大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京高等裁判所 平成2年(行コ)105号 判決

控訴人 神保勉 ほか一二名

被控訴人 国

代理人 齊藤健 伊藤一夫 飯塚洋

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

(以下においては、個々の控訴人を「控訴人1」などと表示することもある。)

第一当事者の申立て

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2(一)  被控訴人は、控訴人1に対し、金五〇〇〇万円及びこれに対する昭和五二年二月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  被控訴人は、控訴人2に対し、金六〇〇万円及びこれに対する昭和五二年二月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(三)  被控訴人は、控訴人3に対し、金一〇〇万円及びこれに対する昭和五二年二月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(四)  被控訴人は、控訴人4、5、6、7、8、9、10、11、12及び13に対し、各金二〇〇〇円及びこれに対する、控訴人4及び5については昭和五二年二月二日から、控訴人6、7、8、9、10、11、12及び13については昭和五二年四月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行の宣言。

二  被控訴人

主文と同旨。

第二本件請求の訴訟物

本件は、模擬銃器(いわゆるモデルガン。以下「モデルガン」ともいう。)を製造、販売する業者である控訴人1、2及び3並びにモデルガン愛好者である控訴人4、5、6、7、8、9、10、11、12及び13が提起した国家賠償請求事件である。控訴人1、2及び3は、昭和五二年法律第五七号による改正後の銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。) 二二条の三及びこれに伴う同年総理府令四〇号による改正後の同法施行規則(以下「施行規則」という。)一七条の三第一項、別表第二の規定によるモデルガンの製造販売の規制は、憲法二二条一項に保障された職業選択の自由を侵害するもので違憲違法であるから、国の公務員による右法令の立案作業、国会による立法行為が違法であると主張するとともに、右改正作業に先立ち、国の公務員である警察庁長官、刑事局長、同局保安部長、同部保安課長その他の職員によって控訴人1、2及び3に対してなされた行政指導及びその撤回も違法であると主張して、右各違法行為により被った財産上の損害の賠償を求めている。控訴人4、5、6、7、8、9、10、11、12及び13は、右改正後の法令によるモデルガンの所持の規制は、憲法二二条一項に違反するのみならず、憲法一三条により保障された幸福追求権の一内容としての「あそびの自由」を侵害するもので違憲違法であるから、国の公務員による右法令の立案及び立法行為は違法であると主張して、右各違法行為により被った精神的損害の賠償を求めている。

第三事案の概要

事案の概要は、次のとおり補正し、当審における控訴人らの主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の第二項のうち、控訴人ら及び被控訴人に関する部分のとおりであるから、これをここに引用する。

一  原判決の補正

1  原判決「事実及び理由」の第二項の一及び二を次のとおり改める。

「一 当事者間に争いがない事実及び書証により明らかな事実並びに公知の事実

1  当事者の地位等

控訴人1、2及び3は、いずれもモデルガンの製造、販売を業とする者であり、その余の控訴人らはいずれも控訴人1、2及び3あるいはその同業者の製造、販売したモデルガンを購入し、これを所持しているものである。

2  銃刀法の改正の経緯等

(一) 銃刀法は、昭和三三年に制定された法律(昭和三三年法律第六号)であり、同法三条の規定によれば、特別の除外事由に該当する場合を除いては、何人も銃砲を所持することが禁じられている。

ところで、模造拳銃及び模擬銃器(モデルガン)については、当初はその所持を規制する規定がおかれていなかったが、昭和四六年の法改正により、当時多発していた模造拳銃を真正拳銃に見せかけて凶器として用いる犯罪を防止するため、外観上真正な拳銃に類似する模造拳銃は、輸出目的であるときを除いてその所持が禁止されるに至った。すなわち、銃刀法二二条の二第一項に『何人も、模造けん銃(金属で作られ、かつ、けん銃に著しく類似する形態を有する物で総理府令で定めるものをいう。)を所持してはならない。』との規定が新設されるとともに、その総理府令の定めとして、施行規則に『法二二条の二第一項の模造けん銃について総理府令で定めるものは、次の各号に掲げる措置を施していないものとする。一 銃腔に相当する部分を完全に閉そくすること。二 表面(銃把に相当する部分の表面を除く。)の全体を白色又は黄色とすること。』との規定(一七条の二第一項)が置かれ、金属で作られ、かつ、拳銃に著しく類似する形態の模造拳銃については、右の施行規則所定の措置が施されることによって真正な拳銃と外観上明らかに区別できるものでない限り、輸出目的以外の所持が禁止されるに至った。

(二) 更に、その後、モデルガンを改造した銃砲が犯罪の用に供される例が増加してきたため、昭和四八年秋ころから、モデルガンが銃砲に改造されるという事態を防止するため、警察庁内部でモデルガンに対する規制を強化するための検討作業が始められ、その結果、昭和五二年三月四日に銃刀法の改正案が国会に提出され、同法案は同年五月一九日に成立し、同年六月一日の改正法が公布された。この改正法により、『何人も、販売の目的で、模擬銃器(金属で作られ、かつ、けん銃、小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態及び撃発装置に相当する装置を有する物で、銃砲に改造することが著しく困難なものとして総理府令で定める以外のものをいう。)を所持してはならない。』との規定(二二条の三第一項)が新設された。

これを受けて、警察庁において施行規則の改正作業をし、昭和五二年九月一〇日に、その改正が行われた。この改正後の施行規則では、模擬銃器の形態による区分に応じて、銃砲に改造することが著しく困難なものに該当するための構造等の内容が具体的に規定され(一七条の三第一項、別表第二)、この定めに該当しない構造の模擬銃器については、これを販売の目的で所持することが禁止されることとなった。」

2  原判決「事実及び理由」の第二項の三の冒頭部分(原判決四枚目裏一一行目から同五枚目表六行目まで)を次のとおり改める。

「二 本件の争点

本件の争点は、次のとおりである。

1  昭和五二年の銃刀法改正あるいはその前段階に警察庁により行われたモデルガンの製造販売業者である控訴人ら(控訴人1ないし3)に対する行政指導の過程に、同控訴人らに対する関係で、被控訴人の国家賠償責任を生じさせるような違法事由があったといえるか否か。

2  昭和五二年の銃刀法改正の内容がモデルガンの製造業者である控訴人らの職業活動の自由を不当に侵害し憲法二二条一項に違反するか否か。

3  昭和五二年の銃刀法改正の内容がモデルガン愛好者のあそびの自由を侵害し憲法一三条に違反するか否か。

これらの点に関する当事者双方の主張は、次のとおりである。」

3  原判決七枚目表六行目から同七行目にかけての「警察庁職員たる被告ら」を「国の公務員である警察庁長官、刑事局長、同局保安部長、同部保安課長その他の職員」に改め、同裏八行目から同九行目にかけての「その他の被告は、いずれも民法七〇九条及び 七一九条により、」を削る。

4  原判決八枚目表一行目の「被告らの主張」を「被控訴人の主張」に改め、同二行目の冒頭から同五行目の末尾までを削り、同六行目の「(二)」を「(一)」に、同一一行目の「(三)」を「(二)」に改める。

二  当審における控訴人らの主張

1  昭和五二年法改正によるモデルガンの規制が憲法二二条一項に違反することについて

(一) 憲法二二条一項は、何人も公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有すると規定している。職業は、ひとりその選択、すなわち職業の開始、継続、廃止において自由であるばかりでなく、選択した職業の遂行自体、すなわちその職業活動の内容、態様においても、原則として自由であることが要請されるのであり、したがって、右の規定は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由の保障をも包含しているものと解すべきである。もとより、職業選択の自由も「公共の福祉に反しない限り」認められるものであるが、現実に職業の自由に対して加えられる制限も、それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなる。それ故、これらの規制措置が憲法二二条一項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならないのである。

(二) 職業の許可制は、法定の条件を満たし、許可を与えられた者のみにその職業の遂行を許し、それ以外の者に対してはこれを禁止するものであって、職業の自由に対する公権力による制限の一態様である。一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するものというべきである。単に必要性と合理性があれば容喙できないというのではなく、制限の必要性が認められる場合であっても、その制限は、よりゆるやかな制限では目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、すなわち、その制限は必要最小限度のものでなければならないものと解すべきである。

(三) 本件の法規制、具体的には銃刀法の委任を受けた施行規則一七条の三第一項、別表第二による法規制は、必要最小限のものとはいえない。

2  昭和五二年法改正によるモデルガンの規制が憲法一三条に違反することについて

モデルガンは、人間の空想力に根ざすあそびの道具の一つであり、モデルガン愛好者である控訴人らは、モデルガンをあそびの道具として愛好し趣味を楽しむ自由を享受しているものである。ところが、本件法規制は、右控訴人らのあそびの自由を不当に制限するものであり、憲法一三条に違反する。

第四争点に対する判断

一  争点1について

昭和五二年の銃刀法改正の背景となった事実関係及び国(警察庁)がモデルガン製造販売業者等に対して行った行政指導及びその撤回の適否についての判断は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第三の二の1及び2の理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決「事実及び理由」第三の二の1の(二)の(1)を次のとおり改める。

「(1) 昭和四六年の法改正後、暴力団員による殺傷事件等にモデルガンを改造した銃器が凶器として使用される事件が多くなり、不法所持事犯として押収された改造拳銃等の数は、昭和四六年は二四七丁であったが、昭和四七年には五〇〇丁に、昭和四八年には七五七丁(うち小銃及び機関銃は四丁)にも達していた(なお、昭和四九年は七九五丁、同五〇年は一〇二四丁、同五一年は一〇一六丁である。)。昭和四八年一〇月に開催された全国公安委員会連絡協議会の席では、北海道公安委員会及び九州管区内公安委員会連絡協議会からモデルガンの規制強化を求める提案がなされた。また、昭和四九年一一月七日に開催された一〇都道府県(北海道、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県及び福岡県)議会議長会の場でもモデルガンの改造防止策を内容とする規制を盛り込んだ銃刀法改正の必要があるとの意見が出され、一〇都道府県議長会から国家公安委員長宛に『最近モデルガンの改造けん銃による犯罪が多発し国民生活をおびやかしている。本来、モデルガンは、がん具として製造販売されているのであるが、わずかな工作技術をもって容易に改造けん銃となるところから、殺傷事件など凶悪事件に多く使用され、重大な社会問題を引きおこしている。よって、政府においては、凶器となる改造可能なモデルガンの製造および販売禁止の法的措置を早急に講ぜられるよう強く要請する。』との要望書が寄せられた。このようなことから、警察庁においては、昭和四八年一〇月ころから、法改正のための検討作業を開始した。その検討作業の過程においては、モデルガンの引き金の部分及び撃鉄部分を固定化し、機関部の作動装置を禁止すること、また、モデルガンの主要部分に金属を使用することを禁止し、プラスチックを使用させるといった案も検討されたことがあった。(〈証拠略〉)」

2  原判決「事実及び理由」第三の二の1の(二)の(4)の後段から同一四枚目裏八行目まで)を次のとおり改める。

「組合は、このような事態に対応して、警察庁と前同様の連絡を取りながら、新たな改造防止のための工法の基準等を検討し、従前の安全基準に代わる新たな安全基準を策定する努力をしていた。しかし、SMマーク付きモデルガンの改造防止工法は、モデルガンの銃腔部分にドリルで孔を空けるという改造方法を想定して、ドリルでは掘削することができないような硬い鋼材(インサート)を銃腔部分に鋳込むという手法を中心とするものであったが、新たに発見された改造モデルガンは、モデルガンの銃身をその付け根部分から切断して、当て金を当ててインサートを叩き出し、これに鉄パイプや真鍮管をはめ込んで銃身とするといった方法により改造されていたため、右のインサート工法のみでは改造防止の実効が上がらないといった困難な面があった。しかも、組合の組合員である業者は一二業者(昭和五一年二月当時)であるところ、組合員でありながら、SM基準に合致しないモデルガンを製造、販売する者があり、また、組合は中小企業協同組合法によって設立された協同組合であり、当時の組合員は東京都内の一〇業者、埼玉県内の二業者のみで、全国のモデルガン製造、販売に関係する業者がすべて加入しているわけではなく、また、加入を義務づけられているものでもなかった。そのため、組合員でありながらSM基準に合致しないモデルガンを製造、販売している組合員及び組合員以外の業者に対しては、組合としてそのような動きを規制することはできなかった。組合は、昭和五一年七月二二日警察庁刑事局保安部保安課長あてに、組合員である六研こと六人部登が製造した真鍮管モデルガンが改造に対する安全性が十分でないので、速やかにしかるべき措置をとってもらいたい旨の要望書を出した。また、組合は、昭和五一年四月二八日非組合員のモデルガン販売業者株式会社ポストホビーに対し、SMマークのないモデルガンは販売できないので即刻販売を中止して、在庫品を処分するようにとの書簡を出すとともに、右モデルガンの製造会社が組合員である株式会社アサヒ玩具であることから、同社に対しても善処方を求める書簡を出した。しかし、株式会社アサヒ玩具が右の統制に従わず、株式会社ポストホビーも販売を止めなかったので、組合は、同年七月二二日付けで保安課長に対し、株式会社ポストホビーに対してしかるべき措置を講じるようにとの要望書を提出した。更に、組合は、同年一〇月一四日警察庁長官に対して、安全基準に合格した製品に何らかのマークを付与することを総理府令により法制化してもらいたいとの陳情をした。モデルガンは、形態、重量、色合い及びメカニズム等が真正銃に近ければ近いほど人気があり、それだけ売れることから、改造防止の安全対策とはいえ、そのための工法を施すことは、いわば商品としての価値を落とすことにもなりかねない。したがって、組合の統制に服さない業者が出ること、あるいは組合に加入しない業者がいることは当然考えられることであった。そして、組合としては、いわゆるアウトサイダーが愛好家に人気のある基準外のモデルガンを製造、販売し、顧客を獲得していくことに対して危機感を抱き、右のような警告をしたのであったが、その効果がなく、結局は保安課に対してしかるべき措置を求めるという方法を採らざるを得なかった。このことは、組合による自主規制のみでは、モデルガンが銃砲に改造されるという事態を的確に防止することができないことを示すものであった。(〈証拠略〉)」

