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東京家庭裁判所 昭和45年(家)5338号 審判

申立人 小山喜代子(仮名)

相手方 川崎啓一郎(仮名) 外一名

利害関係人 川崎寅二郎(仮名) 外二名

主文

一  別紙目録記載一(7)ないし(9)の不動産は申立人小山喜代子および相手方天野たか子の各二分の一の持分による共有とする。

二  同目録記載一(1)ないし(6)および(10)の不動産は相手方川崎啓一郎の取得とする。

三  相手方川崎啓一郎は申立人小山喜代子に対し金一〇四〇万二五三七円、相手方天野たか子に対し金六三五万三三〇七円ならびに上記各金員に対する本審判確定以降完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

四  鑑定費用金四〇万円につき、これを五分しその一を申立人小山喜代子、その三を相手方川崎啓一郎、その一を相手方天野たか子の負担とする。

理由

I  申立の実情

(1)  被相続人川崎広孝(以下単に亡広孝と称する)は昭和四二年一二月一四日最後の住所地東京都杉並区○○△丁目○○番○○号において死亡した。

(2)  申立人は亡広孝の三女、相手方川崎啓一郎(以下単に相手方啓一郎という)は二男、利害関係人川崎寅二郎(以下単に寅二郎という)は三男、相手方天野たか子(以下単に相手方たか子という)は二女として、亡広孝の相続人であり、利害関係人北里巖(以下単に巖という)、同強(以下単に強という)は長女とりの子であつて、とりが昭和七年一月一日死亡したため、亡広孝の代襲相続人である。

(3)  亡広孝は別紙目録記載一(1)ないし(12)の不動産を所有し、申立人は亡広孝の相続人としてこれらの遺産を承継したから、下記相続分による分割を求める。

(4)  各相続人の相続分は、申立人、相手方啓一郎、寅二郎、相手方たか子はそれぞれ五分の一、巖、強はそれぞれ一〇分の一である。ところが昭和四五年八月一一日寅二郎、巖、強はそれぞれその相続分を相手方啓一郎に譲渡したので、相手方啓一郎の相続分は五分の三となつた。

(5)  相手方啓一郎は別紙目録記載二(1)ないし(11)を亡広孝より生前贈与を受けている。これらの贈与は同人が農業に従事してゆくための生計の資本として亡広孝から贈与されたものであるから、生前受益として民法九〇三条により相続財産に持戻し、同人の本来の相続分を算出すべきものである。

亡広孝は寅二郎に対しても同人の分家に際し、別紙目録記載二(12)ないし(14)の物件が贈与された。これも生計の資本としての贈与であるから、前同様民法九〇三条により同人の相続分は修正さるべく、相手方啓一郎の寅二郎から譲渡を受けた相続分はそのように算出すべきである。

(6)  申立人は別紙目録記載三(1)ないし(3)につき、亡広孝から生前贈与を受けたことはない。同物件につき昭和三二年一一月一日付で亡広孝から申立人に生前贈与を原因とする所有権取得登記がなされているけれども、もともと申立人の所有であつたものを亡広孝名義としていたものを申立人に戻したに過ぎない。

II  相手方啓一郎の主張

(1)  昭和二一年法律第四三号自作農創設特別措置法が施行された当時亡広孝は既に齢七〇歳に近く身体衰え労働に耐えない状態にあつて、相手方啓一郎が自から戦後の農業経営に従事したため、専業農家として農地の所有権を確保してきた。

(2)  さらに、戦後財産税が施行せられ、所有不動産に対する課税について、手持金だけでは到底納税ができない苦境にあつたとき、相手方啓一郎の妻さと子の協力のもとに八方金策をなした結果、物納を免かれた。

(3)  そのため報償の意味において、昭和三四年三月別紙目録記載二(1)ないし(10)の物件の所有権を亡広孝から相手方啓一郎が譲渡を受けたものである。したがつて、相手方啓一郎が亡広孝から譲渡を受けた財産は、生計の資として贈与を受けたものではない。かりに、生計の資にあたるとしても、亡広孝から持戻免除の意思表示を受けたものである。

(4)  寅二郎に対し、別紙目録記載二(12)ないし(14)が移転登記されたことは認めるが、同目録(14)の土地は生計の資本とは異なる趣旨で亡広孝から贈与されたものである。

