大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京地方裁判所 昭和59年(行ウ)150号 判決

東京都練馬区向山三丁目一番一五号

原告

高橋悠子

同所同番同号

原告

高橋大樹

同所同番同号

原告

高橋大悟

同所同番同号

原告

高橋真由

右三名親権者父

高橋満

右三名親権者母

高橋悠子

同所同番一三号

原告

飯牟禮コウ

同所同番同号

原告

衣笠容子

同所同番同号

原告

衣笠泰介

同所同番同号

原告

衣笠竜太

右両名親権者父

衣笠隆

右両名親権者母

衣笠容子

原告ら訴訟代理人弁護士

北武雄

木村和俊

山口那津男

右山口那津男訴訟復代理人弁護士

高瀬博之

同区栄町二三番七号

被告

練馬税務署長

高木健次郎

右指定代理人

遠山廣直

安達繁

山口新平

鈴木正孝

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五七年一〇月二九日付けで原告高橋悠子、同高橋大樹、同高橋大悟、同高橋真由及び同飯牟禮コウに対して、昭和五八年二月一七日付けで原告衣笠容子、同衣笠泰介及び同衣笠竜太に対してした昭和五四年分の贈与税の更正及び過少申告加算税の賦課決定をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告高橋悠子、同高橋大樹、同高橋大悟、同高橋真由及び同飯牟禮コウ(以下右原告五名を併せて「原告高橋ら」という。)は別表一の、原告衣笠容子、同衣笠泰介及び同衣笠竜太(以下右原告三名を併せて「原告衣笠ら」という。)は別表二の各申告欄に記載のとおり、昭和五四年分の贈与税の申告(以下併せて「本件各申告」という。)をした。

2  被告は、原告高橋らに対して別表一の、原告衣笠らに対して別表二の各更正欄に記載のとおり、昭和五四年分の贈与税について更正(以下併せて「本件各更正」という。)及び過少申告加算税の賦課決定(以下併せて「本件各決定」といい、本件各更正と併せて「本件各処分」という。)をした。

3  原告高橋らは、別表一の異議申立、異議決定、審査請求及び裁決欄、原告衣笠らは、別表二の異議申立て、みなす審査請求及び裁決欄に各記載のとおり、不服審査手続きを経由している。

4  本件各処分は、原告らの課税価格を過大に認定した違法なものであるから、その取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし3の事実は認める。

2  同4は争う。

三  抗弁

1  原告らは、昭和五四年一二月一一日、加藤セチ(以下「訴外セチ」という。)から同人が有している別紙記載の土地のうちの一八〇平方メートルの土地(以下「本件土地」という。)の利用権について、それぞれその八分の一の持分(以下「本件資産」という。)を贈与により取得した。

2  本件土地は、形式上は訴外セチが加入している城南住宅組合(創立時は城南田園住宅組合という名称であったが、昭和一二年城南住宅組合と改称した。以下「住宅組合」という。)が組合員のために組合代表者名でその所有者(従前の所有者は保戸塚長次郎であったが、同人は昭和四六年一〇月四日死亡し、昭和五〇年三月二八日、同人の相続人から相続税法の規定により物納され、現在は国が所有者となっている。)から賃借し、訴外セチが住宅組合から転借したこととなっている。しかし、訴外セチが有した本件土地利用権は、住宅組合の後記A組合員であるところ、その権利は、次のとおり、実質上は転借地権ではなく、単なる借地権であると解されるから、訴外セチの右権利も、借地権であるというべきである。

(一) 住宅組合は、大正一三年二月、組合組織をもって田園生活の一大楽園を創設することを目的として創立されたものであるが、右目的のために組合代表者名で地主一二名から約二万坪の土地を賃借し、これを組合員の使用に供することとした。そして、右土地について、住宅組合は、共同借地契約により各組合員の分割使用部分を定め、地主に対して当該土地を使用する組合員名を報告するなどし、これにより、どの組合員がどの地主のどの土地を使用しているかを地主において把握することができるようになっていた。また、組合員が住宅組合に支払う地代と住宅組合が地主に支払う地代は同額で、住宅組合は賃料差益を得てはいない。したがって、住宅組合は、組合員の便宜のために窓口となって一括して役員名で地主と借地契約を締結し、地代の額を交渉し、その地代を組合員から集めてこれを地主に支払うという存在である。

