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東京高等裁判所 平成2年(行ケ)253号 判決

原告

神谷稔

被告

特許庁長官

主文

特許庁が昭和六三年審判第五三六号事件について平成二年八月二三日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者が求める裁判

一  原告

主文と同旨の判決

二  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第二原告の請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和五七年一一月二二日、名称を「太陽光線を直接利用した照明装置」とする発明(以下、「本願発明」という。)について特許出願(昭和五七年特許願第二〇四九五一号)をしたが、昭和六二年一一月一一日拒絶査定がなされたので、昭和六三年一月七日査定不服の審判を請求し、昭和六三年審判第五三六号事件として審理された結果、平成二年八月二三日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は同年一〇月一七日原告に送達された。

二  本願発案の要旨(別紙図面A参照)

太陽光線を直接受ける場所に太陽の運行に追尾して角変位する架台を設置し、該架台上に集光器を支持させ、さらに該集光器に光ケーブルを結合し、該ケーブルを延長させてこれを日陰部分、建物などの照明を必要とする箇所に配線し、集光または集束させた該光ケーブルの発光面を、乱反射面を有する照明具の中空グローブ内に臨ませたことを特徴とする、太陽光線を直接利用した照明装置

三  審決の理由の要点

1  本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。

2  これに対し、本件出願前の特許出願(昭和五六年特許願第一七八六八二号)であつて、本件出願後に出願公開(昭和五八年特許出願公開第八〇二〇二号)されたものの願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「引用例」という。別紙図面B参照)には、左記の発明が記載されている。

太陽光線を受ける場所に設置された固定台14にステツプモータ等の移動フレーム駆動装置30、31を設け、太陽位置センサー32の信号により集光レンズを常に太陽の動きに追従させ、集光器に光ケーブルを結合し、該ケーブルを建物内へ導いて、該ケーブルの端部は光拡散器74へ接続されており、この光拡散器は、下端が開口したケース76に光透過率の良好な光拡散板78が固着されて下端開口部を塞いでいる、太陽光利用照明装置

3  本願発明と引用例記載の発明を対比すると、太陽光を利用した照明装置における光ケーブルの出光部が臨む箇所が、本願発明が「乱反射面を有する照明具の中空グローブ内」であるのに対し、引用例記載の発明は「下面に光透過率の良好な光拡散板を有する中空光拡散器内」である点において相違するが、その余の点において両発明の間に有意な差は認められない。

4  右相違点について検討するに、照明装置における「グローブ」とは、ランプを保護する、透明あるいは拡散性の入れ物であつて、ランプの光を拡散し再配光するためのものである(例えば、株式会社オーム社昭和五七年一一月三〇日発行「OHM電気電子用語事典」第二一七頁を参照)。したがつて、グローブのうち拡散性のものは、光源が発する光を拡散して再配光するものということになるが、照明の光源として使用される以上、光透過性が良好であるべきことも当然である。そうすると、本願発明の「グローブ」は、「拡散性と透過性を有する入れ物」ということができる。また、乱反斜面が光の拡散を生じさせる手段の一つであることは周知であり、さらに、引用例記載の光拡散板は、必ずしも平板状である必要はなく、曲面のものでもよいことも自明である。

このように考えると、本願発明の乱反射面を有する照明具の中空グローブ内」と、引用例記載の「下面に光透過率の良好な光拡散板を有する中空光拡散器内」は、技術的意味において同一であるといわざるを得ない。したがつて、本願発明と引用例記載の発明の間に実質的な差は存在しない。

5  以上のとおり、本願発明は引用例記載の発明の特許願書に最初に添付された明細書及び図面に記載された発明と同一であり、かつ、本件出願時における本願発明の特許出願人と引用例記載の発明の特許出願人、あるいは、引用例記載の発明の発明者と本願発明の発明者は同一人でないから、本願発明は特許法第二九条の二の規定により特許を受けることができないとした原査定は妥当である。

