大判例

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東京家庭裁判所 昭和40年(家)9955号 審判

申立人 木津伸子(仮名)

被相続人 木津久男(仮名)

主文

被相続人亡木津久男の遺産である下記不動産を申立人に分与する。

東京都台東区○○○○一丁目六番九

宅地五〇、七四平方メートル(一五坪三合五勺)

理由

本件申立の要旨は、「申立人は被相続人の従姉弟である。すなわち被相続人の亡父木津作治は、申立人の亡夫木津永吉の弟である。上記木津作治は、主文掲記の不動産を所有していたが、昭和一八年六月二一日に死亡し、その長男であつた相続人が家督を相続して上記不動産の所有権を取得した。被相続人には妻木津良子、長女木津幸子がいたが、ともに昭和二〇年三月一〇日の空襲で死亡し、以後被相続人は婚姻しないまま昭和三八年一二月二一日北海道幌別郡○○町字○○で死亡した。ところで、被相続人には相続人がいなかつたため、申立人の申立により、申立人は東京家庭裁判所において昭和三九年六月二二日にその相続財産管理人に選任され(同裁判所昭和三九年(家)第六一九五号)以後その諸任務を遂行して今日に至つている。そして被相続人の遺産は主文掲記の不動産のみであるが、申立人は上記宅地を、申立外林年男に対し、一ヵ月金四六〇円で賃貸し、一方法定の固定資産税を、相続財産管理人就任以前の昭和二九年度以降今日まで、被相続人に代つて納付している。本件に関しては、すでに民法第九五二条第二項、第九五七条第一項、第九五八条の各公告が完了したが、法定期間内に法定の申立をする者はなかつた。そこで主文掲記の不動産を申立人に分与されたく本申立におよぶ」というにある。

よつて審案するに、当裁判所昭和三九年(家)第六一九五号相続財産管理人選任事件記録、昭和三九年(家)第一二二九五号相続人捜索の公告事件記録、本件記録中申立人提出の疏第一号ないし第五号および申立人審問の結果を総合すれば、申立人主張の事実は全部認めることができる。なお、当裁判所が職権で札幌法務局室欄支局から取り寄せた被相続人の死亡届書謄本および死亡届出人鈴木国彦の書面回答書によれば、被相続人は相当以前から北海道にある○○土木株式会社の現場小頭をしている内田光男の配下にあつて土木工事に従事していたが、昭和三八年一二月二一日に鉄道自殺をしたこと、なおその間妻帯せず、したがつて子もなく、毎晩焼酌を飲み、自殺前には神経痛で三週間位仕事を休んでいたこと等が認められる。

ところで、申立人と被相続人とは二〇年近くも音信不通の状態にあつたのであるから、申立人が果して民法第九五八条の三に定める被相続人の特別縁故者に該当するかどうかについては若干の疑問なしとしないが(単に従姉弟というだけでは不可と解する)申立人は戦前および戦争中、被相続人の父のしていた特定郵便局長の下にあつてその事務を補助し、また昭和一八年六月に被相続人の父が死亡した後は、本来なら被相続人がその後を継ぐべきところ、被相続人に当時金使いが荒く公金を任せられない状況にあつたため、申立人が暫時局長代理を勤め、したがつてその間種種面倒を見たこと、その後被相続人は財産をほとんど処分して失踪し、唯一つ残つた上記不動産を申立人が事実上管理してきたこと等を合せ考えると、この際申立人を被相続人の特別縁故者として、上記不動産を分与するのが相当である。

よつてその後に変更された相続財産管理人木津圭子の意見を聞いた上主文のとおり審判する。

(家事審判官 日野原昌)

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