(二) 住宅組合契約(以下「組合契約」という。)三条によれば、住宅組合から土地を転借している者をA組合員(以下単に「A組合員」という。)、転借土地の底地権を地主から買受けた旧A組合員及び国から直接借地している旧A組合員並びにその相続人をB組合員(以下「B組合員」という。)としている。また、組合契約九条三項によれば、A組合員は住宅組合に対して地代を払支払う義務があるが、B組合員が住宅組合に対し地代の支払義務を負う旨の条項はない。住宅組合が真に転貸権を有しているとすれば、A組合員が底地権を取得したからといって、その転貸権が直ちに消滅することはないはずであるが、組合契約によると、A組合員が転借地の底地権を地主から買受けると、A組合員は当然にB組合員に変わり、以後住宅組合に対する地代支払義務がなくなるのである。そして、組合契約五条二項によれば、A組合員が転借地の底地権を地主から買受けた場合には、原則として住宅組合に対し名義変更手数料を支払う義務があるが、引続き一年以上B組合員として住宅組合地域内に居住するときは、右支払義務が免除されることとなっている。また、右名義変更手数料は、住宅組合の事務費その他住宅組合の運営費用の財源とすることを目的として設けられたものであり、右のように、引続き一年以上B組合員として住宅組合地域内に居住することによりその支払義務が免除されるほどの軽微なものであるから、住宅組合の有する転貸権消滅の対価とみることはできない。

(三) 第三者が、A組合員から転借地権を、地主から底地権を、それぞれ買受けた場合に、第三者がA組合員に支払う代金額は通常の借地権価額であり、地主に支払う代金額は通常の底地権価額である。また、住宅組合が転貸権を有していれば、右のような場合でも、その転貸権は当然には消滅しないはずであるが、右の場合に、住宅組合と右第三者間に転貸借関係が存続した事例はない。なお、組合契約九条五項によれば、A組合員から転借地権を買受けた者は組合契約の定める加盟金を納付しなければならないとされているが、右加盟金は右(二)記載の名義変更料と同一目的のもとに設けられたものであって、転借人の移動に伴う名義変更料ないしは転貸権消滅の対価とみることはできない。

(四) A組合員が転借地権を譲渡した場合には、当該土地の地主に対して住宅組合を通じて名義変更料が支払われている。

(五) 住宅組合は、昭和五一年一月一日現在の住宅組合の資産として、事務所建物(木造瓦葺平家一棟二四坪)及びその敷地の借地権(約七〇坪)並びに預貯金等があるとしているが、A組合員の使用する土地に対する転貸権を住宅組合の資産として計上してはいない。また、組合契約一七条は、A組合員はその転借面積、B組合員はその所有もしくは借地面積に応じ組合財産について持分を有する旨定めているが、仮に、住宅組合の財産の中に転貸権が含まれるものとすると、住宅組合から土地を転借していないB組合員がA組合員に対する転貸権を含む財産に対して持分を有するという矛盾が生ずるから、組合契約は住宅組合が転貸権を有することを予定していないものと認められる。

(六) 以上によれば、住宅組合は、A組合員が使用している土地に対して転貸権を有しておらず、実質上は地主とA組合員間に直接の賃貸借関係があり、A組合員は当該土地につき借地権を有するものといわなくてはならない。

3  本件各更正の適法性

(一) 相続税財産評価に関する基本通達(以下「評価通達」という。)二七によると、借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地の価額に借地権割合を乗じて計算した金額によって評価することとなっている。また、評価通達一一、一三及び一六によると、評価の対象となる宅地が市街地内に所在する場合にはその宅地の面する路線に付された路線価を基として計算するいわゆる路線価方式により評価するが、当該宅地が正面と側方に路線がある場合には側方路線の路線価を影響させて評価することとなる。

以上により本件資産を評価すると、次のとおり一三〇万〇〇五〇円となる。

(1) 本件宅地の価額

(1平方メートルの正面の路線価) (側方路線影響加算) (面積)

(1平方メートルの側方の路線価) (加算率)

{90,000+(90,000×0.07)}×180=17,334,000

(2) 本件資産の価額

(宅地の価額) (借地権割合) (持分)

〈省略〉

(二) 仮にA組合員が有している権利が借地権でなく転借地権であるとしても、A組合員は住宅組合の財産(その場合は転貸権は組合の財産に含まれるはずである。)に対する持分権を有しているから、原告らが贈与により取得した財産の価額は転借地権の価額に住宅組合の財産に対する持分権の価額を加えたものになる。

原告らが本件資産を取得した当時、住宅組合は負債を有していなかったので、その純資産は、

(1) A組合員に対する転貸権

(2) 住宅組合の所有する事務所建物及びその敷地の借地権

(3) 住宅組合の預貯金及び什器備品等

の価額を合計した価額である。

してみると、原告らが取得した財産の価額は、当該土地に対する転借地権の価額及び住宅組合の有する転貸権の価額の合計額すなわち借地権の価額並びに右(2)及び(3)記載の財産についての持分権に相応する価額となるはずである。

したがって、原告らが贈与により取得した財産の価額は右(一)記載の額を上回ることとなる。

(三) 以上によれば、原告らが贈与により取得した財産の価額は、少なくとも一三〇万〇〇五〇円となり、これに対応する税額は八万円であるから、これと同額の本件各更正は適法である。

