大判例

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東京高等裁判所 平成5年(行ケ)153号 判決

東京都品川区北品川6丁目7番35号

原告

ソニー株式会社

同代表者代表取締役

大賀典雄

同訴訟代理人弁理士

萼経夫

館石光雄

村越祐輔

佐藤英二

カナダ国エイチ2ワイ3ワイ4 ケベック モントリオール セントアントワーヌストリートウエスト380

エイスフロアー ワールドトレードセンターオブモントリオール

被告

ノーザン テレコム リミテッド

同代表者

フィリップ ティー エリクソン

同訴訟代理人弁理士

小田島平吉

同訴訟複代理人弁理士

佐久間光夫

主文

特許庁が平成4年審判第13155号事件について平成5年7月15日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文同旨

2  被告

(1)  原告の請求を棄却する。

(2)  訴訟費用は原告の負担とする。

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、「DMS」のローマ字を横書きしてなり、指定商品を商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前)別表第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品とする登録第1563134号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、被告は、平成4年7月10日本件商標の登録取消審判を請求(以下「本件審判請求」という。)し、同年8月19日その予告登録がされ、平成4年審判第13155号事件として審理された結果、平成5年7月15日本件商標の登録を取り消す旨の審決があり、その謄本は同年8月4日原告に送達された。

2  審決の理由の要点

(1)  本件商標の構成、指定商品は、前項記載のとおりである。

(2)  被告(請求人)は、本件商標は、商標法50条に該当するからその登録は取り消されるべきであると主張している。

(3)  原告(被請求人)は、何ら答弁していない。

(4)  商標法50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条2項により、被請求人において、その請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、または使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。

本件審判請求に対し、原告(被請求人)は、何ら答弁、立証するところがない。

したがって、本件商標の登録は、商標法50条により取り消すべきである。

3  審決を取り消すべき理由

審決は、「本件商標の登録は、商標法50条により取り消すべきである。」と判断した。

しかしながら、原告は、本件審判請求の予告登録の日である平成4年8月19日前3年以内に日本国内において以下のとおり本件商標を指定商品について使用したから、審決は、違法として取り消されるべきである。

(1)  原告は、学術・科学計測、データ蓄積等の分野で、最高30テラバイトまでのデータを、自動で記録、保管、再生できる超大容量のカセットオペレーションシステムを製作し、『デジタル マス ストレージシステム』と名付け、最大容量がそれぞれ異なる4機種を製品化した。

『デジタル マス ストレージシステム』は、「電子計算機用カセットテープ(カートリッジ)の自動掛替装置」であり、本件商標の指定商品に包含される「電子計算機の周辺機器」に該当する。

上記製品の4機種の型名は、『DMS-700M』『DMS-300M』『DMS-24』『DMS-16』であるが、これらのハイフン以下の「700M」「300M」「24」「16」が機種を示す記号で、「DMS」の文字がそれぞれの主要部をなし、本件商標を表示している。

原告は、平成4年4月20日付けで上記の『デジタルマス ストレージシステム』を商品化し、販売する、との本件商標を付したパンフレットを作成した。

原告は、前同日各新聞社に対し、上記新製品の製作、販売を発表し、パンフレットを写真とともに各新聞社に提供した。

同月21日上記新製品の紹介記事が日本経済新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞、電波新聞に掲載された。

以上のパンフレットの作成・頒布、新聞記事の掲載は商標法2条3項7号の商品に関する広告に商標を付して頒布する行為に該当する。

(2)  原告は、平成4年4月22日から同月24日まで横浜市西区所在のパシフィコ横浜で開催された「スーパーコンピューティングジャパン92」(ハイーパフォーマンスコンピューティング展示会、以下「展示会」という。)において、新製品のうち、『DMS-300M』『DMS-24』の機種を展示したが、これらの機種に「DMS」の文字よりなる本件商標を表示し、また展示会の通例として新製品の機種名であると同時に本件商標を表す『DMS-700M/300M』『DMS-24』の文字が付されているカタログを不特定の見学者に配付した。