3  原判決「事実及び理由」第三の二の1の(二)の(5)を次のとおり改める。

「(5) このような状況のもとで、昭和五一年八月六日の第七七国会衆議院地方行政委員会において委員から何らかの法的規制を求める趣旨の質問がなされ、説明員の吉田警察庁刑事局保安部長は、SMマーク入りの改造しがたいモデルガンが製造販売されているが、組合に加入していない業者もいるので、改造しがたいモデルガンを総理府令ではっきり規定するなどして規制することが必要と考えており、今後規制については慎重に検討してまいりたい旨の答弁をした。このような経過を踏まえて、警察庁においては、業界の自主規制に任せておいたのでは、改造銃器による犯罪の発生を防止することは困難であり、銃刀法の改正による法規制によってモデルガンの改造による犯罪の発生を防止する必要があるものと判断するに至った。

一方、組合は、警察庁刑事局保安部と連絡を取りつつ、改造されたSMマーク入りモデルガンの実物を見分したり、警察庁技官からの説明を聞き、試作品の検査及び検査結果の検討等の経過を経て、安全基準の見直しの検討を重ねた結果、銃腔先端部分にスチールボールを鋳込む、インサート材の銃身付け根部分を太くし、又は溝を入れる等安全基準の一部強化改善策を決定し、この安全基準に適合したモデルガンにはSMⅡとのマークを付けることとした。そして、組合は昭和五一年九月一日からの自主規制を右の新安全基準により行うことと決定していた。

しかし、右のように法改正による規制の方針を固めた国は、昭和五一年秋ころから警察庁刑事局保安部を中心に銃刀法改正法の立案作業を開始し、同改正法案は、同五二年二月一五日の閣議決定を経て、同年三月四日に国会に提出された。右改正法は、暴力団による金属製モデルガンの改造事犯が著しく増加するとともに、改造の対象が金属製の玩具小銃、機関銃又は猟銃にまで及んでいる実情にあることから、この種の改造事犯の防止を図るため、金属で作られ、かつ、拳銃、小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態及び撃発装置に相当する装置を有する物で、総理府令で定める基準に適合しない改造容易なものを『模擬銃器』とし、何人も販売の目的でこれを所持してはならないこととする規定を二二条の三として新設することとするものである。この改正法案は同年五月一九日に可決成立し、同年六月一日に改正銃刀法が公布された。ついで、改正銃刀法に基づく改正銃刀法施行規則が同年九月一〇日に公布され、これらの改正法令は同年一二月一日から施行された。施行規則においては、販売目的での所持が許されるモデルガンの範囲は、その形態等による区分に応じて、銃身に相当する部分の基部及び弾倉に相当する部分の内部に一定の構造、材質及び大きさの金属(インサート)が鋳込まれていること等を要するなどの改造防止策が講じられているものなどに限定されることになった。(〈証拠略〉)」

二  争点2について

控訴人らは、昭和五二年の法改正によるモデルガンの製造販売の規制は憲法二二条一項に違反すると主張する。

1  憲法二二条一項は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由の保障をも包含しているが、職業の自由は、憲法の保障する他の自由に比べて公共の利益のために公権力による規制が必要とされる点も少なくないと考えられ、憲法の右規定も特に公共の福祉に反しない限りこれを保障するとの留保を付けているところである。しかし、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて多種多様の形をとるため、それが憲法二二条一項に適合するか否かを一律に論じることはできず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定しなければならない。そして、右のような検討と考量をするのは、第一次的には立法府ないし行政府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致すると認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及び必要性と合理性については、立法府ないし行政府の判断が合理的裁量の範囲内にとどまる限り、立法政策上の問題としてこの判断を尊重すべきものである。しかし、右の合理的裁量の範囲については、事柄の性質上おのずから広狭があることは当然である。一般に特定の職業の許可性は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可性に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては、右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するものというべきである(最高裁判所昭和五〇年四月三〇日大法廷判決、民集二九巻四号五七二頁参照)。その規制が狭義の職業選択の自由そのものに制約を課するものではなく、職業活動の内容及び態様に対する規制であり、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合において、その合憲性が肯定されるためには、その規制によって生ずる職業活動に対する制約と均衡を失しない程度の規制の必要性が肯定されるとともに、その規制が規制の目的との関係からみて合理的な規制であることを要するものというべきであるが、その規制の目的を達成するために他に採り得べき手段がないことを要するものではない(いわゆるLRA基準が適用されるべき場合ではない。)。もっとも、右の点に関する検討と考量も、第一次的には立法府及び行政府の権限と責務に属する事柄であるから、裁判所がその規制内容の合憲性の有無を審査するに当たっては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上は、当該目的のための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府あるいは行政府の判断がその合理的裁量の範囲内にとどまっていると考えられる限り、その判断を尊重すべきものである。

2  これを本件についてみるに、本件法規制が、モデルガンを改造した銃器による犯罪の発生を防止するという公共の福祉に適合する目的のために行われたことは前記認定の事実から明らかである。すなわち、〈1〉昭和四六年の法改正後、暴力団員による殺傷事件等にモデルガンを改造した銃器が凶器として使用される事件が多くなり、押収された改造拳銃等の数は、昭和四六年は二四七丁であったが、昭和四七年には五〇〇丁に、昭和四八年には七五七丁(うち小銃及び機関銃は四丁)に、昭和四九年は七九五丁に達していた、〈2〉昭和四八年一〇月の全国公安委員会連絡協議会によるモデルガンの規制強化を求める提案や昭和四九年一一月の一〇都道府県議長会による凶器となるモデルガンの製造販売の禁止措置を求める要望等が警察庁等に寄せられた、〈3〉これらを受けて、警察庁では昭和四八年一〇月ころから法改正のための検討を開始し、機関部の作動装置の禁止及び主要部分の金属使用禁止の方策などの具体案の検討も行った、〈4〉このような情勢に対し、モデルガンの製造販売業者等は、業界に経済的打撃を与えることとなる右のような案によるモデルガンの規制を行わないように求める陳情を繰り返した、〈5〉モデルガンの製造業者は、銃身や薬室に相当する部分にインサートを鋳込むインサート工法を採用することによって、モデルガンが銃砲に改造されることを防止することができるから、銃刀法の改正による法規制は必要がないと主張していた、〈6〉これに対し、警察庁(刑事局保安部保安課)は、業界における自主規制の推移を見守るとともに、昭和四九年夏ころ、業界に対して銃砲に改造することが不能な措置を講じたモデルガンの製造方法を開発し、市場に出回るモデルガンが全てそのような製法によって製造されることとなる態勢を整備するように要請し、そのための指導を行った、〈7〉警察庁からの右の要請、指導を受けた業界は、昭和四九年一二月二六日に中小企業等協同組合法に基づく組合を設立し、それ以降は組合が警察庁と緊密な連絡を取りながらモデルガンが銃砲に改造されることを不能にするための工法の安全基準を策定することとし、警察庁も組合との連絡を絶やさず、組合の安全基準策定作業に関わりを持ち、組合が策定した安全基準案について科学警察研究所において安全性の有無の確認等の措置を講じてきた、〈7〉その結果、昭和五〇年一一月ころには組合が策定した安全基準(SM基準)に適合するモデルガンにSMマークを付して、このマークを付したモデルガンのみを製造販売するという組合の手による自主規制の態勢が一応整った、〈8〉組合のSM基準による自主規制後においては、改造モデルガンの押収件数はそれまでの増加傾向が止んだが、昭和五一年一月ころからは、右のSMマーク入りのモデルガンの改造事犯が見られるようになり、同年六月までの半年間でも一〇丁を超えるSMマーク入りの改造モデルガンが押収された、〈9〉このような事態に対し、組合においても警察庁との連絡を取りながら従前の安全基準に代わる新たな安全基準策定の努力をしていた、〈10〉しかし、組合が策定していた安全基準はモデルガンの銃腔部にドリルで孔を空けるという改造方法を想定したインサート方法を中心としたものであったが、この方法によっては、銃身部分をその付け根から切断してインサートを叩き出し、金属製の手製銃身を取り付けるという改造が行われると改造防止の効果が期待できなくなった、〈11〉組合の自主規制は、製造段階を対象とした規制であり、販売業者を対象としたものではなく、組合員以外の業者及び販売業者に対してはそのような規制をすることができないし、昭和五一年七月ころには組合員でありながら安全基準に適合しないモデルガンを製造する業者に対してもそのような動きを規制することができないことが表面化し、組合による自主規制のみでは、モデルガンが銃砲に改造されるという憂うべき事態を的確に防止することができないことが明らかとなった、〈12〉このような状況のもとで、昭和五一年八月六日の衆議院地方行政委員会において、委員からモデルガンの製造販売について何らかの法的規制を求める趣旨の質問がなされたのを受けて、警察庁においては、業界の自主規制に任せておいたのでは、改造銃器による犯罪の発生を防止することは困難であり、銃刀法の改正による法規制によってモデルガンの改造による犯罪の発生を防止する必要があると判断するに至った、〈13〉一方、組合も改造されたSMマーク入りモデルガンを見分し、警察庁の技官の説明を聞いたりして、安全基準の見直し作業を重ね、安全基準の一部強化改善策を決定し、この基準に適合したモデルガンにSMIIとのマークを付けることとし、昭和五一年九月一日からこれを適用することとしていた。

右認定の事実に、組合による自主規制は、元来需要者による自制を期待できる状況がなければ効果的に行うことができないと考えられるところ、モデルガンという商品は、本物(真正銃)に酷似していることを製品生命とするもので、本物に似ているものほど良く売れる傾向があるものと考えられる(〈証拠略〉)から、消費者による自制監視を期待することができないこと、モデルガンの製造業者も利益追求のためには需要者の期待や要望に応えようとする傾向があって、常に自主規制に服さない業者が出現する危険性があると考えられることを併せ考慮すると、金属製モデルガンが銃砲に改造されることを防止するための何らかの法的規制を必要とする合理的理由があったものと認められる。現に、警察庁が具体的に法的規制の方法を考えるようになった昭和五一年秋以降の状況をみても、昭和五一年一〇月には大阪市内で改造拳銃を使用した暴力団の抗争、殺傷事件が発生して、新聞報道でも大きく取り上げられ(〈証拠略〉)、組合員が製造したSMマーク入りのモデルガンにも基準どおりの改造防止措置の施されていないものがあり、これが銃器に改造され犯罪の用に供されて押収された例が、昭和五一年一一月から同五二年五月までの間で十数例を数え、また、銃器に改造されたSMマーク入りのモデルガンが右の期間内に合計五〇数丁も押収されている(〈証拠略〉)など、結果として警察庁の右の判断が根拠のあったものであることを裏付けるような事実があったことが認められるのである。したがって、昭和五二年の法改正によるモデルガンの規制については、そのような規制の必要性が現に存在していたものというべきである。そうすると、改造銃器による犯罪の発生を防止し、公共の安全と秩序を維持するという職責を負う警察庁において、より的確なモデルガンの改造防止策を確立するために、何らかの法的規制をする必要があると判断したことに違法な点があったということはできない。そして、法的規制により達成しようとする目的は、もとより公共の福祉に適合するものであることはいうまでもない。

3  そこで、本件法規制の内容が規制の目的達成のために必要かつ合理的なものと認められるかどうかについて検討する。

(一) 本件法規制の内容は、先に見たとおり、金属製のモデルガンを銃砲等に改造する事犯の著しい増加の実情に鑑み、これらの事犯の防止を図るため、銃刀法に「何人も、販売の目的で、模擬銃器(金属で作られ、かつ、けん銃、小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態及び撃発装置に相当する装置を有する物で、銃砲に改造することが著しく困難なものとして総理府令で定める以外のものをいう。)を所持してはならない。」との規定(二二条の三第一項)を新設し、これを受けて施行規則がモデルガンの形態による区分に応じて、銃砲に改造することが著しく困難なものに該当するための構造等の内容を具体的に規定した(施行規則一七条の三第一項、別表第二)結果、この定めに該当しない構造のモデルガンについては、これを販売の目的で所持することを禁止するというものである。本件法規制は、モデルガンの製造販売業そのものを禁止し又は許可に係らしめるものではないから、狭義の職業選択の自由に対する制約ではなく、職業活動の内容及び態様に対する消極的、警察的目的による制約それも製造販売する商品の規格を中心とした制約にすぎないのである。したがって、本件法規制においては、規制の目的が公共の福祉に合致すると認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及び必要性と合理性については、立法府ないし行政府の判断が合理的裁量の範囲内にとどまる限り、立法政策上の問題としてこの判断を尊重すべきものである。