四  審決の取消事由

引用例には審決認定の技術的事項が記載されていることは、認める。

しかしながら、審決は、本願発明と引用例記載の発明の一致点の認定を誤り、かつ、その認定した相違点の判断をも誤つた結果、本願発明の進歩性を誤つて否定したものであつて、違法であるから、取り消されるべきである。

なお、被告は、審決が本願発明の中空グローブと引用例記載の光拡散器を対比していることは明らかである、と主張する。しかしながら、審決が殊更に「光拡散板は、必らずしも平板状である必要はなく(中略)曲面のものでもよいことも自明である。」(第四頁第一三行ないし第一五行)と説示し、引用例記載の光拡散板が立体的な入れ物であることを認定していることからすれば、審決が、入れ物である本願発明の中空グローブと引用例記載の光拡散板を対比していることは疑いの余地がない。

1  一致点の認定の誤り

審決は、その認定した相違点を除く点においては、本願発明と引用例記載の発明に有意な差は認められない旨を認定している。したがつて、審決は、本願発明が光ケーブルの発光面を中空グローブ内に「臨ませる」ことと、引用例記載の発明が光フアイバの端部を光拡散器に「接続する」ことは技術的意味が同一であると認定していることになる。

しかしながら、「臨ませる」とは「前にさせる」という意味であり、本願発明は、発光面がグローブの中空を前にする位置に配設されるからこそ、グローブの中空に出射された光が乱反射面により乱反射して、中空グローブ全体を発光させ得るのである。

これに対し、「接続する」とは「繋ぐ」という意味であり、現に、引用例には、「光フアイバケーブル82の先端部は光フアイバ82Aに分岐して光拡散板78のほぼ全域に分散して光拡散板78へ取りつけられている。従つて光拡散板78は光フアイバケーブル82からの光を室内へ広く分散することができる。」(第三頁左下欄第八行ないし第一三行)と記載されている。換言すれば、引用例記載の光フアイバは光拡散板(光拡散器の一部材)に繋がれているのであつて、光拡散板を前にする位置に配設されるものではない。まして、引用例記載の光拡散板は後記のように中空であるとは認められないから、引用例記載の光フアイバが光拡散板の中空を前にする位置に配設されているとはいえない。また、仮に引用例記載の光拡散器が被告が主張するように全体として中空のものであるとしても、光フアイバは中空の下面を構成する光拡散板に繋がれるのであり、中空を前にする位置に配設されるのではないから、光拡散器全体を発光させることはできない。

この点について、被告は、本願発明における光ケーブルの発光面を「中空グローブ内に臨ませた」ということは中空グローブ内に挿入配置することと理解されると主張するが、合理的根拠がない。

したがつて、本願発明にいう「臨ませる」と、引用例記載の「接続する」は技術的意味を異にするから、審決の一致点の認定には誤りがある。

2  相違点の判断の誤り

審決は、本願発明の「中空グローブ」と引用例記載の「光拡散器」は技術的意味が同一であると判断している。

しかしながら、中空とはからつぽという意味であり、グローブとは光源を全く囲むものであるから、本願発明の「中空グローブ」は、光源を全く囲んだからつぽの入れ物に他ならない。

これに対し、引用例記載の光拡散器74は「下端が開口したケース76へ光透過率の良好な光拡散板78が固着されて下端開口部を塞いで」(第三頁右上欄末行ないし左下欄第三行)いるものであつて、その光拡散板78のほぼ全域に光フアイバケーブル82の分岐した先端部(光フアイバ82A)が分散して取り付けられている。そして、光拡散板78自体が中空であるか否か、引用例の記載では不明である。したがつて、引用例記載の光拡散板は光源を全く囲んだからつぽの入れ物ということはできないから、相違点に関する審決の判断は誤りである。