4  本件各決定の適法性

右3(三)によれば、原告の納付すべき税額は八万円となるところ、本件各申告による原告らの納付すべき税額は一万二九〇〇円であるから、過少申告加算税の額は昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法六五条一項によりその差額である六万七〇〇〇円(同法一一八条三項により一〇〇〇円未満切捨て)に一〇〇分の五を乗じた三三〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満切捨て)となるところ、これと同額の本件各決定は適法である。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は認める。

2  同2について

(一) 冒頭の事実は認め、訴外セチが有していた権利を含むA組員の権利が転借地権ではなく借地権であるとの主張は争う。

(二) (一)のうち、住宅組合が創立された時期及びその使用部分について組合員と地主の関係が把握できるようになっていたことは認め、組合員が住宅組合に支払う地代と住宅組合が地主に支払う地代が同額であることは否認する。

(三) (二)は争う。

(四) (三)は争う。第三者がA組合員から転借地権の譲渡を受けた場合には、住宅組合は譲渡人たるA組合員から名義変更手数料をとり、譲受人が加盟金を支払えばこれに替えることができるようになっているが、これは実質上は転借権譲渡の承諾料である。

(五) (四)の事実は認める。

(六) (五)のうち、住宅組合の資産として転貸権が計上されていないこと、組合契約一七条に主張の定めがあることは認める。借地権が財産評価の対象となったのは比較的最近のことであって、一般的に借地権を資産として計上していないことはありうることであり、住宅組合設立の当初は借地権の財産的価値が意識されず、別段の経理処理がされることなく今日に至っているものである。また、住宅組合にはA組合員及びB組合員の他にC組合員がいて、三種類の組合員がいるが、住宅組合の資産として計上しているのは右A、B、Cの三種類の組合員全体の利害に関わるものだけであって、原則としてA組合員にのみ関わる転貸権は敢えて掲げていないのである。

(七) (六)は争う。

3  同3について

(一) (一)のうち、評価通達の定めは認めるが、評価額は争う。原告らの取得した権利は借地権ではなく転借地権である。また、本件土地の正面路線は通り抜けられるものであるが、側方路線は奥の袋地転借人等の通行のために開設された専用私道で通り抜けのできないものであるから、側方路線影響加算の対象となるものではない。

また、正面路線と側方路線の路線価が同一となっているが、右事情から考えて側方足線の路線価は適正なものとはいえず、七パーセントという加算率も高率にすぎるものである。

(二) (二)及び(三)は争う。

4  同4は争う。

五  再抗弁

1  原告高橋悠子及び同衣笠容子の父で、原告飯牟禮コウの夫で飯牟禮五郎(以下「訴外五郎」という。)は、妻の母である訴外セチが九〇歳を超える高齢であり、いずれ相続が開始し、その場合相当高額の相続税を負担することが予想されたので、昭和五四年一一月二七日、右について税務相談をするため練馬税務署を訪れた。

2  訴外五郎は、本件土地の利用関係について正確な法律知識もなく、土地利用権の相続、贈与等についての税務知識もなかったので、税務相談担当官(以下「相談官」という。)に対し、事実関係を虚心に説明することとし、訴外セチが利用している本件土地は住宅組合からの借地であること、住宅組合はその代表者名義で地主から借地していること等を説明して、適切な相続税対策の方途を相談した。

3  相談官は、訴外五郎の説明から、訴外セチの有している本件土地利用権を転借地権と理解し、路線価図を示して路線価及び転借地権の評価率を教えた。更に、相談官は、その転借地権が登記されていないものであれば、数年にわたって非課税限度内での分割贈与も可能であること、後日の説明のために贈与契約書を作成して公証役場で確定日付をもらっておくこと、納税について誠意を示す気持ちがあるなら非課税限度額を少し上回る程度の分割贈与をして若干の税金を納付してはどうか等と指導したうえ、試みにではあるが一応の税額の計算まで行った。

4  訴外セチと原告らは、訴外五郎が受けた右指導を信頼して、本件資産の贈与契約書を作成し、昭和五四年一二月一一日確定日付を得た上、本件各申告をした。

5  原告らのした本件各申告は、前記3記載の税務相談に基づく相談官の指導を信頼してしたものであるから、右指導と抵触する本件処分は信義則に反し違法なものである。

六  再抗弁に対する認否

1  再抗弁1のうち、昭和五四年一一月二七日、訴外五郎が税務相談のため練馬税務署を訪れたことは認め、その余の事実は不知。

2  同2のうち、相談内容は否認し、その余の事実は不知。訴外五郎は、東京都練馬区向山三丁目一番一三号の土地の転借地権を贈与するが、その価額の概算はどの程度となるかを申し出たものであり、その相談は贈与資産が転借地権であることを前提とするものであった。

3  同3の事実は否認する。相談官は、昭和五四年分の路線価九万円に借地権割合の六〇パーセントを二度乗じた三万二四〇〇円を転借地権の一平方メートル当たりの価額として算出し、右価額に地積を乗じたものが転借地権の評価額であるが、奥行てい減、角地加算等があるので、贈与が具体化したら再度来署されたい旨を述べたものである。