(5)  同目録一(11)の物件は、妻さと子相手方啓一郎長男政市が共同で申立外朴栄基から昭和四二年三月二七日買受け、さと子の弟が登記手続の際誤つて広孝名義としたもので、真実はさと子と政市が共同して買受けたものであつて、遺産の範囲に属さない。

(6)  相手方啓一郎は本件相続の相続税四、〇四七万円余を納付している。相続人一人の税額は八〇九万四、〇〇〇円である。本件遺産分割において上記金額の清算を求める。

(7)  亡広孝は昭和三一年一一月一二日申立人が申立外小山幸夫と婚姻するに当り、申立人に対し別紙目録記載三(1)ないし(3)の不動産を贈与し、相手方天野たか子が昭和一六年二月一七日天野貞治と婚姻したとき、別紙目録記載四の建物とその敷地の借地権を、その敷地の所有者および家屋所有者から金一万三、〇〇〇円をもつて買受け贈与したものである。上記各物件の贈与は民法九〇三条の生計の資としての贈与であるから、申立人および相手方たか子の相続分は修正さるべきである。

III  本件事件の経緯

当庁昭和四三年(家イ)第四八七八号遺産分割調停申立事件の記録によると、本件相手方啓一郎は、本件申立人らを相手方として遺産分割の申立をなし、本件遺産のほとんどを相手方啓一郎の取得とすることに対する申立人らの同意を求めたもので、当庁調停委員会は一六回にわたり調停を試みたが当事者間に合意の成立見込みがなかつたため、昭和四五年三月二八日不成立として調停手続を終了し、上記調停申立事件は審判手続(昭和四五年(家)第三六四三号)に移行した。ところが、相手方啓一郎は第一回の審判期日前に上記申立を取下げたので、申立人より改めて、本件申立におよんだことが認められる。

IV  当裁判所の判断

(一)  相続人と法定相続分

本件記録中の戸籍謄本によると、亡広孝が昭和四二年一二月一四日死亡し、申立人(三女)、相手方啓一郎(二男)、寅二郎(三男)、相手方たか子(二女)、亡とり(長女)の子巖、強が相続人として亡広孝の遺産を相続したことが認められる。したがつて各相続人の法定相続分は、申立人、相手方啓一郎、寅二郎、相手方たか子各五分の一、巖、強各一〇分の一であるところ、相手方啓一郎本人審問の結果ならびに分割請求権譲渡通知書と題する書面(昭和四五年八月一一日付)によると、同人は寅二郎、巖、強の相続分の譲渡を受けたことが認められるので、相手方啓一郎の法定相続分は五分の三となつたものと認められる。

(二)  遺産の範囲

(1)  本件記録中の戸籍謄本および申立人、相手方啓一郎、相手方たか子各本人、参考人川崎政市、同川崎さと子各審問の結果ならびに当庁昭和四五年(家)第三六四三号事件記録中の資料によると、別紙目録記載一(1)ないし(10)の各物件が亡広孝の所有に属し、遺産であることが認められる。

(2)  川崎政市は、上記目録記載一(1)、(3)ないし(6)につき、同人が亡広孝より生前贈与を受けた旨供述するけれども前件、本件を通じ、上記各物件が遺産であることにつき当事者間に争いがなく相手方啓一郎より提出された前記調停事件記録中の同人の上申書、昭和四三年六月一四日受付の荻窪税務署宛相続税の申告書には遺産として上記各物件が記載されていることに照しても、同人の供述は信用することができない。もつとも登記簿上昭和三九年ころ上記(1)、(4)、(5)、(6)、(10)の各物件につき政市名義に所有権移転請求権保全の仮登記がなされていることが認められるが、上掲各証拠に照すと、亡広孝は相手方啓一郎の承継者として政市を予定し、政市の所有とするときの税務対策上の考慮からなされたものであることを推認することができる。

なお上記(6)ないし(9)の土地はもとほぼ二倍の面積が亡広孝の所有に属し○○自動車株式会社に賃貸されていたが、本件当事者を含む相続人の全員を原告とし○○自動車株式会社を被告とする東京地方裁判所昭和四二年(ワ)第一一〇四三号訴訟事件において、昭和四六年二月二二日和解が成立し、相続人らは○○自動車株式会社の賃貸借契約を解除して更地として返還を受けるとともに、二分の一の所有権を同会社に譲渡したことは、同裁判所の和解調書により明らかである。