(二) 拳銃等の銃砲は、もともと人を殺傷する用途に供するために作られたものとそうでないものとがあり、その利用目的も多様であるが、いずれにしても人を確実に殺傷することのできる武器であり、凶器として各種の犯罪の用に供される可能性が極めて高いものである。それ故、誰でも自由にこれを所持することができるものとすると、銃砲が殺人、障害、誘拐、強盗などのいわゆる凶悪犯罪の用に供されるだけでなく、内乱、騒擾等の国家の存立を危うくするような犯罪にも供用され、治安上重大な結果を招くことにもなりかねないし、犯罪以外の事故に伴う危険も無視することはできない。このため、人の生命、身体の安全を他の全ての法益に優先させようとする文明国家においては、その所持及び使用に対して厳格な規制を加えていることは公知である。我が国においては、銃刀法を制定して、このような銃砲の所持に関し、危害予防上必要な規制をし、公共の安全を確保することとしているのである(銃刀法一条)。一方、銃砲の製造、販売については武器等製造法(昭和二八年法律第一四五号)による規制がなされ、銃砲の使用に必然的に伴う火薬類の所持、使用については火薬類取締法(昭和二五年法律一四九号)により規制がなされており、これらの法律を運用することにより、国民の生命、身体及び財産の保護を図っているのである。銃刀法は、何人に対しても、法定の除外事由のある場合を除いては銃砲を所持することを禁止しており、そのため、我が国においては銃砲の危険に関する限り安全がかなり保護されているが、反面、国民が銃砲を使用する犯罪に対しては個人としては無防備な状況におかれていることになり、銃刀法の網を潜って銃砲を所持し、これを犯罪の用に供する者は、銃砲を所持しない一般国民に対して極めて危険な存在となる。そして、銃砲の製造販売は前記のように武器製造法により禁止されており、その輸入も銃刀法により禁止されていることから、金属製モデルガンが素材となって、弾丸の発射機能を備え、人の殺傷能力のある改造モデルガンが供給されていることは、先に見たとおりである。モデルガンを改造した拳銃等が多数出回っているという事態は、国民の生命、身体の安全そして財産に対する脅威であり、ひいては国家の安寧秩序に対する重大な脅威となることはいうまでもなく、絶対に放置することの許されない事態であるといわなければならない。したがって、これら公共の利益を守るために、モデルガンが銃砲に改造されることを防止する何らかの法的規制を講ずることは当然である。その法的規制の方法としては、モデルガンの製造の全面的禁止、販売目的の所持の全面的禁止、製造販売業の許可性等の職業選択の自由そのものに直接的に制約を課する方法から、販売目的のモデルガンの所持を一般的に禁止するのではなく、銃砲に改造することが著しく困難となる改造防止措置を講じないモデルガンの販売目的の所持のみを禁止する方法まで、各種の規制方法が考えられるところである。そして、前記認定のように、本件法規制は、モデルガンに改造防止措置を施すという既に業界において採用されていた製造販売する商品の改造防止の規格という形式による職業活動の内容及び態様に関する自主的な規制方法である安全基準を参考として、更に有効と考えられる改造防止措置を施すべきものとしたのであるから、その規制方法は、全体として必要性と合理性があり、一応立法府ないし行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

4  以上の検討を前提として、本件法規制におけるモデルガンの形態ごとの規制措置の具体的内容についてその必要性及び合理性について、個別に検討することとする。

(一) 回転弾倉式拳銃に類似する形態を有する物で、銃身に相当する部分と機関部体に相当する部分とが一体として鋳造されているものについて

(1) 組合が定めたこの形態のモデルガンの安全基準(SM基準)は、銃身に相当する部分(以下「銃身部分」あるいは「銃身」という。また、弾倉に相当する部分、薬室に相当する部分等についても同様に略称する。)と弾倉部分にインサート鋼材を鋳込む(インサート鋼材は硬度が焼き戻り後HRC六〇を下らない厚さ二ミリメートル〔以下、長さの単位については、mm、cm、mの記号を用いる。〕以上のものであり、〈1〉銃身内のインサート鋼材の直径は銃身基部の二分の一以上であり、先端八mmの部分から基部に至るまでであること、本体との接合部分にあっては残存する銃身部分の肉厚が四mm以内の薄さとなること、インサートが中心線から二mm以上偏心していること、〈2〉弾倉部分内のインサートは、弾薬を連鎖上に塞ぎ、かつ、薬室部分の二分の一以上がこれにより閉鎖されること。)というものであったが、更に、組合のSMII基準では、〈1〉銃身内のインサートを基部において最大限大きくし、かつ、抜去防止のために段付けをする、〈2〉先端にスチールボールを鋳込むか、インサートに超硬材を打ち込む、〈3〉弾倉部分のインサートは三mmのものを二枚として薬室部分の二分の一をカバーするとの改訂がなされている(〈証拠略〉)。これに対し、施行規則による規制では、銃身部分の基部に別紙記載の別図1に示す構造、材質及び大きさのインサートが同別図2のとおり鋳込まれているものであって、弾倉部分の内部に同別図3に示す形状、材質及び大きさのインサートが同別図4のとおり二以上鋳込まれていることのほかに、薬室部分相互間の隔壁が同別図5のとおり切断されているものであることを要求している。

(2) 控訴人らは、この形態のモデルガンの銃器への改造防止策としては、組合の安全基準に定められた銃身部分及び弾倉部分へのインサートの鋳込みという方法で十分であり、更に薬室部分の隔壁を切断する措置を要求することは、必要最小限度の規制の範囲を逸脱すると主張する。

国が施行規則に右のような規制を盛り込んだ理由は、次のような理由によるものである。すなわち、次のiないしviのとおり、昭和五一年一月から昭和五二年一月にかけて、この形態の回転弾倉式モデルガンの改造事犯が摘発された。また、次のviiのとおり、組合から警察庁にこの形態のモデルガンの改造に関する資料と情報の資料提供もあった。

i 昭和五一年一月に北海道網走市においてSMマーク入り回転弾倉式モデルガンが押収された。この改造事例は、銃身は銃床前端部において切り込みを入れてインサートもろとも銃床から引き抜き、銃身基部の銃床には直径一〇mmの孔が空いており、弾倉各薬室前部のインサートはほぼ完全に削り取られているが、前端部に銅管がはめ込まれていた。この改造モデルガンに私製の実包を装填して発射を試みたところ弾丸は異状なく発射され、銃の前方一mの距離に三cm間隔で固定された厚さ三mmのラワンベニヤ板四枚を貫通した。

ii 昭和五一年五月に京都市において、〈1〉銃身をメインフレーム前端で切断し、銅管をメインフレームに挿入し、フレームにボンドで接着するとともに、ピンでフレームと銃身を上下左右の四か所で固定し、薬室についても真鍮管を六本挿入し、各薬室を鉄のピンで固定し、撃針については鉄棒を加工して撃鉄に埋め込み、ローリングピンで留めて改造した回転弾倉式モデルガン一丁、及び〈2〉銃身をメインフレーム前端のダイガストを周囲からインサートに届くところまで金鋸で切り、薬室インサートに当て金をいれて銃身をインサートが挿入されたままの状態で打ち抜き、三重構造又は二重構造の真鍮管の銃身を作ってメインフレームに挿入して蝋付けし、更に鉄のピンでメインフレームと銃身とを四か所で固定し、薬室については、弾倉前部からドリルで弾倉薬室内のインサート前端のダイガストを削り取り、弾倉後部から当て金を交互に薬室内に入れ、軽く打ってインサートと弾倉の前部を打ち抜き、真鍮管を薬室に挿入して鉄ピンで弾倉に固定し、弾倉前部のダイガスト脱落部分に溶解した鉛を薬室と非莢孔に流れ込まないように流し込み、撃針については、付いていた撃針を取り除き、鉄片を利用して三角状の撃針を作り、撃鉄にはめ込んでローリングピンで留めて改造したSMマーク入り回転弾倉式モデルガン五丁が押収された。弾丸活力検査を行ったところ、右〈1〉の改造モデルガンには人の傷害能力があることが証明され、〈2〉の改造モデルガンにはいずれも人の殺傷能力があることが証明された。

iii 昭和五一年六月に滋賀県大津市において、銃身部分については、銃身の銃台への取付け固定部分を縦方向に切断し、かつ、銃台の左側銃身固定部分を横方向に切断、開孔してインサートを除去した後に、真鍮管を銃腔として既成銃身に挿入するとともに銃台に挿入して固定し、ハンダで接合し、薬室部分については、弾倉前部から五・一mmの部分で全面切断して薬室のインサートを除去して、各薬室に真鍮パイプを挿入してハンダで接合し、撃鉄部分については、既成の撃鉄先端部分を切削し、真鍮板切片を研削加工したものを撃針として埋め込み接着剤で固定して改造したSMマーク入り回転弾倉式モデルガンが押収された。この改造モデルガンについて弾丸活力検査を行ったところ、人の殺傷能力があることが証明された。

iv 昭和五一年七月に京都市において、銃身が真鍮管に取り替えられ、薬室に真鍮管を挿入し、撃針は鉄製の釘状のものを撃鉄にはめ込み、ピンで固定して改造したSMマーク入り回転弾倉式モデルガンが押収された。弾丸活力検査の結果によると、人の殺傷能力があることが証明された。

v 昭和五一年八月に札幌市において、弾倉のインサートを切り取った後に各薬室が完全に貫通するように接合復元され、切り離された銃床の一部に手製の鉄パイプが取り付けられた回転弾倉式モデルガンが押収された。この改造例は、銃床を一部切り離したこと及び弾倉の一部切除などにより弾倉の固定が不良であるために弾倉は自動的に回転しないもので未完成品である。しかしながら、この改造モデルガンの弾倉薬室に適合する模擬弾を改造しこれに発射薬として玩具用平玉三〇粒分の火薬を入れてから鉛弾丸を押し詰め、きょう底面には雷管の代わりに右平玉一粒をセロハンテープで貼付して私製実包を作成して、これを右改造モデルガンに装填して、弾倉薬室から弾丸の発射を試みたところ、弾丸は異状なく発射され、銃口約五〇cmの位置に三cm間隔で固定した厚さ三mmのラワンベニヤ板五枚を貫通した。

vi 昭和五二年一月に和歌山市において、銃腔として真鍮管を挿入し、薬室に銅管を挿入し、二二口径の実包に適合するように改造された回転弾倉式モデルガンが押収された。同時に押収された実包の発射実験をしたところ、初速毎秒約一六五mで、三・五mmの厚さのボール紙一〇枚を貫通し、人の殺傷能力のあることが証明された。

vii 昭和五一年一一月二四日に組合から警察庁に提供された資料によると、弾倉を輪切りにして薬室部分に鉄パイプを挿入する方法による改造方法が想定されており、弾倉の前半分にインサートを鋳込むだけの方法では、この方法による改造を防止することができないことを示している。これに対し、同じ資料によると弾倉の内部を空洞にしておけば、隔壁の前半分のインサート部分から切断すると弾倉は中身も一緒に脱落して側壁だけとなって鉄パイプを挿入することができなくなり、改造の防止に有効であることが示されている。

国においては、以上のような改造事犯の摘発の経験や組合提供の資料の検討を踏まえてこのような改造事犯に対しては、銃身部分及び薬室部分にインサートを挿入するという方法のみでは有効な防止対策とはいえず、これを有効に防止するためには弾倉を切断することにより弾倉が完全に使用できなくなるような措置を取る必要があると判断した。そして、組合提供の資料により、弾倉の内部を空洞にしておくことにより、インサート部分から切断した場合、弾倉は側壁だけとなり金属パイプを挿入することができなくなることが示されていたので、この方式を採用して、薬室部分相互間の隔壁を別紙記載の別図5のとおり二mm以上の幅で切断しておくことにより、弾倉の銃身方向にあるドーナツ状のインサートを切り落として改造しようとした場合に、隔壁も一緒に脱落するようにすること、及び弾倉の銃身方向のインサートと隔壁との間の距離を五mm以下とする規制を採用することにしたものであることが認められる。(〈証拠略〉)

(3) 右に認定した事実を前提とすると、薬室部分相互間の隔壁が右別図5のとおりに切断されていることを要するものとした本件法規制は、切断部分の幅及びインサートと隔壁部分との間の距離を含めて前記のような改造防止のために必要かつ合理的なものであると認められる。

また、本件法規制においては、SMII基準のインサートの偏芯を採用していないし、同基準よりも銃身基部の肉厚を薄くすることを要求している。銃身のインサートは銃口側からのドリルによる穿孔による改造を防止することを目的とするものである。しかし、当初は銃身に先端からドリルで孔を空けて銃腔を作るという方法による改造が多かったが、その後は銃身そのものを取り外して鉄パイプを真鍮管を取り付けるという改造方法が増加し、更に前記改造事犯で見たように弾倉を輪切りにしてパイプ等を取り付けるという改造方法まで出現するに至っていた。銃身のインサートが銃身軸に対して偏芯していることは、銃身先端部分から孔を空けるという改造方法に対しては有効であるが、銃身を取り外すという改造方法に対しては無力である。このことはSMII基準の銃身先端部分にスチールボールを鋳込む方法についても同様である(〈証拠略〉)。

銃身を取り外すという改造方法に対しては、銃身基部に最大限大きいインサートを入れ銃身基部の肉厚を薄くすることにより(SMII基準では四mm以下、本件法規制においては三mm以下。)、銃身の取り外しを試みると銃身基部が破壊されるという防止策も有効である(〈証拠略〉)。したがって、インサートの偏芯を採用しなかったことには合理的な理由があり(本件法規制がインサートの偏芯を禁止するものでないことはいうまでもない。)、また、銃身基部の肉厚は薄ければ薄いほど改造防止に有効であるところ、本件法規制が採用した三mm以下という基準は合理的裁量の範囲内のものということができる。