4  同4のうち、本件各申告がされたことは認め、その余の事実は不知。

5  同5は争う。租税の負担は法律の定めるところに従って課されるべきであり、課税の公平を確保するために法適合性が強く要請されるから、信義則に照らして右適法性の要請に優先してまで納税者の利益の保護を図るのが相当であるとされるのは、正義、衡平の見地から、真にやむを得ないと認めるべき事由がある場合に限られると解すべきであり、本件はこれに該当しない。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1ないし3、抗弁1の事実及び抗弁2の冒頭の事実(ただし、訴外セチが有していた権利を含むA組合員の権利が借地権であるとの点を除く。)は、いずれも当事者間に争いがない。

二  原告らが訴外セチから贈与により取得した権利が、形式上は、本件土地の所有者(地主)から住宅組合が賃借した本件土地を訴外セチが転借したことによる権利であることは、右一のとおり、当事者間に争いがないが、被告は、右権利は、実質上は、訴外セチが地主から本件土地を直接賃借したことによる権利(以下、一般に、土地を土地所有者から直接賃借したことによる権利を「借地権」という。)である旨主張し、これに対し、原告らは、右権利は、実質上も、形式上と同じく、住宅組合が地主から賃借した本件土地を訴外セチが住宅組合から転借したことによる権利(以下、一般に、土地を借地権を有する者から転借したことによる権利を「転借地権」といい、その場合の転貸人すなわち借地権を有する者の権利を「転貸権」という。)である旨反論しているので、以下この点について判断する。

1  住宅組合が大正一三年二月に創立されたこと(抗弁1(一))、その使用部分について組合員と地主との関係が把握できるようになっていたこと(同)及びA組合員が土地利用権を譲渡した場合に当該土地の地主に対して住宅組合を通じて名義変更料が支払われていること(同(四))はいずれも当事者間に争いがなく、この事実に当事者間に争いがない甲第一ないし第四号証、第七、第一一号証、乙第一ないし第四号証、第九号証の六、第一〇号証の二(甲第一ないし第三号証、乙第一号証については原本の存在も争いがない。なお、乙第一号証については、後記の採用しない部分を除く。)、証人飯牟禮五郎の証言により真正に成立したものと認められる甲第五号証、官署作成部分については当事者間に争いがなく、その余の部分については弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第九、第一〇号証の各一、第一一号証の一、二、第一二号証の一、第一三、第一四号証、第一六号証の一、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第九号証の二ないし五、第一一号証の三、第一二号証の二ないし六、第一六号証の二(乙第一六号証の二については原本の存在も弁論の全趣旨によりこれを認め得る。)、右証言(後記の採用しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一)  住宅組合は大正一三年二月に組合組織を以て田園生活の一大楽園を創設することを目的として創立され、右目的のために組合代表者名で地主一二名から約二万坪の土地を貸借し、右土地について、住宅組合は、共同借地契約により各組合員の使用部分を定め、地主に対して当該土地を使用する組合員の氏名を報告するなどし、これにより、どの組合員がどの地主のどの土地を使用しているかを地主において把握することができるようになっていた。

なお、住宅組合の目的については、昭和五一年四月一一日に全文改正された組合契約(以下右改正直後のものを「五一年改正組合契約」という。)第一条において、組合地域内を良好なる住居専用地として田園緑地的風致を保全し高度の社会的環境を維持すること、組合員相互の福利と親睦をはかること、及び組合員のため一括して借地をなし、これを組合員に転貸することと規定されている。

(二)  住宅組合創立時から現在に至るまで組合員(現在は、住宅組合から土地を転借している者、すなわち組合契約上A組合員とされている者。以下(二)、(三)において同じ。)が住宅組合に支払う地代と住宅組合が地主に支払う地代は同額である(なお、前掲乙第一号証には、少なくとも住宅組合創立から一〇年間は、住宅組合が組合員から徴収した地代は住宅組合が地主に支払った地代よりも相当に多額であるかのごとき記載があり、また、証人飯牟禮五郎の証言中にも、同旨の部分が存在するが、前掲の甲第七号証及び乙第一号証によれば、当初の地主との土地賃貸借契約における地主に支払うべき地代は、大正一三年五月一日から七年間は坪当たり二銭、その後五年間は坪当たり三銭とされ、また、当初の共同借地契約における組合員が支払う地代は、大正一三年五月一日から七年間は坪当たり二銭、その後五年間は坪当たり三銭とされていて、契約上は両地代は同額とされていた事実が認められ、右認定に反する証拠はないところ、前掲乙第一号証によれば、住宅組合はその設立の当初の一〇年間において、地主より借地した土地内に道路を建設し、あるいは、組合事務所を建築し、事務員等を雇用するなど、住環境を整備し、あるいは、住宅組合の運営のために多額の費用を支出しているが、これに充てるために地代名目とは別個に組合費を徴収していない事実が認められ、右認定に反する証拠はない。そうすると、住宅組合は、その設立の当初においては、組合員から徴収する土地の使用に対する純然たる地代は地主に支払う地代と同額としながらも、住宅組合の行う道路建設等の費用に充てるための組合費も含めて一括して地代の名目で徴収していたものと認めるのが相当であり、徴収額と純然たる地代との差額は組合の独自の経費に充てるための本来は各組合員が組合費等の名目のもとに支払うべき金員と解するのが相当であるから、住宅組合は、その設立の当初において、組合員が住宅組合に支払う地代と住宅組合が地主に支払う地代とに差額があったとする前掲乙第一号証の記載及び証人飯牟禮五郎の証言は、これをそのまま採用するわけにはいかない。)。