(3)  相手方啓一郎は上記目録記載一(11)、(12)の物件は、遺産の範囲に属さない旨主張するので、しらべてみると、登記簿謄本によれば、一(11)の土地につき東京法務局新宿出張所昭和四二年三月二八日受付第七三七四号をもつて同年同月二七日売買を原因として朴栄基より亡広孝に対し、所有権移転登記がなされていることが認められるけれども上記各証拠によると、そのころ亡広孝は死亡時の直前でもあり自ら不動産取引の能力があつたとは認められず、上記物件は亡広孝の遺産に属することは必ずしも明らかでないので、本件遺産分割の対象としないこととする。

上記一(12)の家屋は相手方啓一郎が改築したものであると主張し、本件記録中の資料を総合すると、その事実を推認することができるので、本件物件も遺産分割の対象としない。

(三)  相続人の特別受益

(1)  申立人は、相手方啓一郎に対し、別紙目録記載二(1)ないし(11)の物件が、亡広孝から、生計の資本として生前贈与された旨主張するので、考えると、登記薄謄本によれば、上記各物件につき相手方啓一郎に対し譲渡されていることが認められるけれども、相手方啓一郎本人ならびに参考人川崎さと子各審問の結果によると、相手方啓一郎が昭和一一年妻さと子と婚姻して以来、夫婦力を合わせて家業である農業経営に従事して、戦後の農地法施行、財産税の課税等困難の時期にも同人らの協力によつて亡広孝の農業経営を維持してきたため、亡広孝は相手方啓一郎夫妻の労に報ゆるために上記物件を相手方啓一郎に贈与したことが認められる。然るときは、上記各物件の相手方啓一郎に対する譲渡は、生計の資としての贈与とは認められない。

(2)  申立人は、寅二郎に対し生計の資本としての生前贈与がなされたと主張する。本件記録中の登記簿謄本および相手方啓一郎、参考人川崎さと子の供述によると、別紙目録記載二(12)ないし(14)の物件が亡広孝の生前同人に贈与されたことが認められ、さらに上掲各証拠によると、上記各物件は寅二郎の分家に際し、贈与されたものであること、寅二郎は兵役前は農業を手伝い兵役後は○○自動車株式会社に勤務するようになつたものであること、贈与物件中二(12)(13)は同人の住居ならびにその敷地として使用されていることが認められ、これらの事実を総合すると、上記生前贈与の一部は分家に際しての寅二郎の生計の資として、一部は農業労働に対する報酬として与えられたものと認定することができる。然るときは上記物件中すくなくとも(12)(13)は寅二郎に与えられた生前受益と判断すべきである。鑑定人杉本治の鑑定の結果によると、同人の特別受益の相続開始時における価額は二(12)二、三〇〇万四、〇〇〇円、二(13)五二万六、〇〇〇円、合計二、三五三万円と解される。

(3)  相手方啓一郎は、亡広孝は、申立人に対し別紙目録記載三(1)ないし(3)、相手方たか子に対し同四の各物件をそれぞれ生計の資として生前贈与した旨主張するので、この点についてしらべてみる。本件記録中の戸籍謄本によると申立人は昭和三一年一一月一二日届出により小山幸夫と結婚していること、同登記簿謄本によると、同三(1)ないし(3)の土地につき、昭和三二年一一月一日付で申立人に対し亡広孝から贈与を原因とする所有権移転登記がなされていることが認められるけれども、前記別件添付の資料ならびに申立人本人審問の結果によると、上記各土地は、もと申立人の異父兄川崎権治の所有に属していたところ、同人が昭和八年七月三〇日死亡し、亡広孝は川崎権治の父川崎浩司と養子縁組をしていたため、また権治の母はつは亡広孝と再婚して申立人が出生したので、亡広孝、申立人は権治の兄妹として権治の遺産を相続し、亡広孝は申立人がまだ幼かつたため、いつたん昭和九年三月八日相続を原因として取得登記手続を経由したが、同日、申立人にこの物件を取得させる考えであることを明らかにする趣旨の書面を作成して、いずれは申立人に移転登記する考えでいたこと、上記申立人に対する贈与登記は亡広孝が、このようないきさつから手続をなしたものであつて、申立人の結婚に際し、改めて生計の資として亡広孝の資産を贈与したものではないことを認めることができる。