(4) なお、本件法規制においては、この形態に属する回転弾倉式モデルガンのうち、弾倉に薬室がないものについては、銃身の基部に前記別図2のとおりインサートを鋳込むことのみを要求している。これは、弾倉に薬室がないもの、すなわち、薬室部分が全部詰まっているか又は空洞となっているかのどちらかであるから、弾倉部分を切断して金属パイプを挿入するという改造方法をとることが不可能と判断されたためであり、その意味において前記の規制措置との一貫性が認められる。更に、銃身と機関部体とが一体として鋳造されているもの以外のもの、すなわち、いわゆる銃身分離形については、銃身または弾倉を取り外して別のものを付けるという改造方法を防止する有効な規制方法がないため、そのような銃身分離形のモデルガンについては、「銃砲に改造することが著しく困難なものに該当するための構造等の内容が具体的に」規定されていない。この点も、前記の法規制との一貫性が認められるところである。

(5) 以上の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、本件法規制が採用したこの形態を有するモデルガンについての規制内容は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

(二) 回転弾倉式拳銃に類似する形態を有する物で、銃身及び機関部体に相当する部分が対称面により分解することができるものについて

(1) 組合においては、この形態のモデルガンについては、何らの安全基準を定めていない(弁論の全趣旨)。本件法規制においては、〈1〉弾倉部分の直径を三cm以下のものとすること、又は、〈2〉玩具煙火である巻き玉を使用する構造を有し(すなわち、薬室を有しないこと)かつ、全長が一八cm以下のものであることを要求している。

(2) 控訴人らは、この形態に属するモデルガンは、もともと玩具として作られたもので、製造業者や愛好家から「最中」と呼ばれているように、簡単に張り付けてあったり、極小のネジを用いて一体性をもたせているに過ぎず、全体の強度が弱く、銃器への改造が不可能なものであるから、規制の必要はないと主張する。しかしながら、この形態のモデルガンの改造事例が少ないことは確かではあるが、その例は皆無ではなく、銃身部分を加工して鉄パイプ等をはめ込み、針金などで緊縛して熔融する方法により発射機能を有するように改造した事例がある(〈証拠略〉)。この形態のモデルガンは、全体の強度が弱いことは確かであるが、銃身及び弾倉の口径よりも小さい口径の鉄パイプをはめ込めば強度は向上するし、緊縛、溶融によって支える力も小さくて足りることになる。撃発装置があれば、弾丸の発射の衝撃に耐える銃器に改造することができるものと認められる。そして、いわゆる張合わせ型といえどもモデルガンが大型化すれば鉄パイプ等の手製銃身をはめ込む改造作業も容易になって改造し易くなる上に、大型化により撃発装置も大きくなるからそれだけ撃発機構も強力となることが認められる。したがって、弾倉の直径を三cm以下とする規制は合理的かつ相当である。また、巻き玉を使用する構造ということはすなわち薬室を有しないということではあるが、そのような形態のモデルガンであっても、全体の大きさが大きければ、機関部体に撃発装置を付ける改造が可能であるし、張り合わせた銃身の中に金属パイプを挿入して銃身とする改造が可能であるから、この形態については全長が一八cmを超えないものにかぎって許容したものであり、この規制も合理的かつ相当なものであると認められる。

(3) 右の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、本件法規制が採用したこの形態を有するモデルガンについての規制内容は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

(三) 自動装填式拳銃に類似する形態を有する物で、銃身に相当する部分と尾筒に相当する部分とが一体として鋳造されているものについて

(1) 組合が定めたこの形態のモデルガンの安全基準は、銃身の先端より八mmの部分から薬室に接する部分まで偏心させたインサートを鋳込むとともに、薬室部分の両側に耐圧力を弱めるための溝を掘るというものである(〈証拠略〉)。一方、本件法規制は、〈1〉銃身(薬室を除く。)部分の基部にインサートが別紙記載の別図6のとおり鋳込まれ、かつ、撃針の先端部分が同別図7のとおり薬室の中心部を打撃することにならないような位置に取り付けられているもの、又は〈2〉薬室部分にインサートが同別図2のとおり鋳込まれているもののいずれかであることを要求している。

(2) 控訴人らは、この形態のモデルガンについては、改造工作が困難であるため現実の改造例がなく、その改造防止策としては、組合の定めた安全基準の要件のみで十分であり、施行規則による本件法規制は、もともと不必要なものであると主張する。

この形態のモデルガンは、銃身と尾筒とが一体として鋳造されているために改造工作が困難なこともあって、銃器への現実の改造例は見られなかったことは確かである(〈証拠略〉)。しかしながら、この形態のモデルガンについても、改造の危険性がないわけではなく、施行規則により右のような規制がなされたのは、モデルガンの一般な改造方法として、撃針部分に設けられている発火板を取り替えて雷管を打撃することができるようにした改造例が見られたことから、薬室部分にインサートを鋳込むこととするか、又は薬室部分にインサートが鋳込まれていない構造のモデルガンについては、発火板の位置をずらすことによって右のような方法による改造を困難にする必要があったためであると認められる(〈証拠略〉)。なお、本件法規制は、組合の安全基準中の薬室部分の両側に溝を掘るという規制は採用しなかったが、その理由は、非常に肉の厚い頑丈な薬莢を使えばその強度が強いから、薬室部分の裏側に溝を掘っても効果がないと考えられたことによる(〈証拠略〉)。また、本件法規制は、溝を掘ること自体を禁じるものではないことはいうまでもない。

(3) 右の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、本件法規制が採用したこの形態を有するモデルガンについての規制内容は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

(四) 自動装填式拳銃に類似する形態を有する物で、引き金に相当する部分とスライド又は遊底に相当する部分とが直接連動するものについて

(1) 組合の定めたこの形態のモデルガンの安全基準は、〈1〉銃身部分に銃身先端から八mmのところから薬室部分を除くところまで、銃身の直径の二分の一以上の大きさの偏芯したインサートを鋳込み、〈2〉遊底部分の機関部分側にI型のインサートを鋳込むというものである(〈証拠略〉)。これに対し、本件法規制は銃身(薬室を除く。)部分の基部に別紙記載の別図6のとおりのインサートを鋳込むというものである。

(2) 控訴人らは、この形態のモデルガンについては、組合の定めた安全基準で改造防止策としては十分かつ完全であり、本件法規制は不要であると主張する。

この形態のモデルガンは、スライドと引き金が直接連動し、スライドを引ききるとスライドが前進し、銃身の後端部と発火板の役割をするスライド前部との間で紙火薬を挟んで発火させるという玩具的な構造になっているため、改造しにくいものとなっている。また、現実にも改造されたこの形態のモデルガンが押収された例はない。この形態のモデルガンは、他の形態のものに比べて、玩具的で機能的には質の低いものではあるが、スライド自身が発火板の役目をするため、引き金を引ききるとスライドが前進するという機構を利用して撃発装置とすることは可能であり、銃身基部に穴を開け、実包を装填することのできる金属製パイプを挿入することによりこれを銃身とし、またその一部を薬室として利用することにより改造銃を製作することが可能である。したがって、国としては、本件法規制時においては改造事例が見られなかったものの、改造素材として着目されるスライドが前進するという機構を利用する改造の方法を封じておく必要があるものと判断して、これを封じるために取り敢えずの最低限の規制措置として、銃身基部に金属パイプを差し込む穴を開けられることを防止するため、その部分にインサートを鋳込むという方法を定めたものであり、その後にこの形態のモデルガンの改造事例の増加があったときには、その時点において、更に強力な規制措置を考慮することとしたものである(〈証拠略〉)。控訴人らは、この形態のモデルガンは、薬室がないから銃弾の発射は不可能であり、改造して銃器として使用される可能性は全くないと主張する。しかしながら、前記のように銃身として挿入した金属パイプの一部を薬室として利用することは可能であるから、右の主張は失当である。したがって、銃身基部に超硬合金のインサートを鋳込むことにより銃身基部に穴を開けることを防止することは合理的かつ相当な規制方法であると認められる。

(3) 右の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、本件法規制が採用したこの形態を有するモデルガンについての規制内容は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

(五) 自動装填式拳銃に類似する形態を有する物で、銃身、機関部体及びスライドに相当する部分又は銃身、機関部体尾筒及び遊底に相当する部分が対象面により分解することができるものについて

(1) 組合は、この形態を有するモデルガンについては、改造防止措置をしなくても改造拳銃の素材にはならないとして、何らの安全基準を策定していなかった(弁論の全趣旨)。これに対し、本件法規制は、〈1〉銃身部分と機関部体又は尾筒部分とが一体として作られ、かつ、全長が一八cm以下のもの、又は〈2〉玩具煙火である巻玉を使用する構造を有し、かつ、全長が一八cm以下のものであることを要するものとした。

(2) 控訴人らは、この形態のモデルガンは本来玩具として作られたものであり、全体として強度が弱く、銃器に改造することは不可能であるから、本件法規制は無用のものであると主張する。しかしながら、自動装填式のモデルガンではないが、銃身及び機関部体に相当する部分が対称面により分解することができる回転弾倉式拳銃に類似するモデルガンについては銃身部分を加工して鉄パイプ等をはめ込み、針金などで緊縛して溶融する方法により発射機能を有するように改造した事例があることは、前記認定のとおりである。したがって、この形態のモデルガンも同様の改造素材となる可能性がある。この形態のモデルガンは、銃身及び薬室の口径よりも小さい口径の鉄パイプをはめ込めば強度は向上する(銃身の一部を薬室として利用することも可能である。)し、緊縛、溶融によって支える力も小さくて足りることになる。撃発装置があれば、弾丸の発射の衝撃に耐える銃器に改造することができるものと認められる。そして、いわゆる張合わせ型といえどもモデルガンが大型化すれば鉄パイプ等の銃身をはめ込む改造作業も容易になって改造し易くなる上に、大型化により撃発装置も大きくなるからそれだけ撃発機構も強力となることが認められる。したがって、銃身部分と機関部体又は尾筒とが一体として作られ、かつ、全長が一八cm以下のものとした本件法規制は、右の方法による改造を封じるものであって、合理的かつ相当なものと認められる。更に、巻き玉を使用する構造のものは薬室を有しないが、全体の大きさが大きければ、機関部体に撃発装置を付ける改造が可能であるし、張り合わせた銃身の中に金属パイプを挿入して銃身とする改造が可能であるから、巻玉を使用する構造のものであっても、全長が一八cmを超えないものにかぎって許容した規制も合理的かつ相当なものであると認められる。

(3) 右の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、本件法規制が採用したこの形態を有するモデルガンについての規制内容は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

(六) 自動装填式拳銃に類似する形態を有する物で、分解することにより銃身に相当する部分を分離できるものについて

(1) 組合が定めたこの形態のモデルガンの安全基準は銃身の直径よりの二分の一以上の大きさの偏心したインサートを銃身の先端から八mmの部分から薬室部分を除くところまで鋳込むとともに、遊底部分の機関部内部にインサートを鋳込み、危険度の高いモデルガンについては、遊底部分の強度を弱くするため、その内側に溝を掘ることとされている(〈証拠略〉)。一方、本件法規制では、この形態のモデルガンについては、有効な改造防止措置がないとして、「銃砲に改造することが著しく困難なものに該当するための構造等の内容が具体的に」規定されなかった。そのため、この形態のモデルガンは、全面的にその販売目的の所持が禁止されることになった。

(2) 控訴人らは、この形態のモデルガンについての法規制はその合理性、必要性を欠くと主張し、自動装填式拳銃に類似するモデルガンで、銃身相当部分と尾筒相当部分とが一体として鋳造されているものについての法規制では、銃身基部にインサートが鋳込まれ、撃針相当部分の先端が薬室の中心部を打撃することにならないような位置に取り付けられていれば、販売目的の所持が認められているのであるから、この形態のモデルガンについても、金属パイプによる銃身取り付けを危惧するのであれば、右の撃針相当部分の先端が薬室の中心部を打撃することにならないような位置に取り付けられていさえすれば、改造防止の措置としては十分であり、この形態のモデルガンについて販売目的の所持を全面的に禁止する必要性も合理性もないと主張する。