(三)  地代の改定等の土地賃貸借に関する名種の交渉は、住宅組合の代表者と地主組合と呼ばれる地主側の団体(以下単に「地主組合」という。)の代表者との間で行われ、また、住宅組合が組合員から徴収した地代は、住宅組合設立の当初から現在まで一括して地主組合に支払われている。

(四)  昭和三五年ころから、A組合員がその土地利用権を譲渡した場合には、当該土地の地主に対して、住宅組合を通じて名義変更料が支払われている。

(五)  組合契約によれば、組合員はA組合員、B組合員及びC組合員に分けられ、A組合員は、前述のように住宅組合から土地を転借している者、B組合員は、従前の転借していた土地の底地権を買受けた旧A組合員及び国から直接借地するに至った旧A組合員並びにその相続人、C組合員は、B組合員からの相続以外の承継人及びC組合員からの承継人とされている。なお、五三年七月二〇日の一部改正前の組合契約(五一年改正組合契約)においては、A組合員がその使用する土地の底地権を地主から取得することについて何ら規制する規定は存在しておらず、また、右改正後の組合契約(以下「五三年改正組合契約」という。)においては、A組合員がその使用する土地の底地権を地主から取得するに当たっては事前に住宅組合の理事会の承認を必要とする旨の規定が置かれたが(五条一項)、右規定に違反して底地権を地主から取得したとしても、それに対する制裁の規定はないし、また、当該A組合員がそのままA組合員にとどまる旨の規定も存在しない。

また、相続税の物納により、地主が国となった土地を使用しているもともとはA組合員であった者のうちには、直接国に地代を支払う者もあり、このような者に対処するために、組合契約には国から直接に賃借している旧A組合員をB組合員とする旨の規定を置いているが、住宅組合は、このような場合に国及び右B組合員に対して、転貸人としての権利を主張したことはない。

(六)  昭和五二年一〇月、A組合員であった白水登志子がその利用している土地約三〇〇坪のうち、約二〇〇坪の底地権を地主から取得して、これを土地利用権と併せて何らの負担のない土地所有権として株式会社双葉建設(以下「双葉建設」という。)に譲渡し(その代金は一億二九四四万七五〇〇円)、双葉建設が右土地上に六棟の建物を建てることにしたところ、住宅組合は、右六棟の建築はいわゆるミニ開発で、住宅組合の居住環境を悪化させる等を理由として、当庁に対し建築禁止の仮処分を申請した。同申請事件の昭和五三年三月六日の審尋期日において、住宅組合と双葉建設の間で、住宅組合は組合契約の例外として右土地上に居住環境を守るための一定の制限を付した上で双葉建設が五棟の建物を建築しこれを販売することを認める、双葉建設は買受人に対し住宅組合に加入することをすすめることを骨子とする裁判上の和解が成立した。他方、住宅組合と白水登志子との間では、右和解とは別個に組合財政の安定と地域内の環境保全に協力するという名目で、当時の組合契約(昭和五一年改正組合契約)四条五項のA組合員の土地使用権を二〇〇坪分譲り受けた者が支払うべき加盟金に相当する一〇〇万円を寄贈することで合意した。

また、五一年改正組合契約上は、A組合員がその土地利用権を第三者に譲渡しても住宅組合に対して名義変更手数料等の金員を支払う義務はなく、その譲受人が加盟金を支払うこととされていたが(四条五項)、当該土地の底地権を取得すると同時に土地利用権と底地権とを併せて譲渡した場合には、A組合員が名義変更手数料等の金員を支払う義務はないのはもとより、譲受人も加盟金を支払う必要がないとするのが、住宅組合の見解であった。そのため、五三年改正組合契約では、A組合員がその土地利用権を譲渡する場合に、事前に住宅組合の理事会の承認を受けることを必要とし、その承認を受けたときは、A組合員が住宅組合に名義変更手数料を支払うこと(ただし、譲受人が加盟金を支払ったときは免除される。)と改められた(四条一、二項)。