また、本件記録中の登記簿謄本ならびに上掲各証拠によると前述四の物件について、昭和二六年一〇月三一日、相手方たか子の夫天野貞治のため所有権取得登記手続がなされていること、上記物件は相手方たか子が昭和一六年二月一七日届出により天野貞治と結婚して後、昭和一七年ころ天野貞治夫婦が同人らの住居としてその敷地とともに金一万二、五〇〇円でその所有者から買受けたもので、その際、相手方たか子は亡広孝より金一万三、〇〇〇円の交付を受けたことを認めることができる。相手方たか子は上記金員は亡広孝からの借入金であつて昭和二三年ころに返済したと述べているけれども、ほかにこのことを裏付けるに足る資料がなく、かえつて、上記認定の寅二郎に対する贈与の事実に照すと、この金員を相手方たか子に住居を得させるための贈与と認めるのが自然であろう。然るときは亡広孝から相手方たか子は昭和一七年一一月金一万三、〇〇〇円の生前受益を得たものと解し、金銭の贈与については貨幣価値の変動を考慮すると、東京小売物価指数の昭和一七年を一とすると昭和四二年は約二二三倍にあたる(日本銀行統計局経済統計年表による)ので、この倍率を乗ずると、約二九〇万円となる。

(四)  遺産の評価

遺産分割のための遺産の評価は分割時すなわち、審判時に近接する時価によるべく、特別受益者の相続分の算出の基準時は相続開始時によるべきものと解されるので、以下この二つの時期における遺産の評価をするため、まず時価を確定し、これをもととして、相続開始時の価額を逆算(鑑定人杉本治の鑑定の結果によると、住宅地六一%、商業地六九%)することとする。

現在なお、登記簿上農地の物件については東京都内区部に所在する土地利用の現況に照し、宅地見込地として評価すべきものとする。なお、別紙目録記載一(4)については、参考人川崎政市の供述によると、同人所有のアパートが建築され第三者に賃貸されていること、土地の使用については亡広孝との間に賃貸借契約は締結されていないが、親族関係に基づく使用貸借として使用を許されているものと認められるので、政市が親族関係に基づく使用権を有することを考慮し、時価の三〇%減に評価すべきものとする。その他の物件については土地の現況を考慮した時価の算定がなされるかぎり、特に一定割合を減ずる必要はないものとする。

然るときは、鑑定人杉本治の鑑定の結果によると本件遺産の価額は次のとおりと認められる。

時価           相続開始時

(1)  七、七七八万六、〇〇〇円    四、七四四万九、〇〇〇円

(2)  二、六八〇万八、〇〇〇円    一、六三五万三、〇〇〇円

(3)  一、三一五万九、〇〇〇円      八〇二万七、〇〇〇円

(4)  5,434万9,000円×0.7 = 3,804万4,000円 2,320万5,000円

(5)  八、一七七万四、〇〇〇円    四、九八八万二、〇〇〇円

(6)  四、三四二万二、〇〇〇円    二、六四八万七、〇〇〇円

(7)  六、八〇五万六、〇〇〇円(三・三平方米二八万円)四、一八八万一、〇〇〇円

(8)  四、三一三万七、〇〇〇円(同二七万円)二、六三一万四、〇〇〇円

(9)  四、五三三万三、〇〇〇円(同二七万円)二、七六五万三、〇〇〇円

(10)  七八二万三、〇〇〇円    四七七万二、〇〇〇円

計四億四、五三四万二、〇〇〇円  計二億七、二〇二万円

(五)  民法九〇三条に基づく特別受益の相続分率の算定

(2億7,202万円+2,353万円+290万円×(1/5) = 5,969万円)

同上      5,969万円-2,353万円 = 3,616万円

5,969万円-290万円 = 5,679万円

申立人、相手方啓一郎、巖・強二名相続分率

5,969万円/(5,969万円+5,969万円+5,969万円+3,616万円+5,679万円) = 0.219(0.22)