国が施行規則に右のような規制を盛り込んだ理由は、次のような理由によるものである。すなわち、次のとおり、昭和五一年五月から昭和五二年四月にかけて、この形態に属するモデルガンの改造事犯が摘発された。

i 昭和五一年五月に京都市において、〈1〉銃身部分については、薬室前端部を金鋸でインサートに当たるまで周囲を切り、薬室に当て金を入れて軽く打って銃身部を抜き、薬室に内径七・七mm、長さ一三〇mmの真鍮管を挿入してピン二本で固定し、更にその薬室前部の真鍮管に内径一〇・七五mm、肉厚一・六二mm、長さ一二〇mmの真鍮管を被せて内側の真鍮管とピンで固定し、〈2〉撃針部分については、厚さ二mmの鉄板の先端を削って尖らせて撃針を作り、実包の雷管を打撃するように改造したこの形態のモデルガンが押収された。弾丸活力検査を行ったところ、人の殺傷能力があることが証明された。

ii 昭和五一年七月に京都市において、銃身については、二重構造の真鍮管に取り替えたが、撃針が不完全なままのこの形態のモデルガンが押収された。これのモデルガンは、口径〇・三二インチ自動装填式拳銃用実包を装填して撃発したが撃針が雷管部を打撃しないため発射しなかった。そのため、右空薬莢の雷管部をドリルによってすり鉢状に拡げ、起爆薬として平玉(紙雷管)一個を装着させてテープで留め、装薬として平玉二〇個をほぐして入れ、鉛弾を弾丸としてはめ込んで試射したところ、発射した。弾丸活力検査を行ったところ、人の殺傷能力があることが証明された。

iii 昭和五一年九月に名古屋市において、〈1〉銃身として外径一一・〇mm、内径七・八mmの金属パイプを装着し、薬室内に外径一三・八mm、内径九mmの金属パイプを挿入し、〈2〉撃針として長さ三・八八mm、幅一・〇九mm、厚さ二・一mm、先端径一・一mmの白色金属を装着して改造したこの形態のモデルガンが押収された。弾丸活力検査を行ったところ、人の殺傷能力があることが証明された。

iv 昭和五一年一二月に岐阜県瑞浪市において、〈1〉銃身は、モデルガンの銃身を一部利用し(薬室部)、薬室部の先端部から切断して、そこに外径一〇・七mm、内径八mmの鋼鉄製のパイプを取り付け、〈2〉撃針は、鋼鉄製の撃針及び撃針保持部を作り、これを遊底に固定して撃針が一定の位置を打撃するようにして改造したこの形態のモデルガンが押収された。発射実験を行ったところ、射距離三mで杉板三枚を貫通し、四枚目に弾痕を残し、人を殺傷する危険性があることが証明された。

v 同年同月岐阜県警多治見警察署によって、香川県高松市内において、〈1〉モデルガンの銃身を薬室部の先端から切断し、そこに外径約一二mm、内径八mmの鋼鉄製銃身を取り付け、撃針は、厚さ約二mm、幅約九mm、長さ三七mmの鋼鉄板を加工して作り、遊底に取り付けて改造したこの形態に属するモデルガン、及び〈2〉銃身については右〈1〉と同様に改造し、撃針は鋼鉄板でほぼ円弧状のものを作り、遊底の保持部に取り付け縁打ち式にして改造したモデルガンが押収された。右〈1〉及び〈2〉の各改造モデルガンは、発射実験をしたところ、いずれも射距離五mで厚さ約一二mmの杉板一枚を貫通し、二枚目に弾痕を残し、人を殺傷する危険性があることが証明された。

vi 昭和五二年三月に東京都中野区において、モデルガンの銃身を薬室の前で切断し、右薬室部に磁性材料(鉄)又は非磁性材料(鉄・コバルト以外の金属)のパイプを差し込んで銃身とし、撃針は撃針取付台を工作し、これに穴を開けて手製の撃針を取り付け、これをブロックに取り付けて改造したこの形態の改造モデルガン五丁が押収された。これらの改造モデルガンは、発射実験を行ったところ、人の殺傷能力があることが証明された。

vii 昭和五二年四月に東京都練馬区において、モデルガンの銃身を薬室の前で切断し、右薬室部に磁性材料(鉄)又は非磁性材料(鉄・コバルト以外の金属)のパイプを差し込んで銃身とし、撃針は撃針取付台を工作し、これに穴を開けて手製の撃針を取り付け、これをブロックに取り付けて改造したこの形態の改造モデルガン七丁が押収された。これらの改造モデルガンは、試射実験を行ったところ、人の殺傷能力があることが証明された。

viii 昭和五二年四月に警視庁管内において、銃身が手製の銃身に取り替えられたこの形態に属するブローニング型改造モデルガン二丁が押収された。右改造モデルガンのうちの一丁は、発射実験で弾丸が厚さ一二mmの杉板三枚を貫通し、四枚目に約八mm刺さって停止しており、人の殺傷能力のあることが証明された。

これらの改造事例から明らかなように、銃身分離形のモデルガンは、分解すると銃身部分だけを取り出すことが可能であり、したがって、銃身部分内にインサートを鋳込んでいても、銃身を外した上、銃身自体を別の材料で作り、はめ込んで改造するという改造方法に対しては、有効な防止策とはならない。また、スライド部分の溝にインサートを鋳込んで発火板が動いても装填した薬莢の中心部を打撃しないような措置を取ったとしても、スライド部分を取り外してグラインダーや高速カッターを使用してインサートを削り取ったり、外部から打撃を加えてインサートを叩き出すことが可能であり、そうすると動く発火板の先端を尖らせて作った撃針が薬莢の中心を打撃するように改造することが可能であると認められる。したがって国は、この形態のモデルガンについては、撃発装置に相当する装置を有している限り、効果的な改造防止措置を発見できないとして、この形態のモデルガンの発売目的の所持を全面的に禁止したものである。(〈証拠略〉)

(3) 以上の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、国がこの形態を有するモデルガンについては有効な改造防止措置を発見することができないとして、銃砲に改造することが著しく困難なものに該当するための構造等の内容を施行規則に定めなかった本件法規制は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

(七) 中折れ式拳銃に類似する形態を有する物について

(1) 組合が採用したこの形態のモデルガンの安全基準は、銃身部分にインサートを鋳込むことである(〈証拠略〉)。施行規則による規制では、有効な改造防止措置が見つからないものとして、全面的にその販売目的による所持が禁止されることとなった。

(2) 控訴人らは、この形態のモデルガンについても、薬室部分に薬室全般を覆う超硬合金によるインサートを鋳込む方法により改造防止が可能であるから、本件法規制は、その必要性も合理性もないと主張する。

国がこの形態のモデルガンについて、全面的に販売目的の所持を禁じた理由は、次のとおりであると認められる。すなわち、この形態のモデルガンについては、次のとおりの改造事犯が摘発された。

i 昭和五一年二月に福岡市において、モデルガンの銃身を先端から約四四mmの位置で切断し、残った銃身部に鉄パイプを挿入して接着剤で固定し、銃口部に真鍮製のナットを取り付け、鉄パイプの周囲には溶融鉛を流し込み、撃鉄部にはモデルガンの撃針の代わりに厚さ二・八mmの鉄片で作られた撃針を接着剤で固定して改造したこの形態のモデルガンが押収された。弾力活性試験を行ったところ、近距離において人を傷害する能力があることが証明された。

ii 昭和五一年六月に滋賀県大津市において、銃身部(二連)の上、下腔にそれぞれ真鍮及び鉄パイプを圧入し、既成の撃鉄部に鉄板切片を研削加工して作成した撃針を埋め込んでスポット溶接して改造したSMマーク入りの改造モデルガンが押収された。この改造モデルガンは、撃針先端部の下方が薬室周縁部に当たり、実包の莢底起縁部には接触する程度に止まり、したがって、撃針の衝撃力が先に薬室周縁部に当たることにより半減してしまうことから、実包は撃発しなかった。しかし、薬室周縁部又は撃針先端部の形状を僅かに研削し、調整するという極めて軽度の作業で発射機能を保有するに至るものと認められた。

iii 同年同月に滋賀県大津市において、モデルガンの銃身部を銃腔より四〇・九mmの位置で縦に切断し、更に切断した前部右上部を切削開孔し、内部のインサートを除去した後に接合し、銃身の上腔に外径一〇・一mm、内径六・〇ないし六・一mmの鉄パイプを圧入し(なお、下腔は閉塞)、既成の撃鉄部に鉄板切片を研削加工して撃針を作って埋め込み、接着剤で固定して改造したこの形態のSMマーク入りの改造モデルガンが押収された。発射実験を行ったところ、厚さ約六mmの段ボール紙一〇枚を貫通し、採弾用の紙積に約五cm進徹し、人の殺傷能力があることが証明された。

これらの改造事例から明らかなように、この形態のモデルガンは、銃身部分と機関部体とが蝶番で折れ曲がるようになっており、銃身を分離することができる構造となっていることから改造工作が容易であり、インサートが鋳込まれた銃身部分をインサートの後方で切断し、薬室(なお、この形態のモデルガンは、銃身の基部のところに薬室がある。)を利用して鉄パイプ等を利用した手製の銃身を装着する方法による改造を防止することができない。控訴人らの主張するように薬室全般を覆うようなインサートを鋳込んでおいても、銃身基部の薬室部分を切断し、銃身にドリルで加工して薬室部分を作るという改造方法を防止することはできないことが認められる(〈証拠略〉)。

(3) 以上の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、国がこの形態を有するモデルガンについては有効な改造防止措置を発見することができないとして、銃砲に改造することが著しく困難なものに該当するための構造等の内容を施行規則に定めなかった本件法規制は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

(八) 小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態を有する物で、銃身に相当する部分と機関部体に相当する部分とが一体として鋳造されているものについて

(1) この形態については、組合では特に統一的な安全基準を定めることなく、各業者が独自に工夫をしていたにすぎない(〈証拠略〉)。施行規則による本件法規制は、〈1〉薬室のあるものについては、銃身部分の基部にインサートが別紙記載の別図6のとおり鋳込まれており、そのうち、撃針部分のあるものについては、撃針部分が同別図7のとおり取り付けられている(撃針の先端が薬室の中心部を打撃することにならないような位置に取り付けられている)もの、また、撃針部分がないものについては、遊底の前部に同別図8に示す構造、材質及び大きさの超硬合金が同別図9のとおり鋳込まれているもの、他方、〈2〉薬室部分のないものについては、薬室に相当する部分にインサートが鋳込まれているものであることを、それぞれ要求している。

(2) 控訴人らは、これらのいわゆる長物といわれる形態のモデルガンについては、改造例が余りないことから、規制の必要はないと考えられてきたものであり、右のような法規制は不必要なものであるとしている(〈証拠略〉)。しかし、これらのいわゆる長物のモデルガンは、その銃身部分と銃把を切り取れば拳銃と同様のものに改造することが可能であるし、銃身部分を取り除いて鉄パイプ製の手製銃身を機関部体にねじ込むことが可能である。また、遊底頭にドリルで撃針孔を空けることによって発射機能を有するように改造することが可能であり、更に、薬室が設けられていない場合であっても、当該モデルガンに適合する薬莢と同じ大きさの物を金属で作って孔を空ければ実包を装填することができるようにして薬室代わりにするという改造方法があり、しかも、その改造が比較的容易である。そのため、効果的な改造防止措置として、薬室相当部分から五mm以内の銃身基部に銃身に相当する部分の外径との差が三mm以下となるようなインサートを鋳込む方法が考えられたものである。撃針部分があるものについては、前記(三)の場合と同様に、撃針部分に設けられている発火板を取り替えて雷管を打撃することが可能なようにする改造を防止するために、発火板の位置をずらすこととしたものであり、また、撃針部分のないものについては、遊底部の包底面にドリルで孔を空けてそこに釘の頭のようなものを差し込むなどして撃針を設けられないようにするために包底面に近い遊底前部に包底面と同じ直径の超硬合金を鋳込ませ、更に、薬室のないものについては、薬室への改造可能な部分にインサートを鋳込ませることによって、銃身基部に穴を空けて薬室代わりとすることを防止することとしたものであることが認められる(〈証拠略〉)。そうすると、この点に関する施行規則による法規制も合理的であり、相当であると認められる。

(3) 控訴人らは、モデルガンの材質は非鉄金属の亜鉛であり、これに鉄パイプをねじ込んだとしても馴染むものではなく、そのような改造は考えられないと主張する。しかし、昭和五二年三月に福岡県田川郡において押収された回転弾倉式の改造モデルガンは、モデルガンの銃身をフレーム先端で切断した後、その部分に鉄パイプがねじ込まれて改造されており、撃針部等に手を加えることにより、発射実験を行ったところ、正常に弾丸を発射したことが認められる(〈証拠略〉)のであって、控訴人らの右主張は採用することができない。

更に、控訴人らは、右の法規制によると、銃腔部分が閉塞されることとなるから、薬室後部へ吹き出す紙火薬の燃焼ガスがモデルガンの操作をするものの顔面に吹きつけられることとなる危険があると主張する。しかしながら、仮にそのような危険があるとしても、そのような危険は当該モデルガンが銃砲に改造される危険を回避するためにはやむを得ない事柄であり、そのような危険を避けることはモデルガンを操作するものの負担においてこれを考えるべきであり、これらが本件法規制の合理性と相当性の判断に影響を及ぼすものではない。

また、控訴人らは、いわゆる長物である猟銃の真正銃の所持は法的に可能であること、長物のモデルガンの価格は高価であり販売数量も少なく、人目に着き易く持ち歩きにくいので犯罪に利用される例は考えがたいと主張する。しかしながら、猟銃の所持が法的に可能であるといっても、それは厳格な資格審査を経て所持が許可されて初めて可能であるし、そのような所持の許可を得られない者こそがモデルガンを改造しようと考え、あるいは改造されたモデルガンを不正な方法により入手しようと企てるのである。また、長物のモデルガンの価格が拳銃のモデルガンに比べて高価であることは、その改造の抑止に役立つものとはいえない。改造されたモデルガンについてみれば、長物には拳銃にない機能があるのであって、犯罪者は正にこの点に着目するものと考えられるのである。確かに、長物は人目に着き易く持ち歩きにくいという点は控訴人らの主張のとおりであるが、自動車等を運搬手段として利用することにより、これらの弱点を補って犯罪に使用することも可能である。控訴人らの右主張も採用することはできない。

(4) 以上の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、本件法規制が採用したこの形態を有するモデルガンについての規制内容は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

(九) 小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態を有する物で、分解することにより銃身に相当する部分と機関部体に相当する部分を分離できるものについて

(1) この形態については、組合では統一的な安全基準は定めていなかったが、製造業者の中には、他の形態のモデルガンの安全基準に準ずるように、銃身部分にインサートを鋳込むという改造防止措置を施している者があった(〈証拠略〉)。これに対し、施行規則においては、有効な改造防止措置が発見できないとして、全面的にその販売目的の所持が禁止されることになった。

(2) 控訴人らは、この形態のモデルガンについても、銃身部分にインサートを鋳込むという方法で安全対策としては十分であり、改造例も僅かであったから、施行規則による規制は、必要性の限度を超えたものであると主張する。