なお、住宅組合は、双葉建設あるいはその建設に係る右五棟の建物を買受けた者に対して、転貸人としての権利を主張したことはない。

(七)  昭和五五年一二月、内田幸雄、内田テイが、A組合員であった矢野阿以から土地利用権を、所有者である保戸塚寿々松から右土地の底地権を譲受けたところ、住宅組合は右土地に賃借権を有するとして内田幸雄を相手方に、当庁に対し、数件の建築禁止の仮処分等を申請したが、昭和五六年六月一日及び同年八月二〇日に、内田幸雄は右土地に建物を建てて居住するに当たっては居住環境の保全に協力する、内田幸雄は住宅組合に加盟し、所定の加盟金(坪当たり五〇〇〇円)を支払うことを骨子とする和解が成立した。なお、住宅組合は右和解以後、右土地について転貸人としての権利を主張したことはない。

2  右1で認定した事実により、訴外セチの有していた本件土地利用権の性質について判断する。

(一)  組合契約によれば、A組合員は住宅組合から土地を転借しているものとされているが、B組合員についてはその旨の文言はないところからすると、B組合員は住宅組合から土地を転借していないものとされていると解される。

一般的に、土地をその所有者から賃借した者が当該土地の底地権をその所有者から取得した場合には、混同により原則として当該賃貸借関係は消滅することになるが、土地の転借人が当該土地の底地権をその所有者から取得した場合には、土地所有者と転借人が同一人となるだけで、その転貸人と転借人との転貸借関係が当然に消滅するものではないから、A組合員が住宅組合から真に土地の転借をしているとすれば、当該土地の底地権を地主から取得したからといって、当然に住宅組合から土地を転借していないということにはならず、その組合員の資格がA組合員からB組合員に変わるというのは理解し難いところといわなくてはならない。これに対し、A組合員が実質上は土地を転借ではなく、地主から直接に賃借しているとすると、土地の底地権を地主から取得することにより、当該土地の賃貸借関係は原則として消滅し、当該A組合員は当該土地の完全な所有者となるから、A組合員の資格がそのままは維持されなくなるのは容易に理解し得るところである。

以上を勘案すると、組合契約は、A組合員が住宅組合から土地を転借しているものと規定されてはいるが、その文言にもかかわらず、住宅組合から土地を転借しているのではなく、実質上、A組合員が地主から直接に賃借をしている者すなわち借地権を有する者であることを前提としているものと解する方がより理解し易いものということができる。

ところで、前掲甲第三号証、乙第一〇号証の二によれば、五三年改正組合契約五条二項により、A組合員が当該土地の底地権を取得した場合には、住宅組合に対し、名義変更手数料を支払う義務があるとされているところ、右名義変更手数料をもって、住宅組合の有する転貸権消滅の代価と見うるかに関し付言する。前掲甲第三号証、乙第四号証、第一〇号証の二によれば、右名義変更手数料は、B組合員として引続き一年以上住宅組合の地域内に居住すれば免除されること、住宅組合発行の城南住宅組合だより二三号では、右条項を設けた趣旨について、住宅組合の理事長名で、右名義変更手数料は住宅組合の財政上の理由から設けたもので、A組合員の利用する土地に関し異動があった場合に、新規のA組合員から加盟金として受け入れ、組合費の軽減を図るのが本来の趣旨であるが、五一年改正組合契約ではA組合員の利用する土地に関し異動があっても、前記1(六)のような場合には、新規のA組合員が存在せず、加盟金が得られないこととなるので、その不備を補うため、A組合員による底地権の取得をとらえて右名義変更手数料を支払わせることとしたとの趣旨の説明がされている。右事実に照らせば、右名義変更手数料は、A組合員が底地権を取得したのを機会に、組合費の軽減をはかるため徴収するもので、その者がB組合員になってなお一年以上住宅組合の地域内に居住するときは免除されるといった比較的軽微なものであり(なお、前提乙第一一号証の三、第一二号証の一ないし三によれば、坪当たり、土地利用権九三万円、底地権三〇万円に対し、名義変更手数料と同額とみられる加盟金は坪当たり五〇〇〇円に過ぎない。)到底転貸権消滅の代価とはいい難いものというべきである。したがって、右の名義変更手数料支払義務の存在は、組合契約が、A組合員を借地権を有する者であることを前提としているとみる方がより理解し易いとの前記判断を左右するに足りない。

(二)  前記1(五)によれば、物納により国に所有権が移転した土地のA組合員のなかには、直接国に地代を収めている者がおり、しかも住宅組合はその者に対し転貸人としての権利を主張していないのであるが、このことは、住宅組合が実質上転貸権を有しているとすれば、特段の事情がないかぎり、理解し難いものといわなければならない。これに対し、実質上は、住宅組合が土地の転貸権を有しておらず、A組合員がもともと借地権を有しているものとすれば、容易に理解することができるものである。そして、本件においては、右の特段の事情について主張も、立証もないから、右の点でも、A組合員が、実質上は、借地権を有しているものと考えるのが合理的である。

また、前記1(六)によれば、一例ではあるが、A組合員が当該土地の底地権を地主から取得して、従前から有する土地利用権とを併せてこれを譲渡した場合に、住宅組合は転貸人としての権利を主張していないのであるが、このことも、特段の事情について主張も、立証もない本件においては、A組合員が、実質上は、借地権を有するとみることを合理づけるものである。