第三請求の原因の認否、及び、被告の主張

一  請求の原因一ないし三は、認める。

二  同四は、争う。審決の認定及び判断は正当であつて、審決には原告が主張するような誤りはない。

なお、原告は、審決が本願発明の中空グローブと引用例記載の光拡散板を対比していることを前提として、それぞれの構造及び発光面(光フアイバ)との位置関係の相違を主張するが、審決が本願発明の中空グローブと引用例記載の光拡散器を対比していることは明らかであるから、原告の主張は誤つた前提に立つものである。審決が「光拡散板は、必ずしも平板状である必要はなく(中略)曲面のものでもよいことも自明である」と説示したのは、中空グローブは下面が平板状のもののほか曲面状のものも周知であることを念のため述べたにすぎない。

1  一致点の認定について

原告は、本願発明にいう「臨ませる」と引用例記載の「接続する」は技術的意味を異にする、と主張する。

しかしながら、「臨ませる」には、原告が主張する「前にさせる」の他に、「至る」、「行く」あるいは「その場所に行く」との意味もあるから、本願発明の「光ケーブルの発光面を中空グローブ内に臨ませた」とは、光ケーブルの発光面を中空グローブ内に挿入配置することと理解される。一方、引用例の第4図(別紙図面B)には、発光面である光フアイバ82Aの先端部を光拡散器74内に挿入配置することが図示されている。したがつて、本願発明にいう「臨ませる」と引用例記載の「接続する」の間に有意な差は認められないとした審決の認定判断は正当である。

2  相違点の判断について

原告は、本願発明の「中空グローブ」は光源を全く囲んだからつぽの入れ物であるが引用例記載の光拡散板はこれに該当しない、と主張する。

しかしながら、引用例記載の光拡散器74は、下端が開口したケース76に光拡散板78を固着したものであり、全体として中空であることはいうまでもない。そして、引用例の第4図によれば、光拡散器74は光源となる光フアイバ82Aの先端部を全く囲んでいるといえるから、引用例記載の光拡散器が光源を全く囲んだからつぽの入れ物に該当することは明らかである。

第四証拠関係

証拠関係は本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、同目録をここに引用する。

理由

第一  請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第二  そこで、原告主張の審決取消事由の当否を検討する。

一  成立に争いない甲第二号証の一(特許願書及び同添付の明細書並びに図面)、同号証の二(昭和六二年九月一一日付け手続補正書)及び同号証の三(昭和六三年二月四日付け手続補正書)によれば、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果が左記のように記載されていることが認められる(別紙図面A参照)。

1  技術的課題(目的)

本願発明は、太陽光線を、他のエネルギーに変換することなく室内照明に利用する照明装置に関する(明細書第一頁第一四行ないし第一六行)。

本願発明の技術的課題(目的)は、無尽蔵の太陽エネルギーを直接、照明に利用し得る装置を創案することである(昭和六三年二月四日付け手続補正書第二頁第二行及び第三行)。

2  構成

前記課題を解決するために、本願発明は、その要旨とする特許請求の範囲記載の構成を採用したものである(昭和六二年九月一一日付け手続補正書二枚目第二行ないし末行)。

別紙図面Aはその一実施例を示すものであつて、第1図は装置を建物に設置した図(明細書第一〇頁第一〇行及び第一一行)、第2図は集光器1を示す図(同第四頁第六行及び第七行)、第3図は光ケーブルとして光フアイバコードを使用した図(同第六頁第一一行及び第一二行)である。

右実施例における照明具の構造を説明すると、光フアイバ17の末端には、複数の光フアイバに融着した発光端子25を同一面内でつき合わせて球面状に配列し、これをブロツク化して放射状の発光面を形成する。そして、第3図あるいは第4図に示すように、発光端子25のねじ部25aに、中空のグローブ26をねじ込むことによつて、発光面をグローブ26で覆つた照明具を構成する。なお、グローブ26の内面は球面状をなしており、球面状の発光面から散光した太陽光線を乱反射させて照明を行う(同第七頁末行ないし第八頁第八行)。

