大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京地方裁判所 昭和60年(ワ)6233号 判決

原告

田島イツ

原告

田島令子

右両名訴訟代理人弁護士

濱秀和

大塚尚宏

有賀正明

佐藤雅美

被告

安田火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

後藤康男

右訴訟代理人弁護士

森越清彦

被告補助参加人

田島久和

山田恵子

田島久吉

右補助参加人ら訴訟代理人弁護士

大井勇

主文

一  被告は、原告両名に対し、各金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年六月八日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告田島イツのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は全部被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一  申立て

一  請求の趣旨

1  被告は、原告田島イツに対し金二五〇〇万円、原告田島令子に対し金一〇〇〇万円及び右各金員に対する昭和六〇年六月八日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  主張

一  請求原因

1  訴外北海道乳業株式会社(以下「北海道乳業」という。)は、被告との間で、次のとおり、エリート損害保険契約(以下「本件契約」という。)を締結した。そして、保険料を全額支払つた。

(一) 保険契約者 北海道乳業

(二) 保険者 被告

(三) 被保険者 訴外田島久三(以下「亡久三」という。)

(四) 保険金受取人 指定がない。

(五) 契約日 昭和五九年三月二二日

(六) 保険金額 事故による死亡 金五〇〇〇万円

(七) 保険期間 昭和五九年三月二六日から昭和六〇年三月二六日まで

2  被保険者亡久三(北海道乳業の代表取締役)は、昭和五九年九月三〇日、事故のため死亡した。

3  本件契約において、保険金受取人の指定がない場合は、被保険者の法定相続人がそれぞれの相続分に応じて死亡保険金の受取人となる。

4  亡久三の相続人は、妻原告田島イツ(以下「原告イツ」という。)、長女原告田島令子(以下「原告令子」という。)、非嫡出子である補助参加人田島久和、同山田恵子、同田島久吉の五人であり、法定相続分は、原告イツが二分の一、原告令子が五分の一、その余の三名がいずれも一〇分の一である。

5  死亡保険金五〇〇〇万円につき、原告イツは金二五〇〇万円、原告令子は金一〇〇〇万円の保険金支払請求権がある。

よつて、被告に対し、原告イツは金二五〇〇万円、原告令子は金一〇〇〇万円及び右各金員に対する訴状送達の日の翌日である昭和六〇年六月八日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因1項の事実は、(四)を除き、その余を認める。保険証券上受取人欄が空白ではあつたが、保険金受取人の指定がないとは断じ難い。

2  同2項の事実を認める。

3  同3項の事実を否認する。

4  同4項の事実を認める。

5  同5項の事実を否認する。

三  被告及び補助参加人の主張

1  本件契約は、北海道乳業が保険契約者で保険金支払者であり、北海道乳業の代表者亡久三が被保険者であるが、北海道乳業は、同社の代表者(亡久三)が何らかの事故により負傷又は死亡した場合、これにより同社の業務に支障を来たすことを予想し、保険事故発生による保険金を受領することによつて業務支障による損害を填補する目的で締結されたものであるから、本件契約の保険金受取人は北海道乳業であると解すべきである。

2  仮に、本件契約において、保険金受取人の指定がなく被保険者の相続人が受取人であるとしても、死亡保険金は相続財産ではないから、各相続人の受取額は均等と解すべきである。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1項のうち(四)を除くその余の事実及び同2項、4項の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二本件契約の際に作成された保険証券の死亡保険金受取人欄が空白(不記載。甲第八号証。)であつたことは被告の自認するところであるが、被告は、被告及び補助参加人の主張1記載の理由から、本件契約における保険金受取人は北海道乳業であると主張する。しかしながら、右主張のような事情があるならば、保険契約者である北海道乳業は、亡久三の同意をえて、死亡保険金受取人を北海道乳業と指定すれば足り、その指定と保険証券への記載は極めて容易であつたはずであるから、受取人欄が空白(不記載)となつていることからすれば、北海道乳業を受取人に指定したとみることはできず、保険金受取人は指定されなかつたものと解さざるをえない。

三〈証拠〉によれば、本件契約に適用される保険約款によつて、死亡保険金受取人の指定のないときは、被保険者の法定相続人が受取人になるものと認められるので、本件契約に基づく死亡保険金は、亡久三の法定相続人に帰属することになる。

四原告は、亡久三の法定相続人が相続分に応じて保険金請求権を取得したと主張するが、死亡保険金は相続財産ではなく、相続人の固有財産である(最高裁昭和四〇年二月二日判決、民集一九巻一号一頁参照。)から、数人の法定相続人がある場合には、平等の割合によつてこれを取得すると解するのが相当である。もつとも、多数人の代襲相続人のある場合など多少不合理と見られる場合の生ずる場合も起りうるが、相続財産でない権利を相続分の割合によつて取得するとの法律上の根拠を見出し難く、本件において相続分の割合によつて取得する旨の特約があつたとの主張も立証もないので、原告の右主張は理由がない。

五亡久三の法定相続人が原告らを含め五名であること、死亡保険金が五〇〇〇万円であつたことは、前記のとおり争いがない。

六以上の次第であるから、原告らが被告に対し各金一〇〇〇万円の保険金の支払を求める限度で本訴請求は理由があるから認容し、原告イツのその余の請求は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官吉崎直彌)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com