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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)5190号 判決

原告 木徳商事株式会社

右代表者代表取締役 大貫かづ子

右訴訟代理人弁護士 白井久明

被告 野村武史

被告 野村侑子

右両名訴訟代理人弁護士 淵上貫之

右同 鈴木国夫

被告 高崎信用金庫

右代表者代表理事 山口桂司

右訴訟代理人弁護士 清水淳雄

右同 松本速雄

右同 中崎敏雄

主文

一、被告野村武史と原告との間において別紙目録(一)記載の預金債権の権利者は原告であることを確認する。

二、被告野村侑子と原告との間において別紙目録(二)記載の預金債権の権利者は原告であることを確認する。

三、被告高崎信用金庫は原告に対し金五〇三万八五二七円及び内金五〇〇万円に対する昭和五六年一〇月二四日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

四、原告の被告高崎信用金庫に対するその余の請求を棄却する。

五、訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

1. 被告野村武史と原告との間において別紙目録(一)記載の預金債権の権利者は原告であることを確認する。

2. 被告野村侑子と原告との間において別紙目録(二)記載の預金債権の権利者は原告であることを確認する。

3. 被告高崎信用金庫は原告に対し金五〇三万八五二七円及びこれに対する昭和五六年一〇月二四日より支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

4. 訴訟費用は被告らの負担とする。

二、請求の趣旨に対する答弁

1. 被告野村侑子の答弁

(一)  本案前の答弁

(1) 被告野村侑子に対する原告の訴を却下する。

(2) 訴訟費用は原告の負担とする。

(二)  本案の答弁

(1) 原告の請求を棄却する。

(2) 訴訟費用は原告の負担とする。

2. 被告野村武史及び被告高崎信用金庫の答弁

(一)  原告の請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一、請求の原因

1. 原告は飲食店業を営む会社である。

2. 訴外山岸哲男は、昭和五六年六月二〇日、被告野村武史に対し、原告の有する金五〇〇万円を、野村武史、野村侑子名義で各二五〇万円宛の高崎信用金庫に対する期日指定定期預金(マル優扱い)口座に組む権限を与え、同日金五〇〇万円を交付した。

3. 原告は訴外山岸に対し、右に先立ち、原告の金で預金口座を組む権限を与えていた。

4. 被告野村武史は、昭和五六年六月二〇日、被告高崎信用金庫と別紙目録(一)、(二)記載の定期預金口座を組み、同日金五〇〇万円を交付した。

5. 原告は訴外山岸が被告野村武史に右預金口座を組む権限を与えることについて、許諾を与えていた。

6. 原告は昭和五六年一〇月二三日、被告高崎信用金庫に対し別紙目録(一)、(二)記載の預金の解約を申出た。

7. 被告野村武史及び野村侑子は、別紙目録(一)及び(二)記載の預金の権利者である旨を主張している。

よって、原告は野村武史及び野村侑子との間において、別紙目録(一)、(二)記載の預金債権の権利者が原告であることの確認、及び高崎信用金庫に対し消費寄託契約に基づき、元本五〇〇万円とこれに対する昭和五六年六月二一日から同年一〇月二三日までの年二・二五パーセントの利息金三万八五二七円、計金五〇三万八五二七円及びこれに対する弁済期の翌日である昭和五六年一〇月二四日から完済に到るまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二、被告野村侑子の本案前の主張

1. 被告野村侑子は原告の取締役である。

2. 原告は被告野村侑子を訴えるに際し、訴え提起の代表者を定める取締役会も株主総会も開いていない。

よって代表取締役大貫かづ子には訴訟追行権がない。

三、本案前の主張に対する答弁

被告野村侑子は昭和五七年七月八日に原告会社の取締役の地位を解任されているから、被告主張の申立は理由がない。

四、被告野村侑子の本案前の主張に対する答弁についての反論

原告の主張する昭和五七年七月八日には、適法な株主総会は開催されておらず、従って、被告野村侑子が解任された事実もない。

五、請求原因に対する認否

1. 請求原因1の事実について、被告野村武史及び同野村侑子は認める。被告高崎信用金庫は不知。

2. 請求原因2の事実について、被告野村武史は権限を授与されたことについては否認。金五〇〇万円を受け取った事実は認める。被告野村侑子及び同高崎信用金庫はすべて不知。

