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東京地方裁判所 昭和62年(特わ)2535号 判決

(一)本店所在地

東京都大田区蒲田五丁目三〇番一号

坂入商事株式会社

(右代表者代表取締役 坂入進)

(二)本籍

東京都大田区蒲田五丁目三〇番

住居

同所同番一号 第一坂入グリーンパークビル七階

会社役員

坂入進

昭和一〇年四月二〇日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人坂入商事株式会社を罰金一八〇〇万円に、被告人坂入進を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人坂入進に対し、この裁判確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人坂入商事株式会社(以下被告会社という。)は、東京都大田区蒲田五丁目三〇番一号に本店を置き、不動産の売買、仲介等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人坂入進(以下被告人という。)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外し、架空仕入及び架空の支払手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五六年五月一日から同五七年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五四五九万三二四五円で、課税土地譲渡利益金額が六六三七万七〇〇〇円(別紙1(1)修正損益計算書及び別紙2(1)ほ脱税額計算書参照)あったのにかかわらず、同年六月二九日、東京都大田区蒲田本町二丁目一番二二号所在の所轄蒲田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一八二五万三三二九円で、課税土地譲渡利益金額が五四四三万一〇〇〇円であり、これに対する法人税額が一六七三万三一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六二年押第一五一号の3)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三四三八万五一〇〇円と右申告税額との差額一七六五万二〇〇〇円(別紙2(1)ほ脱税額計算書参照)を免れ、

第二  昭和五七年五月一日から同五八年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七二〇三万六〇二二円で、課税土地譲渡利益金額が三九九六万九〇〇〇円(別紙1(2)修正損益計算書及び別紙2(2)ほ脱税額計算書参照)あったのにかかわらず、同年六月三〇日、前記蒲田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五八三万四六七三円で、課税土地譲渡利益金額が三二八四万五〇〇〇円であり、これに対する法人税額が七四八万九五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三六四五万九三〇〇円と右申告税額との差額二八九六万九八〇〇円(別紙2(2)ほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  昭和五八年五月一日から同五九年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二四七七万九七三六円で、課税土地譲渡利益金額が三三二二万四〇〇〇円(別紙1(3)修正損益計算書及び別紙2(3)ほ脱税額計算書参照)あったのにかかわらず、同年六月三〇日、前記蒲田税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が八四万三一六五円で、課税土地譲渡利益金額が一二七三万七〇〇〇円であり、これに対する法人税額が一七二万〇四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の1)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一五五六万三一〇〇円と右申告税額との差額一三八四万二七〇〇円(別紙2(3)ほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一、被告人坂入進の(1)当公判廷における供述、(2)検察官に対する供述調書三通

一、収税官吏作成の次の調査書

(イ)不動産売上高調査書

(ロ)仕入高調査書

(ハ)期末商品棚卸高調査書

(ニ)受取利息調査書

一、検察官作成の昭和六一年一〇月二三日付捜査報告書二通(事業税認定損及び土地譲渡利益金額に対する税額について)

一、登記官作成の商業登記簿謄本

判示第一及び第二の事実について

一、収税官吏作成の期首商品棚卸高及び支払手数料調査書

判示第一及び第三の事実につき

一、収税官吏作成の雑収入調査書

判示第一の事実につき

一、収税官吏作成の造成費調査書及び建築費調査書

一、押収してある昭和五七年四月期法人税確定申告書一袋(昭和六二年押第一五一号の3)

判示第二の事実につき

一、収税官吏作成の受取仲介手数料調査書及び給料手当調査書

一、押収してある昭和五八年四月期法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実につき

一、収税官吏の申告欠損金調査書

一、押収してある昭和五九年四月期法人税確定申告書一袋(同押号の1)

(法令の適用)

法律に照らすと、被告会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、情状により同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額以下において、被告会社を罰金一八〇〇万円に処する。

被告人坂入の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

(量刑の理由)

本件は、判示のとおり、不動産売買、仲介等の業務を営む被告会社の代表者である被告人坂入が、被告会社の業務に関し、三期分合計約六〇四六万円の法人税を免れたという事案であり、そのほ脱額は少額とは言えず、税ほ脱率も平均で六九パーセントを超える高率である。

本件に至る経緯をみると、被告人は、寿司職人から身を興し、飲食店経営によって財を蓄え、昭和四四年一二月に設立した被告会社の事業として同四八年ころから不動産業に進出し、建売住宅の販売等を手掛けたが、不動産の仕入先で裏契約を希望する者がいたことはもちろん、販売先の顧客にも自営業者が多く、代金の一部を裏金で支払うことを希望する者がいた等の事情もあって裏金の蓄積を企図し、昭和五五年ころから主として架空経費の計上による脱税を始めるに至ったものである。

本件犯行の態様をみると、売上・受取手数料の除外、架空の仕入・造成費・支払手数料・建築費及び従業員給与の計上など多岐に亘る所得隠しを行い、とくに取引先等から架空の領収書を徴し、発覚を免れようとするなど悪質な面もみられる。

以上のような本件犯行の動機、経緯、態様並びに結果に徴すると、被告人の刑事責任は軽視することができないのであるが、反面、本件犯行のうち売上除外の内容については、被告人の妻らにおいてその内容の明細を逐一書き留めた物件販売メモ等によって比較的容易にその全貌が明らかになっていること、被告人は国税局の査察調査以降一貫して本件犯行を素直に自白し、公判廷においても反省し、再犯に陥らない決意を表明していること、被告会社は昭和五六年四月期以降四期分につき修正申告のうえ地方税を含めて本税及び附帯税を完納していること、被告人は十数年間に亘り郷土のため浄財を寄付し、それなりに社会的信望も得ていること、昭和三二年に傷害罪により、同五一年に業務上過失傷害罪により、それぞれ罰金刑に処せられた以外には前科・前歴が全くないこと、被告人の家族関係、健康状態など被告人のため斟酌すべき事情も認められる。

以上を総合勘案すると、被告人に対して暫らく刑の執行を猶予してその自戒に委ねるのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社につき罰金二〇〇〇万円、被告人につき懲役一〇月)

検察官清水肇、弁護人船尾徹各出席

(裁判官 小泉祐康)

別紙1 (1)

修正損益計算書

坂入商事株式会社

自 昭和56年5月1日

至 昭和57年4月30日

〈省略〉

別紙1 (2)

修正損益計算書

坂入商事株式会社

自 昭和57年5月1日

至 昭和58年4月30日

〈省略〉

別紙1 (3)

修正損益計算書

坂入商事株式会社

自 昭和58年5月1日

至 昭和59年4月30日

〈省略〉

別紙 2(1)

ほ脱税額計算書

会社名 坂入商事株式会社

自 昭和56年5月1日

至 昭和57年4月30日

〈省略〉

別紙 2(2)

(2) 自 昭和57年5月1日

至 昭和58年4月30日

〈省略〉

別紙 2(3)

ほ脱税額計算書

会社名 株式会社 木下物産

自 昭和56年5月1日

至 昭和57年4月30日

〈省略〉

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