3  作用効果

本願発明は、太陽エネルギーを直接利用するので、他のエネルギーに変換する際の損失がない(明細書第一〇頁初行ないし第四行)。また、光ケーブルの発光面を、乱反射面を有する照明グローブ内に臨ませたため、発光端に集中した鋭い光線の照射が柔げられ、グローブ全体を柔らかに自然光で発光させ、室内において、日中の日照のみならず、日の出や日没の感覚も得ることができる(昭和六三年二月四日付け手続補正書第二頁第一六行ないし第三頁第二行)。

二  原告は、本願発明にいう「臨ませる」の用語は「前にする」という意味であるから引用例記載の発明にいう「接続する」とは技術的意味が異なるのみならず(審決の一致点の認定の誤り)、本願発明が要旨とする「中空グローブ」と引用例記載の「光拡散器」も技術的意味が異なる(審決の相違点の判断の誤り)と主張する。原告の右主張は、要するに、本願発明の「発光面を照明具の中空グローブ内に臨ませる」が、発光箇所を照明部の中空を前にする位置に配置するという意味であるのに対し、引用例記載の発明の照明部は中空ではないし、その発光箇所は中空を前にする位置に配設されているといえない、ということに帰着すると考えられる。なお、原告は、審決は本願発明の中空グローブと引用例記載の光拡散板を対比していると主張するが、前記の審決の理由の要点によれば、審決が本願発明の中空グローブと引用例記載の光拡散器を対比していることは明らかである。

そこで検討するに、本願発明の特許請求の範囲の「光ケーブルの発光面を(中略)照明具の中空グローブ内に臨ませ」との記載のみでは、本願発明の発光箇所(発光面)が照明部(中空グローブ)のどの部位に配設されるものであるか、直ちに理解できるとはいい難い。この点について、原告は、本願発明は発光面が中空グローブの中空を前にする位置(換言すれば、光ケーブルを中空グローブの上部から配設する場合は、中空グローブの上部)に配設されることを要旨とすると主張するが、前記「光ケーブルの発光面を(中略)照明具の中空グローブ内に臨ませ」との記載をそのように限定的に解すべき理由はない。

しかしながら、前掲甲第二号証の一及び三によれば、本願明細書の発明の詳細な説明の欄には、本願発明の「目的を達成するため、本発明の太陽光線を直接利用した照明装置においては、(中略)光ケーブルの発光面を、乱反射面を有する照明具の中空グローブ内に臨ませたものである」(昭和六三年二月四日付け手続補正書第二頁第二行ないし第一二行)と記載され、さらに本願発明が奏する作用効果として、「光ケーブルの発光面を、乱反射面を有する照明グローブ内に臨ませたため、発光端に集中した鋭い光線の照射が柔げられ(中略)グローブ全体を柔かに自然光で発光させ」(同第二頁第一六行ないし第三頁初行)と記載されていることが認められるから、本願発明が中空である照明具の全体を発光させることを企図し、「光ケーブルの発光面を(中略)照明具の中空グローブ内に臨ませた」構成を採用したものであるとは明らかである。したがつて、本願発明の発光面を配設する部位は、中空グローブの上部から光ケーブルを配設する場合ならば、中空グローブの上部あるいは中空部のいずれかの箇所であつて、中空グローブ全体を有効に発光させ得るような箇所が選択されるべきことは、当業者ならば直ちに理解し得る事項というべきである。そして、光ケーブルを中空グローブの上部から配設しながらその発光面を中空グローブの下面に直接配設したのでは、本願明細書にいう「発光端に集中した鋭い光線の照射が柔げられ(中略)グローブ全体を柔かに自然光で発光させ」との作用効果を的確に奏することができないことも、当業者ならば直ちに理解し得る事項と考えられるから、発光面のそのような配設方法をも「発光面を照明具の中空グローブ内に臨ませ」たものに該当するというのは、合理性に欠ける理解であるといわざるを得ない。