3. 請求原因3の事実について、被告野村武史は否認。被告野村侑子及び同高崎信用金庫は不知。

4. 請求原因4の事実について、被告野村武史及び同高崎信用金庫はすべて認める。被告野村侑子はすべて不知。

5. 請求原因5の事実について、被告野村武史は否認。被告野村侑子及び同高崎信用金庫は不知。

6. 請求原因6の事実について、被告高崎信用金庫は認める。

7. 請求原因7の事実について被告野村武史及び同野村侑子は認める。

第三、証拠〈省略〉

理由

一、被告野村侑子の本案前の主張について

〈証拠〉によれば、訴え提起の日である昭和五七年四月二七日当時、被告野村侑子は原告の取締役であった事実が認められる。しかし〈証拠〉によれば、被告野村侑子は、昭和五七年七月八日に開催された株主総会において、取締役を解任された事実が認められ、これに反する証拠はない。よって原告代表者大貫かづ子は昭和五七年七月九日以降有効な訴訟追行権を有するということができる。

二、請求原因について

1. 請求原因1の事実について判断するに、〈証拠〉によれば、原告が飲食店業を営む会社であることが認められる(被告野村武史及び野村侑子と原告との間では争いがない)。

2. 請求原因2の事実のうち、訴外山岸から被告野村武史に対し、昭和五六年六月二〇日、金五〇〇万円が授受されたことは〈証拠〉から認められる(被告野村武史と原告との間では争いがない)。

同日、訴外山岸から被告野村武史に対し、右五〇〇万円を預金する権限が与えられたことは、〈証拠〉により認められる。これに対し被告野村武史本人は、訴外山岸と、山岸自身の金、金五〇〇万円を借りる旨を約したと供述する。しかし〈証拠〉を総合すれば、右金五〇〇万円は原告の金であり、また被告野村武史自身、当時原告の金であることを知っていた事実が認められ、この事実に照らすと被告野村武史本人の供述は信用することができない。

3. 請求原因3の事実について判断するに、原告から訴外山岸に対し、昭和五六年六月二〇日に先立ち、原告の金で預金口座を組む権限を与えていたことは、弁論の全趣旨から認められる。

4. 請求原因4の事実について判断するに、〈証拠〉によれば、被告野村武史が昭和五六年六月二〇日、高崎信用金庫において別紙目録(一)、(二)の期日指定定期預金口座を組み、同日金五〇〇万円を交付したことが認められる(被告野村武史及び同高崎信用金庫と原告との間には争いがない。)。

5. 請求原因5の事実について判断するに、〈証拠〉によれば、原告が訴外山岸に対し、被告野村武史に預金口座を組む権限を与えることについて許諾を与えていたことが認められる。

6. 請求原因6及び7の事実はすべて当事者間に争いがない。以上の事実によれば、別紙目録(一)、(二)記載の預金の預金行為者は被告野村武史、名義人は被告野村武史及び同野村侑子であり、出捐者は原告であるということができる。右預金は記名式預金であるところ、記名式預金の預金行為者、名義人と出捐者が異なる場合には、預金者は出捐者とみるべきである。なぜなら無記名定期預金において預入行為者と出捐者が異なるとき、預金契約が締結されたにすぎない段階においては、銀行は預金者が何人であるかにつき格別利害関係を有しないから、出捐者の利益保護の観点から、特段の事情のない限り出捐者を預金者と認めるのが相当であるところ(最判昭四八年三月二七日民集二七巻二号三七六頁)、銀行預金は定型的・大量に行われる取引であるから、無記名定期預金のみならず、記名式預金であっても、銀行は契約締結に際して多くの場合真実の預金者が誰であるかを確かめることがなく、それゆえ記名式預金の場合にも、預金者がだれであるかについては銀行は利害関係をもたないのが通常であり、記名式預金においても無記名式定期預金と同様、出捐者を預金者とみるのが妥当であるからである。よって本件の別紙目録(一)、(二)記載の預金は、いずれも原告の預金であると認めることができる。

三、結論

以上の事実によれば、本訴請求は原告と被告野村武史との間で、別紙目録(一)記載の預金債権の権利者が原告であることの確認、原告と被告野村侑子との間で、別紙目録(二)記載の預金債権の権利者が原告であることの確認、及び原告が被告高崎信用金庫に対し金五〇三万八五二七円及び内金五〇〇万円に対する昭和五六年一〇月二四日から支払済みに至るまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、金三万八五二七円に対する遅延損害金の支払を求める部分は利息に遅延利息を付すのであるから民法四〇五条の要件を備えることを要し(大判大正六年三月五日民録二三輯四一一頁)、主張自体失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 村重慶一)

〈以下省略〉

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