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東京地方裁判所 昭和62年(特わ)1467号 判決

主文

被告人を懲役二年六月に処する。

未決勾留日数中一八〇日を右刑に算入する。

押収してある覚せい剤三袋(昭和六二年押第八二一号の1ないし3)を没収する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和六二年五月一七日午後二時一五分ころ、東京都府中市〈住所省略〉先路上において、覚せい剤である塩酸フェニルメチルアミノプロパンの結晶約2.339グラム(昭和六二年押第八二一号の1ないし3は鑑定消費残)を所持したものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(弁護人の主張に対する判断)

一 弁護人は、本件において、警視庁四谷警察署所属の警察官らはどのような事態になろうとも被告人から覚せい剤を押収し、被告人を逮捕しようと当初から企画したうえ、現場で被告人に声をかけるやいなや五人がかりで被告人の身体を取り押さえ、うち三人の警察官が被告人の反抗にもかかわらず、その右手に取りつき、被告人が持っていたちり紙に包まれた注射器をその指をこじあけて取り上げるという行為に及んでいるのであるから、かかる警察官らの行為は、職務質問に伴う所持品検査として許容されるべき範囲を遙かに逸脱した強制手段にわたる違法な行為であり、したがってこれに対する被告人の抵抗は公務執行妨害罪を構成せず、被告人を同罪で逮捕したことやこれに伴う本件覚せい剤の捜索、差押手続はすべて違法であり、しかもその違法性は令状主義の精神を没却する重大なものであることが明らかであるとして、押収された本件覚せい剤等の証拠物の証拠能力は否定されるべきである旨主張するので、以下検討する。

1 前掲関係各証拠を総合すると、被告人を逮捕するに至った経緯及び本件覚せい剤等の押収手続は、以下のようなものであったことが認められる。

昭和六二年五月一七日午前七時ころ、警視庁四谷警察署に、A(昭和四三年一〇月二日生。以下、Aという)から電話がかかり、電話口に出た同署防犯課保安第三係所属の山下巡査部長は、Aから、被告人が同日の午後二時ころ、Aの自宅に覚せい剤をもってくるから捕まえて欲しい旨の通報を受けた。ところで、右保安第三係においては、以前Aが勤めていたキャバレーのホステス仲間に対し、Aが覚せい剤を譲り渡した嫌疑で、同年三月ころ、同女を取調べたことがあったが、その際Aは譲り渡しの事実を認めていたものの、右ホステス仲間の供述と符合しない部分があったこと等から立件を見合わせた経緯があったところ、右取調べ過程で、Aは右譲り渡しにかかる覚せい剤は昭和六一年一一月末ころ知り合った被告人から譲り受けたものである旨供述していたうえ、右ホステス仲間も被告人が覚せい剤を売っていたと供述し、被告人には覚せい剤取締法違反の前科もあることが判明したことなどから、以後同係においては被告人を覚せい剤の密売人として内偵捜査中であった。