しかしながら、本件法規制前に製造されていた長物のモデルガンの多くは、銃身がねじ込み式になっている分離形であり、銃身基部にインサートを鋳込んであったとしても、銃身を取り外して別の金属パイプをねじ込むことにより容易に改造することができるものであったのであり、昭和五一年には一一丁の長物のモデルガンが押収されているのである(〈証拠略〉)。そして、この形態のモデルガンも、銃身と機関部体とが一体として鋳造されていないため、銃身に相当する部分の基部に改造防止措置を施しても、銃身を交換するという方法による改造を防止することができないと認められることは、自動装填式拳銃に類似する形態を有する物で、分解することにより銃身に相当する部分を分離できるものについて前記(六)において説示したところと同様である。さらに、前記(八)において長物のモデルガン一般について述べたことがこの形態を有するモデルガンについても妥当することはいうまでもない。

(3) 以上の認定事実及びこれによる判断に、前記3の(二)に述べた事情を併せると、国がこの形態を有するモデルガンについては有効な改造防止措置を発見することができないとして、銃砲に改造することが著しく困難なものに該当するための構造等の内容を施行規則に定めなかった本件法規制は、前記認定の規制目的を達成するために必要かつ合理的なものであると認められ、立法府及び行政府の合理的裁量の範囲内にあるものというべきである。

3  以上説示のとおりであり、前掲の〈証拠略〉中、本件法規制の不必要や鑑定方法及び内容等を論難する部分はたやすく採用できない。昭和五二年の法改正当時のモデルガンを取り巻く社会情勢は、モデルガンが銃器に改造されるという事態を防止するために、モデルガンについて改造防止の措置を取るべきことを定め、その製造販売に対する規制をしなければ、国民一般の生命、身体の保護及び財産を守ることができない状況にあったものであり、本件法改正による規制内容も製造販売する商品の規格等を中心とした対象的規制にとどまっており、右の目的との関係において合理的なものといい得るから、本件法規制による制約は公共の福祉によるやむを得ない制約というべきであって、これを職業活動の内容及び態様の自由を保障した憲法二二条一項に違反するものとはいえず、控訴人ら(控訴人1ないし3)の権利を違法に侵害したものということはできない。控訴人らの前記主張は採用することができない。

三  争点3について

控訴人ら(控訴人4ないし13)は、昭和五二年の法改正によるモデルガンの製造販売の規制は憲法一三条に違反すると主張する。

1  そこで判断するに、控訴人ら(控訴人4ないし13)は、本件法規制はモデルガンをあそびの道具として愛好し、趣味を楽しむ自由を不当に制限するものであり、憲法一三条に違反すると主張する。しかしながら、本件法規制は、改造によって銃刀法三条に定める銃砲となる虞のある模擬銃器(モデルガン)を販売目的で所持することを禁止し、もって改造事犯が発生することを防止しようとするものであって、単なる趣味としてこれを所持すること自体を禁止するものではない(もっとも、それが銃刀法二二条の二所定の模造拳銃に該当する場合は同条違反となることはいうまでもないが、それは、本件法規制とは関係のないことである。)。したがって、右控訴人らは、現に有するモデルガンをあそびの道具として愛好し、趣味を楽しむこと自体は自由であり、これが本件法規制により直接規制を受けるものとはいえない。もっとも、本件法規制により、モデルガン製造販売業者が施行規則が定める条件に適合しないモデルガンを販売目的で所持することを禁止される結果、右控訴人らがそのようなモデルガンを購入することができなくなり、そのために施行規則に定める条件に適合しないモデルガンをあそびの道具とすることができなくなることは明らかである。しかしながら、昭和五二年の法改正による本件法規制がなされるに至った事情、法規制の目的及び具体的内容は前記説示のとおりである。そして、控訴人らの主張するいわゆるあそびの自由はモデルガンを道具として遊ぶというものであるから、そのあそびが右のように制約されるのは、あそびの道具であるモデルガンが本件法規制により公共の福祉によるやむを得ない制約を受ける反射的効果にすぎない。

2  右控訴人らの主張するあそびの自由が、仮に憲法一三条所定の幸福追求権の一つとして保障されるものであるとしても、その「あそび」が、単なる思考や空想などの精神的享楽の次元にとどまらず、モデルガンという社会的に弊害や危険性が予想される道具を使用するものであるから、あそびの自由といえどもその方法、手段等に社会的弊害も予想される場合には、その方法、手段等は公共の福祉による制約に服すべきものである。そして、右控訴人らが本件法規制に適合しないモデルガンをあそびの道具として購入するなどして入手することができなくなったとしても、前記二において説示したとおり、有害銃器に改造され得る危険な商品の規制をしただけのものであって、そのようなあそびの方法、手段についてのその程度の形態の制約は公共の福祉によるやむを得ない制約として受忍すべきであり、規制の目的を達成するために他に採り得べき手段がないことを要するものではない。したがって、昭和五二年の法改正によるモデルガンの製造販売の規制は憲法一三条に違反するものとはいえず、右控訴人らの権利を違法に侵害したものということはできない。右控訴人らの主張は採用することができない。

第四結論

以上の認定及び判断の結果によると、昭和五二年法改正によるモデルガンの規制については、これを違憲、違法とすべき点は認められず、その前段階においてなされた警察庁による行政指導及びその撤回の過程においても、被控訴人の国家賠償責任を生じさせる違法の点があったものと認めることはできない。したがって、控訴人らの本件請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから、これを棄却すべきである。

よって、当裁判所の右の判断と同旨の原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用は控訴人らに負担させることとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 鬼頭季郎 渡邉等 柴田寛之)

別図1ないし9〈略〉

【参考】第一審(東京地裁 昭和五二年(行ウ)第二号、第三八号 平成二年七月一一日判決)

主文

一 原告らの請求をいずれも棄却する。

二 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一原告らの請求

被告らは、各自、原告神保勉(別紙当事者目録記載の原告1)に対し金五〇〇〇万円、同国際産業株式会社(同2)に対し金二〇〇〇万円、同ハドソン産業株式会社(同3)に対し金六〇〇万円、同有限会社鈴木製作所(同4)に対し金一〇〇万円、同株式会社東京レプリカ・コーポレーション(同5)に対し金三〇〇万円、同有限会社シーエムシー(同6)に対し金二〇〇〇万円及びその余の原告ら(同7から50まで)に対し各金二〇〇〇円並びに右の各金員に対する本件各訴状送達の日の翌日(原告1から12までの各請求との関係では、いずれも昭和五二年二月二日、その余の原告らの各請求との関係では、被告四方修については昭和五二年四月一三日、その余の被告についてはいずれも同年四月一〇日)から各支払済みに至るまで年五分の割合による各金員を支払え。

第二事案の概要

一 当事者の地位等

別紙当事者目録記載の原告1から6までは、いずれもいわゆるモデルガンを製造、販売する業者であり、その余の原告らは、いずれも右1から6までの原告らあるいはその同業者の製造、販売したモデルガンを購入し、これを所持している者である(〈証拠略〉によると、一部の原告らに関する部分を除いて、この事実が認められる。)。

別紙当事者目録記載の被告2から6までは、いずれも昭和五二年の銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)の改正作業あるいはそれに先立つ後記のような行政指導が行われた当時の警察庁の職員であり、被告2は長官、被告3は刑事局長、被告4は同局保安部長、被告5及び6はいずれも同部保安課長の職にあつた者である(この事実は、当事者間に争いがない。)。

二 銃刀法の改正の経過等(この項の事実は、いずれも、公知の事実あるいは当事者間に争いのない事実である。)

1 銃刀法は、昭和三三年に制定された法律であり、同法によれば、特別の例外事由に該当する場合を除いては、銃砲の所持が禁止されている。

ところで、模擬銃器(モデルガン)については、当初はその所持を規制する規定がおかれていなかつたが、昭和四六年の法改正により、当時多発していた模造拳銃を真正銃に見せかけて凶器として用いるといつた犯罪を防止するため、外観上真正な拳銃に類似するモデルガンは、輸出目的であるときを除いて、その所持が禁止されるに至つた。すなわち、銃刀法二二条の二第一項に「何人も、模造けん銃(金属で作られ、かつ、けん銃に著しく類似する形態を有する物で、総理府令で定めるものをいう。)を所持してはならない。」との規定が新設されるとともに、この総理府令の定めとして、「法二二条の二第一項の模造けん銃について総理府令で定めるものは、次の各号に掲げる措置を施していないものとする。一 銃腔に相当する部分を完全に閉そくすること。二 表面(銃把に相当する部分の表面を除く。)の全体を白色又は黄色とすること。」との規定がおかれ、金属で作られ、かつ、拳銃に著しく類似する形態のモデルガンについては、右の総理府令所定の措置が施されることによつて真正な拳銃と外観上明らかに区別できるものでない限り、輸出目的以外の所持が禁止されるに至つたのである。

2 更にその後、モデルガンを改造した銃砲が犯罪の用に供されるという例が増加してきたため、昭和四八年秋頃から、モデルガンが銃砲に改造されるという事態を防ぐため、警察庁内部でモデルガンに対する規制を強化するための検討作業が始められ、その結果、昭和五二年三月四日に銃刀法の改正案が国会に提出され、同法案は同年五月一九日に成立し、同年六月一日に公布された。この改正法では、「何人も、販売の目的で、模擬銃器(金属で作られ、かつ、けん銃、小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態及び撃発装置に相当する装置を有する物で、銃砲に改造することが著しく困難なものとして総理府令で定めるもの以外のものをいう。)を所持してはならない。」との規定が、銃刀法二二条の三第一項に新設された。

これを受けて、警察庁で総理府令の改正案を検討した結果、同年九月一〇日、総理府令の改正が行われた。この改正後の総理府令では、模擬銃器の形態による区分に応じて、銃砲に改造することが著しく困難なものに該当するための構造等の内容が具体的に規定され(銃砲刀剣類所持等取締法施行規則(以下「規則」という。) 一七条の三第一項、別表第二)、この定めに該当しない構造の模擬銃器については、これを販売の目的で所持することが禁止されることとなつた。

三 本事件の争点

本事件の争点は、この昭和五二年の銃刀法の改正あるいはその前段階で行われた警察庁による行政指導の過程に、原告らに対する関係で、被告国の国家賠償責任あるいはその他の被告らの損害賠償責任を生じさせるような違法事由があつたといえるか否かの点にあり、当事者双方は、この点について次のような主張をしている。

1 原告らの主張

(一) 昭和五二年の銃刀法の改正に先立つて、警察庁では、昭和四九年夏頃から、モデルガン製造業界に働きかけ、業界の自主規制によつてモデルガンの製造工法に種々の工夫を加えるという方法で、モデルガンが銃砲に改造されるという事態を防止するよう行政指導を行つてきており、右の自主規制が実現した場合には法改正の必要がなくなるものと明言していた。

ところが、右の業界に対する行政指導は、真実は早晩法改正による規制を行う意図を有していたのに、これを秘して、業界関係者らに対し、モデルガンの規制が終始専ら行政指導に基づく業界の自主規制の方法のみによつて行われるものと誤信させるような仕方で行われ、その結果、モデルガンの製造販売業者である原告らに対して、本来無用な研究開発費等の出損を強いる結果となつたものであるから、欺罔的な行政指導であつて、違法なものである。

仮に右の行政指導が行われる時点で警察庁関係者に法改正の意図がなかつたとしても、右の法改正の時点では、すでにモデルガンの規制を行政指導によつて実施していくという警察庁の方針に対する信頼関係がモデルガンの製造販売業者である原告らとの間に成立し、現に業界では、この方針にそつて、多大の研究開発費を投じて、警察庁側との綿密な連絡、協力のもとに、各モデルガンの形態ごとに銃砲への改造を不能とするような工法を完成させ、この工法にそつた製品のみを製造販売するようになつていた。ところが、この法改正は、このような原告らとの間での信頼関係を合理的な理由もなしに一方的に破る形で、しかも、これによつて原告らが被ることとなる損害を補償するといつた措置を講ずることもないまま、それまでの行政指導の方針を撤回することによつてなされたものであり、このような行政指導の撤回は、信義則あるいは禁反言の法理に反するものであり、違法なものというべきである。

(二) 右の昭和五二年の法改正によるモデルガンの製造販売の規制は、モデルガンの製造販売業者である原告らの憲法二二条一項に保障された職業選択の自由を侵し、また、モデルガン愛好者であるその他の原告らの憲法一三条に保障された幸福追求権の一内容としての「あそびの自由」を侵すものであり、しかも、その規制の内容は、憲法上許容される必要かつ合理的な規制の限界を超えたものであるから、憲法に違反する違憲、違法なものというべきである。したがつて、警察庁職員たる被告らが行つた右の法改正のための法案等の立案作業もまた、違憲、違法な行為といわなければならない。

(三) これらの被告らによる違法な行政指導、行政指導の撤回あるいは法案立案作業、更には国会にある憲法違反の立法によつて、モデルガンの製造販売業者である原告らは、製造販売が禁止されることとなつた形態のモデルガン製造用の金型や部品等が無駄になつたこと等による損害として、別表記載のとおりの各損害を被り、また、モデルガン愛好者であるその余の原告らは、一人当たり二〇〇〇円を下らない金額に相当する精神的損害を被つた。

被告国は、国家賠償法一条により、その他の被告は、いずれも民法七〇九条及び 七一九条により、原告らの被つた右の損害を賠償する責任を負うものというべきである。

2 被告らの主張

(一) 原告らの被告2から6までに対する請求については、国家賠償責任は専ら国が負うものであつて、公務員個人がその責任を負うものではないから、その請求は失当である。

