大判例

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東京高等裁判所 平成5年(ネ)2621号 判決

控訴人

有限会社三晃産業

右代表者代表取締役

篠原三男

控訴人

有限会社英光商事

右代表者代表取締役

篠原三男

右両名訴訟代理人弁護士

横堀晃夫

被控訴人

鯉沼英雄

右訴訟代理人弁護士

梅澤錦治

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由

一当事者の求めた裁判

1  控訴の趣旨

(一)  原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。

(二)  被控訴人の請求をいずれも棄却する。

2  控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する。

二事案の概要

本件は、被控訴人が、同人から同人所有の土地を賃借し、地上に建物を所有して使用占有している控訴人らに対し、右土地は農地であり、農地法上の許可を受けていないから賃貸借契約は無効であると主張して、右土地の所有権に基づき、建物収去土地明渡し及び賃料相当の損害金の支払いを求めたところ、原審は、請求の一部を認容したので、控訴人らが控訴した事案である。なお、被控訴人は、当審において、賃料相当の損害金の支払請求について訴えを取り下げた。

そのほかは、原判決の「事実及び理由」一ないし三に記載のとおり(但し、原判決別紙物件目録2の(2)記載の建物の収去及び賃料相当の損害金の支払請求に関する部分を除く。)であるから、これを引用する。

三当審における控訴人らの主張

本件土地が、仮に農地であったとしても、農地の転用許可の申請は、所有者が単独でもすることができるのであるから、許可を受けずに賃貸して転用した被控訴人は、農地法違反という点では、賃借した控訴人らに比べ、より大きな非難を受けるべきである。したがって、被控訴人の本訴請求は、信義に反し、誠実の原則にもとるものであり、棄却されるべきである。

四当裁判所の判断

1  被控訴人が、控訴人らに対し、本件土地を賃貸するに至った経緯、その後の経過については、原判決四枚目表七行目の冒頭から同五枚目裏四行目末尾までのとおり(本件(2)の建物の収去に関する部分を除く。)であるから、これを引用する。但し、次のとおり訂正付加する。

(一)  原判決四枚目表七行目の「〈書証番号略〉」を「〈書証番号略〉」に改め、同八行目の「結果」の次に「及び弁論の全趣旨」を加える。

(二)  同四枚目裏三行目の末尾に行を替えて「本件土地はいずれも地目は農地であるが、本件(2)の土地を除く土地は、被控訴人から賃借した者が桑畑として使用していたところ、同人が農業を止めたことから、控訴人が返還を受け、訴外篠原に賃貸したものであり、本件(2)の土地も、農地であったものの荒廃した状態にあったこと」を加える。

(三)  同五枚目表一行目の「その儘」を「することなく」に、同七行目の「ある」を「あり、控訴人と被控訴人は、昭和六一年七月一四日付けで壬生町農業委員会あてに、本件(1)の土地の無許可転用を陳謝する趣旨の始末書を提出し、その後、農地転用許可申請書を作成して提出しようとしたが、受理されなかった」に改める。

(四)  同五枚目裏一行目の「被告らが」の次に「事務所として」を、同二行目の「受けて」の次に「オイル交換や修理に」を、同三行目の「所有して」の次に「自動車の備品の販売に」をそれぞれ加え、同行目の「使用している」を「使用しており、いずれの建物も未登記である」に改める。

2  右事実によれば、本件土地は、賃貸借当時、現況が農地であったということができるから、農業委員会の許可を得ていない被控訴人と控訴人三晃との間で本件土地を農地以外の用途に使用することを目的としてした本件土地の賃貸借契約は効力を生じることがなく(農地法五条一項、二項、三条四項)、控訴人らが本件土地を占有使用する権原はないことになる。

したがって、被控訴人に対し、控訴人三晃は、本件(1)の建物を収去して本件土地を明け渡す義務、控訴人英光は、本件(1)、(2)の建物から退去して及び本件(3)の建物を収去して本件土地の明渡しをする義務がそれぞれある。

3  控訴人らは、被控訴人の本訴請求は、信義則に反し、権利濫用に当たると主張する。被控訴人が、農地の転用には県知事の許可が必要であることを知りつつ賃貸し、その後、賃貸物件を追加するとともに長期間賃貸を継続し、この間知事の許可を受けるように努めず、自己の借財の整理のため本件土地を処分する必要が生じたことから、控訴人らに対し、許可を受けていないことを奇貨として賃貸借契約の無効を主張して、本件土地の明渡しを求めて本訴請求に及んだことが認められないではなく、被控訴人の法秩序を無視した利己的ともいえる態度は、社会的に強い非難に値するものといわなければならない。しかし、控訴人ら代表者の篠原も、本件土地の賃貸借が農地法に違反するものであることを認識しながら、あえて二回にわたり賃借し、農地以外の用途に長期間継続して使用収益したものであって、この間、法違反の解消に努めたことは窺えず、本件土地の使用関係が法的に不安定なものであることを十分承知していたものであり、控訴人らの態度も被控訴人同様に社会的非難に値するものである。また、本件土地のうち、(1)の土地の一部と(3)ないし(5)の土地は砂利置場として使用され、(1)の土地の一部と(2)の土地は、(1)ないし(3)の建物の敷地として使用されているが、右建物はいずれも未登記のプレハブの建物であって前示の用途にあてられており、建物の収去等により、控訴人らが著しい損害を被るとも認められない。これらの事情に、農業委員会は、被控訴人と控訴人らの行為を農地法に照らし、重大かつ悪質な違反として、原状回復を強く求める方針をとっていることを窺うことができること、農地法の趣旨に照らすと、一旦原状の回復を図ることが法違反を是正して法秩序を整序するとともに同法の実効性を図るうえで社会経済的に相当とみられることを考え合わせると、被控訴人の控訴人らに対する本件土地の明渡請求は、信義則違反ないし権利濫用として排斥すべきであるとまでは認められない。

4  以上のとおりであるから、被控訴人の請求を原判決の認容した限度で理由があり、これを認容した原判決は正当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし(被控訴人は賃料相当の損害金の支払請求について、当審において訴えを取り下げたので、原判決主文の右請求を認容した部分は効力を失った。)、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、九三条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官伊藤滋夫 裁判官宗方武 裁判官水谷正俊)

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