そこで、昭和六二年五月一七日午前八時過ぎころ、Aの右通報の報告を受けた同係係長の山谷警部補は、右のような経緯を踏まえ、Aの通報は信用に値するものと考え、同係所属の山下、正満、山本各巡査部長及び稲垣巡査ら四名の警察官とともに直ちにAの自宅付近に張り込みを実施することとし、右警察官らに対して被告人は以前留置中に暴れたことがあるから注意するよう指示するなどしたうえ、同日午後一時三〇分ころからAの居住するドミール○○付近の東京都府中市〈住所省略〉先路上において、張り込みを開始した。するとAの通報どおり、同日午後二時一〇分ころ、被告人が左手に傘を持ち(当日は小雨が降っていた。)東府中駅方向から右ドミール○○方向に向かい、歩いて同所付近を通過しようとしたので、まず山本巡査部長及び稲垣巡査が被告人に職務質問を開始すべく、被告人の前方から接近し、山本巡査部長が被告人に対し、「おい、警察の者だ」などと声を掛けるやいなや、被告人は直ちに着用していたズボンの右ポケット内に右手を差し入れ、中から白っぽいものを取り出した。そこで、被告人の後方から接近し、その右手に注意を払っていた山谷警部補は、被告人の右動作を見て被告人が覚せい剤を棄てようとしているものと考え、直ちに「ブツだ」などと大声をあげながら、右手で被告人の後方からその右手首付近をつかんだところ、被告人もその手を振りほどこうと抵抗し、山本巡査部長及び稲垣巡査も直ちに被告人の身体に取りつき、これを制止にかかった。しかし、被告人は「おまえらどこの警察の者だ。Aがちくったのか」などと怒号しながら抵抗するとともに、被告人の左前方に回った山谷警部補に対して頭突きを加えたうえ、正満巡査部長に対しても足蹴りをするなどの暴行を加えたことから、これを現認した山谷警部補は被告人に対し、公務執行妨害で逮捕する旨告げた。一方、これと相前後して、山本及び山下各巡査部長は被告人が右手に取り出したものを取り上げるべく、握っている被告人の右手の指を逆にねじあげるなどして被告人から、その白っぽいものを取り上げた。なお、その際被告人は「痛いから離せ」などと訴えたが、「折れても構わないから、やれ」と述べた警察官がいた。山本巡査部長はその場で取り上げたものを確認したところ、その白っぽいものは本件証拠物であるちり紙であり、なかには本件証拠物である注射器一式(注射筒と注射針各一本)が入っていた。

右注射器を取り上げられた後、被告人は、「てめえらぶっ殺してやる」などと怒号しながら暴れ、正満巡査部長に対し頭突きを加えるとともに同人がその場に屈み込んだ隙に左手でズボンの左ポケット内から本件証拠物である黒革製のチャック付財布を取り出した(なお、この間に被告人は、着用していたズボンの右後ろのポケットに入っていた財布を山本巡査部長に抜き取られたり、さらには左手に持っていたキーホルダーを取り上げられている。)。そこで、右チャック付財布を認めた山谷警部補は、再度公務執行妨害で逮捕する旨告げるとともに「左手に財布だ」などと述べながら被告人の左手を押さえ、直ちに山本巡査部長がその場に押し倒された被告人の左手から右チャック付財布を取り上げた。そして被告人は、手錠を掛けられ、同日午後二時一五分ころ、公務執行妨害罪の現行犯人として逮捕されるとともに、右チャック付財布のなかから本件証拠物であるビニール袋入りの覚せい剤三袋、空ビニール袋、ビニール片などが発見されたため、山本巡査部長はこれら証拠物を差押えた。

2 そこで、以上の事実を前提に考察するに、前記保安第三係の受けた通報は、匿名者や素性の知れない人物からのものでなく、同係警察官らにおいてすでに把握していたAからのものであり、その内容もかねて内偵捜査中の被告人の覚せい剤所持に関する日時場所を指摘した具体的、明確なものであったから、張り込みを実施した同係所属の前記警察官らが、被告人に対して職務質問を開始したことになんら違法はない。

次に、山谷警部補が、被告人の右手をつかみ、さらに二名の警察官が被告人の身体に取りついた行為であるが、前記認定事実によれば、被告人が覚せい剤を所持している疑いは濃厚であったと認められること、山谷警部補が被告人の右手をつかんだのは、被告人が警察官から呼び止められた後直ちに自ら自己の着衣の中から白っぽいもの、即ち、後に判明した注射器の入ったちり紙を取り出したことに対応した措置であり、被告人が当公判廷で述べるような全く理由のない唐突な行為ではなかったこと、また被告人が取り出した右白っぽいものが覚せい剤である可能性は高かったのであるから、被告人がこのような証拠湮滅に等しいような行動に出た以上、山谷警部補らにおいて、これを放置することなく、被告人のかかる行為を防止あるいは制止する必要性、緊急性は強かったものと考えられ、同警察官らの行為もかかる目的のもとにおいてなされたものと認められるから、このような事情に鑑みると、右警察官らの行為は、職務質問に伴う有形力の行使として許容できる範囲内にとどまるというべきである。