(二) 昭和五二年の銃刀法の改正は、モデルガンを改造した銃砲を使用した犯罪が多発するようになつたことから、これを防止するために行われたものであり、その規制の内容も、右の目的達成のために必要な限度の合理的なものである。

(三) 警察庁では、それまで業界の自主規制によるモデルガンの銃砲への改造防止の可能性を見守つていたが、その効果がなかつたことから、右のような法改正による規制に着手するに至つたものであり、その過程で、なんら信義則等に反するような違法な事態はなかつた。

第三争点に対する判断

一 原告らの被告2から6までに対する各請求について

原告らの被告2から6までに対する各請求は、国の公務員である同被告らがその職務を行うについて違法行為を行つたとして、同被告らに対して、不法行為による損害の賠償を求めるものである。

しかしながら、国の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、専ら国がこれを賠償する責に任ずるのであつて、公務員個人がその責任を負うものではないから、原告らの被告2から6までに対する各請求は、いずれも失当なものというべきである。

二 原告らの被告国に対する請求について

1 昭和五二年の銃刀法の改正の背景となつた事実関係について

(一) 昭和五二年の銃刀法の改正に先立つて、それが原告らの主張するような法改正の圧力を背景とした警察庁によるある種の強制力を伴つた行政指導に該当するものであつたか否かはともかくとして、警察庁の助言、指導のもとに、モデルガン製造業界で、モデルガンが銃砲に改造されるという事態を防止するための製造工法の開発等の自主規制が行われていたことは、当事者間に争いがないところである。ところで、本来相手方の任意による同意又は協力を前提として行われる事実行為たる行政指導が、どのような場合に国家賠償の対象となる公務員の公権力の行使行為に該当することとなるかは、困難な問題である。しかし、本件では、いずれにしても、この間の事実関係がどのようなものであつたかが、昭和五二年の法改正によるモデルガンの規制の合理性の有無の判断自体にも密接に関連してくる面があるので、まず、この点に関する事実関係について検討を加えておくこととする。

(二) 〈証拠略〉によれば、この点に関する事実関係は、概ね次のようなものであつたことが認められる。

(1) 昭和四六年の法改正後、暴力団による殺傷事件等にモデルガンを改造した銃器が凶器として使用される例が多くなり、同四八年から四九年にかけて、公安委員会の連絡協議会や都道府県議長会等の場でも、モデルガンの改造対策を内容とする銃刀法改正の必要があるとの意見が出されるようになつた。そのため、警察庁においても、同四八年一〇月頃から、法改正のための検討作業を開始するに至つた。そして、右の検討作業の過程では、モデルガンの引き金及び撃鉄の部分を固定化してしまい、また、モデルガンの主要部分に金属を使用することを禁止してプラスチツクを使用させるといつた案が出されるようになつていた。(〈証拠略〉)

(2) このような警察庁側の動きに対して、昭和四八年秋以降、モデルガンの製造販売業者や玩具業者の団体等から、繰り返し反対の陳情等が行われるようになつた。その内容は、業界に経済的打撃を与えることとなる前記のような案によるモデルガンの規制を行わないことを求めるとともに、モデルガンの製造業者の側で、銃身や薬室内に鋼材を鋳込む「インサート」工法を採用することによつて、モデルガンが銃砲に改造されることを防止できるのであるから、銃刀法の改正という規制方法をとるまでの必要はないというものであつた。この問題を所管していた警察庁刑事局保安部保安課でも、昭和四九年夏頃には、業界の自主規制によるモデルガンの銃砲への改造不能工法の採用によつて犯罪を防止することが可能なものであれば、法改正による規制を行う必要はないものと考えるようになり、業界に対して、銃砲に改造することが不能な措置を講じたモデルガンの製法を開発し、市場に出回るモデルガンがみなそのような製法によつて製造されることとなる態勢を整備するようにとの、指導、要請を行うに至つた。(〈証拠略〉)

(3) 警察庁側からの右のような指導、要請を受けて、モデルガン製造業界では、そのような業界の自主規制を実施するための団体として、昭和四九年一二月二六日に「日本モデルガン製造協同組合」(以下「組合」という。)を発足させ、以後、組合において、警察庁と緊密な連絡を取りながら、各モデルガンの形態ごとに、モデルガンが銃砲に改造されることを不能にするための工法の詳細かつ具体的な基準を研究、策定し、組合の策定した右のような安全基準に合致するモデルガンにSM(セーフテイ・モデルガン)のマークを付し、組合員である業者は、このマークを付したモデルガンのみを製造、販売するという態勢を作り上げることとなつた。その間、警察庁の側でも、組合との間で絶えず連絡を取りながら、右の安全基準を策定する作業に関わりをもち、組合側から提出されてくる各モデルガンの形態ごとの安全基準案について、科学警察研究所の手による検査等を行つたうえでその安全性の有無を確認し、問題がある場合には、更に組合に対して再検討を求めるといつた措置を講じてきた。その結果、昭和五〇年一一月頃には、組合を通じた自主規制の方法によるモデルガンの銃砲への改造防止の態勢が一応完成されることとなつた。(〈証拠略〉)

(4) ところで、右のような自主規制態勢確立後の銃砲の不法所持事犯の発生状況等をみると、昭和五一年度においては、改造モデルガンの押収件数は、それまでの増加傾向から横這いあるいは減少傾向に転じ、業界による自主規制の方法にある程度の効果があることが認められるかのような状況になつていた。しかしながら、昭和五一年一月頃からは、右のSMマーク付のモデルガンを改造した拳銃が押収されるといつた例がみられるようになり、同年六月までの間だけでも、その種の改造拳銃の押収件数が合計で一〇丁を数えるようになつた。

このような動きに対しては、組合の側でも、警察庁と前同様の連絡を取りながら、新たな改造防止のための工法の基準等を検討し、従前の安全基準に代る新たな安全基準を策定するといつた努力を行うに至つていた。しかし、もともと、SMマーク付モデルガンの改造防止工法は、モデルガンの銃腔部分にドリルで孔を空けるという改造方法を想定して、ドリルでは掘削できないような硬い鋼材(インサート)を銃腔部に鋳込むという手法を中心とするものであつたが、新しく発見された改造拳銃は、モデルガンの銃身をその付け根部分から切断し、インサートを叩き出して、これに鉄パイプ等を用いた別の銃身を取りつけるといつた方法によつて改造されているため、右のような改造防止方法のみによつては改造を防ぐことが難しいという面があつた。しかも、組合員である業者の中にも、右のSM基準に合致しないモデルガンを製造、販売する者があり、また、組合が中小企業協同組合法によつて設立された協同組合であつて、モデルガン製造販売に関係する業者の全てがそこへの加入を義務づけられているわけではないことから、組合未加入の業者等が銃砲への改造の可能なような形態のモデルガンを製造、販売するという事態が現実に生じていたのに、組合の方でそのような動きを規制することができず、そのため、右の組合による自主規制の方法だけでは、モデルガンが銃砲に改造されるという事態を的確に防止し難いような状況が存在していた。

(〈証拠略〉)

(5) このような状況のもとで、国会の場においても、モデルガンの規制を業界の自主規制のみに任せるのではなく、何らかの法規制によることを検討すべきであるとの意見が出されるようになり、警察庁においても、銃刀法の改正による法規制によつてモデルガンの改造による犯罪の発生を防止する必要があるものと判断するに至つた。そこで、昭和五一年秋頃から、そのための改正法案の立案作業が開始され、同五二年二月一五日の閣議決定を経て、同年三月四日に銃刀法の改正案が国会に提出され、右法案は、同年五月一九日に国会で可決されて成立し、同年六月一日に改正法が公布された。次いで、この改正法に基づく改正規則が同年九月一〇日に公布され、これらの改正規定は、同年一二月一日から施行された。この改正規則では、販売目的での所持が許される模擬銃器の範囲は、銃身、機関部体等に相当する部分が一定の硬度以下の金属で作られているもので、銃身の基部及び弾倉の内部にインサートが鋳込まれている等の改造防止策が施されているもの等に限定されることとなつた。(〈証拠略〉)

2 行政指導及びその撤回の適否について

(一) 右1に見たような事実関係からすれば、モデルガン製造業者等に対して行われた警察庁側によるこのような指導、要請等を内容とするいわゆる行政指導は、業界の自主規制によつて改造銃器による犯罪の発生を防止できるものであれば、それによつて法改正の必要はなくなるものとして、その成り行きと効果を見守つていくという形で行われたものと認めることができ、また、その後のこの行政指導に関する方針の撤回は、業界の自主規制という方法によるのでは、改造銃器による犯罪の発生を防止するという行政目的が必ずしも十分には達成できないと考えられるような事態が生じてきたことから行われたものと認めることができる。

そうすると、これらの行為が、仮に原告らの主張するように、国家賠償責任の発生原因となる国の公権力の行使行為に当たるものとしても、これが違法に行われたものとすることは困難である。

(二) 原告らは、右の行政指導が、警察庁側で有していた法改正による規制を行う意図をことさらに秘して欺罔的になされたものであると主張するが、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。

また、原告らは、被告の方で、右のような方針変更の一つの契機になつたとする昭和五一年秋の大阪での改造拳銃による暴力団の抗争事件については、これを現実に警察庁が知るに至る前の時点で、すでに警察庁側では右のような方針変更を決定するに至つていたのであるから、右の方針変更には合理的な理由がなかつたと主張する。しかし、右の大阪での事件を除外して考えてみても、なお前記のような組合による自主規制の方法だけでは改造銃器による犯罪の発生を防止し難いと認められる各種の状況が発生していたことに変りはないものというべきであるから、原告らの右の点に関する主張は失当なものという他はない。

更に、原告らは、警察庁がこのような行政指導による自主規制の方針を変更するに際しては、これによつてモデルガンの製造販売業者である原告らの被る損害を補償する等の措置を講ずるべきであつたと主張するが、前記認定のような事実関係からすれば、警察庁が、そのような措置を講ずることなしに、従前のような業界の自主規制によるとの方針を撤回して法改正による規制という方針に踏み切つたことについても、これを信義則等に反する違法な行為とまですることは困難なものといわなければならない。

3 法改正の内容の合理性の有無について

(一) 昭和五二年の法改正によるモデルガンの製造販売の規制が、少なくともモデルガンの製造販売業者である原告らの職業活動の自由を制限する側面をもつものであることはいうまでもない。

ところで、右のモデルガンの製造販売の規制が、モデルガンを改造した銃器による犯罪の発生を防止するという公共の福祉に適合する目的のために行われるに至つたものであることは、前記認定の事実関係からして明らかである。しかし、それが自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的な措置としても行われるものであることからすれば、この規制の合憲性が肯定されるためには、その規制の内容が規制の目的達成のために必要かつ合理的なものと認められること、すなわち、これによつて生ずる原告らの職業活動に対する制約と均衡を失しない程度の規制の必要性が肯定されるとともに、その規制目的との関係からみて規制内容の合理性が肯定されることが必要なものというべきである。もつとも、右の点に関する検討と考量は、第一次的には行政府あるいは立法府の権限と責務に属することがらであるから、裁判所がその規制内容の合憲性の有無を審査するに当たつても、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、行政府あるいは立法府の判断がその合理的裁量の範囲内にとどまつていると考えられるかぎり、その判断を尊重すべきものであることも、当然のことといわなければならない。

以上のような考え方にたつて、以下に、昭和五二年の法改正によるモデルガンの規制の合理性の有無について検討することとする。

(二) まず、右のような規制の必要性の点に関しては、当時、それまでに取られてきた業界の自主規制による方法のみでは、モデルガンが銃砲に改造されるという事態を的確に防止し難いような状況が発生していたことは、前記1(二)(4)で認定したとおりである。そうすると、これらの状況を踏まえて、改造銃器による犯罪の発生を防止し公共の安全と秩序を維持するという職責を負つている警察庁において、より的確なモデルガンの改造防止策を確立するために、何らかの法規制の方法を取る必要性があると判断したことに、違法な点があつたものとすることは困難である。

現に、警察庁の側で具体的に法規制の方法を考えるようになつた昭和五一年秋以降の状況をみても、昭和五一年一〇月には、大阪市内で改造拳銃を用いた暴力団の抗争、殺傷事件が発生して、これが新聞報道でも大きく取り上げられ(〈証拠略〉)、また、組合員の製造したSMマーク付きのモデルガンにも基準通りの改造防止策の施されていないものがあり、これが銃器に改造され犯罪の用に供されて押収されるといつた例も、昭和五一年一一月から同五二年五月までの間で十数例を数え、またこのSMマーク付きモデルガンが銃器に改造されたものが押収されるという件数も、右の期間内で総数五十数例を数える(〈証拠略〉)など、結果として右警察庁の判断が根拠のあるものであつたことを裏付けるような事実が発生していることが認められるのである。

したがつて、昭和五二年の法改正によるモデルガンの規制については、そのような規制の必要性が現に存在していたものと考えられる。

(三) 次に、規制の内容の合理性の有無については、規則一七条の三及び同別表第二に具体的に定められた模擬銃器を銃砲に改造することを著しく困難にするための要件等が合理的なものと考えられるか否かが重要な問題点になる。そこで、規則別表第二に掲げられた銃器の形態別の区分に応じて、原告らの指摘する問題点にそつて、この規則の定めが合理的なものといえるか否かを検討することとする。