以上の展示会での新機種の展示及びカタログの配付は商標法2条3項2号の商品に標章を付したものを譲渡及び引渡のために展示する行為及び同項7号の商品に関する広告に標章を付して展示し又は頒布する行為に該当する。

(3)  原告は、平成5年1月26日本件商標の更新登録出願をし(平成5年商標登録願第702260号)、同年7月14日登録査定となり、同年11月29日更新登録された。

これをもってしても、本件商標が指定商品に使用されていることは明らかである。

第3  請求の原因の認否及び被告の主張

1  請求の原因1、2項の事実は認める。

2  同3項の審決の取消事由は争う。

(1)  同項(1)の事実は不知。

仮にそのような事実があったとしても、原告のパンフレット及び新聞記事に記載された『DMS-700M』『DMS-300M』『DMS-24』『DMS-16』の文字は、型名の欄に表示された全体として型式番号にすぎず、自他商品の識別機能を有する商標とはいえない。原告のパンフレットによれば、原告が開発した新機種について、「DIR-1000シリーズ」の表現があり、『DMS-700M』等の文字は、『DIR-1000シリーズ」の商品の一つを当該シリーズの商品の他のものから区別するために付した型式番号でしかない。

また、新聞記事は、原告が行った広告ではないから、これをもって商標の使用があったということもできない。

そして、原告のいう使用について、本件商標の指定商品のいずれの商品について使用したのか明らかでない。

(2)  同項(2)の事実は否認する。

展示会の資料に「DMS-24(外観サンプル)」との表示があるように、商品は現実には存在しなかった。展示会のパンフレットにも「DMS」の機種の表示はない。展示された機械には「DMS」の標識があるが、その標識は、同じく付されている「SONY」の標識に比較しても大きすぎ、広告のために記されたにすぎない。

すなわち、展示会において展示されたものは、実際に取引に供される商品ではなく、単なる広告のために展示されたものにすぎない。

仮にそうでないとしても、「DMS」の文字は、「DIR-1000」シリーズの商品の一つを当該シリーズの他のものから区別する型式番号でしかない。

そして、本件商標の指定商品のいずれの商品について使用したのか明らかでない。

(3)  同項(3)の事実は不知。

原告が本件商標の更新登録出願をし、これによりその更新登録がされたことと、被告のした本件審判請求とは別個の事件であって、前者が認容されたことは後者に影響しない。

第4  証拠関係

本件記録中の証拠目録の記載を引用する。

理由

1  請求の原因1項(特許庁における手続の経緯)、同2項(審決の理由の要点)の各事実は、当事者間に争いがない。

2  同3項(審決を取り消すべき理由)について

(1)  弁論の全趣旨により成立の認められる甲第4号証、成立に争いのない甲第5ないし8号証によれば、原告は、最高30テラバイトまでのデータの自動記録、保管、再生が可能な超大容量のカセットオペレーションシステムを製作し、『デジタル マス ストレージシステム』と名付け、最大容量がそれぞれ異なる4機種を『DMS-700M』『DMS-300M』『DMS-24』『DMS-16』の型名として、商品化し、販売すると記載したパンフレットを、平成4年4月20日付けで作成し同月21日上記パンフレットに基づいて、日本経済新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞、電波新聞にこれと同旨の新製品の紹介記事が掲載されたことが認められる。

しかしながら、上記パンフレットについては、原告がこれを上記各記事を掲載した各新聞社以外に広く配布し知らしめる行為をしたことを認めるに足りる証拠はなくまた、一般に商品に関する広告とは、製品等を優れたものとして広く世間に知らしめ、顧客を誘引するものであるところ、上記新聞記事については、原告が新製品を開発し、製作し、その4機種を販売することになったという単なる紹介の記事にとどまっており、原告が記事を掲載してもらうべくパンフレットその他の情報を新聞社に提供した動機はともかくとして、上記記事そのものは、商品に関する広告ということはできない。