さて、その直後被告人の右手の指をこじあけることによって右注射器の入ったちり紙を取り上げた警察官らの行為については問題がないではない。すなわち、前記認定事実によると、警察官らは、被告人の右手を押さえる行為に出た直後、被告人が取り出したものについてなんら確認する措置をとることもなく、いきなり被告人の指を二人がかりでこじあける行為に及び、被告人からの手を離してくれとの訴えも無視し、実力をもって被告人の手中のものを取り上げているのである。なるほど被告人が山谷警部補らの行為に直ちに抵抗を開始したことは前記認定のとおりであり、手中のものが覚せい剤である可能性もあったことに照らすと、何らかの手段を講じて、その保全を図る必要性、緊急性を肯認できないではないが、右のような事情を考慮に入れても、警察官としては、まずもって、被告人の取り出したものについて問い質すとか、手を開くよう促すとかするなどして、被告人に弁解や任意に提出する機会を与える措置を試みるべきであったと言わねばならない。当時現場には五人もの警察官がおり、右時点においては、すでに被告人は少なくとも三名の警察官らによって腕の自由をある程度奪われており、その余裕すらなかったとも到底認められないのである。してみると、任意手段である職務質問の過程で、被告人の黙示の承諾もない状況のもとで、いきなり被告人の指をこじあけ、手中の注射器の入ったちり紙を取り出した警察官らの行為は、その有形力の行使の態様、程度において、これを強制にわたる刑事訴訟法上の捜索に類する行為とみるほかはなく、警察官職務執行法二条に基づく職務質問に付随する所持品検査として許容される限度を超えた違法な行為というべきである(なお、右行為を公務執行妨害罪による現行犯逮捕の際の捜索、差押として許容することもできない。)。

したがって、本件における警察官らの職務執行行為にかかる違法が存する以上、右注射器の入ったちり紙の押収行為は違法であるのみならず、それに続く被告人を公務執行妨害罪で現行犯逮捕した逮捕手続にも違法の瑕疵があり、右逮捕を前提にしてなされた本件覚せい剤等その余の本件各証拠物の押収手続にも違法の瑕疵があるものといわねばならない。

そこで、次に本件各証拠物の証拠能力について考えるに、押収等の手続に違法がある証拠物であっても、事案の真相究明の見地から、その証拠能力を直ちに否定することは相当でなく、ただ証拠物の押収等の手続に、憲法三五条及びこれを受けた刑事訴訟法二一八条一項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合に、その証拠能力が否定されると解すべきである。

これを本件についてみると、前記のとおり、被告人には覚せい剤の所持の嫌疑が濃厚であったこと、警察官らが、注射器の入ったちり紙を取り上げたのは、被告人が自ら着衣のなかから覚せい剤と思われるものを取り出すという証拠湮滅行為ともいうべき行動に出たことに起因した処置であり、しかもこれを検査する必要性、緊急性は強かったものであるから、もともと覚せい剤所持事犯の検挙は所持の現場を押さえる以外極めて困難であることをも考慮すると、警察官らのかかる行為には、行き過ぎがあるにしても、証拠保全が強く要請される本件具体的状況のもとでは、所持品検査として許容される限度を著しく逸脱したものとは言い難いこと、またその後の本件公務執行妨害罪による現行犯逮捕手続も、右所持品検査の違法によって瑕疵を帯びているが、当時の状況に照らすと、警察官らがこれを適法と判断したことを強く非難することはできないものであるから、その余の本件覚せい剤等の押収手続の違法性は、必ずしも重大とは認められないこと、前記ちり紙のみならず本件覚せい剤が入っていた前記チャック付財布は、ともに被告人自身において着衣の中から取り出したものであって、所持品に対する被告人の秘密の保護という法益に対する侵害もさほど大きいものとはいえないこと、さらに本件においては、通報から張り込みを開始するまで約六時間程度の時間的余裕しかなく、警察官が令状を請求する措置を取らなかったからといって、必ずしも責められず、もとより、警察官の前記違法な行為も、当初から令状主義の諸規定を潜脱しようとする意図をもって行われたものとは認めがたいこと、以上のような本件における諸事情を総合勘案すれば、本件証拠物の押収手続には、その証拠能力を否定しなければならない程の重大な違法があるとはいえず、違法捜査の抑制の見地からみても相当でないとは認められない。したがって、本件差押にかかる前記各証拠物の証拠能力は、これを肯定して差し支えないというべきであり、この点についての弁護人の主張は採用できない。