(1) 回転弾倉式拳銃に類似する形態を有する物で、銃身に相当する部分と機関部体に相当する部分とが一体として鋳造されているものについて

このタイプについては、組合の定めた安全基準は、銃身部分と弾倉部分にそれぞれインサート鋼材を鋳込むというものであつた(〈証拠略〉)が、規則による規制では、更にこれに加えて、薬室に相当する部分相互間の隔壁が切断されていることを要求している。

原告らは、このタイプのモデルガンの銃器への改造防止策としては、組合の安全基準に定められた銃身基部と弾倉部分へのインサートの鋳込みという方法で十分であり、更に薬室部分の隔壁を切断する措置を要求することは、必要最小限度の規制の範囲を超えるものであるとしている。

しかしながら、規則に右のような規制が規定された趣旨は、銃身と弾倉部分にインサートを鋳込んだだけでは、インサートを鋳込んだ部分の後部で弾倉を切断し、インサートを除去した後にパイプを薬室にはめ込むという改造方法を防ぐことができないため、このような改造をも防止するという点にあるものと認められる(〈証拠略〉)。

そうすると、右の規則による規制には、銃器への改造を防止するというその目的からして、それなりに合理的な根拠があるものと考えられ、これを必要最小限度の規制の範囲を超えたものとすることは困難である。

(2) 回転弾倉式拳銃に類似する形態を有する物で、銃身及び機関部体に相当する部分が対称面により分解することができるものについて

このタイプについては、規則による規制では、弾倉に相当する部分の直径を三センチメートル以下に制限する等の措置が取られている。

原告らは、このタイプのモデルガンは、もともと玩具として作られたもので、全体の強度が弱く、銃器への改造が不能なものであるから、規則による規制は無用のものであるとしている。

しかしながら、確かにこのタイプのモデルガンの銃器への改造事例は少ないものの、その例は皆無ではなく、銃身に相当する部分を加工して鉄パイプ等をはめ込み、針金等で緊縛して溶融する方法によつて発射機能を有するようにした例があり、規則による規制が設けられた趣旨は、このタイプのモデルガンが大型化することによつて必然的に強度が増し、銃器に改造されるおそれが大きくなることを防止することにあるものと認められる(〈証拠略〉)。

そうすると、右の規則による規制も、それなりの合理性を有するものと考えられ、これを無用の規制とまですることは困難である。

(3) 自動装てん式拳銃に類似する形態を有する物で、銃身に相当する部分と尾筒に相当する部分とが一体として鋳造されているものについて

このタイプについては、組合の定めた安全基準は、銃身の先端から薬室に接する部分までインサートを鋳込むとともに、薬室相当部分の両側に耐圧力を弱めるための溝を掘るというものであつた(〈証拠略〉)が、規則による規制では、〈1〉銃身部分の基部にインサートが鋳込まれ、かつ、撃針に相当する部分の先端が薬室の中心部を打撃することにならないような位置に取り付けられているか、〈2〉薬室部分にインサートが鋳込まれているか、のいずれかであることが要求されることとなつた。

原告らは、このタイプのモデルガンについては、改造工作が困難であるため現実の改造例がなく、その改造防止策としては、組合の安全基準に定められた要件のみで十分であり、規則の規制で定められた措置は、もともと不要なものであるとしている(〈証拠略〉)。

確かに、このタイプのモデルガンについては、銃身と尾筒が一体として鋳造されていて、改造工作が困難なこともあつてか、銃器への現実の改造例は見られなかつたことが認められる(〈証拠略〉)。しかし、このタイプのモデルガンについても、改造の危険性がないわけではなく、規則に右のような規制が規定された趣旨は、一般に、モデルガンで撃針に相当する部分に設けられている発火板を取り替えて雷管を打撃することができるようにした改造例が見られたことから、薬室部分にインサートが鋳込まれていない構造の物については、発火板の位置をずらすことによつて右のような方法による改造を困難にすることにあつたものと認められ(〈証拠略〉)、しかも、右の撃針に相当する部分の取り付け位置に関する規制は、このタイプのモデルガンの製造工程にそれほど大幅な変更を要求することになるものとも考えられない。

そうすると、右の規則による規制にも、それなりの合理性があるものと考えられ、これを不必要な規制とまですることは困難である。

(4) 自動装てん式拳銃に類似する形態を有する物で、引き金に相当する部分とスライド又は遊底に相当する部分とが直接連動するものについて

このタイプについては、組合の定めた安全基準は、銃身部分と遊底内部にインサートを鋳込むというものであつた(〈証拠略〉)が、規則による規制では、単に銃身基部にインサートが鋳込まれていることを要求するに止つている。

原告らは、この点に関する規制は、組合の定めた安全基準によることで十分であると主張する。

しかし、この点の規則による規制は、このタイプのモデルガンが玩具独特の構造を持つものであつて、銃器への改造の可能性がさほど高くないと考えられることから、むしろ組合の定めた安全基準より緩かな内容の規制を定めるに止めたものと認められる(〈証拠略〉)から、原告らの右の主張はそれ自体失当なものというべきである。

(5) 自動装てん式拳銃に類似する形態を有する物で、銃身、機関部体及びスライドに相当する部分又は銃身、機関部体、尾筒及び遊底に相当する部分が対称面により分解することができるものについて

このタイプについても、規則による規制では、その全長を一定の長さ以下に制限する等の措置が取られた。

原告らは、この点に関する規制も無用のものであるとしているが、この規則による規制にも、それなりの合理性があるものと考えられ、これを無用の規制とまですることが困難なことは、前記(2)の場合と同様である。

(6) 自動装てん式拳銃に類似する形態を有する物で、分解することにより銃身に相当する部分を分離できるものについて

このタイプについては、組合の定めた安全基準では、銃身部分にインサートを偏芯させて鋳込むとともに、遊底の機関部内部にもインサートを鋳込み、また、遊底部分の強度を弱めるため、その内側に溝を入れるというものであつた(〈証拠略〉)。ところが、規則による規制では、このタイプのモデルガンについては有効な改造防止措置が発見できないものとして、全面的にその販売目的による所持が禁止されることとなつた。

原告らは、このタイプのモデルガンについても、銃身部分に一定の硬度のインサートを鋳込み、かつ、遊底内にカツターによつては切断することのできないような硬質合金をインサートとして鋳込むことによつて、銃器への改造を防止することは十分に可能であり、規則による右のような法規制は、必要とされる限度を超えたものであるとしている(〈証拠略〉)。

しかしながら、このタイプのモデルガンは、銃身部分を分離することができるため、銃身部分を交換してしまうという改造方法は、銃身部分にインサートを鋳込むことによつても防ぐことができず、また、遊底部分に硬質合金のインサートを鋳込んでおいても、ある種の高速度カツターを用いてこれを取り去ることが可能であるから、これまた有効な改造防止策とはいい難く、しかも、現実にこのタイプのモデルガンが大量に銃器に改造されているという事実があつたことが認められる。そこで、このタイプのモデルガンについては、それが撃発装置に相当する装置を有している限り、当面効果的な改造防止措置を発見できないものとして、前記のとおりの規則による規制が取られることとなつたものである。(〈証拠略〉)

右のような事実からすると、この点に関する規則による規制にも、それなりに合理的な根拠があるものと考えられ、これを必要性の認められる限度を超えた規制に当るものとすることは困難である。

(7) 中折れ式拳銃に類似する形態を有する物について

このタイプについては、組合の採用した安全基準で、銃身に相当する部分にインサートを鋳込むこととなつていた(〈証拠略〉)が、規則による規制では、有効な改造防止措置が見つからないものとして、全面的にその販売目的による所持が禁止されることとなつた。

原告らは、このタイプのモデルガンについても、薬室相当部分に薬室全般を覆う超硬合金によるインサートを鋳込むといつた方法による改造防止策が考えられるから、右の規則による規制は、その必要性の範囲を超えたものであるとしている。

しかしながら、このタイプのモデルガンは、銃身と機関部とが蝶番で中折れする構造になつており、銃身を分離することができるので、インサートが鋳込まれている銃身部をインサートの後方で切断し、薬室を利用して鉄パイプ等を用いた銃身を装着するという方法による改造例が多く見られ、原告らの主張するように薬室全般を覆うようなインサートを鋳込んでおいても、銃身の薬室部分を切断し、銃身にドリルで薬室部分を作るという改造方法を防ぐことはできないことが認められる(〈証拠略〉)。

そうすると、この点に関する規制にも、それなりの合理的な根拠があるものと考えられ、これが必要性の認められる限度を超えた規制に当るとすることは困難である。

(8) 小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態を有する物で、銃身に相当する部分と機関部体に相当する部分とが一体として鋳造されているものについて

このタイプについては、組合の側ではとくに統一的な安全基準を定めていなかつた(〈証拠略〉)が、規則による規制は、薬室がある物については、銃身部分の基部にインサートを鋳込むとともに、更に、そのうち撃針に相当する部分がある物について、その部分の先端が薬室の中心部を打撃することにならないような位置に取り付けられていることを、また、撃針に相当する部分がない物について、遊底の前部に超硬合金が鋳込まれていることを、他方、薬室が設けられていないものについては、薬室に相当する部分にインサートが鋳込まれていることを、それぞれ要求するものとなつている。

原告らは、これらのいわゆる長物と呼ばれるタイプのモデルガンについては、改造例があまりないということ等から、規制の必要はないと考えられてきたものであり、右のような規則による規制も、不要なものであるとしている(〈証拠略〉)。

しかしながら、これらいわゆる長物タイプのモデルガンは、その銃身部分を取り除いて鉄パイプで作つた銃身を機関部にねじ込み、また遊底頭にドリルで撃針孔を空けることによつて発射機能を有するようにするといつた方法で、銃器に改造することが可能であり、更に、薬室が設けられていない場合も、銃身基部に穴を空けて薬室代りにするという改造方法があり、しかも、その改造が比較的容易であることから、効果的な改造防止措置を講ずる必要があると考えられたものであり、右の規則による規制の趣旨は、撃針に相当する部分がある物については、前記(3)の場合と同様であり、また、撃針に相当する部分がない物については、遊底部に撃針を設けられないようにするために遊底前部に超硬合金を鋳込ませ、更に、薬室のないものについては、薬室に相当する部分にインサートを鋳込むことによつて、銃身基部に穴を空けて薬室代りとすることを防止することとしたものであることが認められる(〈証拠略〉)。

そうすると、この点の規制にも、それなりの合理性があるものと考えられ、これを不要な規制とまですることは困難である。

なお、原告らは、右の規則による規制によると、銃腔部分が閉そくされることとなるため、薬室後部へ吹き出す紙火薬の燃焼ガスがモデルガンの操作をする者の顔面に吹きつけられることとなる危険があると主張する。しかし、仮にそのような危険があるとしても、その点の危険の防止は、モデルガンが銃器に改造されることを防止しようとする本件の法改正の目的とは直接には関わりのないことがらであるから、その点が右のような本規制の合理性の有無に対する判断を左右するものとはいえない。

(9) 小銃、機関銃又は猟銃に類似する形態を有する物で、分解することにより銃身に相当する部分と機関部体に相当する部分を分解できるものについて

このタイプについては、組合の方では、統一的な安全基準は定めていなかつたものの、製造業者の中には、他の形態のモデルガンの安全基準に準ずるような形で、銃身部分にインサートを鋳込むという改造防止措置を施している者もあつた(〈証拠略〉)。ところが、規則による規制では、このタイプのモデルガンについては、有効な改造防止措置が発見できないものとして、全面的にその販売目的による所持が禁止されることとなつた。

原告らは、このタイプのモデルガンについても、銃身部分にインサートを鋳込むということで安全構造としては十分であり、改造例もわずかであつたから、規則による規制は、必要性の限度を超えたものであるとしている。

しかしながら、このタイプのモデルガンも、銃身と機関部体とが一体として鋳造されていないため、銃身基部に改造防止措置を施しても、銃身を交換してしまうという方法による改造を防止できないものと認められることは、前記(6)の場合と同様である。

そうすると、この規則による規制が必要性の認められる限度を超えた規制に当るとすることのできないことも、前記(6)の場合と同様であるものというべきである。

(10) 右の(1)から(9)までで認定した事実からすれば、規則に定められた模擬銃器(モデルガン)を銃器に改造することを著しく困難にするための要件等は、いずれも、基本的には組合の側で定めていた安全基準を基礎とし、それに必要な修正等を加えたものであつて、それなりの合理性を有しているものと考えられる。

しかも、警察庁で右の規則案を作成するに当つては、銃砲について専門的な知識を有する専門家から数回にわたつて意見を聴取し、この改正案の内容はこれら専門家の意見内容を踏まえたものとなつていることが認められる(〈証拠略〉)のであり、また、そもそもこの種の規制措置の内容の決定については、直接この問題を所管する行政部局である警察庁がその専門的な経験等に基づいて行う裁量判断が尊重されるべきこともいうまでもないところである。

そうすると、右のような規則による定めが、警察庁等に与えられた合理的な裁量権の範囲を逸脱あるいは濫用してなされた違法なものに当たるとまですることは、到底困難なものというべきである。

4 結語

結局、昭和五二年の法改正によるモデルガンの規制については、それがモデルガンを改造した銃器による犯罪の発生を防止するという公共の福祉に合致する目的のために行われたものであり、その規制の必要性及び規制内容の合理性の点でも、これを違法とすべき点は認められず、また、その前段階で行われた警察庁による行政指導の過程においても、被告国の国家賠償責任を生じさせるような違法な点があつたものとは認められない。

したがって、原告らの被告国に対する各請求も、その余の点について判断するまでもなく、失当なものというべきである。

(裁判官 涌井紀夫 市村陽典 小林昭彦)

別表〈略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com