大判例

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東京家庭裁判所 昭和40年(少イ)45号 判決

被告人 堀井通泰

主文

被告人を第一の罪につき懲役三月、第二の罪につき懲役三月に処する。

理由

一  罪となるべき事実

起訴状記載の公訴事実(但し第二、の事実中「同年八月五日」とあるのを「同年八月一五日」と訂正)と同一であるからこれを引用する。

二  証拠の標目〈省略〉

三  確定裁判

昭和四〇年八月二日付略式命令(一七日確定)墨田簡易裁判所、道路交通法違反、罰金四、〇〇〇円

四  法令の適用

児童福祉法三四条一項九号、六〇条二項、三項、刑法四五条後段、五〇条(第一の罪につき)

五  弁護人の主張に対する判断

(1)  弁護人は児童福祉法三四条一項九号の規定にいわゆる「児童の心身に有害な影響を与える行為」とは、同条項一号ないし六号に定めるもののみを指すのであつて、本件ヌードモデルの如きものを含むものではないと主張する。しかし、この規定をそのように制限的に解することは、文理上何らの根拠のないところであるばかりでなく、むしろ児童の福祉の保障という同法の精神に反するものといわねばならない。

(2)  次に、弁護人は被告人が本件児童をその支配下においたのは正当な雇傭関係に基づくものであると主張する。しかし、当裁判所は以下に述べる理由によりこれを採用しない。

児童福祉法三四条一項九号の目指すところは、児童に対して支配関係を有する者が、これを利用して児童をいわゆる食い物にし、その心身の健全な育成を阻害することから児童を守るにある。そして、そのために、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的で、児童を自己の支配下におく行為そのものを禁止しているのである。そういうわけであるから、このような行為は本来、何びとにも許されることではないはずである。ところが、右の規定ではこれに対して三つの除外事由を定めている。即ち(イ)児童が四親等内の児童である場合、(ロ)児童に対する支配が正当な雇傭関係に基づくものである場合、(ハ)児童に対する支配が家庭裁判所、都道府県知事または児童相談所長(以下家庭裁判所等という)の承認をえたものである場合が、それである。よつてこれらの事由について考える。

まず(イ)の場合には、親族の情として、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的(以下有害目的という)で、これを自己の支配下におくようなことは通常ありえないことである。かりにやむをえない特別の事情があつて、そのようなことが行われる場合には、児童の心身に対する有害な影響を最小限度に止めるように配慮されるのが常である。また(ハ)の場合には、児童の福祉を保障する責任のある公の機関が、児童に対する支配に承認を与えるのであるから、(イ)の場合と同様児童の福祉を害するおそれはないものと考えられる。そういうわけで、児童福祉法はこれらの場合には、児童の心身を有害な影響から守ることを、児童の四親等内の親族である支配者または家庭裁判所等に委ねることとし、これを本号の規定の適用外においたものと解される。したがつて、(イ)(ハ)の除外事由は、有害目的で児童を支配下におく行為を許す趣旨ではないのである。

(ロ)の場合も同様で、雇傭関係を理由に、有害目的で児童を自己の支配下におく行為を許す趣旨ではないのである。したがつて、それが正当な雇傭関係に基づく場合として許されるためには、その雇傭関係の存在の社会的価値、必要性、その雇傭関係に基づいて児童にさせる行為の児童の心身に対する有害な影響の程度、その影響の軽減および防止についての措置、その行為が児童にもたらす利益その他もろもろの事情を綜合的に判断して、その雇傭関係が児童福祉法の精神(第一条参照)に照らし、正当として許容さるべきものでなければならない。

このように、雇傭関係の正当性の判断に当つて、児童の心身に対する有害な影響を考慮に入れることは、それが有害目的で児童を支配下におくことの禁止の除外事由としての意義を稀薄ならしめるきらいはある。しかし、正当な雇傭関係に基づく場合を除外事由としたことの意義は、単に雇傭関係を理由として有害目的で児童を支配下におくことはこれを許さないというところにあるのである。

以上述べた見解に基づき、前掲証拠によつて、本件被告人の所為を検討すると被告人の小林久美子および飯島君子に対する支配は正当な雇傭関係に基づいたものではないと認めなければならない。

量刑について

被告人は昭和三五年一〇月二一日東京簡易裁判所でたばこ専売法違反により、同三七年五月一日同裁判所で銃砲刀剣類等所持取締法違反により、同三八年一月二九日同裁判所で公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反により、同三九年一〇月二八日墨田簡易裁判所で道路交通法違反により、同四〇年八月二日同裁判所で道路交通法違反によりそれぞれ罰金に処せられた事実がある(警察庁刑事局鑑識課長作成の通知票と検察事務官清水一作成の前科調書参照)。にも拘らず、被告人が更に、本件犯行におよんだことは、被告人に法を守る精神の著しく欠けていることを示すものである。

被告人の営業はヌードスタジオと称し、体裁はいいが、要するに若い女性のパンテイー一枚の裸体そのものを男性に見せて、金儲けをするものにほかならない。

被告人はそういう目的のために本件児童を使用することをなんら意に介しなかつたのである。

これらの事情を考慮すると、被告人の本件犯罪については刑の執行を猶予すべき特段の事情は認められず、むしろ実刑を科するのが相当と認められる。

(裁判官 三井明)

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