大判例

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東京地方裁判所 昭和61年(わ)2524号 判決

本店所在地

東京都荒川区西日暮里六丁目一八番五号

株式会社木下物産

(右代表者代表取締役 木下保こと李得宗)

国籍

韓国

住居

東京都荒川区西日暮里六丁目四三番五号

無職

木下三成こと

李昌雨

一九一七年九月二八日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官江川功出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社木下物産を罰金一八〇〇万円に、被告人李昌雨を懲役一年に処する。

被告人李昌雨に対し、この裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社木下物産(以下「被告会社」という。)は、東京都荒川区西日暮里六丁目一八番五号に本店を置き、遊技場の経営等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人木下三成こと李昌雨(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していた(昭和六一年九月二〇日辞任)ものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するとともに仕入れを水増計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五五年一〇月一日から同五六年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六二九七万九三〇〇円あった(別紙(一)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同五六年一一月三〇日、東京都荒川区西日暮里六丁目七番二号所在の所轄荒川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六二年押第五九号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二五四八万五二〇〇円(別紙(三)脱税額計算書の(1)参照)を免れ、

第二  昭和五六年一〇月一日から同五七年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九二九八万四七六三万円あった(別紙(二)修正損益計算書参照)のにかかわらず同五七年一一月三〇日、前記荒川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三八〇七万五九〇〇円(別紙(三)脱税額計算書の(2)参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書四通及び収税官吏に対する質問てん末書四通

一  李得宗(二通)、李修宗、李支宗(二通)、李華宗及び高橋陽一の検察官に対する各供述調書

一  村上元昭及び康敏燮の収税官吏に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  売上高調査書

2  期首商品製品棚卸高調査書

3  仕入調査書

4  期末商品製品棚卸高調査書

5  役員報酬調査書

6  租税公課調査書

7  受取利息調査書

8  欠損金当期控除額調査書

9  (株)サンシャイン綜業貸付金利息収入調査書

10  事業税認定損調査書

一  検察官作成の報告書、検察事務官作成の捜査報告書並びに登記官作成の被告会社及び東成商事株式会社の各商業登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書(昭和五七年九月期)一袋(昭和六二年押第五九号の1)

及び法人税確定申告書(昭和五六年九月期)一袋(同押号の2)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社 判示第一及び第二の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一、二項

2  被告人 判示第一及び第二の各所為につき、法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑を選択

三  併合罪の処理

1  被告会社 刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の事情)

本件は、事件当時、遊技場の経営等を目的とする被告会社の代表取締役であった被告人が、苦労して稼いだ被告会社の利益であるのに、税金として沢山取られるのは馬鹿らしいと考え、利益の一部を裏に回して蓄積し、事業不振等の場合に備えようとして敢行した事案であって、そのほ脱額が二事業年度分の合計で六三五六万円と多額である上、ほ脱率も二事業年度とも一〇〇パーセントであり、ほ脱の具体的方法も、売上除外については、支配人である二人の息子に指示してパチンコ店二店舗の売上の中から毎日合計一五万円を除外し、これを、一旦、東京商銀信用組合荒川支店の多数の仮名普通預金口座等に入金した上、更に多数の仮名定期預金として隠匿していたものであり、また、仕入れ水増計上については、換金用景品を仕入れる際、実際は景品買取所から直接仕入れているのに、中間に架空の問屋を介在させ、その問屋に架空の利益を乗せて仕入を水増しした上、右売上除外と同様に仮名預金としていたものであり、更に、これらが発覚しないように帳簿証憑類を整備していたものであって、その手口は計画的かつ巧妙・悪質であり、脱税した資金は前記のとおり裏口座に蓄積していたほか、二人の息子に対し、月額合計六〇万円の簿外役員報酬を支払ったり、子ども達のマンションの購入資金に充てるなど個人的使途にも使用していること、加えて、被告人は、本件起訴事業年度前において、売上除外をしていた節も窺われることなどを併せ考慮すると、被告人の刑事責任は重いといわなければならない。

しかしながら、他方、被告会社は、昭和五五年九月期から同五七年九月期の三事業年度につき更正をうけたものの、これを争わず、法人税を完納し、地方税についても本税及び加算金は完納し、延滞金についても完納予定であること、被告人は昭和六一年九月に被告会社の代表取締役を辞任し、その経営を息子二人に委ね、本件を反省して、経理担当事務員を一名から三名に増員し、息子達が現金を直接取扱わないようにしたり、顧問税理士を交替するなどの経理体制の改善を行ったこと、現在の代表取締役らも税金の申告納付をきちんと行う旨誓っていること、被告人は来日後永年にわたり真面目に働き、これまで前科前歴もないことなど、被告人らに有利な事情も認められ、これらに被告人の経歴、年齢等をも総合勘案して、被告人についてはその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。

(求刑 被告会社につき罰金二〇〇〇万円、被告人につき懲役一年)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木浩美)

別紙(一)

修正損益計算書

株式会社 木下物産

自 昭和55年10月1日

至 昭和56年9月30日

〈省略〉

別紙(二)

修正損益計算書

株式会社 木下物産

自 昭和56年10月1日

至 昭和57年9月30日

〈省略〉

別紙(三)

脱税額計算書

会社名 株式会社木下物産

(1) 自 昭和55年10月1日

至 昭和56年9月30日

〈省略〉

(2) 自 昭和58年3月11日

至 昭和59年2月29日

〈省略〉

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