寅二郎相続分率

3,616万円/(5,969万円+5,969万円+5,969万円+3,616万円+5,679万円) = 0.133

相手方たか子相続分率

5,679万円/(5,969万円+5,969万円+5,969万円+3,616万円+5,679万円) = 0.209

(六)  各相続人の具体的相続分

申立人、4億4,534万2,000円×0.219=9,753万0,000円

相手方啓一郎、4億4,534万2,000円×(0.219+0.22+0.133) = 2億5,473万6,000円

相手方たか子、4億4,534万2,000円×0.209=9,307万6,000円

(七)  分割基準と分割方法

相手方啓一郎は、遺産の維持に貢献したので、遺産に対する寄与分を算定すべきことを主張し、寄与分を算定するときは、申立人は取得分はない旨主張するけれども、相手方らの貢献に対する報酬として亡広孝がその所有に属した別紙目録記載二(1)ないし(11)を亡広孝から既に贈与を受けていることは前記認定のとおりであり、上掲各証拠によると上記以外にも相手方啓一郎の妻さと子、長男政市もそれぞれ亡広孝から贈与を受けており、これらの不動産は、鑑定人杉山治の鑑定の結果に照しても本件分割の対象をはるかに上まわるものであるから、相手方啓一郎、さと子の労働は報われているというべく、遺産に対する寄与分を本件遺産分割において考慮することは相当でない。しかも、今日における土地の騰貴は、都市における住宅地の急騰という経済事情によるものであつて、相手方らの貢献に負うものではないし、農業経営の継続が事実上困難で、またその必要性のない現状において、従来農業経営に従事してきた者のみを厚遇しなければならないとする理由は全くない。

申立人および相手方たか子は主婦であつて、申立人の夫は最近死亡し、子供はない。分割について相手方たか子が別紙目録記載一(5)・(6)の取得を希望するほか、申立人、相手方たか子が同目録記載一(7)ないし(9)の共有を希望している。そこで、物件によつては長男政市名義の仮登記がなされ、後日の紛争も予想されるのに対し、別紙目録記載一(7)ないし(9)は○○自動車株式会社から返還を受けた土地で比較的問題もなく、かつ相手方啓一郎は他にも不動産を所有して支払能力もあるので、一部を現物分割とし、一部を債務負担の方法によるべく、同目録記載一(7)ないし(9)を申立人と相手方たか子の持分各二分の一の共有とするほか他の不動産全部を相手方啓一郎の取得とするとともに、申立人および相手方たか子は相手方啓一郎に対し、前記認定の各自の取得分額との差額に応ずる債権を取得すべく、相手方啓一郎は申立人に対し、

金1,926万7,000円〔9,753万0,000円-((7)ないし(9)計1億5,652万6,000円×1\2)〕相手方たか子に対し

金1,481万3,000円〔9,307万6,000円-(1億5,652万6,000円×1\2)〕を支払うべきものとする。

(八)  債務の清算

(1)  参考人川崎さと子の供述によると、本件遺産の相続税四〇四七万七〇〇〇円を相手方啓一郎が立替払していることが認められ、当事者双方とも本件遺産分割における清算を希望しているので、相手方啓一郎の上記債務負担額から、相続税額を減ずべきものとするが、相続税の負担は各人の取得分に応じて負担すべきものと解される。よつて、前記(五)項認定の相続分率に応じてその負担額を算出すると、申立人八八六万四、四六三円、相手方啓一郎二、三一五万二、八四四円、相手方たか子八四五万九、六九三円となり、前記相手方啓一郎の債務負担額からこれを減ずると、相手方啓一郎の債務負担額は申立人に対し一、〇四〇万二、五三七円、相手方たか子に対し六三五万三、三〇七円となる。

(2)  なお、本件遺産から相続開始後生じた賃料収入一切は、相手方啓一郎ならびに参考人の供述によつて、相手方啓一郎が負担したと認められる亡広孝の葬儀費用、相続開始後の遺産に関する固定資産税の支払に充てられたものと認め、本件遺産分割の対象としない。

V 結語

以上の次第であるから、一部を現物分割するとともに、相続分との差額については家事審判規則一〇九条を適用して債務負担の方法により、相手方啓一郎に対し、申立人、相手方たか子に上記認定の金額の支払を命じ、かつ本審判確定後完済まで民法所定年五分の利息を上記金額に付加して支払うべきものとし、鑑定費用の負担について家事審判法七条非訟事件手続法二七条を適用し主文のとおり審判する。

(家事審判官 野田愛子)

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