二  次に、弁護人及び被告人は、本件当時被告人は覚せい剤を所持していたことはない旨主張する。

1  しかしながら、証人山谷治朗及び同山本義嗣の当公判廷における各供述、押収してある覚せい剤三袋(昭和六二年押第八二一号の1ないし3)、同黒革製チャック付財布一個(同号の6)によれば、本件公訴事実記載の日時、場所において、被告人が本件証拠物である覚せい剤三袋の入っている前記チャック付財布を所持していたことは明らかであり、右認定に反する被告人の当公判廷における供述は到底措信できない。弁護人は、Aからの通報は匿名でなかったにもかかわらず、右山谷及び山本各証人が本件現行犯人逮捕手続書及び差押調書中に、匿名の者からの通報であった旨事実に反する記載をなしたことなどを捕らえて同証人らの供述は信用できないというが、匿名にしたことの当否は別として、その理由についての同証人らの説明は、必ずしも納得できないものではなく、また右のような虚偽の事実を記載したことが直ちに右認定に沿う同証人らの供述の信用性を左右するとは認め難い。

2  次に、被告人は前記チャック付財布の中に本件覚せい剤が入っていることは全く知らなかったとし、警察のスパイとなったAが被告人の知らぬ間に入れたものであるかのような供述をしているので、当時被告人が本件覚せい剤の存在を認識していたか否かにつき検討する。

(一) 被告人は本件公訴事実記載の日時、場所において、警察官から職務質問を受け、その場において公務執行妨害罪で現行犯逮捕されたが、その際被告人は、前記ちり紙に包まれた注射器一式とともに被告人の所有にかかる前記チャック付財布を所持しており、かつその認識もあったこと(右各事実は被告人も認めている。)、右チャック付財布のなかには覚せい剤三袋のほか、空ビニール袋八枚、ビニール片一五枚が入っていたこと、しかも被告人は警察官から呼び止められるやいなや、直ちに自ら右注射器を着衣のなかから取り出しているうえ、右チャック付財布も同様に着衣のなかから取り出すという行動に出ていることなどを総合すると、被告人が本件覚せい剤を所持していることを認識していた可能性は高いとみるのが相当である。

(二) ところで、被告人が職務質問を受け、逮捕されることになったのは、当日午前七時ころ、Aが前記四谷警察署に電話をかけ、その際被告人が当日の午後二時ころに覚せい剤を同女の自宅に持って来るという内容の通報をしたことによるものであることは、前記認定のとおりであるが、証人Aに対する当裁判所の尋問調書によると、本件通報に至る経緯等につき、同女は大要以下のような供述をしている。すなわち、昭和六〇年ころから覚せい剤を注射するようになっていたAは、キャバレーでホステスをしていた昭和六一年一一月末ころ、たまたま被告人と知り合い、以後被告人から覚せい剤を譲り受けるなどして交際していたが、次第に被告人らとの関わり合いが怖くなり、同年一二月中旬ころ、それまで住んでいた勤め先の寮を出て、被告人の知らないうちに、東京都府中市〈住所省略〉ドミール〇〇一〇六号室に転居し、その後は被告人との交際もなかった。ところが、昭和六二年五月一七日午前三時ころ、突然被告人がAの自宅に訪ねてきて、被告人から覚せい剤を使用することを勧められ、同所で被告人が持っていたちり紙に包まれた注射器を用い(当時Aは注射器を持っていなかった。)、被告人とともに二回にわたって被告人の所持していた覚せい剤を注射したが、その際被告人から覚せい剤の密売を手伝うよう依頼されたうえ、密売用の覚せい剤が被告人の乗車してきた車の中にあるから取りに行くなどと言われ、このままでは大変なことになると思ったAは、その場を切り抜けるため、被告人に対し、Bという人の処へ行くので送ってほしい旨依頼したところ、被告人から同日の午後二時ころに覚せい剤を渡しにくるから、と告げられた。その後Aは、被告人の車で右B宅まで送ってもらったが、自分と被告人を捕まえて欲しいと考え、同日午前七時ころ、四谷警察署に電話をかけ、自分の氏名を告げたうえ、前記のとおりの通報をした。