更に、前記1(七)によれば、やはり一例ではあるが、第三者が、地主から底地権を、A組合員から土地利用権を取得した場合に、住宅組合は、いったんは転貸人であることを主張して仮処分等の申請をしたが、居住環境の保全を確保することと、比較的少額の加盟金を得ることで、早期に右の主張を撤回し、結局は転貸人としての権利の主張を貫徹していないのである。そして、このことも、他に特段の事情について主張も、立証もない本件においては、A組合員が、実質上は、借地権を有していることを合理づけるものと考えて差支えない。

以上に加え、証人飯牟禮五郎の証言によれば、右のほかにも、A組合員が地主から底地権を取得して、底地権と従前からの土地利用権を一体として譲渡したり、あるいは、第三者が、地主から底地権を、A組合員から土地利用権を取得した例が数件存在することが窺われるところ、そのいずれにおいても、住宅組合が転貸人としての権利を主張していないことが窺われることを併せ考慮すると、住宅組合は、土地をA組合員が地主から賃借するについて、何らかの形で関与しているにしても(この点については、後記(六)参照)、実質上は、借地権を有せず、A組合員が、実質上借地権を有するものと解されるのである。

(三)  東京都二三区内において、借地権を有する者がその権利を譲渡するに際して、土地所有者に一定額の承諾料を支払うことが、慣行化していることは当裁判所に顕著な事実であり、前掲甲第五号証によれば、前記1(四)に述べた、A組合員が土地利用権を譲渡した場合に地主に名義変更手数料を支払っていることも、右の慣行に従ったものであることが認められる。したがって、右名義変更手数料の授受は、地主、地主組合、住宅組合及びA組合員間において、A組合員の土地利用権の譲渡が、実質上は、借地権の譲渡と同視されていることを窺わせるものというべきである。そして、このことは、実質上は、住宅組合が借地権を有せず、A組合員が借地権を有するものであることを合理づけるものというべきである。

(四)  土地の転貸借がある場合において、土地所有者からの賃貸借の地代と転貸借の地代との間に差額がなければならないとする法律上及び事実上の根拠はないが、一般には、転貸借における地代の方がより高額であるところ、前記1(二)のとおり、A組合員が住宅組合に支払う地代と住宅組合が地主に支払う地代とが同額であることは、特段の事情について主張も、立証もない本件においては、住宅組合の権利は名目に過ぎず、A組合員が実質上借地権を有する、という判断を支える一事情たり得るものというべきである。

(五)  A組合員が転借人であることを窺わせるものとして、組合契約のA組合員に関する規定及び一例ではあるが、前記1(七)のとおり、住宅組合が転貸人であることを理由として仮処分等の申請をしたことが挙げられるが、まず、組合契約の右規定については、前記1(五)に述べたB組合員に関する規定及び前記(一)に述べたB組合員に関する規定の理解から考えると、A組合員は、住宅組合が関与(後記(六)参照)している借地権を有する者であり、B組合員は、土地所有者又は住宅組合が関与していない国が所有する土地の借地権を有する者と解することが可能であって、A組合員を転借地権を有する者と解しなければ、理解ができないものとはいえないし、つぎに、仮処分等の申請については、前記(二)のとおり、結局は住宅組合が転貸人であるとの主張を貫徹していないから、A組合員が転借地者を有する者とする根拠とはなし難いものである。

(六)  前記1(三)のとおり、地代の改定等の交渉が地主組合の代表者と住宅組合の代表者との間でされ、住宅組合がA組合員から徴収した地代を一括して地主組合に支払っていることからすれば、地主組合又は住宅組合は、土地の賃貸借に関与するものといえるが、必ずしもその当事者とみる必要はなく、地主又はA組合員の代理人的な存在とみることも十分可能である。

(七)  右(一)ないし(六)によれば、前記1で認定した事実の中には、実質上は、A組合員が、転借地権を有すると解するより、借地権を有するものと解する方がより合理的な事情が多々認められるところであり(A組合員の権利の取引価格が通常の借地権の対価より低廉であることなども含めて、A組合員が転借地権を有すると認むべき他の事情については立証がない。)、しかも、組合契約の規定も、やや文言から離れるにしても、A組合員が借地権を有する者であるとする解釈も可能ということができるのであるから、A組合員は、その利用土地について借地権を有しているものと解するのが相当である。そして、住宅組合は、借地権を有するとはいえず、A組合員のためにA組合員と地主との賃貸借の地代等の交渉をし、また、A組合員の地代を一括して支払う存在と解されるのである。

なお、この見地からすれば、A組合員は、住宅組合が地主組合と交渉して定めた賃貸借の条件に拘束され、また、地代の支払いは住宅組合を通じて行うことを要するのであって、賃貸借の条件の交渉及び地代の支払いについては住宅組合に権限を委任しているものと解されるが、法的には、賃貸借関係は、地主とA組合員との間に存在し、住宅組合とA組合員との間には、転貸借関係はないといわなければならない。