一方、成立に争いのない甲第三号証(特許出願公開公報)によれば、引用例記載の発明は名称を「太陽光利用照明装置」とする発明であつて(第一頁左下欄第二行及び第三行)、その照明部が「建築物内に設けられると共に前記光フアイバの他の一端が接続されて移送された光を拡散放出する拡散器」(第一頁左下欄第一一行ないし第一三行)であることを要旨とするものであると認められる。そして、前掲甲第三号証によれば、引用例にはその発明の実施例として、「光拡散器74は下端が開口したケース76へ光透過率の良好な光拡散板78が固着されて下端開口部を塞いでおり、この光拡散板78が天井壁80へ固着されている。(中略)光フアイバケーブル82の先端部は光フアイバ82Aに分岐して光拡散板78のほぼ全域に分散して光拡散板78へ取りつけられている。従つて光拡散板78は光フアイバケーブル82からの光を室内へ広く分散することができる。」(第三頁右上欄行末ないし左下欄第一三行)と記載され、第4図(別紙図面B)に天井壁への拡散器取付状態が図示されていることが認められる。

右記載及び別紙図面Bによれば、引用例記載の発明の照明部(光拡散器74)は、下面を解放したケース76と、ケース76の下面を塞ぐ光拡散板78によつて構成される中空のものであることが明らかである(ちなみに、光拡散板78は、「板」という用語を使用している以上、それ自体が中空のものであると認めることは困難である。)。しかしながら、引用例記載の発明の発光箇所(光フアイバ82A)は、中空の照明部の下面を構成する光拡散板78に直接配設されるのであつて、前掲甲第三号証によれば、引用例には発光箇所を照明部の他の部位に配設することを示す記載は存しないと認められる(引用例の第五頁左上欄第一九行及び末行の「場合によつては室内へ立設されるスタンド形としても適用可能である」との記載も、発光箇所を光拡散板以外の部位に配設することを示唆するものとは認められない。)。そうすると、引用例記載の発明の光拡散器74は下面を構成する光拡散板78のみが発行するものであつて、引用例記載の発明には前記中空部を含む光拡散器74全体を発光させる技術的思想はないというべきである。このことは、引用例記載の発明の実施例が前記のように「光拡散板78が天井壁80へ固着されている」と記載され、室内から見えるのは光拡散板78のみであつてケース76は天井裏に配設されるものとされていること(したがつて、ケース76は、細く分岐した光フアイバ82Aを保護する作用を果たす部材であること)からも、疑いの余地がないところである。

以上の認定事実から明らかなように、光ケーブルを上部から配設する場合、本願発明は発光箇所を中空の照明部の上部あるいはほぼ中心に配設する構成であるのに対し、引用例記載の発明は発光箇所を中空の照明部の下面に直接配設する構成であるから、両者はその構成を異にし、かつ右構成上の差異によつて、本願発明は中空である照明部の全体を発光させるという作用効果を奏するのに対し、引用例記載の発明は照明部の下面のみを発光させるという作用効果を奏するものであつて、両者の間には実質上の差異が存するというべきである。

この点について、被告は、本願発明と引用例記載の発明は発光箇所を照明部の内部に挿入配置する構成において共通する、と主張する。しかしながら、たとえ本願発明の照明部と引用例記載の発明の照明部が、いずれも発光箇所を照明部の内部に挿入配置する構成といい得るとしても、発光箇所を中空である照明部のどの箇所に配設するかによつて、奏される作用効果に顕著な相違を生ずると考えられることは前記のとおりであるから、被告の右主張は採用できない。

したがつて、引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が本願発明の構成に想到することが可能であつたかは別として、引用例記載の発明と本願発明とに実質上の差は存在せず、本願発明は引用例記載の発明と同一であるとした審決の認定判断は誤りといわざるを得ない。

三  以上のとおりであるから、審決は本願発明と引用例記載の発明の一致点の認定及び相違点の判断を誤つたとする原告の主張は正当であつて、審決は違法なものとして取消しを免れない。

第三  よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当であるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 春日民雄 裁判官 佐藤修市)

〈以下省略〉

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