以上のとおりであるところ、証人Aの右供述内容は、細部に至るまで極めて詳細かつ具体的であって、不自然な処はなく、同女が同日自宅で被告人とともに覚せい剤を使用したとの非行事実に関する少年保護事件記録中の同女の供述内容との間にも齟齬や変遷は見受けられず、首尾一貫しており、しかも本件各証拠物との対比においても矛盾がないことなどに鑑みると、その供述内容は十分信用できるといわねばならない。もっとも、証人山谷治朗及び同阿部猛の当公判廷における各供述によると、同月一八日被告人から任意提出を受けた尿からは覚せい剤の反応が出なかったことが認められるので、Aの被告人とともに覚せい剤を使用した旨の供述には若干疑問が持たれないではないが、被告人の尿量や尿提出までの経緯に同証人らの供述内容を併せ考慮すれば、覚せい剤の反応が出ないという一事をもって覚せい剤を使用していないとは必ずしも言い切れないというべきであるから、右のような事実が直ちにAの右供述の信用性を損なわしめるものとは認められない。

これに対し、被告人の当公判廷における供述をみると、捜査段階の供述と齟齬する部分が存在するうえ、Aは被告人に対し、四谷警察署の警察官からスパイになって情報をいれるよう頼まれた旨、自分から進んでスパイであることを話したとか、Aを前記B宅に送って行った際、Aから前記チャック付財布のなかに大事なものを入れてあるから持ってきてくれるように言われたが、被告人は車の助手席にいたAが何を入れたか全く気付かなかったとか、Aに問い質す等の確認もしなかったなど、その供述内容には不自然、不可解な点が多く見受けられるのであって、Aの前記供述内容に照らし、たやすく信用することはできない。

(三) してみると、前記(一)の事情に信用性の高いAの供述内容を併せ考慮すれば、本件当時被告人が本件覚せい剤を所持していることを認識していたことは、これを認めるに十分である。

3  以上のとおり、被告人が本件覚せい剤を所持し、かつその認識もあったことは優に認定できるところであるから、被告人が本件覚せい剤を所持していた事実を争い、被告人は無罪であるとする弁護人の主張は理由がない。

(累犯前科)

被告人は、(1)昭和五六年一〇月一三日東京地方裁判所で覚せい剤取締法違反罪により懲役一年六月に処せられ、昭和五八年二月一一日右刑の執行を受け終わり、(2)その後犯した同罪により、昭和五九年六月二六日東京地方裁判所八王子支部で懲役一年八月に処せられ、昭和六一年一月四日右刑の執行を受け終わったものであって、右各事実は検察事務官作成の前科調書、昭和五九年六月二六日宣告の調書判決謄本によってこれを認める。(法令の適用)

被告人の判示所為は覚せい剤取締法四一条の二第一項一号、一四条一項に該当するところ、前記の各前科があるので、刑法五九条、五六条一項、五七条により三犯の加重をした刑期の範囲内で、被告人を懲役二年六月に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中一八〇日を右刑に算入し、押収してある覚せい剤三袋(昭和六二年押第八二一号の1ないし3)は、判示罪に係る覚せい剤で犯人の所持するものであるから、覚せい剤取締法四一条の六本文によりこれを没収し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文によりこれを被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官永井崇志)

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