3  訴外セチの本件土地利用権が住宅組合のA組合員の権利であることは前記一のとおり当事者間に争いがなく、これに前記2で判断したところを併せ考えれば、訴外セチの右権利は、転借地権ではなく、借地権であるということができる。

三  信義則違反について

1  原告は、本件各処分が信義則に違反する違法なものである旨主張している。

ところで、課税処分は、羈束処分であるから、課税処分をする以前に課税処分に関し課税庁側が一定の言動、行動等に及んだ場合であっても、課税庁がその言動等に従って課税処分をしなければならないという拘束を受けることは、原則としてないといって差支えない。また、このことは課税の公平の見地からも、当然といわなくてはならない。

そうすると、課税処分を、課税庁側の言動等に係る信義則違反を理由に違法とするためには、その言動等が、課税処分の羈束処分性や課税の公平の見地を無視してもなお当該課税処分を違法としなければならないほど強度に信義に反するものであることが前提となるものというべきである。

2  そこで、本件各処分が信義則に違反するかについて判断するに、昭和五四年一一月二七日、訴外五郎が練馬税務署を税務相談のために訪れたことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一七号証、証人飯牟禮五郎の証言及び弁論の全趣旨によれば、訴外五郎は右税務相談に際して、相談官に対して、訴外セチが利用している土地について、地主から住宅組合が借り、住宅組合から訴外セチが借りていると説明し、また、訴外セチが転借している旨の住宅組合と訴外セチ間の契約書を提示したが、それ以外に訴外セチの有する権利について、その内容を判断するに足りる資料も提出せず、その説明もしていない事実が認められ、右認定に反する証拠はない。これによると、訴外五郎は、訴外セチの有する権利が転借地権に当たるか、借地権に当たるかといったその権利の内容いかんについて相談したわけではなく、右権利が転借地権であることを前提とした上で、税務相談を受けていたものということができるものであり、また、訴外セチの有する権利が訴外五郎の提示した資料やその説明だけでは、転借地権ともみられるものであり、直ちに借地権であるとは判断できないものであることは明らかであると解されるから、相談官が訴外セチの有する権利を転借地権であるとしてこれを前提に税務相談に応じたことはやむを得ないもので、責められるべき点はないものというほかはない。

そうすると、本件処分については、課税庁側に右1に説示した程度の信義に反する言動等が存在するとはいい難いから、本件処分を信義則違反を理由に違法とすることはできない。

四  本件各処分の適法性

1  本件各更正の適法性

当事者間に争いがない乙第五号証、第六、第七号証の各一、二によれば、本件土地は、普通住宅地区に存在する正面及び側面の二方で道路に面する角地であって、正面及び側面の二方路線ともその路線価は九〇万円であり、借地権割合は六〇パーセントであること、二方路線に面していることを除けば、その価格を評価するに当たって考慮すべき修正要因は存在しないことが認められ、右認定に反する証拠はない。

ところで、原告は、本件土地の側方路線は専用私道で通り抜けができないから、側方路線影響加算の対象とはならない旨主張しているが、専用私道であっても道路としての機能に差異はないから、そのことだけで公道と区別する理由とはならず、また、通り抜けができないことにより道路としての効用が無くなるわけではないから、原告主張の理由は、いずれも側方路線影響加算を否定する根拠とはならないというべきである。更に、前掲各証拠によれば、右路線は通常の道路としての形態を有し、人の通行の用に供されている事実が認められ、右認定に反する証拠はないから、本件土地の評価にあたっては、側方路総線影響加算をすべきものというべきである。

そして、評価通達一六、付表二によれば、普通住宅地区の側方路線影響加算率は、角地の場合〇・〇七であるから、本件土地の宅地としての価額は、抗弁3(一)(1)のとおり一七三三万四〇〇〇円となり、したがって、本件資産の価額は、同(2)のとおり一三〇万〇〇五〇円となるところ、相続税法二一条の五、同条の七によれば、右金額に対する贈与税は八万円となるから、これと同額の本件各処分は適法である。

2  本件各決定の適法性

昭和五四年分の贈与税として、原告らが申告した税額は、いずれも一万二九〇〇円であることは、当事者間に争いがないから、昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法六五条一項によりその差額である六万七〇〇〇円(同法一一八条三項により一〇〇〇円未満切捨て)に一〇〇分の五を乗じた三三〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満切捨て)が、その過少申告加算税となるから、これと同額の本件各決定は適法である。

五  以上によれば、原告らの請求は、理由がないから、これをいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 太田幸夫 裁判官 加藤就一)

別紙

目録

東京都練馬区向山三丁目一六一二番二

宅地 二七三五・二七平方メートルのうち約一六三八平方メートル

別表一

〈省略〉

別表二

〈省略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com