、被申立人会社の申立を認容し、別紙のとおりの本件仮処分決定がなされたものであることが一応認められる。しかしながら、本件仮処分決定は、被申立人会社が申立人組合らに対し、不作為請求権を有することを仮に定めることを内容とし、その被保全権利は仮に定められるべき不作為請求権そのものであり、いわゆる満足的仮処分にあたるものというべきである。そして、更に、本件仮処分決定が、仮処分債務者である申立人組合らに対し、同人らの行う争議行為について、座り込みによる妨害行為のみの禁止ではなく、その日時・場所・方法等についてなんら制限を課することなく、一般的に争議行為を禁止する趣旨と理解されるおそれがないとはいえない。そうだとすると、本件仮処分決定によって仮処分債務者である申立人組合らは、被申立人会社の業務の妨害を禁止するということで、将来における争議行為自体を禁止することを命ずる仮処分として機能させられるおそれがあるものというべきであり、その結果、本件仮処分決定が、不作為を命ずる仮処分命令ではあるが、申立人組合らの被申立人会社に対する争議行為の実効性を減殺し、または、無効ならしめるおそれがあり、それによって、申立人組合らが損害を蒙るであろうことが、一応認められる。

そして、更に、申立人組合らの被申立人会社に対する「座り込み」の争議行為につき検討するに、本件全疎明によるも、申立人組合らの争議行為が、被申立人会社の正常の業務の運営を阻害する行為として正当性を欠くものとはにわかに断定することはできない。

五  右に認定の事実によると、本件仮処分決定に対し、仮処分債務者である申立人組合らの異議の申立は、一応理由があると認められ、更に、本件仮処分決定の執行によって、仮処分債務者である申立人組合らの蒙る損害についても一応これを認めることができるというべきである。

よって、本件申立人らが本件仮処分決定に対して、異議の申立をなし、右決定に基づく執行の停止を求める本件申立は、理由があるとしてこれを認めることとし、民事訴訟法第五一二条を準用して主文のとおり決定する。

(裁判官 小野寺規夫)

〈以下省略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com