以上により、上記パンフレットの作成・頒布、新聞記事の掲載をもって、原告が商標法2条3項7号に該当する商標の使用をしたということはできない。

(2)  証人岡本昌利の証言及びこれにより成立の認められる甲第11、12、14号証、第15号証の1、2、第17号証、第18号証の1ないし3によれば、原告は、平成4年4月22日から同月24日まで横浜市西区みなとみらい1-1-1所在のパシフィコ横浜で開催された展示会において、原告が製作した前記(1)認定の『DMS-300M』『DMS-24』の機種を展示し、作動させたこと、『DMS-300M』の機種については、本体右上に本体と同色で「DMS-300M」の文字を表示し、『DMS-24』の機種については、本体の前面の黒色パネル上部に白色で「DMS」の文字を表示していたこと、また、『DMS-300M』と『DMS-24』について、その表示と写真、主な仕様、特徴等を記載したカタログを300部作成し、同日ソニーブースを訪れた客に対しこれを配布したことが認められる。

たしかに、原告の作成した展示会の受付員のための資料(甲第15号証の1、2)中には、「DMS-24(外観サンプル)」の記載があり、『DMS-24』は商品といえない単なる見本ではなかったかとの疑義を生ぜしめる余地はあるけれども、前記証人の証言によれば上記展示会は、スーパーコンピューター及びその関連機器を展示し、販売促進活動を行うことを目的としたもので、原告においても、商談コーナーを設けたり、『DMS-300M』『DMS-24』の機種を実際に作動させたりし、数台の用意もあり、購入を欲する顧客がいればこれを直ちに引き渡すことが可能な状態であったことが認められるから、これらの機種は、市場で交換に供される有体物としての商品性を備えていたということができる。

そして、「DMS」の文字は、展示された機種及び同時に製作発表された他の2機種の表示に共通していて、その主要部をなし、これによって他人の営業に係る商品から識別する機能を有するから、商標というべく、これにハイフンで結合されている「700M」「300M」「24」「16」の文字が型式を表す番号であるというべきである。

被告は、『DMS-700M』等の文字は、「DIR-1000シリーズ」の中の一つの商品を他のものから区別する型式番号にすぎない旨主張するけれども、前記甲第4号証によれば、『デジタル マス ストレージシステム』は超高速デジタルデータレコーダー「DIR-1000シリーズ」を複数搭載したカセットオペレーションシステムであって、上記文字は単に「DIR-1000シリーズ」における型式番号を示すものではなく、また、被告は、展示された『DMS-24』の機種の「DMS」の文字は「SONY」の文字に比較して大きすぎ、このことからも単なる広告品の展示であることが判る旨主張するが、前記甲第14号証によれば、たしかに「DMS」の文字は「SONY」の文字より大きいけれども、そのことから広告品の展示であるとは到底いえないだけでなく、そのことはむしろ「DMS」の文字によって上記商品の自他識別がなされていることを示すものということができ、これらの主張は、採用できない。

そして、前記甲第4号証及び弁論の全趣旨によれば、『デジタル マス ストレージシステム』の『DMS-700M』『DMS-600M』『DMS-24』『DMS-16』の機種は「電子計算機用カセットテープ(カートリッジ)の自動掛替装置」であり、本件商標の指定商品に包含される「電子応用機械器具」に該当するというべきである。

そうすると、原告が平成4年4月22日から同月24日まで開催された展示会において、本件商標に係る指定商品に本件商標を付して、これを譲渡のために展示した行為は商標法2条3項2号に該当し、また、本件商標を付した同商品を掲載したカタログを不特定多数の者に配布した行為は同項7号に該当するということができる。

(3)  以上によれば、同項(3)について判断するまでもなく、本件商標は、本件審判請求の予告登録前3年以内に商標権者により日本国内において指定商品に使用されていたことになり、本件商標の登録は、商標法50条の規定により取り消すべきであるとした審決の判断は、結局において誤っており、取り消すべきことになる。

よって、原告の本訴請求は、理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 関野杜滋子 裁判官 田中信義)

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